著者
野副 朋子 中西 啓仁 西澤 直子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.15-22, 2014-01-01 (Released:2015-01-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1

鉄はすべての生物にとって必須な金属元素である.鉄は土壌中に豊富に存在するが,水に溶けにくく植物には利用されにくいため,植物は鉄を獲得するための戦略を進化させてきた.イネやトウモロコシなど主要な穀類の属するイネ科植物は「ムギネ酸類」と呼ばれるキレーターを根から分泌して土壌中の三価鉄を可溶化し,「鉄・ムギネ酸類」として吸収する.ムギネ酸類生合成酵素遺伝子の単離をはじめとして「鉄・ムギネ酸類」吸収トランスポーターの同定,鉄欠乏によって制御される遺伝子の発現にかかわるシス配列や転写因子など,イネ科植物の鉄獲得にかかわる分子が次々と明らかにされた.一方,ムギネ酸類を根圏へと分泌するトランスポーターの同定はなされておらず,残された最大の課題として国内外の多くの研究者がこのトランスポーターの発見にしのぎを削っていた.本稿では,筆者らが世界に先駆けてイネとオオムギから同定したムギネ酸類分泌トランスポーター「TOM1」について紹介するとともに,ムギネ酸類にかかわる遺伝子を用いた鉄欠乏耐性作物の創製に向けた取り組みについても解説する.
著者
中西 啓喜
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
桃山学院大学社会学論集 = ST.ANDREW'S UNIVERSITY SOCIOLOGICAL REVIEW (ISSN:02876647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-15, 2022-09-28

Although the use of shadow education has been positioned as aneducational investment strategy for children, mainly in the sociology ofeducation, recent discussions of relative poverty and child poverty suggestthat it is also a necessity for daily life. However, much of the previousresearch has discussed shadow education only in the context of educationalinvestment strategies and poverty studies, respectively.In this paper, we analyze data from a questionnaire survey of parentswith middle school children conducted in 2019 and matched with eighthgrade academic scores. The results revealed that(1)middle schoolstudentsʼ use of shadow education is divided into two aspects: “educationalinvestment strategy” and “necessities of life,” and(2)academicperformance of children from families with poverty as a reason remainslow. Having been able to present such evidence, this paper will havesignificance as a basic resource for examining the need for out-of-schooleducation vouchers.
著者
橋﨑 孝賢 木下 利喜生 左近 奈々 児嶋 大介 森木 貴司 上西 啓裕 関口 岳人 西村 行秀
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1275, 2015 (Released:2015-04-30)

【目的】Ehlers-Danlos症候群(EDS)は,皮膚,関節,血管など結合組織の脆弱性を引き起こす遺伝性疾患である。今回,複数下肢関節不安定性を有するEDS症例に装具作製を行い,有効な効果を得たので,装具処方の工夫や経過をふまえて報告する。【症例提示】46歳女性。平成9年,スノーボードで転倒,右膝外傷,関節鏡検査し保存的加療を実施。43歳頃より両膝関節に強い荷重時痛が頻発した。平成24年12月,後頚部痛出現し,頚椎すべり症指摘され平成25年7月初旬に手術考慮され当院整形外科受診,EDSを疑われた。8月中旬に手術目的で当院入院。術前よりリハビリテーション紹介となり,翌日頚椎除圧固定術施行。術後歩行時に両側反張膝,右膝外反位が著明となり右膝痛強く,歩行困難となった。歩行獲得のため両側長下肢装具作製開始した。【経過と考察】活動性や美容面を考慮し装具を作製した。当初は膝装具での対応を試みたが荷重時の足関節不安定性が著明となるため長下肢装具(LLB)を選択した。軽量化と強度を考慮し剛性の高いカーボン素材とポリエチレンを使用しチタン素材の支柱と膝継手で連結した。この装具により両膝・足関節の不安定性は除去できたが,右膝外反矯正は不十分であった。さらに膝継手の内側にパッドや足部に内側ウェッジを追加することで外反は矯正され良肢位となり歩行の安定と疼痛や不安定性が除去できた。これにより自覚症状や歩容の改善が得られ独歩で自宅退院した。本症例のように膝関節の不安定性だけではなく足関節や多関節の不安定性が強い場合は,膝装具での矯正が困難な場合が多い。活動性が高い症例においてLLBは外見や重量から敬遠されがちであるが,患者の状態や要望を十分把握するのみではなく,医学的にも適切な装具を医師,義肢装具士らと協力し作製していく必要があると考えた。
著者
西 啓太郎 江原 弘之 岩﨑 かな子 内木 亮介 中西 一浩
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.157-160, 2022-07-25 (Released:2022-07-25)
参考文献数
9

