著者
藤澤 郁夫
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.69-103, 2005

本論はプラトンの後期対話篇『ポリティコス』を中心に、そこで展開されたプラトンの後期政治思想を正確に辿ろうとするものである。分割・物語・パラデイグマといった分析の手段を統一的に解釈する努力が払われた。
著者
福田 守 樋口 朝美 冨澤 義志 鈴木 博人 川上 真吾 鈴木 誠 藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.46-54, 2016-08-30 (Released:2016-09-07)
参考文献数
6
被引用文献数
2

【目的】端坐位での振り向き動作における眼球運動,頭頸部,胸腰椎および骨盤の回旋の運動協調性について,目標物までの距離,角度,方向による差異を明らかすることとした。【対象】健常若年者20名を対象とした。【方法】目標物はLED光とし正面を0°として同心円上に30°刻みに150°までの計5箇所に設置した。また,目標物の距離は1mおよび2mとし,動作の方向は左右とした。これらの条件を変えた際の振り向き動作を行い,3次元動作解析装置を用いて,頭頸部,胸腰椎,骨盤の回旋角度を算出した。【結果】全ての体節の回旋到達角度において,目標物までの角度の主効果が有意であった。目標物30°の場合は眼球運動と頭頸部回旋角度に相関を認め,60°~150°では頭頸部と胸腰椎に相関を認めた。また,どの体節も動作開始直後から動きがみられ,頭頸部,胸腰椎,骨盤の順で動きが大きくなっていた。【結語】目標物30°では眼球運動と頭頸部回旋が,目標物60°~150°では頭頸部と胸腰椎回旋が相補し合うことが明らかとなった。
著者
藤澤 隆史 土屋 晋 高島 杏菜 原田 甫 長田 典子
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.127, no.4, pp.667-673, 2007-04-01 (Released:2007-07-01)
参考文献数
16

In this study, we evaluated observers' impressions on different styles of make-up applications. We showed the observers various styles of make-up for 3DCG characters, and they scored their impression of the made-up faces. In experiment 1, to identify the impression dimensions for the made-up faces, we had 38 undergraduate subjects evaluate 4 make-up styles using 23 adjectives. As a result, we extracted 2 factors, "external appearance" and "internal feeling" about the characters. In experiment 2, we had 70 undergraduate subjects evaluate 5 make-up styles using 7 adjectives. We applied the “positioning analysis" method for the SD data, and mapped the loading values for make-up styles (targets) and adjectives (scales) on a 2 dimensional plane. The results showed that the adjectives were different for each make-up styles, suggesting that the impression of CG characters can be controlled by make-up using texture synthesis.
著者
藤澤 義武
出版者
森林遺伝育種学会
雑誌
森林遺伝育種 (ISSN:21873453)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.77-81, 2015-04-25 (Released:2020-07-13)
参考文献数
9
著者
前田 里美 早川 由佳理 佐藤 桂子 猿山 沙樹 藤澤 宏幸 星 文彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.14, pp.45-50, 2003 (Released:2004-08-13)
参考文献数
8
被引用文献数
2

本研究の目的は, 筋電図 · 床反力計 · 三次元動作解析装置を用いた膝立ち位における側方重心移動動作中の運動学的機構を明らかにすることである。対象は健常男性10名とし, 可能な限り速く3種類の右方向への側方重心移動動作を行わせ,左右の脊柱起立筋 · 大殿筋 · 中殿筋 · 外複斜筋の筋活動, 圧中心 (center of pressure : COP), 反射マーカーの空間座標データを測定した。COPの軌跡は一度目的方向とは逆方向へ移動し, その後目的方向へと移動した。また, 全課題動作において動き始めに活動が高まる筋は共通しており,右脊柱起立筋 · 左大殿筋 · 左中殿筋 · 右外腹斜筋であった。これは右側の骨盤挙上に働き, COPを目的方向とは逆方向に移動させ, 重力モーメントを大きくし, 速い側方重心移動動作の原動力となっていることが考えられた。
著者
阿部 千恵 吉原 真紀 真鍋 祐子 村上 賢一 藤澤 宏幸
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.130-134, 2004-04-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
6
被引用文献数
3

