著者
藤澤 正一郎 末田 統
出版者
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
雑誌
福祉のまちづくり研究 (ISSN:13458973)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.21-27, 2012-11-15 (Released:2017-06-23)

盲人と視覚障害者のための歩行面触知物(TWSIs)の国際規格ISO23599が2012年3月に発行された。TWSIsは1965年に日本で発明され、その後、盲人と視覚障害者の自立歩行を支援するために世界各国で使用されるようになった。しかし、国によりTWSIの形状とその敷設方法は異なっている。このような事情を反映して発行された国際規格の概説を行う。
著者
藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.11-16, 2011 (Released:2011-02-17)
参考文献数
16

理学療法における機能的制限へのアプローチの手法には,因果論を用いたものと運動学習論を用いた方法に大別できる。その際,理論の骨幹となるのは障害モデルであり,本邦の理学療法においては国際障害分類(ICIDH)が広く普及してきた。しかしながら,ICIDHの改訂版として作成された生活機能分類(ICF)の登場により,生物学的モデルから社会モデルを内包したモデルへの変換が図られている。理学療法における治療・介入プログラムの決定に際してモデルを活用する際には,各モデルにおける思想や作成された時代背景を理解することが必要となる。本論ではこれまで提示されてきた障害モデルを整理するとともに,障害構造分析の手法と,それらを包括する理学療法モデルについて議論する。
著者
藤澤 隆史 クック ノーマン D.
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.35-51, 2006-07-12

和音(harmony)は,メロディ(melody),リズム(rhythm)とともに音楽を形作る重要な要素である.音楽の物理的な音響的特徴とその心理的な印象や感性との関連性について定量的に評価するために,和音性についての評価モデルを構築した.和音性は,(1)協和度(心地よい-わるい,澄んだ-濁った),(2)緊張度(緊張した-落ちついた),さらに長調か短調かといった性質を決定する,(3)モダリティ(明るい-暗い,うれしい-悲しい)から構成される.本資料では,Cook & Fujisawa (2006)において議論されている和音性知覚モデルの詳細について補足的な説明を行う.具体的には,それぞれの和音性曲線(不協和度,緊張度,モダリティ)を得るための心理数理モデルの詳細と,実際に曲線を描くための計算プログラム(C言語・MATLAB)について解説する.
著者
藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.24-31, 2019 (Released:2019-05-17)
参考文献数
26

動作分析は理学療法において最も基本となる評価法の一つであることは論を俟たない。我々は動作分析の体系化を進めており、動作分析を日常動作分析と特定課題分析に大別している。日常動作分析は、起居動作および歩行を分析対象とし、対象者がその状態で普通に行う動作を分析するものである。この場合、正常範囲の運動パターンとの比較により、異常性を判断する。もう一方の特定課題分析は、ある運動機能が重要となる課題を与えて、その運動機能の優劣を判断するものである。臨床においては日常動作分析と特定課題分析を組み合わせながら、日常動作を効率よく行えない原因、すなわち機能低下を分析してゆく。本稿では、我々が体系化を進めている「データに基づいた臨床動作分析」の概要を説明したのち、運動機能低下を絞り込むために重要な特定課題分析について、身体運動学的観点から根拠を示したい。先にも述べたように、特定課題はある運動機能に焦点をあてており、治療へも応用可能という点で重要である。特定課題分析の意義を理解することで、的確な仮説のもとに治療が可能になるということを共有したい。
著者
藤澤 泰充 橋本 守 荒木 勉
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.656-663, 1997-08-01 (Released:2011-07-19)
参考文献数
10

