著者
田中 千晴 佐々木 彩乃 笹山 哲央 小谷 弘哉 藤澤 英二 近藤 和夫 西野 実
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.47-51, 2021-05-31 (Released:2021-09-01)
参考文献数
12

三重県のゴマ圃場で多発するミナミアオカメムシNezara viridula(Linnaeus)の加害が収量および油脂の成分品質に及ぼす影響を調査した。登熟期間を通して成幼虫10頭/株を加害させたところ,精子実重は顕著に低下し,しぼんだ形状の未熟粒が多数発生した。また,精子実重および粒数の減少は登熟後期よりも登熟初期の加害において顕著であった。精子実の油脂の酸価は登熟後期よりも登熟中期に加害された場合に上昇した。無農薬栽培圃場では開花直後から成幼虫が発生し,開花5週目に成幼虫数は最多となった。
著者
永井 亜貴子 李 怡然 藤澤 空見子 武藤 香織
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-111, (Released:2022-05-12)
参考文献数
24

目的 厚生労働省は,都道府県と保健所設置市への事務連絡で,新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)を含む感染症法上の一類感染症以外の感染症に関わる情報公表について,「一類感染症が国内で発生した場合における情報の公表に係る基本方針」(以下,基本方針)を踏まえ,適切な情報公表に努めるよう求めているが,自治体が公表した情報を発端として生じた感染者へのスティグマへの懸念が指摘されている。本研究では,都道府県・保健所設置市・特別区におけるCOVID-19の感染者に関する情報公表の実態を明らかにする。方法 47都道府県,保健所設置市(87市),特別区(23区)の公式ウェブサイトで公表されているCOVID-19の感染者に関する情報を収集した。2020年2月27日以前,基本方針に関する事務連絡後(3月1~31日),緊急事態宣言期間中(4月8~30日),8月の各時期で最も早い日にちに公表された情報を分析対象とし,基本方針で公表・非公表とされている情報の有無や,公表内容に感染者の特定につながる可能性がある情報が含まれていないかを確認した。結果 個別の感染者に関して情報公表を行っていたのは,都道府県では全自治体,保健所設置市等では84自治体であった。自治体が公表していた感染者に関する情報は,自治体間で項目や内容にばらつきが見られ,公表時期によっても異なっていた。基本方針で非公表と示されている感染者の国籍,居住市区町村,職業を公表している自治体があり,居住市区町村と職業は,感染拡大初期の1~3月に比べて,4月以降で公表する自治体が増加していた。一部では,感染者の勤務先名称や,感染者の家族の続柄・年代・居住市区町村などの情報が公表されていた。結論 自治体が行ったCOVID-19感染者に関する情報公表を調査した結果,自治体間や公表時期によって情報公表に用いられる様式や公表内容に違いがみられ,一部に感染者の個人特定につながりうる情報が含まれている事例があることが明らかとなった。COVID-19の疾患の特徴や感染経路などが明らかになってきた現状において,感染者の個人情報やプライバシーを保護しつつ,感染症のまん延防止に資する情報公表のあり方について,再検討が必要と考えられる。さらに,再検討を経て決定した情報公表の方法や内容について市民や報道機関に丁寧に説明し,理解を得る必要があると考えられる。
著者
藤澤 俊明 水田 健太郎 望月 亮 松村 朋香 立浪 康晴 杉村 光隆
出版者
一般社団法人 日本歯科麻酔学会
雑誌
日本歯科麻酔学会雑誌 (ISSN:24334480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.52-65, 2022-04-15 (Released:2022-04-15)
参考文献数
9

