著者
小藪 明生 濱野 強 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.60-63, 2007

近年,われわれの生活の質や幸福感に影響を与える要因として社会的な要因に着目した観点の必要性が提唱されているなかで,地域の社会的要因であるソーシャル・キャピタルに関してその関心が高まっている。そこで本論においては,一般的信頼をソーシャル・キャピタルの代理変数として捉え,先行研究において用いられている一般的信頼に関する位置づけに関して網羅的な検討を行なうことを目的とした。その結果,一般的信頼を用いることの利点として,多様な手法によりある種のソーシャル・キャピタルの把握が可能になるとともに,地域間比較や経年的変化をも加味した研究デザインに基づく検証をも可能になることが考えられた。
著者
藤澤 益夫
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間福祉研究 (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.5-20, 2003-03-25

フランス革命のさなか市民社会の揺藍期にあって,早くもコンドルセは,公正な理想社会実現の基礎条件として,賃銀システムの不確実性を補う社会保険の不可欠なことを予測し情熱をこめて制度を構想唱道した。いま,成熟した高度産業社会のひずみに対抗して,社会秩序の総体的なバランスを回復するために,現代の社会保障政策を考えるとき,その大きなポイントは,惰性と勢力に支配された政治算術をあやつることではなく,転換期の社会形成にかけたコンドルセの確かなロゴスにささえられた熱いパトスを継ぎ,福祉政策の目的と機能を明示して,そこに公平性確保の精気をよみがえらせ,新しいこれからの社会統合の土台をつくりだすべきことを考察した。
著者
藤澤 三佳
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

障害者の芸術活動に関して精神障害を中心として社会学的考察をおこない、人間の自己表現の必要性とその意味を明らかにし、社会からの孤立を強いられがちな人々が、芸術活動を通して、他者からの共感を得て、社会のなかに生きている意識や生の充実感を再獲得する変化のプロセスを明確にした。また、医療・福祉と芸術の分野の交差領域にある芸術社会学の理論枠組みを示し、各領域がどのように融合され、そこで社会学的研究が可能かを明確にした。
著者
藤澤 まどか
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、美術館と公共性の関わりについて、美術館建築による開放性の創出に着目し、来館者の観点も取り入れながら考察することを目的とした。そこで、"様々な人々が訪れやすく、人々や社会に開かれた活動(状態)"を開放性として定義し、美術館の公共性の保障にむけて美術館建築の果たす効果や役割を分析した。そのさい、公共性の理論的枠組みの整理等の理論研究を行うとともに、美術館の事例調査を行い、理論と実践を照らし合わせながら考察した。
著者
大木 優 佐川 浩彦 崎山 朝子 大平 栄二 藤澤 浩道
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告.IM, [情報メディア]
巻号頁・発行日
vol.94, no.24, pp.41-48, 1994-03-11

手話は,聴覚障害者の日常会話言語の一つであり,主に手の動きによって単語や文を表現する言語である.本報告では,筆者らが開発中である手話自動翻訳システムについて述べる.手話自動翻訳システムは手話と日本語とを自動翻訳するシステムである.(1)手の形や位置データをデータグローブを使って入力し,手の動作を認識し,手話を日本語に翻訳する.(2)入力された日本語を手話に翻訳し,3次元コンピュータグラフィックスを使って手話アニメーションとして表示する.
著者
長谷川 広大 松村 彩子 香月 健吾 穐本 昌寛 佐久間 敬之 中嶋 ゆき 宮崎 拓也 藤澤 信 中島 秀明
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1286-1288, 2023 (Released:2023-11-02)
参考文献数
5

A 39-year-old woman with myotonic dystrophy (DM) presented with syncope and was diagnosed with primary mediastinal large B-cell lymphoma, clinical stage IA. PET-CT revealed an upper mediastinal mass with high FDG uptake (SUVmax, 14.8). She had muscle weakness associated with DM, but her performance status was preserved. She was treated with 6 cycles of dose-adjusted EPOCH-R therapy and localized irradiation for the residual mass, without severe adverse events or recurrence of syncope. Patients with DM should be monitored for cardiac events and muscle weakness when undergoing lymphoma treatment.
著者
藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.17-25, 2020 (Released:2020-05-02)
参考文献数
27
被引用文献数
2

