著者
甲斐 広文 近藤 龍也 荒木 栄一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.1033-1037, 2015

生体には,外界から曝露される様々な化学的あるいは物理的刺激を感知し,あらゆる環境に適応できるシステムが備わっている.このシステムを最大限に利用した人類の英知の結晶の1つが医薬品(chemical medicine)である.一方,物理的な刺激を応用した医療機器(あるいは医療手段:physical medicine)も臨床の現場で活用されているが,chemical medicineに比較し,その作用メカニズムが分子レベルで解析されているとは極めて言いがたい.ゆえに,著者らはphysical medicineを科学的に評価・検証し,刺激条件を最適化していくことにより,安全かつ効果的な疾患治療法が確立できるのではないかと考えた.<br>本稿は,著者らが創薬研究者のスタンスで,新たな医療機器の開発にチャレンジした約10年間の研究成果を総説としてまとめたものであり,その中でも,特に新しい生体応答刺激(特定条件の微弱パルス電流)について,さらに,その特定の刺激を温熱と併用するという新たな疾患予防および治療法について,基礎・臨床試験の結果をもとに紹介する.
著者
保母 敏行 山田 正昭 鈴木 喬繁 荒木 峻 下山 晃 PONNAMPERUMA Cyril
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.T71-T76, 1981-06-05

アミノ酸光学異性体の同定を信頼性高く行う方法として固定相が互いに光学異性体である2本のカラムを用いる方法について検討した.まず,固定相としてN-ラウロイル-D-バリン-Z-ブチルアミドあるいはN-ラウロイル-L-バリン-t-ブチルアミドをウィスカーウォール型毛管に塗布したカラムを作り,各種アミノ酸の保持指標とその再現性,D体とL体の分離係数などを調べた.更に,両カラムを使い,両固定相の光学活性度決定及び抗生物質グラミシジンJを構成する一部アミノ酸のキラリティー決定を試みた.キラリティーの異なる2本のカラムを使用することの有効性が確かめられた.
著者
渡邊 雅恵 須永 康代 石渡 睦子 荒木 智子 伯耆田 聡子 井上 和久 柳田 千絵 吉岡 明美 清宮 清美
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.112, 2009

【目的】 近年女性の理学療法士(以下、PT)が増えており、埼玉県理学療法士会(以下、県士会)でも会員の約半数が女性である。その中で出産・育児の関係で離職するPTが多いのが現状である。また、女性に限らず労働条件等で転職・離職するPTも少なくない。<BR> 復職支援システム検討委員会は、離職率の低減および離職をした会員が復職できるようシステムを検討していくことを目的にアンケート調査を実施した。<BR>【対象と方法】 2008年10月における、県士会に登録されている会員2168名を対象に郵送調査法アンケートを実施した。内容は基本属性(経験年数、年齢、家庭環境、就労状況)、職場環境(職場形態、人数、収入、残業、制度利用状況)等を多選択方式および自由記載での回答とした。<BR> なお、対象者には、依頼文書にアンケートの目的を提示した上で、無記名調査、データの統計的処理、個人情報の保護等の説明を記載し、調査に同意していただける方のみアンケートを返送していただいた。 【結果】 回答数は960名、回収率は44.3%であった。男女比はほぼ同数。平均年齢は30.5歳で58%が30歳以下であった。就業しているPTは943名(98.2%)、離職中は17名(男1、女16、1.8%)であり、離職中の女性に注目した。16名の平均年齢は30歳でそのうち子ども有りは11名であった。離職の理由は、転居が多く次に結婚・出産・育児・健康上の理由であった。復職希望は、有りが8名、条件付きが4名であった。復職が困難な理由として、託児所の問題が最も多く70%をしめていた。その他に、労働条件、育児の問題、通勤条件があった。託児所に関しては、職場に職員専用託児所はあるがPTは利用できないという回答もあった。県士会に対するアンケートの自由記載として、保育施設の確保、パート・非常勤の求人情報の提供、出産育児に理解のある職場環境づくりがあった。また、それ以外にも職場を長期間休むことにより最新の情報入手困難、次々に変わるシステムを理解するのが困難、知識や技術の低下などがあり、それらに対するフォロー体制を作ってほしいという要望が見受けられた。<BR>【考察】 今回アンケートに回答して下さった離職者PTが少なく実態は把握できていない。しかし、就業を継続することや復職するために出産・育児、特に託児所の有無に関する影響が大きいことが再確認できた。<BR> 今回のアンケートの結果を基に、今後県士会としてフォロー体制を作るための研修会など復職支援の検討をすすめていく。
著者
荒木 和子 篠崎 立彦 入江 嘉子 宮澤 幸久
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.305-310, 1999
被引用文献数
4