今回我々は,片麻痺患者を対象(n = 33)に,端坐位において体幹側屈による速い側方への重心移動動作時の圧中心点(center of pressure ; COP)の変化量を測定し,体幹運動機能(頸・体幹・骨盤運動機能検査 ; N.T.P.)との関係を検討した。COP変化量の指標は,動作関始直後にみられる重心移動をしようとする方向と逆方向の振幅(A1)・COP最大移動速度(Vmax),重心移動距離(Dcog)とした。また,独歩可能な患者の10m最大歩行速度を計測し,COP変化量との関係を併せて検討した。結果,側方重心移動時のA1とN.T.P.ステージには有意な相関関係があり,N.T.P.ステージが良好であった患者のA1は麻痺側・非麻痺側への重心移動動作共に大きかった。これより,体幹運動機能が良好な片麻痺患者では速い動作を遂行する為の重力のモーメントを作り出すことが可能であると思われた。最大歩行速度とDcogの関係は麻痺側方向と非麻痺側方向共に有意な相関があり,A1においては非麻痺側へ重心移動を行った場合,相関が認められた。これより,歩行時の体幹機能は骨盤掌上の要素に比べ骨盤帯や下肢の支特性がより影響するものと思われた。本研究より,端坐位における側方重心移動動作時のCOPの解析は,体幹運動機能評価に有用であり歩行能力に関連していることが考えられた。
著者
久保田 雄也 荒木 実穂子 山本 達 宮脇 淳 藤澤 正美 原田 慈久 角田 匡清 和達 大樹 辛 埴 松田 巌 田口 宗孝 平田 靖透 保原 麗 山本 真吾 染谷 隆史 横山 優一 山本 航平 田久保 耕
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.71, pp.1273, 2016

<p>SPring-8 BL07LSUにて分割型クロスアンジュレータと電磁石位相器を組み合わせ、唯一の軟X線高速連続偏光変調光源を実現した。さらにその光源を用いた軟X線領域における光学遅延変調法を世界で初めて開発した。この手法は磁性体の磁気円二色性(MCD)と旋光性を同時にかつ高精度に測定できる。本講演では新規光源と手法の詳細を述べると共に、それを用いた鉄系磁性体のMCD及び磁気光学カー効果(MOKE)測定の結果を報告する。</p>
著者
酒井 達也 A. Jones Mark Smirnoff Nicholas 岡田 清孝 O. Wasteneys Geoffrey van der Honing Hannie 西岡 美樹 上原 由紀子 高橋 美穂子 藤澤 紀子 佐治 健介 関 原明 篠崎 一雄
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.716, 2008

キネシンモータータンパク質は様々な生物において細胞の先端成長及び細胞の形の決定に関与していることが知られている。シロイヌナズナゲノム中には 61 遺伝子のキネシン関連遺伝子が存在することが明らかになっているが、その多くは機能が明らかになっていない。我々はアルマジロリピートドメインを持つ植物特異的キネシン関連タンパク質 ARK1 がシロイヌナズナ根毛の先端成長に関与することを明らかにした。ark1 突然変異体根毛は波状、時に枝分かれの表現型を示し、内側の微小管はより重合して量及び長さが促進されていた。すなわちARK1は根毛内部の微小管量を限定する働きを持ち、これが根毛の先端成長を制御することが示唆された。ARK1 はARK2 及び ARK3 の二つのパラログ含む遺伝子ファミリーをシロイヌナズナゲノム中で形成しており、ARK2 が根の表皮細胞の形態形成に関与することを明らかにした。さらにARK タンパク質と結合する因子として NEK6 タンパク質リン酸化酵素を同定した。nek6 突然変異もまた、シロイヌナズナ表皮細胞の形態形成に多面的な影響を与えており、NEK6 が ARK キネシンに関連した微小管機能を介して細胞の形態形成に関与することが示唆された。
著者
川野 雄基 大槻 圭一 阿部 真人 永谷 直久 志垣 俊介 藤澤 隆介
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会論文誌 (ISSN:13425668)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.67-76, 2020-03-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
18

In this study, we evaluated a phototaxis of pillbugs(Armadillidium vulgare) by using a behavior measurement system consisting of an omnidirectional motion compensation mechanism and a cylin-drical LED display. At the first, to validate the phototaxis of pillbugs against unidirectional light stimulation, we conducted an experiment under continuous light stimulation from one direction for 30 minutes. Subsequently, to evaluate phototaxis performance under the condition that the direction of light stimulus changes alternately, we experimented under three iteration cycles conditions (160 s, 40 s, 10 s). Our results revealed that the pillbugs moved significantly in the direction of weak light intensity, and it suggested that the pillbugs has negative phototaxis. Moreover, we showed that the negative phototaxis became the strongest when the iteration cycle is 160 s, and the negative phototaxis tended to weaken as the iteration cycle became shorter. Also, when the iteration cycle is 10 s, an increase in residence time is found, suggesting that does not necessarily take the routine response behavior according to the situation.
著者
藤澤 功 Erick Chandra 出口 利憲 田島 孝治
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.1285-1290, 2017-06-21