日本に理学療法士が誕生してから半世紀を越えた。国家資格として専門職化を進めるために多くの努力が払われてきたが,どの程度専門職としての立場を確立してきたのであろうか。2020年度に20年ぶりとなる養成課程の指定規則が改正されることになったが,臨床実習指導者の要件がより厳格となり,後進育成のためにこれまで以上に有資格者の研鑽が必要となった。これを機に臨床実習の受け入れを終了しようと考える実習施設が出てくるのではないかという危惧が養成校側から聞こえてくる。しかし,自律性の観点からすると,「成員補充の自足性」が専門職を専門職たらしめている重要な要素であることを忘れてはならない。次の時代を担う後進の育成を,養成校と臨床家が連携して担うことが,理学療法士の専門職としての立場を強めるのである。本論文においては,専門職の定義を概観したのち,自律性の観点から理学療法士の専門性を高める方策と,臨床技術を伝承するための臨床教授法について論考する。
著者
富田 裕章 藤澤 洋徳 逸見 昌之
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-16, 2018 (Released:2018-06-15)
参考文献数
22

多重代入法(Multiple Imputation; MI)は多分野の研究で欠測データを解析する手法として使われている.多重代入法は非常に使いやすい反面,欠測値に代入する補完値を生成する際に条件付き分布の同定を誤ると偏りのある推定量を導き得るという欠点がある.本研究では条件付き密度推定から導かれる重みを利用した重み付き最尤推定法(Bias-corrected MI; BCMI)に基づく推定量が,目的変数が欠測する場合の回帰分析においても一定の条件下で一致性があることを確認した.さらに,本手法を予測に適用することを検討し,予測精度を向上させるために密度推定によって求めた重みと補完したデータに対する重み付けパラメータを導入し,交差検証によって値を定めるという改良法(BCMI-CV)を提案した.数値実験によって,BCMI-CVは補完の誤り度合いによらず,安定的に予測誤差を小さくするという挙動を示すことを確認した.
著者
末久 弘 松田 英祐 坂尾 伸彦 宮本 章仁 藤澤 憲司 松野 剛 坂東 健次
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.10, pp.2214-2219, 2017 (Released:2018-04-30)
参考文献数
12

症例は55歳,女性.38度台の発熱,両側手・膝・足関節の疼痛・腫脹を主訴に当院を受診した.胸部CTにて左肺上葉に長径3.5cm大の充実性不整形腫瘤あり,PET検査では強いFDG集積(SUVmax=36.7)を認めた.肺門・縦隔リンパ節転移や遠隔転移を疑う所見は無く,少量の左胸水を伴っていた.四肢X線では,大腿骨や脛骨骨膜部に二重線を認め,大腿骨MRIでも骨幹部の骨膜下に高信号を呈していた.理学所見では,ばち指・趾も認めた.以上より,肺性肥大性骨関節症を合併した肺癌cT2aN0M0 stage IBを疑い,審査胸腔鏡後に開胸で左肺上葉切除+縦隔リンパ節郭清を施行した.術後経過は良好,関節痛は術後1日目から消失した.病理検査の結果,多形癌,pT2aN0M0,stage IBだった.肺性肥大性骨関節症は進行肺癌を合併することが多いが,肺病変の治療により関節炎の症状が劇的に改善することが期待できる.
著者
川端 秀仁 角南 祐子 千葉 幸惠 麻薙 薫 村田 陽稔 柳堀 朗子 片桐 克美 鈴木 公典 藤澤 武彦
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.387-397, 2017 (Released:2017-05-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