<I>Bifidobacterium breve</I> YIT4064 (<I>B.breve</I> YIT4064) はマウスにおいて抗ロタウイルスIgA産生を増強し, ロタウイルス感染を防御することがすでに報告されている.今回は乳幼児にみられるロタウイルス感染に対する同菌体の防御効果の可能性について検討した.<BR>某乳児院内の乳幼児10例を投与群として, 1日1回, 50mg (菌数: 5×10<SUP>10</SUP>) の<I>B.breve</I> YIT4064を2日間連続投与し, 同室に在室していた乳幼児9例を対照群とした.試験期間中, 対照群の9例中2例からロタウイルスの排出が認められたが, 10例のビフィズス菌投与群からはロタウイルスの排出は認められなかった.試験期間を7日間ごとに4分割し, 両群のウイルス排出頻度とロタウイルス特異的IgA抗体陽性比率を比較した.その結果, days8~14において, 対照群のウイルス排出検体数は32検体中4検体であるのに比べ, 菌体投与群は38検体中0検体であった.ビフィズス菌投与群ではdays8~14において抗ロタウイルスIgA陽性例が増加しているのに対し, 対象群では調査期間を通じてIgA陽性数の有意な増加はみられなかった.<BR>以上のことから<I>B. breve</I> YIT4064の投与によりIgA抗体産生が増強され, ロタウイルスの排出頻度が有意に減少したと考えられた.
著者
三品 輝男 渡辺 泱 荒木 博孝 都田 慶一 藤原 光文 小林 徳朗 前川 幹雄
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.1256-1279, 1981-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
63
被引用文献数
1 1

前立腺癌の高危険度群を知る目的で, 学歴, 職業, 収入, 信仰, 結婚状況, 性生活, 食生活, 身体状況, 既往歴および家族歴を重点調査目標とする111項目よりなる独自の前立腺癌疫学調査用質問用紙を作製し, インタビュー方式により, 前立腺癌100例と, それらの症例に年齢と現住所を一致させた正常対照者100例とを対象に, matched pair analysis による case-control study を行つた. その結果, 前立腺癌群において正常対照群よりリスクが高いと考えられたのは, 次の諸点であつた (危険率10%以内のものにはアンダーラインを付さず, 危険率5%以内のものにはアンダーラインを付した).1) 職業については管理的職業に従事せず, 軍隊歴がなく, 染料を取り扱つたことがある. 2) 収入については, むしろ低い. 3) 結婚状況については, 早婚で, 結婚継続年数が長い. 4)性生活については, 最初の性交年齢が若く, 青壮年期の性交回数は多いが, 老年期に入ると性交回数が少なく, 性活動停止時期も早い.5) 食生活については, 魚介類はあまり摂らぬ西欧型の食事内容で, 緑黄色野菜の摂取が少なく, 香辛料や塩つぱいものを好む. アルコール, 喫煙はあまり関係がない. 6) 既往歴としては, 前立腺肥大症およびロイマの既往あり. 7) 学歴, 信仰, 身体状況および家族歴には特記すべきものはなかつた.すなわち前立腺癌の高危険度群は, 特に性生活と食生活に特異なパターンを有する人達であることが明らかになつた.
著者
荒木 勉 藤野 陽 田口 富雄 瀧本 弘明 東福 要平 清水 賢巳
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.135-141, 1996-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
8

好酸球増多を伴う急性心膜心筋炎を発症し,ステロイド投与が有効であった若年女性例を経験したので報告する.症例は20歳女性,主訴は胸部圧迫感.入院時軽度の好酸球増多(567/mm3)と心電図で右軸偏位・低電位差・陰性T波を,胸部X線で心拡大と両側の胸水貯留を,心エコー図で心のう水貯留と心筋のび漫性の肥厚と壁運動の低下を,右心カテーテル検査で肺毛細管楔入圧(25mmHg)・右室拡張末期圧(24mmHg)・右房圧(22mmHg)の著明な上昇と心係数(1.9l/分/m2)の著明な低下,およびdip and plateau様の右室心内圧波形を認め,急性心膜心筋炎と診断した.ドブタミンとフロセミドの投与により血行動態は改善したが,心エコー図所見は不変で,好酸球増多がさらに進行(1,215/mm3)したことより,心膜心筋炎の原因に何らかのアレルギー機序が関係しているものと推定し,ステロイド投与を開始した.投与開始後,末梢血の好酸球は速やかに消失し,約3週間の経過で心電図・胸部X線・心エコー図所見ともにほぼ正常化した.好酸球増多および心筋心膜炎の原因を特定することはできなかったが,臨床上心のう水貯留(心膜炎)を主体として心タンポナーデに近い血行動態を示し,治療上ステロイド投与が有効であった点で,好酸球増多と心疾患の関連を考察する上での貴重な症例と考え報告した.
著者
横内 裕人 須田 牧子 池田 寿 藤田 励夫 山口 華代 荒木 和憲 一之瀬 智
出版者
京都府立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

