著者
関根 達人 榎森 進 菊池 勇夫 中村 和之 北野 信彦 深澤 百合子 谷川 章雄 藤澤 良祐 朽木 量 長谷川 成一 奈良 貴史
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中世・近世の多様な考古資料と文献史料の両方から、津軽海峡・宗谷海峡を越えたヒトとモノの移動の実態を明らかにすることで、歴史上、「蝦夷地」と呼ばれた北海道・サハリン・千島地域へ和人がいつ、いかなる形で進出したかを解明した。その上で、「蝦夷地」が政治的・経済的に内国化されていくプロセスを詳らかにし、そうした和人や日本製品の蝦夷地進出が、アイヌ文化の形成と変容にどのような影響を与えたか考察を行った。
著者
藤澤 和子
出版者
大和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、公共図書館において知的障害者の図書館利用や読書支援を進めるための合理的配慮のあり方について、公共図書館で実証的に検証し、具体的内容と方法を明らかにすることである。本研究の2年目にあたる平成29年度は、スウェーデンの公共図書館等で取り組まれている知的障害者への読書支援サービスについての先行事例を収集した。さらに、28年度に調査した図書館利用についての当事者のニーズ調査をもとに検討した合理的配慮の事項を協力図書館4館において検証を進めながら実践した。①図書館利用のためのわかりやすい配慮については、知的障害のある利用者が声が出たり落ち着けないときや代読に利用できる個室の設置、ピクトグラムによる配架表示、わかりやすい利用案内の制作、図書館に来館する知的障害者に対する一般利用者の理解を促すためのポスター制作を行っている。②わかりやすい図書や視聴覚メディア資料については、LLブック等を収集したわかりやすい図書コーナーを設置して、利用状況の調査等を実施した。コーナーの設置によりLLブック等の貸し出し件数の増加が示され、コーナーの効果が明らかになった。③職員によるわかりやすい対応やサービスについては、読書サポート講座を実施して参加者へのアンケート調査を行った。講座は、図書館、福祉施設や事業所、学校、一般市民を対象に、知的障害者の読書支援のための基礎的知識と代読や読み聞かせの技能を学ぶ内容で、大阪と奈良の3館、東京1館で開催し、1館につき6講座を設けた。講座を受講して知的障害者への読書支援についての関心が深まったという参加者の回答が99%に及び、講座の必要性が明らかになった。知的障害者に図書館見学と読み聞かせ等のサービスを行う図書館体験ツアーを実施し、当事者から好評を得た。
著者
村上 信 濱野 強 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.43-50, 2007

2005(平成17)年6月に改正され, 2006(平成18)年4月より施行された介護保険法では「地域」を重視し,「地域包括ケア」の考え方が基本的な方向性として示されている。こうした「地域包括ケア」システムを実効あるものにするためには,その一端を担うケアマネジャーのケアマネジメント力の能力の向上が大いに寄与するものと考えられる。そこで本稿においては,筆者がスーパーバイザーを担当した支援困難事例に対する事例検討会で取り上げられた事例の分析を通して,主任ケアマネジャーが直面している高齢者ケアマネジメントの現状について考察を行い,今後の具体的な課題に関して検討を行なうことを目的としたものである。その結果,「潜在化しているニーズ」をもつ利用者を中心に,利用者とケアマネジャーが共通のニーズを合意できないままに,「利用者との相互作用」に困難を来しているところにあると考えられた。今後はこうした要因の解決に対して有効となる支援プログラムの構築が求められるとともに,スーパービジョン体制をより展開していくためのスーパーバイザーの育成についても検討していく必要があることが考えられる。
著者
藤澤 秀幸 フジサワ ヒデユキ Hideyuki FUJISAWA
出版者
清泉女子大学人文科学研究所
雑誌
清泉女子大学人文科学研究所紀要 (ISSN:09109234)
巻号頁・発行日
no.36, pp.67-79, 2015

幸田露伴における死と救済は仏教的である。彼の場合、現世で死んだ人を救済する方法は転生である。この発想は伝統的で、新しくない。人間の世界から人間の世界への転生は水平方向への転生である。 他方、泉鏡花における死と救済には二つのパターンがある。一つは、死にそうな状況からの救済である。これは露伴には見られない特徴である。これは、年上の美しい女性によって救済されたいという鏡花の夢から生まれた鏡花文学の基本構造である。二つ目は、人間の世界での死が異界への転生によって救済されるというパターンである。この発想は新しい。これは垂直方向への転生である。 露伴と鏡花は対照的であるが、鏡花は露伴を超えていた。 The conception of death and relief in Rohan Kouda is like that of Buddhism. In his case, the method to give relief to a dead person in this world is through transmigration. This idea is traditional and is not new. Transmigration from the human world to the human world is transmigration in a horizontal direction. On the other hand, the conception of death and relief in Kyoka Izumi includes two patterns. One is relief from the situation of apparent death. This is a characteristic not to be seen to Rohan. This is a creation of the Kyoka literature that came out of a dream of Kyoka who wanted to receive relief from an older beautiful woman. The second is a pattern in which death in the human world is relieved by transmigration to a different world. This idea is new. This is transmigration in a vertical direction. Kyoka was in contrast to Rohan, and Kyoka surpassed Rohan.
著者
藤澤 秀幸 佐伯 孝弘 姫野 敦子 藤井 由紀子
出版者
清泉女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

