著者
藤井 知宏 菊地 悟 近藤 澄江 菅原 るみ子
出版者
岩手大学
雑誌
岩大語文 (ISSN:09191127)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.72-56, 2006

昨今の「学力低下」を巡る論議とともに問題視されていることに「活字離れ」「読書離れ」ということがあげられる。しかし、「活字離れ」はここ最近において問題とされてきたわけではなく、毎日新聞社、全国学校図書館協議会主催の「学校読書調査」(後掲)においても、小学生の不読率は一定率を示し、良くもなければ極端に悪いという結果にもなっていない。
著者
松下 尚之 磯貝 雅裕 近藤 圭一郎 福永 剛隆 北村 信夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.2506-2508, 1998
被引用文献数
1

小腸大量切除施行後の縫合不全の為,長期間経口摂取ができない甲状腺全摘後の症例に対し,経直腸的に坐薬として甲状腺ホルモン剤(チラージンS,甲状腺末)の投与を行った.当初,内服と同じ量のチラージンSを粉末にし坐薬の形で使用したが,血中のf-T4, f-T3濃度は上昇しなかった.そこで甲状腺末200mgから300mgを坐薬とし使用したところ,血中f-T4, f-T3濃度は上昇してきた.坐薬挿入前後に急な血中濃度の変化は無かった.本症例では,術前T4(チラージンS<sup>®</sup>)として150μgを使用しeu-thyroidを保っていたが,今回経直腸的には甲状腺末が200~300mg必要であった.この量は,チラージンS 150μgの2~3倍に相当する.経直腸的に比較的大量の甲状腺ホルモン剤が必要であったのは薬剤の吸収がただ単に悪いというだけではなく,時折,便秘と下痢を繰り返す状況にあったこともその吸収において影響したものと思われる.
著者
谷川 攻一 細井 義夫 寺澤 秀一 近藤 久禎 浅利 靖 宍戸 文男 田勢 長一郎 富永 隆子 立崎 英夫 岩崎 泰昌 廣橋 伸之 明石 真言 神谷 研二
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.9, pp.782-791, 2011
被引用文献数
2 4

東日本大震災は,これまでに経験したことのない規模の地震・津波による被害と福島第一原子力発電所の事故を特徴とした複合型災害である。3月11日に発生した地震と巨大津波により福島第一原子力発電所は甚大な被害を受けた。3月12日には1号機が水素爆発を起こし,20km圏内からの避難勧告が出された。14日には3号機が爆発,15日の4号機爆発後には大量の放射性物質が放出されるという最悪の事態へと進展した。一方,この間,原子力災害対応の指揮本部となるべく福島県原子力災害対策センターも損壊を受け,指揮命令系統が十分に機能しない状態となった。20km圏内からほとんどの住民が避難する中で,医療機関や介護施設には推定でおよそ840名の患者が残されていた。これらの患者に対して3月14日に緊急避難が行われた。しかし,避難患者の受け入れ調整が困難であり,重症患者や施設の寝たきり高齢患者などが長時間(場合によっては24時間以上)にわたりバス車内や避難所に放置される事態が発生した。不幸にも,この避難によって20名以上の患者が基礎疾患の悪化,脱水そして低体温症などで死亡した。一連の水素爆発により合計15名の作業員が負傷した。その後,原子炉の冷却を図るべく復旧作業が続けられたが,作業中の高濃度放射線汚染による被ばくや外傷事例が発生した。しかし,20km圏内に存在する初期被ばく医療機関は機能停止しており,被ばく事故への医療対応は極めて困難であった。今回の福島原子力発電所事故では,幸い爆発や放射線被ばくによる死者は発生していないが,入院患者や施設入所中の患者の緊急避難には犠牲を伴った。今後は災害弱者向けの避難用シェルターの整備や受け入れ施設の事前指定,段階的避難などを検討すべきである。また,緊急被ばくへの医療対応ができるよう体制の拡充整備と被ばく医療を担う医療者の育成も急務である。
著者
近藤 純正 本谷 研 松島 大
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.821-831, 1995-12-31
被引用文献数
10 15

面積13km^2の宮城県秋山沢川流域について,「新バケツモデル」を用いて土壌水分量,流出量,積雪水当量の季節変化を計算し,さらに河川の熱収支式の解から河川水温を求めた.この研究では,山地の気象は平地のアメダスデータに基づいて,標高の関数として推定した.各標高の積雪量は雨雪判別式で計算し,融雪量は各標高の気温の関数とした.計算結果は河川の日々の最高水温の観測値がよく再現でき,また積雪水当量の標高分布の調査結果ともよく対応する.春期の山地における積雪水当量は500mm程度もあり,融雪期以後の地下水タンクの貯留水量の増加と,夏の流出量に大きな影響をもつ.1994年夏の渇水は,春の積雪水当量が他の年に比べて小さかったことも一因であると思われる.
著者
近藤 真吾
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.255-258, 2014-07-01

『自動車技術情報として特許を探る』を主題として,自動車技術を取り巻く環境からその活用の実態を論じた。活用の実態は,(1)技術探索,特許から技術を学ぶ,(2)競合他社分析:特許情報を基にした開発動向のベンチマークから自社の研究・開発戦略策定,(3)新技術の市場投入時のリスク分析,(4)情報ネットワークとの連携と標準化。以上4つの各観点で,特許という技術情報の価値と活用シーンを解説した。
著者
新井 博達 弘中 由麻 近藤 清美
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-14, 2015-07-31 (Released:2015-08-07)
参考文献数
40
被引用文献数
1 3