頚肋を有し,他院で胸郭出口症候群と診断された20代男性に対して,医師と理学療法士が協働して上肢痛の治療選択をした.その結果,頚肋による神経および血管の圧迫の可能性が低く,非特異的上肢痛であり,運動器リハビリテーションの適応があると判断した.10回のリハビリテーションとデュロキセチンの内服により,123日目に症状が改善した.集学的な評価が侵襲的治療を最小限に抑えることに有効であった.
著者
苅谷 剛彦 堀 健志 安藤 理 平木 平木 有海 拓巳 漆山 綾香 日下 田岳史 井上 公人 高橋 渉 中西 啓喜
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、公立-私立、大都市-地方という教育における分化の進行を背景に、地方の公立高校のはたす役割はどのようなものかを、ユニークな教育実践に取り組む公立進学校に焦点を当て、実証的に明らかにすることを目的に行われた。地方の公立進学高校は、大都市部の私立中高一貫校と同じ土俵にのって、大学進学競争を強化しようとしているだけなのか。地方のための/地方からの人材形成という機能を、どのようにとらえ、どのように実践しようとしているのか。そして、その成果は、生徒たちの実際の進路形成や価値意識の形成として、どのように現れているのか。本研究では、たんに大学進学の実績を上げることに汲々としている進学高校ではなく、教育改革のねらいにも符合する「プラスアルファ」の教育をも合わせて実践している地方公立高校を中心に取り上げ、総合的な調査研究を行うことによって、これらの問題を明らかにした。研究方法としては、特色のある教育を実践している地方の公立普通科高校を含む、11 校の高校に対する質問紙調査と、12校の高校を対象とした質問紙調査による。質問紙調査においては、同一対象者に対し、継続的な調査を行うパネル調査という方法を用いた。この方法を用いることで、高校時代の教育経験が、卒業後にどのような影響を及ぼしているのかを追跡することが可能になるからである。パネル調査として、高校3年次を対象とした生徒を、さらに卒業後1年目、2年目と二度にわたり追跡した。こうしたパネル調査を用いることで、プラスアルファの教育の効果を、時間をおいてとらえようとしたのである。これらの調査の結果、以下の知見が得られた。(1)地方から大都市の難関大学に進学することにより、地域間再分配政策に賛成しやすくなるというかたちで社会的責任が形成されること、(2)高校時代に学校行事に熱心に参加していた生徒ほど大学で自ら学んだり、成果を発表したりできていること、そして、(3)学校行事には出身階層下位の生徒が参加しやすいことを考慮すると、高校時代の学校行事には、階層下位の生徒が大学で学習しやすい環境を整えるという意味で階層間格差縮小の機能があるということである。これらの知見により、生徒たちの意識の差異を確認することで、高校段階における「プラスアルファ」の教育がその後のキャリア・社会生活(今年度は大学生活)に及ぼす影響を把握できたことになる。
著者
中西 啓 喜夛 淳哉 西尾 信哉 宇佐美 真一 三澤 清
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.145-151, 2022-04-28 (Released:2022-05-24)
参考文献数
17