【目的】日本人の中途失明原因の第一位は緑内障であり、多くは正常眼圧緑内障と言われている。日本緑内障学会で行った疫学調査(多治見スタディ)によると、40歳以上の日本人の5%が緑内障でありうち72%が正常眼圧緑内障と報告されている。しかし、緑内障発見に有効である眼底検査は、2008年度以降の特定健康診査では、ごく限られた対象者にしか実施されていない。 近年安価で、小型軽量な簡易視野計(Frequency Doubling Technology Screener; FDT)が開発されたため、成人眼検診として出張検診で眼底検査とFDT検査を併用した場合の効果と有用性の検証を行った。【方法】2012年度秋に定期健康診断を実施している某企業の従業員2,392名のうち、同意を得て検診を行った892名(男738名、女154名)に成人眼検診(問診、視力、眼底検査、FDT検査)を実施した。判定は、日本緑内障学会のガイドラインに準拠した。また、緑内障疑いで垂直CD比(0.7≦垂直CD比<0.9)かつFDT検査が陰性の者を継続管理者として区分し、精密検査対象者には眼科受診を勧奨した。【結果】成人眼検診で所見が見られた(要精密検査73名、要医療12名)85名のうち、精密検査を受診した59名から、緑内障7名を発見した。40歳以上の成人眼検診結果では、緑内障有病率(補正後)は1.67%となった。 成人眼検診の緑内障(緑内障疑いおよび緑内障関連病を含む)に対する陽性的中率は89.5%となり緑内障の早期発見に有用であることが判った。 また、眼底検査に所見が無く簡易視野検査のみに所見を認めた11名の精密検査結果は、受診した9名中7名の内訳は緑内障1名、網膜神経線維束欠損1名、黄斑変性症3名、乳頭陥凹拡大1名、軽微な網膜異常1名であった。【結論】成人眼検診は、眼底検査では発見できなかった疾患を簡易視野検査で発見できた。また、緑内障発見に対する感度も高く、精密検査対象者の絞込みができ、有用な検診方法であることが認められた。
著者
安藤 寿康 坂上 雅道 小林 千浩 藤澤 啓子 山形 伸二 戸田 達史 豊田 敦 染谷 芳明
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

児童期と成人期の2コホートによる双生児縦断研究を実施した。児童期は小学5年生(11歳児)約200組に対する質問紙と120組への個別発達調査を行った。読み能力や実行機能の発達的変化に及ぼす遺伝と環境の変化と安定性、リズム行動に及ぼす遺伝と環境の交互作用、きょうだい関係の特殊性などが明らかになった。成人期では社会的達成・心身の健康度などの質問紙調査を実施し約200組から回答を得た。また認知能力の不一致一卵性の安静時脳画像とエピジェネティクスのデータを収集した。下側頭回のネットワークの差が一卵性双生児間のIQ差と関連のあることが示された。向社会性への遺伝的寄与が状況により変化することが示された。
著者
川崎 創 渡邉 周平 藤澤 由佳 平井 俊行 金井 大輔 西願 まどか 隈元 宣行 原 明子 瀧口 梨愛 西 慎一
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.263-270, 2023 (Released:2023-07-28)
参考文献数
35

症例1は58歳女性.血液透析歴は8年.入院5日前からの発熱と右肩痛を主訴に受診しメチシリン感受性黄色ブドウ球菌菌血症および右胸鎖関節炎を認めた.抗菌薬治療を開始したが肩痛は増悪し,第37病日に実施したMRIで右鎖骨骨髄炎と診断した.第66病日に手術目的に高次医療機関へ転院となった.症例2は83歳男性.血液透析歴は6年.入院3か月前に内シャント感染ならびにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)菌血症を認め,内シャント感染巣除去術ならびに血液培養陰性化確認後から4週間の抗菌薬治療により症状の改善を得たが,抗菌薬終了2週間後より炎症反応の上昇あり,血液培養で再度MRSAの発育あり,造影CTで縦隔膿瘍を認めた.縦隔ドレナージおよび抗菌薬治療を行うも改善に乏しく,第17病日に永眠した.透析患者の黄色ブドウ球菌菌血症では,非典型的な部位への播種性感染を念頭に置く必要がある.
著者
我妻 昂樹 鈴木 博人 村上 賢一 鈴木 誠 藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.32-41, 2019 (Released:2019-05-17)
参考文献数
17