【要約】 本邦の歯科医院における全身的合併症発症時の院内救急体制の整備状況と実態を明らかにするため,全国の郡市区歯科医師会および歯科医院を対象にアンケート調査を行った.歯科医院および回答した歯科医師会は392団体(回収率51.2%),歯科医院は392施設(回収率25.5%)であった.救急薬剤を配布している歯科医師会は48.5%,歯科医院における救急薬剤の常備率は74.5%であり,歯科医師会による配布薬剤,歯科医院における常備薬剤ともアドレナリン,アトロピン,ニトログリセリンが多かった.救急薬剤を投与した経験のある歯科医院の割合は5.6%であった.また,医療用酸素,生体情報モニタ,AEDの配備率はそれぞれ82.7%,66.3%,71.5%であった.「救急薬剤を配布している」と回答した歯科医師会190団体のうち,救急薬剤投与法の講習/研修会を開催していた歯科医師会は75.8%であった.また,過去5年間に緊急時対応・救急蘇生法の講習/研修会を開催していた歯科医師会は68.9%を占めた.歯科診療においては,生命に関わる重篤な全身的合併症を予防することはもちろん,その発症時に適切に対応するには,救急薬剤および器材を常備し,研修を怠らないことが医学的および倫理的見地から重要である.歯科医師が現実的に使用可能な救急薬剤の選定とその適正使用についての卒前・卒後教育の充実が今後の課題であると考えられた.
著者
大国 千尋 清水 祥子 木村 紘美 藤澤 義久 堀江 稔 宮平 良満 九嶋 亮治
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.679-684, 2016

<p>アンダーセン・タウィル症候群(Andersen-Tawil syndrome; ATS)は,(1)U波を伴う心室性不整脈,(2)周期性四肢麻痺,(3)外表小奇形を3徴とするまれな遺伝性疾患である。内向き整流性カリウムチャネルであるKir2.1蛋白をコードしている<i>KCNJ2</i>遺伝子の変異が原因で発症する。心電図所見としてQU延長を伴う著明なU波と頻発する心室期外収縮(PVC),2方向性心室頻拍を認め,治療にはIc群抗不整脈薬であるフレカイニドの有用性が報告されている。症例は50代女性,ATSの3徴全てを満たし,QU延長(723 msec)を伴う著明なU波,PVC頻発を認め,遺伝子検索にて<i>KCNJ2</i>遺伝子変異陽性であった。ホルター心電図では総心拍の24%のPVC,2方向性心室頻拍を認め,フレカイニドの導入により9%までPVCが減少,動悸症状も改善した。ATSでは,増高したU波や2方向性心室頻拍が重要な所見となるため,心電図検査,ホルター心電図の解析では,QU時間,U波高,U波幅,PVCの極性などの情報にも着目する必要がある。</p>
著者
正村 啓子 岩本 美江子 市原 清志 東 玲子 藤澤 怜子 杉山 真一 國次 一郎 奥田 昌之 芳原 達也 Keiko MASAMURA Mieko IWAMOTO Kiyoshi ICHIHARA Reiko AZUMA Reiko FUJISAWA Shinichi SUGIYAMA Ichirou KUNITSUGU Masayuki OKUDA Tatsuya HOBARA 山口大学医学部保健学科・医学科 山口大学医学部保健学科 山口大学医学部保健学科 山口大学医学部保健学科・医学科 山口大学医学部保健学科・医学科 山口大学医学部医学科 山口大学医学部医学科 山口大学医学部医学科 山口大学医学部医学科 Faculty of Health Sciences Faculty of Medicine Yamaguchi University School of Medicine Faculty of Health Science Yamaguchi University School of Medicine Faculty of Health Science Yamaguchi University School of Medicine Faculty of Health Sciences Faculty of Medicine Yamaguchi University School of Medicine Faculty of Health Sciences Faculty of Medicine Yamaguchi University School of Medicine Faculty of Medicine Yamaguchi University School of Medicine Faculty of Medicine Yamaguchi University School of Medicine Faculty of Medicine Yamaguchi University School of Medicine Faculty of Medicine Yamaguchi University School of Medicine
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.13-21, 2003-04-30
参考文献数
34
被引用文献数
1