本稿では,環境モニタリングシステムをRaspberry Piと呼ばれるシングルボードコンピュータを用いて実現した結果について述べる.この方法により,測定対象のセンサデータだけではなく画像も取得可能である.しかし,電力の供給が困難な場所では,測定を行うデバイスはバッテリー駆動が必要である.そのような場合は消費電力の問題で長期運用は困難である.そこで,本稿ではデバイスを間欠動作させるハードウェアを試作し解決を図った.結果,一日16回モニタリングを行う場合,モバイルバッテリーで3ヶ月以上動作可能であることが明らかになった.
著者
村井 宏生 藤澤 和郎 岡崎 新太郎 林 仁幸子 河北 亜希子 安冨 素子 眞弓 光文 大嶋 勇成
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.566-573, 2013 (Released:2013-12-11)
参考文献数
8
被引用文献数
8 5

【目的】教職員がアナフィラキシーを理解し初期対応を可能にするための教育は学校生活の安全のために必要不可欠である.教職員に対するエピペン®の実技指導を含む講習の有効性を検討した. 【方法】福井市の小中学校教職員を対象に,食物アレルギーとアナフィラキシーに関する講習とエピペントレーナーを用いての実技指導を行った.講習会前後でアナフィラキシー対応に関する意識の違いをアンケート調査により比較検討した. 【結果】講習前には,エピペン®認知度は97%であったが,使用法まで理解している者は29%にすぎなかった.使用に対する不安は,使用のタイミングが82%と最も多く,使用後の保護者からのクレームが68%であった.養護教諭や現場の教諭がエピペン®を施行するとした割合は,講習前の41%,28%から,講習後には63%,48%と著増した.実技指導により使用への抵抗感が軽減したとの回答が増加した. 【結論】講演会に実技指導を加えることは,アナフィラキシーに対する理解を深め,エピペン®使用の不安を軽減する上で有用と考えられた.
著者
上村 直実 八尾 隆史 上山 浩也 藤澤 貴史 矢田 智之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1733-1743, 2014

種々の感染診断法の偽陰性に伴う「<I>H. pylori</I>陰性胃癌」が少なからず認められるが,<I>H. pylori</I>未感染の胃粘膜に発生する「<I>H. pylori</I>未感染胃癌」の頻度は稀である.「<I>H. pylori</I>未感染胃癌」として代表的なものは,分化型胃癌に関しては八尾らが提唱した胃底腺型胃癌であり,未分化型胃癌に関しては粘膜内の印環細胞癌と考えられる.胃底腺型胃癌は,おもに胃体部に発生する腫瘍で,免疫組織学的には胃型形質を主体とする低異型度の癌であるが,早期に粘膜下層への浸潤がみられるもので,日常の内視鏡診療では萎縮性変化のない胃粘膜の胃体部に存在する小さな粘膜下腫瘍様病変に注意が必要である.一方,未分化型胃癌については,未感染胃粘膜に比較的多くみられる印環細胞癌が代表的なものと思われ,内視鏡的には胃体部の小さな褪色領域に注意すべきであり,今後,症例を集積した臨床的な解析が必要である.<I>H. pylori</I>陰性時代を迎える今後,<I>H. pylori</I>陽性胃癌と未感染胃癌に関する遺伝子レベルでの検討が必要となっている
著者
岡野 好伸 水谷 照一 高塚 昌宏 藤澤 伸悟
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.J328-J337, 2015 (Released:2015-11-25)
参考文献数
21

ハイビジョン放送(HD-TV)サービスでは,放送衛星(Ku-バンド)の他,地上波(UHF-バンド)も搬送波として利用されている.これらの搬送波は,周波数が大幅に異なるため,既存の自己共振型アンテナでは,一元化が極めて困難である.そこで本論文では,衛星放送受信用アンテナのパラボラ反射器に着目,これをUHF-バンド用アンテナ素子として利用することを試みた.具体的には,パラボラ反射器の収束性能に与える影響を低く抑え,かつUHF-バンドでアンテナ素子として利用可能となるように,スロットを開口した.さらに,衛星放送波と地上波の到来方向の不一致を許容できるように,パラボラ反射器背面に付加素子を付与し,地上波に対して提案アンテナが緩指向性を示すようにする技術の開発を行った.
著者
藤澤 宏幸 星 文彦 武田 涼子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.268-274, 2001-10-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
10
被引用文献数
5