要旨: 常染色体優性遺伝性難聴家系において遺伝学的検査をおこない, 本人と母に TECTA 遺伝子多型を同定した。 TECTA 遺伝子多型は zona pellucida ドメインに位置しており皿形のオージオグラムを呈することが多いと報告されている。 本人は皿形のオージオグラムを呈していたが, 母は高音障害型であった。 母の経時的なオージオグラムを解析すると, 54歳時には皿形のオージオグラムを呈しており, 加齢とともに高音域の聴力閾値が上昇して高音障害型となっていた。 一方, 母の中音域の難聴の進行度は0.5dB HL/年とほとんど進行していなかった。 これらのことより, zona pellucida ドメインの TECTA 遺伝子変異でも,加齢とともに高音域の聴力閾値が上昇して高音障害型となる可能性が示唆された。
著者
中西 啓喜
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
桃山学院大学社会学論集 = ST.ANDREW'S UNIVERSITY SOCIOLOGICAL REVIEW (ISSN:02876647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.117-136, 2022-02-23

Class size reduction is a hot topic in policy.Since2021,elementaryschools will gradually be phased in to35students per class for all grades.However,most sociological studies examining the effects of class sizehave been set on students,such as the correction of academicachievement gaps.It is not only students who are affected by thereduction in class size,but teachers as well.In particular,it would bemeaningful to examine whether the reduction in class size has a positiveeffect on the busyness of teachers,which has become a social issue inrecent years.Therefore,I will empirically clarify the question “Does classsize reduction reduce teacher work hours? “by analyzing elementary schoolteacher data from TALIS2018.In this paper,I used decision tree analysis as the analysis method.Byusing decision tree analysis,it is possible to extract non-trivial informationfrom the data.The analysis of constructing hypotheses from previousstudies and testing them is often prone to manipulation,but it is expectedthat decision tree analysis can present findings that have not been obtainedbefore.Furthermore,decision tree analysis can be read like a flowchart,making it easy to interpret the results.Therefore,even non-experts caneasily interpret the results of the analysis,and the knowledge can beeasily shared between experts and non-experts.The following two findings were obtained from the analysis.(1)Thesmaller the class size,the shorter the working hours of the teachers.(2)There is no statistical relationship between teachers’working hours andthe number of children with low Socio-economic status in their classrooms.Japanese schools do not have as many students with economicallydifficulties,students with limited native language skills,or immigrant andrefugee students as their European counterparts.Nevertheless,if theworking hours of Japanese teachers are the longest in the world,it is aproblem of work culture.Solving “child poverty” is a very importantsocial problem,however perhaps even if this problem is solved,thebusyness of teachers will not go away.A fundamental reconfiguration ofthe work culture of teachers is needed.
著者
中塚 武 大西 啓子 安江 恒 光谷 拓実 三瓶 良和
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.78, 2010 (Released:2010-08-30)

享保の飢饉は、享保17年(1732年)に起きた江戸時代の西日本最大の飢饉であり、虫害という特異的な背景を持つ。原因となったウンカは、東南アジアから中国南部を経て、毎年風に乗って日本に飛来する、日本では越冬できない昆虫であり、当時の大発生の背景には何らかの大気循環の変化があったことが推察できる。本研究では、江戸時代の日本全国における樹木年輪セルロースの酸素・炭素同位体比の時空間変動パターンを解析して、当時の大気循環の特徴、及びその日本社会の変動との関係を解析した。
著者
小池 有美 羽野 卓三 川邊 哲也 上西 啓裕 花井 麻美 坂口 侑花里 橋﨑 孝賢 森木 貴司 田島 文博
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.AbPI1055, 2011