Temporal emission characteristics of light emitting diodes (LEDs) for high-speed repetitive current have been investigated. For this purpose, three commercially available LEDs (red, green and blue LEDs) were prepared. Each LED was driven by a specially designed pulse generator constructed using an avalanche transistor to generate high-speed pulse current. Resultant injection current showed a nanosecond duration pulse with peak height of a few amperes. Time responses and spectral profiles of the emission waveforms were measured with respect to the pulsed current. Resultant light durations of the pulsed LEDs were in the nanosecond range. When the injection current increased, the peak emission intensity of the LED increased without saturation. In particular, the ultraviolet component of the blue LED became evident, resulting in peak emission intensity of 30 m W with duration of 5 ns. Lifetime of the pulse-operated LED was over 1O 10 shots, which corresponds to 140 hours running at repetition frequency of 20 kHz.
著者
竹村 博一 永田 基樹 井上 俊哉 湯川 尚哉 藤澤 琢郎 阪上 智史 友田 幸一
出版者
JAPAN SOCIETY FOR HEAD AND NECK SURGERY
雑誌
頭頸部外科 = Journal of Japan Society for Head and Neck Surgery (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.125-129, 2009-10-30
参考文献数
11
被引用文献数
2

症例は33歳男性,ロケット花火が口腔内で爆発し受傷,頸部腫張を自覚し近医受診,頸部皮下気腫,縦隔気腫,咽頭熱傷の診断にて救急搬送された。当初呼吸状態も安定していたため保存的に治療を行っていたが,左側下咽頭側壁から後壁にかけての粘膜の浮腫が著明となり,また壊死が加わり,進行した。画像診断では,咽頭後間隙を中心とした深頸部膿瘍の形成が認められ,さらに縦隔内にまで進展していることが指摘されたため,頸部外切開によるドレナージを行ったところ,花火の爆発片を咽頭後間隙内に認めたため,これを除去した上,周囲の壊死組織の切除,咽頭裂傷部の縫合と共に,縦隔及び胸腔ドレナージを行った。術後,局所処置,抗生剤投与を継続して行い,改善した。<br>本症例は救命し得たが,開胸による縦隔ドレナージを要する結果となり,受傷当日の頸部外切開等の早期対応が必要な症例であったと考えられた。
著者
藤澤 隆一 高橋 宏明 大関 京子 田中 由美子 奥住 捷子 増田 道明
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.183-188, 2014 (Released:2014-08-05)
参考文献数
8

医療現場における手袋の使用は,接触感染防止の対策上有効かつ簡便な方法として奨励されている.一方,手袋は手の汚染を完全に防止するものではなく,不適切な使用により微生物の伝搬につながる可能性がある.本研究では,医療現場において日常的に使用する手袋着用の手指衛生教育を目的とした新たな実習を試みた.2008~2011年度に微生物学実習を受講した医学部学生を対象とした.手袋着用前の手指の汚染除去法の違いにより,学生を4群に分けた.それぞれ手指の汚染除去を行った後,手袋を装着し30分間作業を行った.手袋装着前および作業前後の手指雑菌をスタンプ法にて採取・培養し,手指の衛生状態を評価した.コロニー数の集計結果から,手袋着用前の手洗い・手指消毒により,手袋装着作業時の手指雑菌数が有意に減少した.芽胞形成菌では,クロルヘキシジングルコン酸塩スクラブを用いた手洗いが擦式アルコール製剤による手指消毒よりも優れていた.また,手袋を外した後の手指消毒は効果的であることが示された.実習の対象となる学生は年度により異なるが,得られた結果に年度間のバラツキは認められなかった.この方法は,手袋使用時の手指消毒のタイミングとその効果が視覚的に得られ,手指衛生に関する実践的な認識に寄与すると考えられた.
著者
本間 謙吾 藤澤 貴央 一條 秀憲
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.658-662, 2018 (Released:2018-07-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

亜鉛は非常に多くのタンパク質の適切な立体構造や活性の維持に必要であり、生体にとって重要な微量元素である。しかしながら、亜鉛が生理作用を発揮する詳しい分子機構や、亜鉛恒常性の維持機構については未解明な点が多く残されている。本稿では、亜鉛制御機構としての小胞体ストレス応答について紹介し、筆者らが研究を進めている筋萎縮性側索硬化症と亜鉛恒常性の破綻の関係について議論したい。
著者
金井 良太 藤澤 逸平 玉井 信也 眞方 篤史 安本 雅啓
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.AGI-013, pp.11, 2019-11-22 (Released:2021-09-16)