本研究の目的は端座位における側方重心移動時の筋活動と運動力学的関係を明らかにすることである。被験者は健常成人男性10名とし,右側へ側方重心移動した際の左右脊柱起立筋および大殿筋活動,圧中心変動,体幹アライメントを測定した。側方重心移動動作を3分類し,各動作とも速度条件を1)可能な限り速く,2)普通の2条件とした。可能な限り速く側方重心移動した場合,各動作とも初期に圧中心は一旦左側へ移動し,その後急速に移動方向である右側へ移動した。普通の速度という指示で側方重心移動した場合は約半数でこのような機構がみられなくなった。このことより側方重心移動動作における動き始めには各動作に共通する機構が存在すること,またその機構が速度依存性に機能することが示唆された。また,制動に関しては移動側の大殿筋活動および反対側の脊柱起立筋活動が重要であった。脊柱起立筋は高位による活動の違いがみられ,特に下部腰椎部は初期の骨盤運動にも深く関与していると考えられた。
著者
本間 秀文 鈴木 博人 鈴木 誠 村上 賢一 藤澤 宏幸
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.323-328, 2013 (Released:2013-07-16)
参考文献数
13
被引用文献数
6 1

〔目的〕前方歩行と後方歩行において,各歩行速度での8筋の筋活動パターンと筋活動量を比較検討した.〔対象〕健常成人12名とした.〔方法〕20 m/min,40 m/min,60 m/min,80 m/minの4つの速度条件で各歩行様式の表面筋電図を測定した.被験筋は大殿筋,中殿筋,大腿二頭筋,大腿直筋,内側広筋,腓腹筋外側頭,前脛骨筋,ヒラメ筋とした.〔結果〕すべての筋で,歩行速度が変化しても,前方歩行と後方歩行の筋活動パターンに類似性は見られなかった.筋活動量は多くの筋で後方歩行の方が前方歩行よりも大きくなった.また,歩行様式にかかわらず,歩行速度の増加に伴い筋活動量は増加した.〔結語〕後方歩行は前方歩行と同様に速度増加に伴い筋活動量が増加する一方で,1歩行周期における筋活動パターンが前方歩行と異なることが明らかとなった.
著者
藤澤 泰雄 矢吹 信喜
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1-I_8, 2012 (Released:2013-03-29)
参考文献数
6

土木分野での三次元モデルの利用は,設計・施工などの各分野の中の一部で利用されているにすぎない.特に設計においては解析が重要な位置を占めているが,発注者も受注者も三次元モデルに慣れていないため三次元モデルの利用は進んでいない.本研究では,鉄道高架橋を対象に,三次元モデルから二次元解析ソフトウェア用の解析データと三次元解析ソフトウェア用の解析データを出力することにより三次元モデルと解析ソフトウェア,IAI日本が発表しているST-BRIDGEとの連携方法を示し,その課題を検討した.
著者
米野 翔太 長尾 みづほ 松浦 有里 星 みゆき 鈴木 尚史 今給黎 亮 小堀 大河 藤澤 隆夫
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.325-333, 2020-08-05 (Released:2020-08-20)
参考文献数
22

【目的】重症喘息に投与されるオマリズマブが呼吸機能を改善させるか否かの評価は未だ確立していない.オマリズマブの投与を必要とした小児喘息で長期観察できた例で呼吸機能の推移を評価した.【方法】オマリズマブ投与後1年以上の小児気管支喘息患者を対象とし,診療録から後方視的に呼吸機能と臨床情報を収集した.%FEV1の変化量/年は投与前後の期間で,すべての測定データを線形回帰分析で算出した.【結果】対象は10例.オマリズマブ投与前の観察期間が1年以上の6例すべてで線形回帰から求めた%FEV1の変化量/年は負の値であった.1年未満の例は評価しなかった.オマリズマブの投与期間は1年9か月~7年6か月で,変化量が正の値となったのが5例,負の値が5例であった.負の例でも投与前観察期間が1年以上の3例では負の値が軽減していた.投与後に変化量が正に転ずる予測因子は同定できなかった.【結論】コントロール不良の喘息児においてオマリズマブ投与は呼吸機能を改善させるもしくは低下の程度を軽減する可能性がある.