The purpose of this study was to investigate the stress level and resources of student's nurse engaged in clinical practice and examine the relationships between their stress and daily life. Data were obtained by self-report questionnaires from 63 nurse students who had just finished the clinical practice component of a Junior College Diploma Course. A 59-item questionnaire, that investigated the student's nurse stress (55-items) and their daily life (4-items), as well as a demographic data questionnaire was used. Data were analyzed via t-tests and factor analysis. The findings revealed that the student nurses found the time required to write practical records after school and conflicts with nurses to be the most stressful aspect of their clinical practice experience. Factor analysis revealed that the stress level of the students who were living with family was lower than that those living by themselves (p<0.1). In addition, the stress level of the students having interchange with other students' was significantly lower than that of the students having little interchange with other students (p<0.05). These findings suggest that the stress level of nursing students may be decreased through decreased paperwork requirements of the practical records form and by encouraging interchange between students.
著者
日下 宗一郎 五十嵐 健行 兵藤 不二夫 藤澤 珠織 片山 一道
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.119, no.1, pp.9-17, 2011 (Released:2011-06-21)
参考文献数
41
被引用文献数
8 8

江戸時代は,急激な人口増加とその後の人口安定,また陸・海路による交易網の発達によって特徴づけられ,コメや野菜や魚介類を主要な食物としていたと言われる。そのような江戸時代の人々の食性を,遺跡から出土した人骨を用いて実証しようとするのが本研究である。伏見城跡遺跡(京都市)より出土した江戸時代人骨および動物骨からコラーゲンを抽出して,炭素および窒素の安定同位体比を測定した。合計で27個体(男性9個体,女性12個体,子ども6個体)の人骨を分析に用いた。それにより,伏見江戸時代人の食性,その性差を検討することを目的とした。江戸時代の伏見の人々は,タンパク質源を淡水魚類に強く依存した食生活,もしくは陸上生態系から得られるC3植物と海産あるいは淡水魚類などを主たるタンパク質源とする食生活を送っていた可能性を示した。江戸時代の都市では,食生活が米,野菜,魚介類からなり,アワやヒエ,キビなどC4植物の消費が少ないとする古記録を考慮に入れると,後者の食生活像が支持される。また,男性の炭素同位体比は女性よりも高く,より多くの海産魚類や貝類などを摂取していた可能性がある。また,年齢が上がると子どもの窒素同位体比は下がる傾向があり,これは母乳の摂取と離乳の開始に関連していると考えられる。
著者
藤澤 健一
出版者
日本教育政策学会
雑誌
日本教育政策学会年報 (ISSN:24241474)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.150-166, 1995-06-23 (Released:2017-12-29)

The objective of the paper is to examine the logic behind the assimilation educational policy implemented in Okinawa by the Japanese government, from the standpoint of attributes deemed ideal in the teacher to teach in Okinawa. Through this analysis, the significance of Okinawa in Japan's colonial educational policy will be addressed. Past research on Japan's colonial educational policy has not fully investigated the correlation between the policy for Okinawa and the colonial educational policy in general. However, in light of the facts that Okinawa was one of Japan's less developed prefectures and that Okinawa was the test case for government before launching colonialism, with special interest in colonizing Taiwan, the correlation between the government's educational policy for Okinawa and the colonial educational policy is an important issue requiring prudent analysis. Scholars have shown that Japan's victory in the Sino-Japanese War is one of the catalysts for Okinawa to begin its assimilation. This view, however, lacks concrete evidence. I have explained in this paper that the primary cause for Okinawa's changes after the Sino-Japanese War was Japan's occupation of Taiwan with the intent of colonization. The attributes of "ideal teacher" to implement the government's educational policy were those required to disseminate highly civilized education-not simply to teach in a less developed prefecture that lagged behind in assimilating with the rest of Japan. In other words, the assimilation policy of the Japanese government was accelerated in Okinawa to demonstrate a marked difference between Japan and Taiwan, i.e., the "civilized nation" in contrast to the "uncivilized colony" according to the Japanese government. Most research and analysis on Japan's colonial educational policies show that the prototype of Japan's colonial educational policy was the policy carried out in Korea. Although educational policy implemented in Okinawa precceds all other colonial educational policies, it is normally not considered as the test case for colonial educational policy. The educational policy in Okinawa, however, is the earliest example of an assimilation policy. These findings imply that since the logic behind Okinawa's educational policy is closely correlated to the general colonial educational policy, Okinawa's case cannot be dismissed as insignificant. The same holds true for the educational policy developed by the government for Hokkaido-the "premodern colony" of Japan. The inclusion of the government's educational policies for the "premodern colonies"-Okinawa and Hokkaido-in the research framework of Japan's colonial educational policies would provide a broader and deeper understanding of the policies.
著者
牧野 義雄 藤澤 浩子
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.147-154, 2001-12-15 (Released:2010-06-08)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