In this paper, we propose a hypothesis that consciousness has evolved to serve as a platform for general intelligence. This idea stems from considerations of potential biological functions of consciousness. Here we define general intelligence as the ability to apply knowledge and models acquired from past experiences to generate solutions to novel problems. Based on this definition, we propose three possible ways to establish general intelligence under existing methodologies for constructing AI systems, namely solution by simulation, solution by combination and solution by generation. Then, we relate those solutions to putative functions of consciousness put forward, respectively, by the information generation theory, the global workspace theory, and a form of higher order theory where qualia are regarded as meta-representations. Based on these insights, We propose that consciousness integrates a group of specialized generative/forward models and forms a complex in which combinations of those models are flexibly formed and that qualia are meta-representations of first-order mappings which endow an agent with the ability to choose which maps to use to solve novel problems. These functions can be implemented as an "artificial consciousness". Such systems can generate policies based on a small number of trial and error for solving novel problems. Finally, we propose possible directions for future research into artificial consciousness and artificial general intelligence.
著者
石盛 真徳 小杉 考司 清水 裕士 藤澤 隆史 渡邊 太 武藤 杏里
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.153-164, 2017 (Released:2017-04-27)
参考文献数
36
被引用文献数
5

高校生以上の子どもを2人もつ223組の中年期の夫婦を対象に調査を行い,夫婦間のコミュニケーション,共行動,夫婦間の葛藤解決方略といった夫婦関係のあり方が夫婦関係満足度,家族の安定性,および主観的幸福感にどのような影響を及ぼしているのかをマルチレベル構造方程式モデリングによって検討した。夫婦関係満足度への影響要因の分析では,夫と妻が別個に夫婦共行動の頻度が高いと認識しているだけでは個人レベルでの夫婦関係満足度の認知にしかつながらず,夫婦のコミュニケーションが充実していると夫と妻の双方がともに認知してはじめて2者関係レベルでの夫婦関係満足度を高める効果をもつことが示された。家族の安定性への影響要因の分析では,個人レベルで葛藤解決において夫婦関係外アプローチに積極的であることは,個人レベルでの家族の安定性を高く認知することにつながるが,2者関係レベルで,夫婦が一致して夫婦関係外アプローチに積極的であることは,家族の安定性を低く認知することにつながるという結果が得られた。主観的幸福感への影響要因の分析では,夫婦関係満足度の高いことは,個人レベルにおいて正の関連性を有していた。また,夫婦間の解決において夫婦関係外アプローチに積極的であることは個人レベルでのみ主観的幸福感を高めることが示された。
著者
井波 真弓 齊藤 兆古 堀井 清之 細井 尚子 山縣 貴幸 藤澤 延行 村井 祐一 山田 美幸 熊谷 一郎
出版者
(社)可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.33, no.130, pp.11-21, 2013 (Released:2014-07-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1

『源氏物語』は11世紀初頭に書かれた日本文学の最高傑作であるが,その作者や成立順序などに関していまだに多くの謎を秘めている.本稿では,『源氏物語』を対象として3つの可視化手法を適用し,それぞれの手法や得られる情報について解説する.1つ目は,ウェーブレット多重解像度解析を用いた解析であり,助動詞の「タ形」と「ル形」の変化から作品の語りの変化を可視化している.2つ目は,助動詞の統計解析のためのテキストマイニング法で,得られた助動詞の出現頻度を基に数量化理論Ⅲ類を用いた『源氏物語』の構成の特徴抽出を行っている.3つ目は,作品にとって重要なキーワードを用いた頻度分布のパターン解析によって,『源氏物語』の雅な世界を絵画的に可視化している.
著者
藤澤 昌利
出版者
公共選択学会
雑誌
公共選択の研究 (ISSN:02869624)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.42, pp.20-33, 2004-07-05 (Released:2010-10-14)
参考文献数
22

