著者
稲葉 政満 桐野 文良
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

実際の紙資料の保存状態に近い紙の保存性試験として挿入法を提案した。この方法により、アルカリ性紙と酸性紙が接触すると両者に大きな変色を生じることがあることを示した。この結果は、アルカリ性紙(いわゆる中性紙)を用いれば良しとした従来の考え方を覆すものであり、紙資料保存の現場で深刻に受け止められている。80℃で酸性紙とアルカリ性紙の両者を重ねて促進劣化させる挿入試験では、変色は40%RHから80%RHの湿度範囲では湿度上昇に伴って上昇した。このことは、酸加水分解反応が温度と水分量の上昇によって促進されたためと考えられる。一方、95%RHで圧力をかけた場合には変色が抑えられた。95%RHではアルカリ性紙から酸性紙にCaイオンが転移するのみでなく、酸性紙中の硫酸イオンやアルミニウムイオンが接触しているアルカリ性紙や中性紙に転移して、酸性紙のpHが上昇し、酸加水分解反応が抑えられたために、変色が抑えられたことが明らかとなった。硫酸アルミニウム含有紙では含有しない紙と比較して同一pHでもアルカリ性紙への挿入試験で変色が大きくなる傾向が示された。そのため、保存に用いる紙には硫酸アルミニウムの使用を控えるのが望ましい。文化財保存現場で使用されている主なアルカリ性紙と中性紙について酸性紙の変色に及ぼす影響を検討した。酸性紙の変色はアルカリ性紙のpHが高いほど大きかった。よって、酸性紙の変色を防止するにはアルカリ度の低い紙を用いるほうが良いことがわかった。
著者
加藤 雅人 川野邊 渉 高橋 裕次 稲葉 政満 半田 正博
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

紙文化財の修理技術は、工程、手法、道具、材料が様々であり、同じ作業や材料、道具でさえ用語が異なっていることがある。本研究では、これらの用語を調査して分類することにより、紙文化財およびその修復技術という無形文化財に対する共通理解を深めることを目的として行った。最初に調査票の作製を行い、その後情報収集を行った。データベースの検討を行い、htmlの試作を行った。また蓄積した情報を修復用紙の選択に応用した。
著者
稲葉 みどり
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 (ISSN:21860793)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.29-37, 2011-03-31

本稿では、プロセス・ライティングの手法を取り入れて行った日本語科目(留学生対象)の授業方法や指導手順を紹介し、外国語教育における効果的なライティング指導の方法を考察した。「留学の目的及び将来への抱負」をテーマとする奨学金応募のエッセイの作成を取り上げ、初稿から最終稿に至るまでの指導、及び、改稿の過程を分析した結果、「修正したほうがよい理由をはっきり説明する」、「内容に関する簡単な問いかけをする」、「修正方法を具体的例とともに示す」等が指導生のライティング活動を活性化し、内容構成力を向上させる上で効果的なフィードバックの方法であることがわかった。また、指導生は授業を通じて何度も書き直すことの重要性や内容を深める方法を学んだことも明らかになった。
著者
稲葉 奈々子
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

失業者やホームレスなど社会的排除を経験する当事者の社会運動は、社会的権利を要求する手段であると同時に、同じ経験を共有する排除の当事者の共同性の場としても機能することで、内に向かうインヴォルーションの過程をたどる。しかしながら、「いまだ出会っていない潜在的な仲間」との連帯というフレームが受け入れられたときには、街頭行動が他者と出会う場として認知されるがゆえに、公的空間の占拠などの対抗性を持った抗議行動として表出される。
著者
小椋 たみ子 窪薗 晴夫 板倉 昭二 稲葉 太一 末次 晃
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

第一に言語構造、養育環境(親の働きかけ、メディア環境、家族環境など)、個体要因(物理的世界の認知能力、社会的認知能力、気質、出産時情報など)の言語発達への影響を明らかにした。第二に親の報告から言語発達を測定するマッカーサー乳幼児言語発達質問紙の妥当性が実験と観察データから高いことを明らかにした。第三に言語構造の違い(複数の形態素の有無)が認知へ寄与するかどうか明らかにした。第四に大人の言語との比較を基調に、子供の言語を(i)非対称性、(ii)「幼児語」の音韻構造、(iii)アクセントの獲得、(iv)促音の出現、以上の4つの観点から明らかにした。
著者
山本 啓 稲葉 宏幸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.18, pp.215-219, 2003-02-27

