著者
福井 至
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.57-70, 1998-09-30

本研究の目的は,抑うつと不安を引き起こす認知内容を測定するための質問紙を開発し,抑うつと不安の相関を認知内容から説明できる認知行動モデルを構築することであった。抑うつと不安を引き起こす認知内容を測定する項目選択とそれらの項目についての因子分析の結果,「将来否定」「脅威・嫌悪状況予測」「自己否定」「過去・現在否定」「状況の脅威度・嫌悪度」の各10項目ずつの5つの下位尺度からなるDACSが作成された。またDACSとDepressionandAmdetyMoodScaleを用いた共分散構造分析から,「抑うつ気分」は「将来否定」から引き起こされ,この「将来否定」は「過去・現在否定」と「自己否定」から引き起こされること,他方「不安気分」は「抑うつ気分」と「脅威・嫌悪状況予測」から引き起こされ,この「脅威・嫌悪状況予測」は「過去・現在否定」と「状況の脅威度・嫌悪度」から引き起こされることが示された。これらの結果から,抑うつと不安の両者を引き起こす共通の認知内容の「過去・現在否定」によって抑うつと不安の相関が説明できる,新しい抑うつと不安の認知行動モデルが構築された。
著者
福井熊次郎 編
出版者
生見堂
巻号頁・発行日
1883
著者
福井 幸太郎
出版者
立山カルデラ砂防博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

現在の日本の山岳には、多年性雪渓(万年雪)は存在するが、氷河は存在しないとされていた。本研究では、飛騨山脈剱岳の小窓雪渓、三ノ窓雪渓、立山の御前沢雪渓で氷体の厚さと流動の観測を実施した。その結果、各雪渓は厚さ30 m以上、長さ400~1200 mに達する巨大な氷体をもち、氷体は1ヶ月あたり5~30 cm流動していることが明らかになった。したがって、小窓,三ノ窓、御前沢雪渓は日本では未報告であった1年を通じて連続して流動する現存する「氷河」であると考えられる。
著者
松岡 成明 久澄 太一 吉水 卓見 福井 仁 松本 一弥
出版者
医療法人茜会・社会福祉法人暁会学術委員会
雑誌
昭和病院雑誌 (ISSN:18801528)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.7-11, 2004 (Released:2005-05-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1

松果体は、メラトニンを産生し、睡眠に関係していると考えられています。しかし、手術による松果体切除が、睡眠障害を生ずるか否かについて今日迄はっきりとした記載はありません。私たちは、松果体嚢腫および松果体細胞腫(pineocytoma)の2例の全摘出例について、その影響を検討したので、松果体腫瘍を全摘出した患者のメラトニン分泌とactigraphと睡眠日誌からみた睡眠・覚醒リズムについて報告します。症例1の術後1ヵ月および症例2の術前・術後のメラトニン分泌量は、いずれも2.5pg/dl以下で、日内変動もみられなかった。症例1の術後におけるactigraphからみた睡眠・覚醒リズムの乱れは基本的にみられなかった。14日間における夜間時の各睡眠パラメーターの平均(標準偏差)についてみると、就床時間が406.3分(75.6)、全睡眠時間が369.2分(75.2)、睡眠効率が90.8%(5.4)、中途覚醒時間が37.1分(22.7)、入眠潜時が7.2分(3.1)および昼寝時間が45.1分(39.1)であった。日々の睡眠パラメーターの変動も比較的小さかった。活動量のコサイナー分析の結果、Acrophaseは15~18時の範囲にあり、14日間の平均では、15:32(1:55)、Amplitudeは106.5(19.2)、Mesorは162.9(42.3)であった。最大エントロピー法による解析の結果、第1周期はほぼ24時間、第2周期は12時間であった。睡眠日誌から求めた睡眠パラメータは、actigraphから判定したものより、良く眠れていたと報告していた。症例1でみたように、症候性松果体嚢腫の全摘出術を受けたにもかかわらず、睡眠・覚醒サイクルは、ほぼ正常なリズムを維持していたものと推測された。しかし、症例2のように、術前のメラトニンの分泌レベルは、症例1の術後と同じレベルで日内変動もみられなかった。先行研究では、術前の高メラトニン濃度が松果体腫瘍の診断基準となると言われているので、今後さらに症例を重ねて検討したい。
著者
福井 義一 飯野 めぐみ 福井 貴子
出版者
東海学院大学
雑誌
東海学院大学紀要 (ISSN:18827608)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.193-202, 2007