研究会を開催して、研究メンバーの専門分野における「怪異」研究を報告した。「怪異データベース」と「怪異研究文献目録」の作成を行った。平成29年5月に笠間書院から『日韓怪異論 死と救済の物語を読み解く』を出版した。研究メンバーの藤澤秀幸・佐伯孝弘・姫野敦子・藤井由紀子の論文4篇、研究メンバーでない日本の研究者の論文1篇、韓国の研究者の論文(日本語訳)5篇、計10篇の論文を収録している。執筆者と論文題目は以下の通りである。藤井由紀子「「火車」を見る者たち─平安・鎌倉期往生説話の〈死と救済〉─」、藤本勝義「『源氏物語』における死と救済」、姫野敦子「中世文学における死と救済─能「鵺」をめぐって─」、佐伯孝弘「死なせぬ復讐譚─『万の文反古』巻三の三「代筆は浮世の闇」を巡って─」、藤澤秀幸「幸田露伴・泉鏡花における「死」と「救済」」、沈致烈「朝鮮王朝小説における死と救済の相関性─「淑英娘子伝」を中心に─」、金基珩「「水陸齋」における死の様相と儀礼の構造的な特徴」、姜祥淳「朝鮮王朝社会における儒教的転換と死生観の変化」、金貞淑「朝鮮王朝時代のあの世体験談の死と還生の理念性」、高永爛「朝鮮王朝後期の韓国古小説に見える女性の死と救済」
著者
望月 博之 藤澤 隆夫
出版者
日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.1166-1174, 2008
参考文献数
22
被引用文献数
2

【背景・目的】これまで未就学児の呼吸器症状の有症率についての検討は十分ではなかった.【方法】未就学児の母親を対象に,呼吸器症状の有症率等について全国規模のアンケート調査を実施した.【結果】発送数1375,有効回答数1168,有効回答率84.9%であった.最近1年間の呼吸器症状では鼻水・鼻づまりが最も多く,乾性咳嗽,湿性咳嗽,喘鳴の順であった.呼吸器症状による医療機関の受診率は高く,湿性咳嗽で91.9%,喘鳴で94.0%であった.いずれの呼吸器症状も8月に最も少なくなり,12〜3月の期間に最も多くなる傾向が認められた.呼吸器症状が悪化する時間帯は,乾性咳嗽と湿性咳嗽では寝入り後,喘鳴では深夜,鼻水・鼻づまりでは昼間が顕著であった.呼吸器症状の出現で困ることは,患児では「症状のために夜眠れなくなる」,保護者では「介抱のために夜眠れない」が多かった.【結語】未就学児の呼吸器症状の有症率は高く,季節的変動や夜間の悪化が認められ,低年齢児を取り巻く呼吸器症状の現状が確認された.
著者
峯松 信明 藤澤 友紀子 中川 聖一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.1865-1876, 1999-11-25
被引用文献数
17

日本人によって発声された英単語音声に対する(韻律的)自動評定を目的として,1)英単語音声からの強勢音節検出の自動化,2)提案する強勢音節検出手法に基づいた強勢/弱勢の「音響的適切さ」評定の自動化,について検討した.強勢音節検出においては,音節を単位としたHMMを構築し,その検出を試みた.その際,着目する音節の単語内位置情報/構造情報/コンテクスト情報を導入することでHMMの精度向上を図り,検出性能の改善について実験的に検討した.その結果,同一方言(本論文ではBritish)内では最もカテゴリー数を増やしたHMMにおいて最高平均検出率が得られ,本論文で検討したHMMの高精度化に対する有効性が示された.一方,強勢/弱勢に対する英語としての「音響的適切さ」評定では,強勢音節検出時における「スペクトル」「パワー」「ピッチ」「継続長」の各ゆう度に対する重み係数を変化させ,最高検出率を示す重み(最適重み)を算出し,日本人話者/母語話者間で比較した.その結果,日本人による英単語音声では,ピッチ重みを大きく,スペクトル重みを小さくすることにより検出率が向上するなど,母語話者による英単語音声には見られない傾向(発音上の癖)が観測され,提案手法の,発音能力評定手法としての有効性が示された.