ディジタルコンテンツのネットワーク配信が盛んに行われるようになり,ディジタルコンテンツの著作権保護はますます重要になってきている.本報告では,心理聴覚特性の 1 つであるハース効果を用いることにより,聴感的に劣化の少ない電子透かし手法について提案する.計算機実験により本手法は,聴感的に劣化が少なく,MP3 符号化による攻撃に対してある程度の耐性を有することを示す.Recently network distribution of digital contents have been widely used, and the problem of copyright protection for digital contents becomes more important. In this paper,we propose a new digital watermarking technique for audio data which have a high quality in auditory feeling. The new method is realized by using Haas effect which is one of the mentality auditory characters. By computer experiment,we confirm the audio quality of the embedded audio and the tolerance to MP3 coding.
著者
森沢 正昭 大竹 英樹 稲葉 一男 雨宮 昭南
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1991

◇精子運動能獲得機構に関しては、HCO_3^-,cAMP,pHは鞭毛運動装置に作用することが明らかにされた。また、太平洋を回遊中にシロサケの回遊過程における精子の成熟度、運動能獲得度の変化についての研究調査が行われた。◇精子運動開始についてはサケ科魚類精子運動開始タンパク質(MIPP)を見い出し、その抗血清およびモノクロナール抗体を作成し抗体が鞭毛運動装置の運動を阻害し、また、蛍光抗体法を用いてMIPPが鞭毛基部で存在することを明らにした。即ち、精子鞭毛運動調節部位が鞭毛全体でなく特定の部位にあることを初めて明らかにした。◇海産魚および淡水魚では、外部浸透圧増減の繰り返しが精子鞭毛運動の開始・停止の繰り返しを引き起こすという貴重な発見がなされた。また、浸透圧の増減は精子内のK^+濃度及びpHの増減を引き起こし、この細胞内変化が鞭毛運動装置に直接作用し精子運動を調節していることが示唆された。更に、多機能型プロテアーゼ(プロテアソーム)が精子運動性を調節していることを初めて示すことが出来、その作用機序および鞭毛における分布について蛍光抗体法,生理生化学的手法を用いて明らかにした。◇精子活性化機構については、ニシン卵由来のニシン精子活性化物質(HSAPs)の完全精製に成功し、cDNAクローニングをほぼ完了した。現在HSAPsの受容体および細胞情報伝達機構についての解明を始めている。◇精子走化性に関しては、ユウレイボヤで卵より精子活性化及び誘引能を持つ精子活性化走化性物質(SAAP)を見い出し、その精製をほぼ完了した。精製物質は常に精子活性化能と走化性能を持つことが、また、精子活性化にはCa^<2+>とcAMPが、精子走化性にはCa^<2+>のみが必要であることが明らかとなった。即ち、1つの分子が両方の作用を兼ね備えているが、2つの機能は全く異なった機構のもとに制御されているという初めての証拠が得られたことになる。
著者
稲葉 奈々子
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

パリで住宅への権利運動を中心とした争議に参加する都市底辺労働に従事する移住労働者に対して聞き取り調査を行った。福祉国家型の社会統合機能が弱体化するなかで、貧困層の社会権行使は、当事者の当該社会での社会的地位を決定する重要な要素となる。フランスでは、労働運動など、かつて争議を担った主要な社会運動が衰退しており、労働者コミュニティも機能せず、貧困問題への対応が個人化する傾向にある。こうしたなかで1990年代以降活性化してきた社会的排除を争点とした新しい争議は、社会的排除社会といわれる現代社会における社会統合のあり方を考察する上で重要である。本調査では、争議への参加は、移民出身者の場合に出身コミュニティによる規定の度合いが大きいことが明らかになった。当事者のアイデンティティの準拠先が出身コミュニティにある場合には、フランスにおいて経験する社会的排除が、個人的責任として自己認識されない傾向にあることは、前年度までの調査で明らかになったことだが、今回の聞き取り調査では、職業や家族構成が与える影響についても聞き取りを行った。非正規滞在移民については、フランスでの争議の経験が、出身国に帰還したのちに及ぼす影響についても調査を行った。とくに争議の中心を担うマリ人について、バマコにおいて聞き取り調査を行った結果、フランスの出身コミュニティとのつながりを保ち続けているソニンケの場合は帰国後も社会統合が比較的容易であるのに対して、出身コミュニティと切り離されている者の場合、争議をへて獲得したフランスからの資源がまったく得られなくなり、マリにおいても社会的排除を経験していることが分かった。
著者
服部 英雄 稲葉 継陽 春田 直紀 榎原 雅治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