本研究は,解離性同一性障害のクライエントに催眠療法を適用して人格統合から治癒に至ったケースについて,症状の顕在化する前に2回と人格統合後に2回実施した心理検査の結果を比較し,体験様式やパーソナリティの変容について検討した。用いた心理検査はMMPIとバウムテストであった。その結果,MMPIにおいては,先行研究で得られたような妥当性の低下や分裂病尺度の上昇は見られなかったが,症状の顕在化直前には各臨床尺度の値が揃って上昇したことが分かった。バウムテストからは,初回と2回目の異質さが示され,統合後は安定した描画となったことが,諸変数の変化からも明らかとなった。さらに,描かれた木の説明からも重要な情報が得られることが示唆された。総じて,一事例研究から解離性同一性障害の一般的特徴を抽出することは適切ではないが,検査結果を継時的に比較検討することは有益であると結論づけられた。
著者
田中 孝彦 安東 由則 上田 孝俊 倉石 哲也 福井 雅英 筒井 潤子 山内 清郎 影浦 紀子 渡邉 由之 間宮 正幸 早川 りか 西堀 涼子
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、複数の地域で教師と教師教育者からの継続的な聴きとりを重ねた。その結果の概略は次のとおりである。①多くの教師が、子どもの生存・発達・学習への要求に応える援助的・教育的実践を、父母・住民・援助職と共に模索している。②教師教育の現場では、学び手が福祉・医療・心理臨床などの諸分野で蓄えられてきた子ども理解の経験・洞察を摂取できるように、子ども理解のカリキュラムの開拓の試みが始まっている。③教師教育者の間では、自らの人間的・専門的な成長のための自己教育についての関心が徐々に熟してきている。そして、これらの聴きとりをもとに、子ども理解のカリキュラムの構築にかかわる諸課題の理論的検討を試みた。
著者
水間 公一 西尾 昭彦 臼井 朋明 相川 真 後藤 幸夫 中山 豊 渋谷 均 古家 隆司 福井 四郎 戸塚 守夫 早坂 滉
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.1037-1041, 1980-12-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
20

甲状腺癌は他臓器の癌に比べ発症年齢のピークは若年者側にある.しかし小児症例は多くはないが著者らは教室における経験例を中心に診断,治療の面について検討を加えた.術前から癌の確診をえた症例は少なく,早期診断と治療が要求される小児例においては甲状腺腫に対して生検を含む積極的手段を構じ癌の確診をうるよう努力すべきであろう.また術式は,高い根治性と最小の合併症が要求されるため慎重に各症例に最適な術式を撰択すべきである.予後は成人とほぼ同様に良好と考えてよいと思われるが,死亡原因の大半を占める肺転移に対する対策は今後さらに検討・改善を加えてゆくべきと思われる.
著者
新堀 敏基 相川 百合 福井 敬一 橋本 明弘 清野 直子 山里 平
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.13-29, 2010 (Released:2010-12-28)
参考文献数
60
被引用文献数
6 10 1

気象庁では、火山現象予報の一つとして、2008年3月31日から降灰予報の業務を開始した。この論文では、降灰予報を高度化するために気象庁・気象研究所で開発している降灰予測システムを用いて、降灰量の量的予測を行う方法について論じる。降灰予測の方法は、まず初期値となる噴煙柱モデルを、仮想質量をもつ火山灰トレーサーで構成する。次に、トレーサーの時間発展を移流拡散モデルにより計算する。火山灰移流拡散モデルは、気象場に気象庁メソ数値予報モデル(MSM)を用いたラグランジュ記述のモデルであり、移流・拡散・降下・沈着の各過程を考慮している。そして沈着したトレーサーの仮想質量から、単位面積あたりの重量(面密度)として降灰量を算出する。噴煙柱モデルに気象レーダーで観測された噴煙エコー頂高度を用い、降灰量の算出にMSMより細かい水平格子間隔を用いて、本方法を2009年2月2日浅間山噴火の事例に適用した。観測値と比較して、降灰域の定性的な特徴は概ね予測でき、分布主軸上の降灰量も同じオーダーで予測可能であることが示された。
著者
福井 祐子 岩下 孝 浅見 純生 野中 裕司 前田 満 橋本 文雄 木曽 良信
出版者
天然有機化合物討論会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.50, pp.475-480, 2008-09-01