3 0 0 0 日本篇

著者
藤澤衛彦編
出版者
中央美術社
巻号頁・発行日
1929
著者
藤澤 博康
出版者
広島大学英文学会
雑誌
英語英文學研究 (ISSN:02882876)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.27-38, 2012

Since the appearance of Alain Corbin's The Foul and The Fragrant, many studies on the history of senses have been published. Some Shakespearean scholars have just begun to learn from these studies and apply their achievements to the interdisciplinary studies of Shakespeare, along with the study of the topos, the "banquet of sense" in Elizabethan poetry. This essay first glimpses Francois Quiviger's point that "smell was considered an intermediary sense between the corporeal world of taste and touch and the spatial universe of sight and hearing," and that the smell gradually comes to be associated with the brain, which improved its status in the hierarchy of the five senses. As for the importance of sight in the Age of Enlightenment, the essay also mentions Constance Classen's study of the shift in the use of roses from the material of perfumes to the objects of visual appreciation. It never forgets to remind us of Stuart Clark's remark that the sixteenth century English poetry was the rich source of suspicions about the eyes." Owing much to these historians' points, this essay focuses on the representations of the sense of smell in William Shakespeare's The Sonnets and tries to show how this sense functions within the poetry.Next, this essay analyses many sonnets designed to praise the beautiful appearance and virtues of the young man through the sense of sight in The Sonnets. Despite the numerous admirations of him, the poet similarly expresses his anxiety of failing to understand the young man's heart and his disgust at the excessive ornaments and luxurious clothes that take away from the young man's natural beauty. These are the cases, this paper maintains, that prove the poet's disbeliefs in sight.Given this, the essay goes on to suggest that the poet is very confident in what he perceives not through the eyes but through smell throughout the work. For the poet, the young man is the example of the smell by which he can judge everything according to whatever odour it emits. In terms of the advantages of the smell in The Sonnets, this essay chooses the topic of distillation as a typical instance of the poet's distinguishing genuine nobleness from vulgar fellows. We can extract the essence of, say, roses, by distillation. The poet is keenly aware of the mysterious process of the art and makes the most of it to emphasise the difference of the noble nature of the young man compared with others. He also employs the theme as a strategy for running counter to Time' s destruction.Following the discussions about the young man, the paper shifts its focus from him to the dark mistress, the other love of the poet. It calls our attention to the surprising fact that the poet never praises the dark mistress' smell throughout The Sonnets. Although the poet attempts to use the topos of a "banquet of sense" in order to represent her, he later declines it, saying that no senses "desire to be invited / To any sensual feast with thee alone." ('Sonnet 141' 8) Taking that fact into account, this essay argues that it is true that no senses including the sense of smell fascinate the poet, but that 'Sonnet 141' is dramatically successful in completely subverting the poet's evaluation of the dark mistress by making him confess honestly, "But my five wits nor my five senses can / Dissuade one foolish heart from serving thee..." (Sonnet 141' 9-10)Besides the examples that deal with sight and smell, the paper points out that representations of taste and touch in The Sonnets are mainly concerned with the dark mistress, not the young man, and that in those sonnets dedicated to her, the poet does not hesitate to openly express his carnal desire or hopes to touch her while he merely worships or fears the betrayal of the young man in the other sonnets of the work.In conclusion, the essay maintains that sense of smell makes the most of its "intermediary" nature classified just between the high sensorium such as seeing and hearing and the low sensorium like taste and touching and supplements the defects of sight that often fails to perceive the young man's heart. It is true that the poet may oscillate between the high and the low sensoria which the two main masks in The Sonnets, the young man and the dark lady, respectively correspond to. However, he firmly believes in the power of sense of smell in that he can intuitively sense through it what the essence and truth is represented in the form of the young man.
著者
藤澤 益夫
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間福祉研究 (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-48, 1998-12-25

社会保障ないし福祉社会のように理念としても制度としても成立後まだ歴史が浅く,しかもいまなお展開のしきりな分野については,その実体と機能は日々揺れ動いているに等しい。そこで,社会保障評価の土台を固めるフレームワークのひとつとして,これまで意外におろそかにされてきた社会保障/福祉社会をめぐる基本的な諸用語の生まれ育った経緯を探るエティモロジカルな発生論的考察をあらためて試みた。こうして,現代の福祉概念をささえているキーワードが,社会経済的環境条件の変遷とたがいにからみあいながら,変容を重ね定着してゆく道筋を具体的・沿革的に回顧し追跡することにより,社会保障/福祉社会の現座標にたいする認識の錯綜を整理して,その役割への理解を深め,ひいては将来像の堅実な展望に資そうとするものである。
著者
藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.14-22, 2010 (Released:2010-02-23)
参考文献数
31