文献資料のみに依拠してきた従来型の歴史学の隘路を切り開くべく、地名を史料(歴史資料)として科学的に活用する方法を確立した。地名を網羅収集する作業を進め、文字化されていない未記録地名を収集し、地図に記録し印刷した(主として佐賀県および熊本県阿蘇郡)。地名を史料として利用するため、電算化による検索を九州各県および滋賀県で進めた。研究上の環境整備を進めるいっぽうで、地名の歴史史料としての学問的有効性を確認し、拡大する作業を行った。交通に関わる地名、タンガ(旦過)、武家社会を考える地名イヌノババ(犬の馬場)、対外交渉史を考える地名トウボウ(唐房)をはじめ、条里関係、荘園関係、祭祀関係などの地名の分布調査、および現地調査を進めていった。地名の活用によって、研究視野が拡大される例。唐房地名は中世チャイナタウンを示す。従来の研究は対外交渉の窓口は博多のみであると強調してきたが、唐房は九州北部(福岡県、佐賀県、長崎県)、九州南部(鹿児島県)にみられる。一つの港津にトウボウ(当方)のほか、イマトウボウ(今東方)もあって、複数のチャイナタウンがあった。綱首とよばれる中国人貿易商の間に利害の対立があったことを示唆する。福岡・博多は新河口を開削して(御笠川や樋井川、名柄川)、干潟内湖を陸化し、平野の開発を進めた。それ以前には多くの内湖があって、それに面して箱崎、博多、鳥飼、姪浜、今津の港があった。自然環境・立地は類似する。博多のみが卓越していたわけではない。貿易商社たる綱首は一枚岩ではなく、競合した。それぞれが幕府、朝廷(大宰府)、院・摂関家と結びつく。地元では相互が対立する寺社と結びついた。チャイナタウンは多数あって、カンパニー・ブランチを形成した。これは考古学上の成果(箱崎遺跡で中国独自の瓦検出)とも一致する。従来の研究にはなかった視点を獲得した。
著者
鈴木 秀美 山田 健太 砂川 浩慶 曽我部 真裕 西土 彰一郎 稲葉 一将 丸山 敦裕 杉原 周治 山本 博史 本橋 春紀 岩崎 貞明 笹田 佳宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本の放送法は, 放送事業者の自律を前提としているため, 放送事業者が政治的に偏った番組や虚偽の事実を放送して番組内容規制(番組編集準則)に違反しても, 放送法には制裁がなく, 電波法による無線局の運用停止や免許取消は強い規制であるためこれまでに適用されたことがない。結果として, 違反があると, 行政指導として, 実質的には行政処分である改善命令に近い措置がとられているが, このような手法には表現の自由の観点からみて重大な問題があることが明らかになった。日本では現在, 通信・放送の融合に対応するため通信・放送法制の総合的な見直しが行われている。本研究は, 現行法制が内包している憲法上の問題を新しい法制に積み残さないために, 問題点を整理・分析したうえで, ありうる改善策を提示した。
著者
能見 伸八郎 田中 承男 井口 公雄 稲葉 征四郎 橋本 勇
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.15, no.12, pp.1376-1380, 1982-12-01
被引用文献数
13