東アジアにおける日本・朝鮮・中国の文化交流を考える基礎情報を得るため、長崎県対馬市に所在する渡来経巻を悉皆調査した。具体的には、豆酘・多久頭魂神社に所蔵される高麗再雕版大蔵経の詳細な目録を作成し、他の寺院等に所蔵される再雕版大蔵経との比較検討を通じて、本経巻の成立・伝来を考察した。その結果、本大蔵経は、おそらくは15世紀頃に印刷され、江戸時代までに対馬に伝来した経巻であり、李氏朝鮮と対馬との緊密な関係の中でもたらされた文化財であることが確認された。
著者
木下 信博 崔 正烈 荒木 滋朗 志堂寺 和則 松木 裕二 日高 滋紀 戸田 佳孝 松永 勝也 小野 直洋 酒向 俊治 塚本 裕二 山崎 伸一 平川 和生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.C0761, 2005

【目的】 <BR> 整形外科病院におけるリハビリ診療の中で、中高年齢者において変形性膝関節症(以下膝OAと略す)は頻繁に見られる疾患である。膝関節の主な働きとして、歩行時に支持性と可動性で重要な役割があり、現在、理学療法士の行う関節可動域訓練や四頭筋訓練及び装具療法などが治療として行われており、予防的視点からのアプローチが行なわれているとは言い難い。<BR> 膝OAは老化を基礎とした関節軟骨の変性が原因で、軟骨に対するshear stressは軟骨破壊に大きく作用すると考えられている。<BR> 新潟大学大森教授らによると、より早期に起こると考えられる、3次元的なscrew home 運動の異常が膝関節内側の関節軟骨に対する大きなshear stressになっている可能性が大きいとの報告がある。<BR> そこで我々は膝OA予防の視点から、歩行立脚時のscrew home 運動を正常化出来る靴を、久留米市の(株)アサヒコーポレーションと共同で作成し、九州大学大学院の松永教授らとの共同研究で、膝OAの予防の可能性を検証したので報告する。<BR>【方法】 <BR> 歩行時の踵接地より立脚中期に、大腿部から見た下腿部の外旋であるscrew home 運動を確保する為に、靴の足底部に下腿外旋を強制するトルクヒールを付けた靴を作成し、患者さんに使用してもらった。<BR> 方法として、(1)約7ヶ月間に亘りO脚傾向のある患者さんに日常生活で、はいてもらい靴底の検証。<BR>(2)九州大学大学院システム情報科学研究所製作の位置測定システムで、下肢の荷重時での下腿外旋運動出現の検証。<BR>(3)トレッドミルにおいて、骨の突出部にマークして、高速度撮影での歩行分析。などを実施した。 <BR>【結果及び考察】 <BR> 大森教授らによると、膝OAの進行に伴い、screw home運動の消失もしくは、逆screw home 運動(膝最終伸展時の脛骨内旋)の出現との報告がある。<BR> そこで、(株)アサヒコーポレーションとの共同開発による、トルクヒールを靴底に装着した靴を作成し検証した。<BR>(1)での検証結果は、通常靴の踵は外側が磨り減り、今回の靴では内側が磨り減り、膝が楽になったとの報告があった。<BR>(2)では、歩行時の踵接地より立脚中期に大腿部から見た下腿部の外旋をとらえる事が出来た。<BR>(3)では、歩行時の立脚期に、前方からの撮影でlateral thrust が3度抑制された結果となった。<BR> 膝OAは、高齢化社会の中でも大きな問題となっている、もともと内反膝の傾向にある人にとっての歩行訓練は、かえって有害であることもあり、今回の靴は、歩行時の立脚時において、下腿部に外旋の力を伝えることで膝OAの発症予防に有用であると考えられた。
著者
荒木 乳根子
出版者
日本老年行動科学会
雑誌
高齢者のケアと行動科学 (ISSN:18803474)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.2-24, 2020 (Released:2021-01-01)