Reducing public debt is one of the most urgent issues for local governments in Japan. In this paper, I focus on the political aspect of this problem and examine the relationship between fiscal efficiency and gubernatorial turnover in local governments. The main purpose of this paper is to assess the governors' Moral Hazard problem called “Kenpu-Jyunen.” (An epigram: Over ten years of the same administration makes governments corrupt.)Using panel data of 47 prefectures from FY 1976 to FY 1999, I find U-shaped relationship between the governors' tenure of office and the increase of the net debt and/or the primary deficit. More specifically, as the governor's tenure lasts, its administration becomes more efficient for up to twelve years. However when he keeps in power beyond twelve years (over three times of reelections), harmful effects of reelection turn out and it becomes less efficient. In addition, we find administration becomes more efficient as the governor's age of inauguration is high, and as the prefectural assembly is more solid in supporting the governor.This finding suggests that administrative and fiscal discipline in local governments could not work well due to the Moral Hazard when long tenure weakens the pressure of gubernatorial turnover. In the trend toward the decentralization, governors' authority and responsibility are supposed to be intensified. Correspondingly, we should have more profound discussion on the introduction of governor's term limits as a rule of democracy.
著者
永井 亜貴子 李 怡然 藤澤 空見子 武藤 香織
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.554-567, 2022-07-15 (Released:2022-07-13)
参考文献数
24

目的 厚生労働省は,都道府県と保健所設置市への事務連絡で,新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)を含む感染症法上の一類感染症以外の感染症に関わる情報公表について,「一類感染症が国内で発生した場合における情報の公表に係る基本方針」(以下,基本方針)を踏まえ,適切な情報公表に努めるよう求めているが,自治体が公表した情報を発端として生じた感染者へのスティグマへの懸念が指摘されている。本研究では,都道府県・保健所設置市・特別区におけるCOVID-19の感染者に関する情報公表の実態を明らかにする。方法 47都道府県,保健所設置市(87市),特別区(23区)の公式ウェブサイトで公表されているCOVID-19の感染者に関する情報を収集した。2020年2月27日以前,基本方針に関する事務連絡後(3月1~31日),緊急事態宣言期間中(4月8~30日),8月の各時期で最も早い日にちに公表された情報を分析対象とし,基本方針で公表・非公表とされている情報の有無や,公表内容に感染者の特定につながる可能性がある情報が含まれていないかを確認した。結果 個別の感染者に関して情報公表を行っていたのは,都道府県では全自治体,保健所設置市等では84自治体であった。自治体が公表していた感染者に関する情報は,自治体間で項目や内容にばらつきが見られ,公表時期によっても異なっていた。基本方針で非公表と示されている感染者の国籍,居住市区町村,職業を公表している自治体があり,居住市区町村と職業は,感染拡大初期の1~3月に比べて,4月以降で公表する自治体が増加していた。一部では,感染者の勤務先名称や,感染者の家族の続柄・年代・居住市区町村などの情報が公表されていた。結論 自治体が行ったCOVID-19感染者に関する情報公表を調査した結果,自治体間や公表時期によって情報公表に用いられる様式や公表内容に違いがみられ,一部に感染者の個人特定につながりうる情報が含まれている事例があることが明らかとなった。COVID-19の疾患の特徴や感染経路などが明らかになってきた現状において,感染者の個人情報やプライバシーを保護しつつ,感染症のまん延防止に資する情報公表のあり方について,再検討が必要と考えられる。さらに,再検討を経て決定した情報公表の方法や内容について市民や報道機関に丁寧に説明し,理解を得る必要があると考えられる。
著者
松村 彩子 香月 健吾 穐本 昌寛 佐久間 敬之 中嶋 ゆき 宮崎 拓也 藤澤 信 中島 秀明
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.1639-1642, 2021 (Released:2021-12-03)
参考文献数
5
被引用文献数
2