肩関節の形態と機能は,進化の歴史を紐解くことにより,繊細な機構であることが明らかとなる。本論文では四足歩行から二足歩行へ移行し上肢が自由となったこと,そのことが重力との闘いを招来することになり,最後には大きな可動域をもつ自由な腕を得たことを概観したい。そのうえで,ヒトの肩関節の身体運動学的特徴,肩関節疾患と機能障害,機能障害に対する理学療法について最近の知見をまじえ解説する。
著者
藤澤 太郎
出版者
桜美林大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、近代日本語文学圏内各地方の地域的な文学活動の研究、及び地域間の文学的交流の研究と中央の詩歌俳句結社のネットワーク網の研究とを結びつけ、中央・地方の相互交流・影響関係について明らかにしていくことを目指すものである。資料調査・収集については、事前・事後調査を合わせて47都道府県立の図書館・文学館について基礎的な作業を終えており、順次収集した資料の整理分析と成果公刊への準備を進めている。現時点では、山形県の詩人を中心としたネットワークについて『山形・詩人と詩誌の系譜―鈴木健太郎と『血潮』・『詩脈』』にまとめた他、各地の詩歌俳壇のネットワーク等に留意した成果物の準備を進めている段階である。
著者
赤林 英夫 妹尾 渉 敷島 千鶴 星野 崇宏 野崎 華世 湯川 志保 中村 亮介 直井 道生 佐野 晋平 山下 絢 田村 輝之 繁桝 算男 小林 雅之 大垣 昌夫 稲葉 昭英 竹ノ下 弘久 藤澤 啓子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

本研究では、経済格差と教育格差の因果関係に関するエビデンスを発見するために、親子を対象とした質の高い長期データ基盤を構築し、実証研究と実験研究を実施した。さらに、経済格差と教育格差に関する国際比較研究を実施した。具体的には、テスト理論により等化された学力データを活用し、学力格差と経済格差の相関の国際比較、親の価値観が子どもの非認知能力に与える影響の日米比較の実験研究、子ども手当が親の教育支出や子どもの学力に与える影響に関する因果分析等を実施した。
著者
金森 敬文 藤澤 洋徳
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-18, 2017-11-14 (Released:2018-04-06)
参考文献数
23

経験推定可能なダイバージェンスに基づいた統計的推論の研究が盛んになっている.本論文では,経験推定可能性に加えて,相対アフィン不変性を課した場合に,主に焦点を当てている.その二つの性質をみたすダイバージェンスは,ある種の仮定の下ではヘルダー・ダイバージェンスだけであると証明することができる.そして,そのダイバージェンスと良く知られたブレッグマン・ダイバージェンスとの共通部分を考えると,たった二つのパラメータをもつ簡単なダイバージェンスを得ることもできる.また,ヘルダー・ダイバージェンスの上で,拡大された統計モデルを利用したパラメータ推定も考えている.それによって,通常の統計モデルと同時に外れ値の割合をも推定することを可能にしている.加えて,通常の統計モデルのパラメータ推定は,ロバスト統計で有効とされているガンマ・ダイバージェンスに基づいた推定となり,そのダイバージェンスが内在している様々な有効な性質を,そのまま使えることになる.
著者
岩﨑 正則 福原 正代 大田 祐子 藤澤 律子 角田 聡子 片岡 正太 茂山 博代 正木 千尋 安細 敏弘 細川 隆司
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.42-50, 2023 (Released:2023-02-15)
参考文献数
24

男性労働者における主食の重ね食べ(1回の食事で炭水化物の供給源となる主食を2種類以上同時に食べること)と歯周病の関連を明らかにすることを目的に横断研究を実施した.福岡県内の一企業で行われた定期健康診断にあわせて実施した歯科健診,食事調査,質問紙調査に参加した539名の男性従業員(平均年齢47.9歳)のデータを用いた.歯科健診では10歯の代表歯の歯周ポケット深さを計測した.食事調査では1日あたりの炭水化物摂取量を推定し,摂取量上位20% を多量摂取と定義した.そして4 mm以上の歯周ポケットを有する歯数を目的変数とし,主食の重ね食べの頻度「1日1食以上」「1日1食未満」を説明変数とする負の二項回帰モデルを用いて両者の関連を解析した.さらに,主食の重ね食べの頻度が高い者には炭水化物を多量に摂取している者が多く,歯周病へ影響を与えているとの関連を仮定し,一般化構造方程式モデリング(GSEM)を用いて3者の関連を分析した.解析対象集団の14.8%が1日1食以上の主食の重ね食べをしていた.主食の重ね食べの頻度が1日1食未満の群と比較して,1日1食以上の群では4 mm以上の歯周ポケットを有する歯数が有意に多かった(発生率比=1.47,95%信頼区間=1.10–1.96).GSEMを用いた分析の結果,主食の重ね食べの頻度が高いことは炭水化物の多量摂取と関連があり,主食の重ね食べが歯周病に与える影響の一部は炭水化物の多量摂取を介していることが示された.