Oolong tea is a semi-fermented tea, which has been manufactured from leaves of Camellia sinensis (L) O. Kuntze, same as non-fermented Japanese or Chinese green teas. Major components of fresh tea leaves are caffeine and catechins such as epigallocatechin-3-O-gallete (EGCG). During the fermentation process, polyphenol oxidase (PPO) in tea leaves oxidizes the catechins into theasinensin and oolongtheanin. In addition, oolonghomobisflavans are known as condensation products of catechins by heat treatment. The aim of this study is to quantify these minor polymerized polyphenols by LC-MS/MS, and address their biological activities. Quantification of polyphenols by LC-MS/MS Theasinensin (TSN), oolongtheanin gallate (OTNG), and oolonghomobisflavan (OHBF) were synthesized from EGCG. Two new trimers and tetramers of oolonghomobisflavan were synthesized along the previous synthesis method of OHBF, and then their structures were determined by MS and NMR spectroscopy. Quantification of these compounds was performed by LC-MS/MS in the mode of multiple reaction monitoring (MRM). Compounds other than TSN-A were of small quantities in oolong tea leaves. Quantification of polymerized polyphenols was not performed with HPLC UV monitoring, but by LC-MS/MS method. Nine kinds of oolong teas in different fermentation levels were extracted and analyzed. The very small amount of trimers and tetramers of OHBF were included in "Black oolong tea", therefore, it was necessary to make concentrated solutions of these by column separation, and quantified the real amount by analyzing them. Biological activities of polymerized polyphenols Pancreatic lipase inhibitory activity of oolong tea polymerized polyphenols (OTPP) and some catechin dimmers have been already reported. In this study, new trimers and tetramers also exhibited strong inhibitory activity. Besides OTPP, the polymerized polyphenols, TSN, OTNG, and OHBF also have α-glucosidase inhibitory activity. These results suggest that oolong tea prevents the elevations of triglyceride in blood from meal fat, as well as inhibit the absorption of sugars derived from carbohydrates.
著者
新家 光雄 赤堀 俊和 眞鍋 哲典 竹内 力 桂 成基 福井 壽男 鈴木 昭弘
出版者
社団法人日本鉄鋼協会
雑誌
鐵と鋼 : 日本鐡鋼協會々誌 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.154-161, 2004-03-01
被引用文献数
1

科研費報告書収録論文(課題番号:15200035/研究代表者:新家光雄/ナノ変調構造制御による生体用低弾性率型超弾塑性機能チタン材料の創製)

1 0 0 0 新日本文典

著者
福井久藏著
出版者
大日本圖書
巻号頁・発行日
1906
著者
中石 一英 福井 康弘 荒川 良
出版者
JAPANESE SOCIETY OF APPLIED ENTOMOLOGY AND ZOOLOGY
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.199-205, 2011
被引用文献数
31 1

野外の餌動物がほとんど発生していないゴマにタバコカスミカメが大発生し世代交代することが観察されたことから,本種はゴマで増殖が可能と推測された.そこで,ゴマでタバコカスミカメは増殖が可能であるか否かを知るとともに,キュウリ,ナス,トマトおよびピーマンでの増殖についても検討した.餌にゴマ,キュウリ,ナス,トマトまたはピーマンの葉を与えた区,それとゴマの葉とともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えた区を設け,タバコカスミカメを飼育し,繁殖能力を比較した.タバコカスミカメの卵から成虫までの生存率はゴマでは59.3%あり,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えても生存率は有意に高まらなかった.このゴマでの生存率はキュウリを与えた場合と有意差はなかったが,ナスより有意に高かった.また,トマトおよびピーマンでは成虫まで発育した個体は見られなかった.卵から成虫までの発育日数はゴマでは29.0日と,キュウリおよびナスに比較して有意に短かったが,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えると有意に短縮した.成虫の生存日数はゴマで雌が38.4日,雄が27.7日であり,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えても有意差は認められず,ゴマでの生存日数は他の植物と比較して有意に長かった.1雌当たり総産卵数はゴマでは63.6卵であったが,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えると166.4卵と有意に増加した.ゴマ以外の植物での1雌当たり総産卵数は4卵以下で,ゴマと比較して有意に少なかった.ゴマだけを与えた飼育から求めた日当たり内的自然増加率および30日当たり増殖倍率は,それぞれ0.0465および4.0であり,ゴマとスジコナマダラメイガ解凍卵を与えて得た0.0865および13.4に比較して小さかった.しかし,ゴマでは動物質の餌がなくてもタバコカスミカメは増殖できることが明らかになったことから,ゴマはタバコカスミカメのインセクタリープランツとして利用できる可能性が示された.
著者
吉澤 緑 福井 えみ子 松本 浩道 長尾 慶和
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、種々の遺伝子の多型分析を行い、遺伝子組成(成長ホルモン遺伝子GH、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子SCD、がん抑制遺伝子TP53などの遺伝子型の組み合わせ)が既知の雌牛の卵子および精子から体外受精胚を作出し、望む形質を有する子牛を効率的に生産しようと企図された。2010年10月、8個の体外作出胚を受胚雌牛1頭に各2個、4頭の雌に移植し、2頭の分娩が予定され、2011年7月21日雄1頭が無事誕生、26日の雄は死産であった。