Coronavirus disease 2019 (COVID-19) has emerged as a global pandemic until today, but treatment options remain limited. COVID-19 vaccination is expected to decrease the number of patients with COVID-19 worldwide. In Japan, two types of mRNA COVID-19 vaccine, BNT162b2 (Pfizer/BioNTech) and mRNA-1273 (Moderna), have been approved and administered. However, their side effects remain poorly elucidated. This paper presents two cases of immune thrombocytopenia (ITP) after BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccination. Whether or not ITP is triggered by the vaccination or not is difficult to identify. Further investigation with a large number of cases is warranted to clarify the side effects of BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccination.
著者
オオニシ タクヤ 藤澤 忠盛
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第66回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.292, 2019 (Released:2019-06-27)

世界人口は爆発的な増加傾向にあり、深刻な食糧危機が危惧されている。特に動物性タンパク質の生産には多くのエネルギーが必要なため、既存の畜産業だけでは解決が困難である。そこで注目されているのが昆虫食である。そこでコオロギのメリットに注目し、その大量生産、安定供給のための飼育システムの設計プロジェクトを立ち上げた。本研究では、既に昆虫を食している東南アジア、特にカンボジア、ベトナム、タイにおけるケーススタディーを通して、昆虫食産業としての可能性を「食べる」側の視点、「生産する」側の視点から俯瞰した。特にタイに存在するコオロギファームの視察を通して、多くの可能性を発見した。それは、小規模かつ安定的な生産が可能であること、道具等が小さく誰でも参加が可能であること、ペストコントロール等が簡単であること、立体的飼育による効率化、臭気問題が無いこと、そして近隣農業との共存が容易であることなどが挙げられる。これらのことから、現在研究を進めているコオロギ養殖システムの技術確立と、その効率化による収穫量の安定が、今後のコオロギ食、ひいては、昆虫食の普及の一助となることが確認された。
著者
藤澤 隆史 松井 淑恵 風井浩志 古屋 晋一 片寄 晴弘
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.764-770, 2009-08-15

本稿では,「ヒトは音楽をどのように感じているのか」という観点から脳機能の計測方法およびその実験デザインついて解説する.まず,脳において音楽がどのように認知されているかについて,「音楽の脳機能局在」の観点からその関連部位について概観する.次に,脳機能の計測において用いられている代表的な装置とその諸特徴を紹介し,有効な計測信号を得るための実験デザインについて解説する.最後に研究例を3つ紹介し,音楽認知研究における脳機能計測の有効性を示す.これらの例が示す脳機能計測の有効性は,ユーザが楽しめる音楽インタフェースを開発する上で,音楽を聴取する脳の働きや脳機能計測法に対する正しい理解を深めることが一層重要となることを示唆している.
著者
森本 敏弘 浅井 光輝 笠間 清伸 藤澤 和謙 井元 佑介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_213-I_221, 2014 (Released:2015-02-20)
参考文献数
26

2011年東北地方太平洋沖地震では,津波により防波堤や防潮堤などの港湾施設が甚大な被害を受けた.防波堤や防潮堤の被災メカニズムに関するこれまでの研究・調査により,I. 防波堤前面と背面の水位差に起因して作用する水平力,II. 防波堤の越流水ならびに目地で発生する流水による捨石マウンドの洗掘,III. 浸透流による捨石マウンドの支持力低下に伴うパイピング破壊などが被災の主因として考えられている.本研究では,この中でもIII. の浸透流による防波堤の崩壊現象の解明に焦点をあて,まず基礎段階として,粒子法による地表流(津波)と浸透流の統一解析法を構築した.支配方程式には既往の研究よりナビエ・ストークス方程式と拡張されたダルシーの法則を統一的に記述したものを採用し,粒子法の一種である安定化ISPH法の概念に基づいて定式化している.最後に,簡単な例題を用いて本解析手法の検証を行った.