近年, 醤油の消費量が漸減する一方, 嗜好の多様化を反映して加工調味料の需要が増える傾向にある [1] .とくに, 高濃度の天然調味料を含むストレートつゆの需要が増加している.しかし, 微生物の増殖を抑制する成分が希薄であるため, 主原料の醤油から移行する微生物によって容易に腐敗する [2, 3] .さらに, 消費者が食品添加物を敬遠する傾向があるため, 製造者は保存料の使用を控えざるを得ない現状にある.このため, ストレートつゆに対しては, 厳密な衛生管理が必要となる.そこで本研究では, 醤油中に生存する耐熱性菌を分離・同定し, つゆ中での残存および増殖状況を調査した.醤油工場から提供された濃口醤油を100℃で10min加熱し, 市販ストレートつゆの平均値と同じ成分[4] に調製した栄養寒天培地上に塗抹した.出現した2種のコロニーを再度塗抹・培養した.それぞれKP-991およびKP-992株と命名し, 斜面培地上で冷蔵保存した.分離株及び基準株であるBacillus amyloliquefaciens (Fukumoto) Priest et al.IFO-15535, B.subtilis Cohn IFO-13719, B.megateyium de Bary ATCC-14581を以後の試験: に供した.なお, 分離株の生理活性試験と16srDNA解析は, (株) NCIMBJapan (静岡県清水市) に依頼した.既報 [5] に準じて調製した5種の菌株の芽胞懸濁液を90℃で0~45min加熱し, 生存芽胞数を計測した.次に, 野口 [4] の方法でストレートつゆを試作し, 各段階での生存芽胞数を計測した.濃口醤油, 味醂, 上白糖およびグルタミン酸ナトリウムを混合・溶解し, 滅菌濾過して調製した“かえし”2.5mlに, 先に調製した芽胞懸濁液0.1mlを添加し, 80℃で1min加熱した後の生存芽胞数を計測した.鰹節, 宗田節, 鯖節を水道水とともに加熱し, 滅菌濾過して“だし”を調製した.2.6mlの“かえし”と7.5mlの“だし”を混合し, 85℃, 15minおよび90℃, 30min加熱した後の生存芽胞数をそれぞれ計測した.肉汁培地 [6] で前培養した供試菌株を2種の市販ストレートつゆS-AおよびS-B (別に成分分析を実施) に添加して, TN-2612バイオフォトレコーダー (アドバンテック東洋 (株) , 東京) で培養し, 660nmでの吸光度を経時的に測定するとともに, 検量線から乾燥菌体質量 (g・1-1) を算出した.KP-991およびKP-992株の性状をTable1に示した.カタラーゼ陽性を示し, 好気条件下で生育可能な有芽胞桿菌であることから, Bacillus属細菌と考えられた [7] .また, 50℃での生育性, 10%食塩中での生育がともに陽性で, 絶対好気性, 硝酸塩還元陽性を示すことから, 両株はB.subtilisまたはB.amyloliquefaciensである可能性が示唆された [7] .さらに, β―ガラクトシダーゼ陰性およびクエン酸を利用しないことから, B.amyloliquefaciensと同定された [7] .しかも, 16srDNA解析の結果, 両株ともB.amyloliquefaciensとの相同率が最も高いと判定された (MicroSeqTM (Applied Biosystems Japan (株) , 東京) のデータベース) .主な醤油の汚染菌はB.subtilisであると報告されているが [8, 9] , B.aynyloliquefaciensの汚染に関する報告は過去に見当たらない.ただし, この種は以前, B.subtilisに含まれていたため [10] , 醤油から分離されたB.amyloliquefaciensがB.subtilisと報告されていた可能性がある.KP-991およびKP-992株およびB.amyloliquefaciensの基準株は, B.subtilisおよびB.megateriumの基準株よりも熱に対して安定であった (Fig.1) .さらに, 前者の3株は, ストレートつゆの試作品中に最終的に残存することが確認された (Fig.2)
著者
伊藤 怜子 清水 恵 佐藤 一樹 加藤 雅志 藤澤 大介 内藤 明美 森田 達也 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.135-146, 2020