【目的】自律神経機能については様々な測定方法があるが,近年簡易で無侵襲な電子瞳孔計での検査が自律神経機能検査として用いられつつある.我々が日常的に行う重い荷物を持ち続けたり,ひっぱる動作は息をこらえて行うことが多く,バルサルバ効果を伴い血圧上昇が懸念される.また,心を落ち着かせるためによく行われる深い呼吸は,迷走神経を経由して呼吸中枢に伝えられ,自律神経の影響を受けることが知られている.今回,電子瞳孔計を用いて息こらえ時および深い呼吸を継続した時の血圧,脈拍,瞳孔機能の状態を測定し,それぞれ安静時の状態と比較検討した.【対象】健常成人14名(男性7名,女性7名)で平均年齢は23~49歳(平均31.2歳±5.8).全員高血圧と診断されたことがなく,降圧薬の服用経験もない.【方法】測定は椅座位で十分に安静をとった後,机上で血圧と脈拍を測定した.瞳孔機能については電子瞳孔計(イリスコーダーデュアルC10641; 浜松ホトニクス)を用いて瞳孔径と縮瞳速度,散瞳速度を測定した.息こらえについては5分間の安静椅座位の後,1分以上出来るだけ長く息をこらえ,自己申告で限界10秒前を知らせ,各項目を測定した.深い呼吸については5分間の安静椅座位の後,過換気とならないようにゆっくり深く溜息をつくように閉眼で2分間呼吸するよう指示した.測定は1分を経過した時点で行った.統計学的検定方法についてはstudent-t-testを用いて,p<0.05を有意差ありと判定した.【説明と同意】対象者には事前に十分に説明し同意を得た.尚,本検討は和歌山県立医科大学倫理審査会により承認されている研究の一環として行った.【結果】収縮期血圧の平均値は安静時105±4.62mmHg,息こらえ時129±7.45 mmHg,深い呼吸時105±3.63 mmHgであった。安静時との比較ではそれぞれに差はみられなかった.拡張期血圧は安静時70.2±4.68mmHg,息こらえ時83.1±8.73 mmHg,深い呼吸時64.7±3.73 mmHgで,安静時と比較し息こらえ時は有意に上昇し深い呼吸時は有意に低下を認めた.脈拍は安静時73.4±4.17bpmだった.息こらえ時は73.4±7.45bpm,深い呼吸時は68.7±3.07bpmで安静時と比較し差はみられなかった.初期瞳孔径は安静時6.16±0.64mmであった.息こらえ時は6.41±1.01mm,深い呼吸時は6.30±0.66mmであり、安静時と比較し息こらえ時で有意に拡大していた.最小瞳孔径は安静時3.82±0.83mmであった.息こらえ時は4.19±0.81mm,深い呼吸時は3.71±0.92で安静時と比較し息こらえ時で有意に拡大していた.縮瞳速度は安静時4.68±0.57mm/sであった.息こらえ時は4.96±1.51mm/s,深い呼吸時は6.1±3.11mm/sで安静時と比較し差はみられなかった.散瞳速度は安静時2.26±0.56mm/sであった.息こらえ時は2.94±1.92mm/s,深い呼吸時は3.1±0.91mm/sで,安静時と比較し深い呼吸時は有意に早くなっていた.【考察】息む動作では血圧上昇を伴うことが多く,高血圧患者や未破裂動脈瘤保持者において禁忌とされる.今回,電子瞳孔計を用いた検査で息こらえは安静時に比較し,拡張期血圧上昇や初期瞳孔径および最小瞳孔径の増大を認めた.これらはバルサルバ効果による交感神経の刺激により血圧上昇と,瞳孔径が増大したためと考える.また,今回行った深い呼吸では安静時と比較し拡張期血圧は低下し,散瞳速度は有意に亢進した.深呼吸などの深い呼吸では,肺が拡張し伸展受容器が刺激され,迷走神経を介して吸気中枢に伝わりその働きが抑制される.今回の検査では迷走神経の影響を受けて血圧低下が起こり,その間縮瞳していた瞳孔が光刺激により散瞳したためと考える.【理学療法学研究としての意義】電子瞳孔計を用いた瞳孔機能測定は、急激な血圧上昇が禁忌とされる疾患を持つ患者へのADL指導や運動療法発展に有用であると考える.<BR><BR>
著者
岡島 達雄 若山 滋 野田 勝久 小西 啓之
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文報告集 (ISSN:09108025)
巻号頁・発行日
vol.369, pp.9-15, 1986
被引用文献数
1