筆者は 1990 年に高齢者のセクシュアリティについての調査研究をして以来,約 30 年にわたって中高年のセク シュアリティおよび高齢者の性と介護に関する調査研究・事例検討を研究テーマにしてきた。本論文では,こ れまでの調査研究について,年代に沿って概要を述べ,そこから見えてきたことをまとめた。さらに調査研究 をベースに上梓した主著を紹介した。中高年のセクシュアリティについては,日本性科学会セクシュアリティ 研究会 (代表:荒木) での調査から夫婦間のセックスレス化が明らかになった。筆者らは性的な触れ合いは人 生の後半の生を豊かにすると考え,セックスレスの要因を分析し,男女双方にとってより良い性生活を築くた めの提案を試みた。高齢者の性と介護については,職員への性的行動,利用者間の好意・恋愛に基づく性的行 動を中心に述べた。前者では,利用者の性的行動をただ問題行動として抑止するのではなく,心理的内的欲求 の理解に基づいて対応する必要性を提案した。後者では,利用者の QOL の充実に軸足を置いて,他の利用者 や家族との調整を図っていく姿勢が望ましいとした。
著者
荒木 裕子 渡部 昌世
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.70, 2012 (Released:2013-09-18)

【目的】ケークサレ(cakes  sales)はフランス由来の塩味のケーキであり、フランスの各地方で親しまれる伝統ケーキである。バターを利用しないバウンドケーキであり、さまざまな副材料を混入することでバリエーションの富んだケークサレが製造できる。近年、わが国でも健康的なホームメイドケーキとして注目を集め、専門の販売店も見られる。本研究では、ケークサレの製法について検討を行った。【方法】1)ケークサレを調製する方法について、出版されているケークサレ料理本のレシピを基にケークサレの基本生地の配合割合と、副材料の種類、配合割合について調査した。2)副材料の添加割合による嗜好性の検討。副材料として、3種の野菜(ニンジン、タマネギ、トマト)を用い、添加割合を基本生地の30%、50%、70%とした3種のケークサレを調製し、嗜好性を比較検討した。3)ケークサレの栄養価を評価するために、一般成分の分析を行った。【結果】基本生地を調査した結果、薄力粉と膨張剤(ベーキングパウダー)、鶏卵、牛乳を用いるものが多く、さらに油脂として、オリーブオイルやサラダ油、マヨネーズ等を添加するレシピも多かった。また、基本生地に添加される材料として各種のチーズが用いられていた。副材料として各種野菜、ハム、ソーセージ、肉類など多くの食材の利用が見られた。副材料の添加割合は高いもので90%、低いもので20%であり、平均するとほぼ添加割合は50~60%を示した。副材料の添加割合を変えて、ケークサレを調製し、官能評価を行った結果、添加率50%が好まれるという結果が得られた。ケークサレと市販焼き菓子と成分値を比較した結果、ケークサレは市販焼き菓子に比べ、水分含量が高く、脂質が少ないという結果が得られた。
著者
荒木伸也 阿部倫之 服部進実
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.453-454, 2014-03-11

反響ツイートを利用してテレビ番組の評判を推定し予測するための手法を提案し、そのシステム構成と実験結果について述べる。本システムでは、TwitterのストリーミングAPIを用いてツイートをリアルタイムに収集しており、反響ツイートの時間帯を視聴前、視聴中、視聴後に分けて、否定的ツイート(デマを含む)と肯定的ツイート(デマ訂正を含む)の出現頻度や出現パターンを捕捉する。特に視聴中については、コマーシャル中における反響ツイートの特性に注目しており、番組終了後の評判に対する寄与度等について考察する。
著者
荒木 奈緒
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.89-98, 2006
被引用文献数
1