<p>厚生労働省の受療行動調査におけるQuality of life (QOL)を評価する項目について,全国から無作為抽出した20〜79歳の一般市民2400名に対して郵送法による自記式質問紙調査を実施することにより,その国民標準値を作成することを目的とした.さらに,SF-8<sup>TM</sup>, Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9), Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status(ECOG-PS), Memorial Symptom Assessment Scale(MSAS)などとの関連も検討した.分析対象は978部(41.1%)で,性年齢階級別人口統計によって重み付けした40歳以上のQOL指標の標準値は,「体の苦痛がある」33%,「痛みがある」33%,「気持ちがつらい」23%,「歩くのが大変」15%,「介助が必要」3%であった.本研究結果は,今後,受療行動調査を用いて全国的かつ継続的に患者の療養生活の質を評価し解釈していくにあたり,重要な基礎データとなる.</p>
著者
三木 千栄 小野部 純 鈴木 誠 武田 涼子 横塚 美恵子 小林 武 藤澤 宏幸 吉田 忠義 梁川 和也 村上 賢一 鈴木 博人 高橋 純平 西山 徹 高橋 一揮 佐藤 洋一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ed0824, 2012

【はじめに、目的】 本学理学療法学専攻の数名の理学療法士と地域包括支援センター(以下、包括センター)と協力して、包括センターの担当地域での一般高齢者への介護予防事業を2008年度から実施し、2011年度からその事業を当専攻で取り組むことした。2010年度から介護予防教室を開催後、参加した高齢者をグループ化し、自主的に活動を行えるよう支援することを始めた。この取り組みは、この地域の社会資源としての当専攻が、高齢者の介護予防にためのシステムを形成していくことであり、これを活動の目的としている。【方法】 包括センターの担当地域は、1つの中学校区で、その中に3つの小学校区がある。包括センターが予防教室を年20回の開催を予定しているため、10回を1クールとする予防教室を小学校区単位での開催を考え、2010年度には2か所、2011年度に残り1か所を予定し、残り10回を小地域単位で開催を計画した。予防教室の目的を転倒予防とし、隔週に1回(2時間)を計10回、そのうち1回目と9回目は体力測定とした。教室の内容は、ストレッチ体操、筋力トレーニング、サイドスッテプ、ラダーエクササイズである。自主活動しやすいようにストレッチ体操と筋力トレーニングのビデオテープ・DVDディスクを当専攻で作製した。グループが自主活動する場合に、ビデオテープあるいはDVDディスク、ラダーを進呈することとした。2010年度はAとBの小学校区でそれぞれ6月と10月から開催した。また、地域で自主グループの転倒予防のための活動ができるように、2011年3月に介護予防サポーター養成講座(以下、養成講座)を、1回2時間計5回の講座を大学内で開催を計画した。2011年度には、C小学校区で教室を、B小学校区で再度、隔週に1回、計4回(うち1回は体力測定)の教室を6月から開催した。当大学の学園祭時に当専攻の催しで「測るんです」という体力測定を毎年実施しており、各教室に参加した高齢者等にそれをチラシビラで周知し、高齢者等が年1回体力を測定する機会として勧めた。A小学校区内のD町内会で老人クラブ加入者のみ参加できる小地域で、体力測定と1回の運動の計2回を、また、別の小地域で3回の運動のみの教室を計画している。また養成講座を企画する予定である。【倫理的配慮、説明と同意】 予防教室と養成講座では、町内会に開催目的・対象者を記載したチラシビラを回覧し、参加者は自らの希望で申し込み、予防教室・養成講座の開催時に参加者に対して目的等を説明し、同意のうえで参加とした。【結果】 A小学校区での転倒予防教室には平均26名の参加者があり、2010年11月から自主グループとして月2回の活動を開始し、現在も継続している。B小学校区では毎回20名程度の参加者があったが、リーダーとなる人材がいなかったため自主活動はできなかった。2011年度に4回コースで再度教室を実施し、平均36名の参加者があった。教室開始前から複数名の参加者に包括センターが声掛けし、自主活動に向けてリーダーとなることを要請し承諾を得て、2011年8月から月2回の活動を始めた。A・B小学校区ともにビデオあるいはDVDを使用して、運動を実施している。C小学校区では2011年6月から教室を開始し、平均14名の参加者であった。教室の最初の3回までは約18名の参加であったが、その後7名から14名の参加で、毎回参加したのは3名だけで自主活動には至らなかった。2010年度3月に予定していた養成講座は、東日本大震災により開催できなかったが、25名の参加希望者があった。A小学校区内の小地域での1回目の予防教室の参加者は16名であった。大学の学園祭での「測るんです」の体力測定には139名の参加者があり、そのうち数名であるが教室の参加者も来場された。【考察】 事例より、予防教室後に参加者が自主活動するには、活動できる人数の参加者がいること、リーダーとなる人材がいること、自主活動の運営に大きな負担がないことなどの要因があった。自主グループの活動やそれを継続には、2011年3月の地震後、高齢者の体力維持・増進が重要という意識の高まりも影響を及ぼしている。C小学校区の事例で、自主活動できなかった要因を考えるうえで、A・B小学校区と異なる地域特性、地域診断を詳細にする必要性があると考える。リーダーを養成することでC小学校区での高齢者が自主活動できるか検討する必要もある。高齢者の身体状況に合わせて、自主活動できる場所を小学校区単位、小地域単位で検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】 介護予防事業を包括センター、予防事業所などだけが取り組む事業ではなく、理学療法士が地域の社会資源としてそのことに取り組み、さらに介護予防、健康増進、障害、介護に関することなどの地域社会にある課題を住民とともに解決するための地域システムを構築していくことは、現在の社会のなかでは必要であると考える。
著者
田中 一志 荒川 創一 藤澤 正人
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.565-568, 2010 (Released:2011-02-03)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