教室で過去19年間に経験した大腸癌は299例みられ, 粘液癌は34例 (11.4%) みられた. この34症例について, 項目に分けて臨床的に検討を加え, 粘液癌を含む大腸癌全症例と比較した. その結果, 粘液癌は若年者に多い傾向がみられ, 占居部位では右結腸に有意に多発していた (p<0.01). また, リンパ管侵襲が多く (p<0.01), 深達度は全例 ss (a_1) 以上であり, 腹膜播腫陽性例が多くみられた (p<0.025). 5年生存率は, 大腸癌 stage II 症例の71.7%に対して, stage II 粘液癌は39.0%と悪かった(p<0.05).
著者
森 由利亜 稲畑 耕一郎 稲葉 明子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、中国西南部に存在するシャーマニズム(巫教)が中国の様々な宗教的伝統と密接な関係を保ちつつ共存する様が観察される中国西南部について、現地に大量に存在する文献資料に注目し、とりわけ道教との関連を重視しつつ追及するものである。研究成果報告書は、2004年夏の道真県河口郷梅江村張芳頤壇門の地府道場と、河口郷三〓村の楊海安壇門の衝儺活動の現地調査並びに聞取り調査の成果を中心に編集した。前者の地府道場では、壇門の構成や成員などの状況に加え、清微派の法事内容を確認し、具体的に"三天喪葬"法事の次第を一つ一つ確認した。後者の衝儺活動では、8月19,20日に河口郷に赴いて実際に衝儺活動に参加し、複数のデジタルデバイスで儀式を立体的に記録した上で、その後二日をかけて壇門の基本情報と衝儺活動式次第の内容の聞取り調査を行った。この調査を通じて、私たちは現地の研究者と協力しながら、いかにして儀礼の全体を記録し、いかにして当地の職能者とのインタヴューを行うかについての基本的な方法を確立することを得た。しかしながら、今回記録した儀礼の内部構造は、多様な文脈を有する多くの要素を内包しており、それらの分間yくの摘出には本調査は及んでいない。今後は、職能者とのインタヴューを重ねてこれらの儀礼の文脈を明らかにすることを試みたい。
著者
田中 健次 稲葉 緑
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,生活用製品業界における事故回避のために,企業,市民,行政の三者間における事故情報活用システムのモデルを構築した.企業内での設計・運用間でのトラブル情報の共有化構造に,社会全体での事故情報システムを統合したものである.特に市民ユーザの安全意識を高め事故情報やリコール情報を効果的に活用するために,Web利用を含めた事故情報活用システムのプロトタイプを作成,評価した.
著者
森 芳樹 吉本 啓 稲葉 治朗 小林 昌博 田中 慎 吉田 光演 沼田 善子 稲葉 治朗 小林 昌博 高橋 亮介 田中 愼 沼田 善子 吉田 光演 中村 裕昭
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

文法理論の拡張にあたって実用論を援用しようとする試みは少なくない。本プロジェクトでは意味論を諸インターフェイスの中心に据えて、コンテクストと文法の相互関係についての研究を進めた。記述上の対象領域としては情報構造とアスペクト, 時制, モダリティー(ATM)を選択し、一方では, パージングを基盤に置いた構文解析を言語運用の分析と見なすDynamic Syntax(DS)の統語理論的な可能性を検討した。他方では、形式意味論・実用論と認知意味論・実用論の双方の成果を取り入れながらテクスト・ディスコースとコンテクストの分析を進めた。 なお本プロジェクト期間中に、当研究グループから4本の博士論文が提出された。
著者
澄川 喜一 長澤 市郎 小野寺 久幸 岡 興造 寺内 洪 小町谷 朝生 田淵 俊雄 坂本 一道 佐藤 一郎 大西 長利 増村 紀一郎 稲葉 政満 前野 尭 BEACH Milo C FEINBERG Rob 杉下 龍一郎 新山 榮 馬淵 久夫 中里 寿克 ROSENFIELD J 原 正樹 小松 大秀 中野 正樹 手塚 登久夫 浅井 和春 水野 敬三郎 海老根 聰郎 辻 茂 山川 武 福井 爽人 清水 義明 平山 郁夫
出版者
東京芸術大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