In a woody space, we feel at ease and calm. On visual effect, patterns of the grain of wood is often used to interior walls, ceilings and so on. The objects of this study are the following ; (1) Considering of the grain of wood as geometrical stripe patterns and making clear its visual characteristics. (2) Generating a system of stripe patterns of the grain of wood, that are able to vary continuously with every change of parameters.
著者
岡島 達雄 若山 滋 野田 勝久 小西 啓之
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文報告集 (ISSN:09108025)
巻号頁・発行日
vol.377, pp.1-7, 1987
被引用文献数
1

The woody image consists of various elements such as the grain pattern, the color tone, the gloss, the structure of wood. Among them, only the stripe patterns of the grain were investigated and discussed. The object of the present study is to examine what kind of patterns make us feel woody, and to make clear visual characteristics of the grain patterns. Thirty-nine grain patterns generated from the computer after the svstem are evaluated by questionaire with eighteen adjective rating scales. The conclusion is the following ; (1) The grain patterns appearing to be woody rimind us a good image-affective, natural, familiar, at ease etc. (2) The grain patterns have moderate fluctuation of stripes. The coefficient of variation is considered to be good for the index of the fluctuation.
著者
岡島 達雄 若山 滋 野田 勝久 小西 啓之
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文報告集 (ISSN:09108025)
巻号頁・発行日
no.369, pp.9-15, 1986-11-30

In a woody space, we feel at ease and calm. On visual effect, patterns of the grain of wood is often used to interior walls, ceilings and so on. The objects of this study are the following ; (1) Considering of the grain of wood as geometrical stripe patterns and making clear its visual characteristics. (2) Generating a system of stripe patterns of the grain of wood, that are able to vary continuously with every change of parameters.
著者
長谷川 隆史 佐熊 晃太 西 啓太 小無田 彰仁 東 登志夫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.137-141, 2021 (Released:2021-02-24)
参考文献数
17

[目的]本研究の目的は,痛みに対する破局的思考が強い脊椎圧迫骨折患者への有効な介入方法を検討することである.[対象と方法]対象は脊椎圧迫骨折と診断され,当院に入院した高齢男性であった.成功体験を強調した介入を行い,痛みの程度(NRS),痛みに対する破局的思考(PCS),不安抑うつ状態(HADS),日常生活動作能力(mFIM),活動量を評価した.[結果]入院時PCSの合計点は44点と高値を示したが,成功体験を強調した介入を実施することで,32点に改善し,その他の痛み関連因子も改善し,mFIMも37点改善した.[結語]痛みが強い脊椎圧迫骨折患者に対し,入院早期から多職種協働で成功体験を強調した介入を実施することで,PCSを改善させ,痛みの遷延化を防止できる可能性が示唆された.
著者
今坂 友亮 福永 智洋 伊藤 章 杉谷 栄規 小西 啓治 原 尚之
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1032-1033, 2014

近年,電力需給ひっ迫に対応するために,ピーク電力抑制を目的としたデマンドレスポンスが注目されている.本報告では,蓄電池の残量と過去の総供給電力に比例した電力価格情報に基づき,各世帯が所有する蓄電池の充電開始時刻を決定する自律分散型のモデルに,多相同期現象を発生させ,ピーク電力が抑制できることを示す.さらに,ピーク電力を抑制するシステムパラメータの領域を,数値シミュレーションで調べる.
著者
人見 裕江 塚原 貴子 中西 啓子 千田 美智子 森安 孝子
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.91-98, 1996