高齢者の尿路感染症の特徴として,加齢や併存疾患に関連する感染防御能の低下や,前立腺肥大症などの尿路の基礎疾患による排尿機能障害にともなった複雑性尿路感染が多くみられることが挙げられる.また,基礎疾患による日常の活動性の低下や障害などにより尿道カテーテルが留置されていることが多く,これらに生じた尿路感染症は難治性であり院内感染症の原因にもなる.さらに尿道カテーテル留置は無症候性細菌尿が高頻度に認められることとも関係しているが,これらは特別なハイリスクグループをのぞいて抗菌薬投与の適応とはならない.一方で自他覚症状に乏しいことから,時に重症化する場合がある.原因菌については,複雑性尿路感染症の頻度が高いため大腸菌以外の感染も多く,ほとんどで抗菌薬の曝露歴が有るため耐性菌の頻度も高い.治療に際して想定される菌種に有効な抗菌薬を選択する必要がある.また,重症化した場合には,抗菌化学療法に加え,外科的処置およびそのタイミングが重要となってくる.
著者
藤澤 春菜
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.122-127, 2021-02-15

私は地域包括支援センターで保健師として働く傍ら、東京都杉並区にある老舗銭湯「小杉湯」にも看護師としての力を活かして関わっています。そこでは「小杉湯×医療」という小杉湯スタッフと医療関係者との交流や学び合いの場を開催したり、近隣住民向けのイベントのサポートをしながら来場者とコミュニケーションを取ったりしています。 このように書くと「なぜ銭湯で?」と疑問に思うかもしれません。しかしこれらを行う目的は、本業である地域包括支援センターの活動と重なるものです。本稿では、私が本業の枠を越えて「街の銭湯」に関わる理由をお伝えできたらと思います。