目 的<br>羊水検査を受けるか否かを検討する妊婦はどのようなプロセスを辿って意思決定をするのか,その際の意思決定プロセスには一般的な意思決定プロセスとの差異があるのかを知ることにより,どのような援助が意思決定を行う妊婦の支援となるのかを明らかにすることを目的とする。<br>対象と方法<br>対象は,研究参加の同意が得られ,今回の妊娠において羊水検査を受けるか否かを検討した体験を持つ妊婦5名。データ収集には半構造化面接法を用い,妊娠26週~30週の時期の1時点で実施した。得られたデータは面接内容を逐語録としてデータ化した後,内容を質的帰納的に分析した。<br>結 果<br>羊水検査を受けるか否かを決定する際の妊婦の意思決定プロセスを構成するカテゴリーは,≪妊娠の継続を自分に問う≫≪人工妊娠中絶に対する思いを自問する≫≪周囲の意見との照らし合わせ≫≪障害児育児を想像する≫の4つのカテゴリーが抽出された。意思決定プロセスの起点は,≪妊娠の継続を自分に問う≫という形で命に関する自己の価値観を明確化し妊娠の継続を検討することであった。このカテゴリーを起点とし≪人工妊娠中絶に対する思いを自問する≫ことによって自分の人工妊娠中絶に対する考え方を確認し,自分の価値観が周囲の身近な社会で受け入れられるのかを≪周囲の意見との照らし合わせ≫ で十分に観察し,障害という視点から≪障害児育児を想像する≫し,育児の可能性を測った上で,検査を受けるか否かの最終意思決定を行うというプロセスが見出された。<br>このプロセス中で羊水検査を受けた妊婦には,胎児に感じる愛着と五体満足でなければいけないという価値観との間で「揺れ」を感じ,検査結果がでるまで妊娠継続に関する決定を保留とし,検査を受ける決定を行なう過程が存在した。<br>結 論<br>羊水検査を受けるか否かを検討する妊婦は,検査結果による妊娠の継続に関することを最初に問題認識し検査を受けるか否かの検討を行なっていた。このプロセスの中で妊婦は,妊娠の継続から導き出された命の価値観と,胎児に対する感情や障害児育児に対する感情が相反した場合に「揺れ」を感じていた。特に検査結果で異常が指摘された場合に,人工妊娠中絶を受けることを考えている妊婦は,心理的重圧という問題を抱えており細心の配慮が必要である。
著者
大塚 敏子 荒木田 美香子 三上 洋
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.366-380, 2010 (Released:2014-06-12)
参考文献数
56

目的 本研究は,学校教育における効果的な喫煙防止教育を検討するため,高校生を対象に現在の喫煙行動と将来の喫煙意思から将来喫煙者となるリスクを 3 群に分け,喫煙に対する認識,主観的規範,禁煙勧奨意欲など喫煙に関連する要因の特徴の違いを分析することを目的とした。方法 調査は便宜的に抽出された近畿 3 府県の 4 高等学校 1 年生747人(男子311人,女子436人)を対象とした。質問項目は,性別,喫煙行動,将来の喫煙意思,喫煙の勧めを断る自信,喫煙に関する知識,喫煙に対する認識,主観的規範意識,自尊感情,周囲の喫煙状況および禁煙勧奨意欲である。喫煙行動のリスク状況を把握するため現在および過去の喫煙行動と将来の喫煙意思により対象者を 3 群に分類し,各項目の得点の群間による差の検定を χ2 検定,一元配置分散分析および多重比較を用いて行った。結果 各質問項目の平均値は,ほとんどの項目でリスクが高い群ほど,喫煙を断る自信がない,喫煙に対する美化や効用を信じる気持ちが強い,主観的規範意識が低い,周囲に禁煙をすすめる意欲が低いというように好ましくない状況を示した。また,自尊感情以外のすべての項目で女子に比べて男子の方が好ましくないという傾向だった。さらに自尊感情以外の項目で低リスク群と高リスク群,低リスク群と中リスク群の間に有意な差がみられた一方,喫煙に関する知識と禁煙勧奨意欲の項目で中リスク群と高リスク群間に有意な差がなかった。結論 喫煙行動の中リスク群は非喫煙者ではあるが,喫煙に関する知識や禁煙勧奨意欲などの項目で,既に喫煙を開始している高リスク群に近い傾向を持っていることが示唆された。高等学校で行われる集団的な喫煙防止教育ではこれら全体の 2 割を占める中リスク群の特徴を考慮した教育内容が必要であると考えられる。
著者
郭 鐘聲 タン ジェフリ トゥチュアン 荒川 大輝 須田 義大 平沢 隆之 荒木 敬造 水野 晃 堀口 宗久
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.63-67, 2019-03-01 (Released:2019-03-30)
参考文献数
4

本研究では,ナロービークルの操舵安定性の向上を目指し,車体の傾きに従って機械的に追従するパッシブ前輪を有する3 輪ナロービークルを提案し,シミュレーションおよび実車実験により操舵安定性について評価した.実車実験の結果との比較により,提案した車両モデルがパッシブ前輪車両の車両ダイナミックスを正確にシミュレーションできることが確認でき,その車両モデルに基づく実車両の改良により,操舵安定性を改善することができた.