水分摂取は簡便で身近な看護ケアの一つであるが, この飲水が健康な成人の排便習慣に及ぼす影響を, 日本語版便秘評価尺度と便形評価尺度を用いて調べた.普段より実験的に水分を多く飲むことの了解の得られた対象に, 所定の用紙に研究期間中の水分量, 排便時間と負荷前・負荷中・負荷後のCAS評価と便形評価を依頼し, その排便習慣を検討した.その結果, 成人の排便習慣に及ぼす水分の影響として, 飲水を負荷することによって便は柔らかな形となり, 便硬度の軟化傾向があることが明確になった.この飲水の効果の自覚や飲む時間帯による差は, CASおよび便形評価のいずれの場合にも認められない.しかし, 飲水の負荷は, 便秘でない者, また下剤を使わない者の便形を変化させるが, 便秘者への影響は少ない.さらに, 身体の変調を含むCASでは, 飲水の負荷により, 腹部の身体症状を来たしやすく, 飲水が便秘を改善するかどうかCAS得点上にあらわれにくい.
著者
西 啓太郎 磯谷 隆介 輪違 弘樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1430, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】介護保険は2000年からスタートし,年を重ねる毎にその保険費が増大している。当初3.6兆円(2000年)が8.6兆円(2014年)にまで膨れ上がっている。厚生労働省の推計によると団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年に介護保険費は19.8兆円になると予想されており,国家予算がおよそ100兆円とするとその約2割を占めている。地域で理学療法士が介入することによっての介護度の変化と,それによる経済効果を具体的な数値で示したので報告をする。【方法】対象はH25.6~H27.10の間に弊社の2ヶ所のデイに通所している利用者のうち,6ヶ月以上利用し,理学療法士による運動・生活指導,個別リハを受け,その間に介護度が変化した利用者74名(男性19名,女性55名,年齢80.2±6.7歳)とした。介護度とその利用回数を抽出し,介護保険費(介護保険給付費+自己負担分)を計算した。介護保険の認定期間は新規を除くと原則12ヶ月となっているため,介護度が変化する以前と以後で1年間利用したと仮定し,年間の介護保険費に換算して差を比較した。比較には対応のあるt検定を使用した。また,理学療法士による介入は運動指導,生活指導,個別リハを行い。各利用者個人と達成可能な目標を決め,達成に向けて個別・集団での運動プログラムを実施した。【結果】介護度認定の前後での介護度は有意に改善が見られた(p<0.01)。対象者74名のうち,介護保険更新前は要支援1:15名,要支援2:19名,要介護1:17名,要介護2:11名,要介護3:6名,要介護4:6名,要介護5:0名であった。介護保険更新後は要支援1:15名,要支援2:19名,要介護1:16名,要介護2:12名,要介護3:5名,要介護4:0名,要介護5:0名であった。また,更新後自立に至った利用者は7名であった。介護度認定の前後での利用料金は優位に差が見られた(p<0.01)。年間での介護保険費を計算すると更新前は32,477,640(円/年),更新後は28,527,528(円/年)となり差額は3,950,112(円/年)であった。【結論】今回の結果において介護保険費抑制効果は3期分の合計で3,950,112(円/年間)であった。先行研究においてリハビリ専門職の介入によって介護度が優位に改善する可能性は既に言われている。故に今回の報告は国家予算を圧迫している介護保険費を理学療法士の介入によって抑制できる示唆となった。各地方行政と協同した積極的なリハビリ職種の介入によって,介護保険費の削減が可能であることが示唆された。
著者
林 積司 上西 啓裕 吉富 俊行 成川 臨
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法のための運動生理 (ISSN:09127100)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.209-216, 1989 (Released:2007-03-29)
参考文献数
10

胸部外科における心肺疾患患者の肺理学療法目的は、術前、術後の呼吸機能低下が原因で出現する種々の合併症予防と換気効率低下改善にある。術前において最も重要なことは、患者及び家族教育であり、呼吸訓練の重要性を理解してもらうことは肺理学療法の目的達成のポイントとなり得る。次は、術前、術後の全身状態が非常に異なることを念頭に置き、患者が普段から意識しなくても腹・胸式呼吸パターンが行える様に指導する。最後に、術前、術後の呼吸音を聴診することで、これは術後背臥位期間中の外側肺底区・後肺底区の聴診は異常呼吸音の早期発見につながるからである。