〔目的〕フォームに着目した運動学習課題として膝立ち位でのファンクショナルリーチ(FR-k)を取り上げ,Internal Focus of Attention(IFA)のより優れた教示内容を明らかにすることを目的とした。〔対象〕健常青年18名とした。〔方法〕プレテストにてFR-k距離及び重心位置を測定した後,上肢へのIFA教示群(IFA-U)と下肢への教示群(IFA-L)の2群に割り付け,各群30試行の練習を実施させた。また,練習期間終了後の翌日と1週間後における保持テストを実施した。〔結果〕FR-k距離については両群で即時的に有意な変化が認められ,運動学習効果が確認された。また,保持テストにおいて群間で有意な差があり,IFA-L群の方が優れたパフォーマンスを示した。〔結語〕FR-kにおいて,下肢への教示は上肢への教示よりも,運動学習に優れた効果を示した。
著者
鵜川 信 藤澤 義武 大塚 次郎 近藤 禎二 生方 正俊
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.105, no.7, pp.239-244, 2023-07-01 (Released:2023-07-20)
参考文献数
33

ニホンノウサギが主軸を切断できるコウヨウザン植栽苗のサイズを明らかにすることを目的として,様々なサイズ(苗高82~197 cm)のコウヨウザン苗を鹿児島県垂水市のスギ皆伐地に60本植栽し,ノウサギによる主軸の切断を1年間にわたり観察した。実験中に15本の苗木が枯死したが,そのうちの1本は枯死前に主軸の食害を受けていた。生残苗では,25本の苗木で主軸の食害がみられた。苗木のサイズが大きくなるほど主軸の食害がみられなくなり,一般化線形モデルでは,植栽時の苗高が140 cm以上,または,高さ60 cmの幹直径が15 mmを超える苗木であれば主軸食害を受ける確率が10%まで低下することが推定された。したがって,植栽した苗木が成長し,苗高や幹直径がこれらの数値を上回れば,ノウサギによる主軸の切断を受けにくくなると考えられた。
著者
藤澤 修平 吉田 秀典 林 敏浩
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.1-4, 2021-05-22 (Released:2021-05-19)
参考文献数
9

香川大学では,大学低年次における数理・データサイエンス教育を実現するため,基礎科目となる「情報リテラシーB」の開講,ならびに応用科目となる新たな科目提供というつの方策を実施する.本稿では,2020年度に開講した「情報リテラシーB」を踏まえ,今年度(2021年度)に開講する数理・データサイエンス教育の応用科目「データサイエンス×危機管理科目群」の展開について述べる.本学の四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構の協力のもと,「データサイエンスを活用した防災・危機管理」,「レジリエントな社会の構築とコンピューターシミュレーション」,「災害とデータサイエンス」からなる応用科目群を提供することにより,実社会に即した,データサイエンスの学びを深める数理・データサイエンス教育を拡充する.
著者
藤澤 宏幸
出版者
Miyagi Chapter of Japanese Physical Therapy Association
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.8-13, 2023 (Released:2023-05-01)
参考文献数
35

理学療法は,疾病治療とリハビリテーション医療における社会復帰支援のための動作の再建を通して,国民の健康・福祉に貢献している。その成熟を図るためには,哲学・倫理レベル,パラダイム・理論レベル,実践レベルの各階層で議論が必要である。臨床に直結する実践レベルにおいては,臨床研究が進められているものの,パラダイム・理論レベルにおいては議論が十分とはいえない。その意味で,理学療法モデルの構築が課題としてあるが,2000年に国際障害分類試案から国際生活機能分類へ移行した際に,理学療法の治療モデルとしていた機能障害-能力低下-社会的不利の因果モデルは臨床では用いられなくなった。国際生活機能分類における生活機能モデルは専門職間の共通言語としては有用と考えられるが,それに連結できる理学療法モデルが必要であり,その一つに行動制約モデルがある。行動制約モデルは運動行動の階層性に基づいたものであり,行為を射程に入れた動作の再建という意味では有用であるが,疾病治療のためのモデルとしては不足しているところがある。そこで,本論では,理学療法を考えるうえでの疾病の捉え方を,病因,病理,機能不全・機能障害の循環的な関係性によって整理し,疾病治療における理学療法モデルの位置づけを検討する。