本研究プロジェクトは、広く海外所在の日本・東洋美術品の保存修復に係る調査研究の一環として、在米日本・東洋美術品の日米保存修復研究者による共同研究である。我が国の美術品は、固有の材料・技法をもって制作されるが、異なる風土的環境下でどのような特質的被害を生ずるかは従来研究されていなかった。たまたま米国フリーア美術館所有品に修理すべき必要が生じ、本学を含む我が国の工房で修復処置を行った。その機会に保存修復に関する調査研究が実施された。本プロジェクトの目的は、とくに絵画、彫刻、工芸についての保存修復の実情を調査することにあった。具体的には、本学側においては米国の美術館等の保存修復の方法、哲学、施設的・人員的規模等を調査し、フリーア美術館側は我が国の最高レベルの修復技術(装こう)とその工房の実態、すなわち施設、用具、手法、人員等を調査し、相互の研究結果を共同討議した。3年度間の研究成果概要を以下箇条書きで示す。1)フリーア美術館付属保存修復施設をはじめ6美術館(ナショナルギャラリー、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、ゲティー美術館、ロード・アイランド・スクール・オブデザイン付属美術館)の保存修復施設、及び3大学の保存修復教育課程(ニューヨーク大学保存修復センター、デェラウェア大学保存修復プログラム、ニューヨーク州立大学バッファロ-校)を調査した。2)美術館及び収蔵庫並びに付属の研究室、工房は、一定範囲の温湿度(フリーア美術館の場合は温度68〜70゜F、湿度50〜55%、ただし日本の美術品に対しては湿度65%で管理する等、その数値は美術館により若干変化の幅がある)にコントロールされる。我が国の修復は自然な環境下で行われるから、そのような点に経験度の関与が必要となる一つの理由が見いだされる。しかし、完全な人工管理環境下での修復が特質的な材料・技法を満足させるものであるか否かの解明は、今後の研究課題である。3)CAL(保存修復分析研究所)やGCI(ゲティー保存修復研究所)のような高度精密分析専門機関は我が国にも必要である。4)米国の美術館は保存修復施設並びに専門研究者を必備のものと考え、展示部門ときわめて密接な関係をもって管理運営し、コンサバタ-の権威が確立されている。その点での我が国の現状は、当事者の間での関心は高いが、配備としては皆無に近い。5)大学院の教育課程は科学な計測・分析修得を主としながら、同時に物に対する経験を重視する姿勢を基本としており、その点で本学の実技教育に共通するところがある。米国の保存修復高等教育機関のシステムを知り得たことは、本学で予定している保存修復分野の拡充計画立案に大変参考になった。6)保存修復に対する考え方は米国内においても研究者による異同があり、修復対象作品に良いと判断される方向で多少の現状変更を認める(従来の我が国の修理の考え方)立場と、現状維持を絶対視する立場とがある。現状維持は、将来さらに良い修復方法が発見された場合に備える、修復箇所の除去可能を前提とする考え方である。保存修復の理想的なあるべき姿の探求は、今後の重要な国際的な研究課題である。7)それは漆工芸等においてはとくに慎重に検討されるべき課題であり、彼らには漆工芸の基礎的知識不足が目立つ。そのような我が国固有の材料、技法面についての情報提供、技法指導などの面での積極的交流が今後とくに必要であろう。逆に建築分野は彼らが先進している。8)米国研究者は我が国の工房修復を実地に体験し、深く感銘した。それは装こう技術が脳手術のようだという称賛の言葉となって表れた。9)ミーティングにおける主要話題は、保存修復は現地で行われるべきであり、それを可能とする人材養成が必要である。保存修復教育には時間がかかることはやむを得ない、期間として6年位が目安となろう。科学教育は大学で行われるべきだが、日本画に限れば工房教育がよい、などであった。
著者
石沢 昭 秋山 和彦 新井 秀喜 稲葉 徹 浜里 和雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, no.1, 1996-03-11
被引用文献数
1

一般にシステムは床等から絶縁し、外部の接地線(極)とは接地バーやグランドウィンド(GW)と呼ばれる領域を介して一点で接続される。通信システム等では機器の増設が度々行われる。接地線についてはGW等ですべて接続されていることから、接地工事が正しく行われたか否かのチェックが困難であり、目視によらざるを得なかった。本稿ではシステムを運用した(オンライン)状態のまま、接地配線等の正常性を検査する方法について述べる。