本研究では,社交不安の認知モデル(Clark & Wells, 1995)に基づき,ひきこもり親和性と社交不安症状と対人的自己効力感の関連について検討を行った。大学生246名(男性101名,女性145名)を対象として,ひきこもり親和性を測定する尺度,Liebowitz Social Anxiety Scaleの日本語版,対人的自己効力感尺度を用いた質問紙調査を実施した。共分散構造分析の結果から,社会場面における恐怖感/不安感が,ひきこもり親和性に対して直接的な正の影響を与えていることが示された。その一方で,社会場面における回避が,ひきこもり親和性に対して直接的な影響を与えていることは示されなかった。また,対人的自己効力感は,社会場面における恐怖感/不安感を介して,ひきこもり親和性に対して間接的な負の影響を与えていることが示された。以上の結果から,ひきこもり親和性の高い人々に対する予防的な介入として,対人的自己効力感を高めるような働きかけが有効である可能性が示唆された。
著者
青山 庄 樋上 義伸 高橋 洋一 吉光 裕 草島 義徳 広野 禎介 高柳 尹立 赤尾 信明 近藤 力王至
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.312-321, 1996-05-05
被引用文献数
6

1994年春,ホタルイカを内臓ごと生食後に旋尾線虫幼虫type Xによると思われる急性腹症を呈した10例を経験した.症状では,全例に腹痛,9例に嘔気・嘔吐,4例に下痢,6例に腹水を伴った腸閉塞と1例に皮膚爬行疹を認めた.検査所見では,経過中において,全例に末梢血の好酸球増多,9例に血清IgE値増加が認められた.ホタルイカ内臓の約3%に旋尾線虫幼虫type Xが寄生しているとの報告から,その抗体価を測定したところ,9例中7例で陽性を示した.1例では,腹膜炎の診断で回腸部分切除術が行われ,組織学的に,局所的なびらんと粘膜下層内に著明な好酸球とリンパ球浸潤を伴う炎症所見が認められたが,9例は保存的治療で軽快した.
著者
近藤 弘幸
出版者
東京学芸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本におけるシェイクスピア作品の翻案・翻訳受容について、フェミニズム理論を用い、またナショナリズムの観点から分析した。フェミニズム分析としては、日本で初めて女性としてシェイクスピア作品の全訳に取り組んでいる松岡和子の翻訳について、その功績と問題点を指摘した。ナショナリズムの観点からは、『オセロー』の翻案小説である宇田川文海『阪東武者』を、日本が「西洋化」することの不安を反映するテクストとして分析した。
著者
近藤 理恵 黒木 保博 朴 志先 桐野 匡史
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.87-94, 2015-03-12

本研究は、2013 年12 月に韓国において行った面接調査をもとに、近年の韓国の養子縁組政策の動向について明らかにすることを目的とした。面接対象は、「中央養子縁組センター」、「ホルト児童福祉会」、「東方社会福祉会」、「未婚母子家族福祉施設」であった。韓国では、民間団体による養子斡旋が活発であるが、2011年の養子縁組特例法の全面改正以降、①裁判所が養子縁組に関与したり、②子どもが自らの出自を知ることができるシステムがより一層整備されたり、③養子縁組に関わるケース・マネジメントが確立されたことにより、以前よりも養子縁組をされる子どもの権利が擁護されるようになったことが明らかとなった。また、韓国では、非婚の母親と子どもへの差別が強いため、彼女たちが生きにくい状況があるが、今後、養子縁組政策と並行して、非婚の母親と子どもが安心して暮らせるシステムづくりを推進していく必要があることが明らかとなった。
著者
近藤 裕昭 劉 発華
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.179-192, 1998-05-10
被引用文献数
48

1次元の都市キャノピーモデルを作成し, 都市の熱環境を調べた。メンスケール気象モデルの水平1格子程度の空間(数km四方)のビルの配置を簡略化して取り扱い, 平均ビル幅, 平均道路幅, ビルの高度分布をパラメータとして, 道路面や各高度の壁面・屋上面における平均的な熱収支を計算して顕熱量を求めた。また, 人工廃熱も高度別に与えるようにした。すべてのビル高度が33mとした場合, ビル幅と道路幅が30mの時, キャノピーの地上3mの気温はビルが無い場合に比べて午後から夜間にかけて約1K上昇した。道路幅を狭くすると昼間の気温は更に上昇するが, 夜間は気温が下がる傾向を示した。東京駅付近の人工廃熱量の日変化を与えて計算すると, ビルが存在すると地表付近の気温上昇はビルが無い場合に比べて大きく, また廃熱源が地上付近にあった場合の方が屋上に廃熱源を置いた場合に比べて温度上昇が大きいことが示された。
著者
齋藤 克憲 橋田 秀明 岩代 望 大原 正範 石坂 昌則 近藤 哲 加藤 紘之
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.1829-1833, 2004 (Released:2011-06-08)
参考文献数
24

今回我々はIIc型早期胃癌と診断され, 病理組織所見にて直下にアニサキスによる好酸球性肉芽腫を認めた1例を経験したので報告する. 症例は77歳の男性. 20年来の胃潰瘍の診断にてH2-blocker, 消化性潰瘍治療薬を内服していた. 平成14年9月, 定期検診目的の胃内視鏡検査にて胃体下部大彎側にIIc+III型病変を指摘, 組織生検にてgroup Vと診断され, 深達度がsm以上の可能性があるとして外科紹介, 幽門側胃切除術を施行した. 腫瘍は0.8×0.8cmのIIc型乳頭腺癌で深達度sm1, またそのほぼ直下の固有筋層内に好酸球性肉芽腫を認め, この中心部にアニサキス虫体を認めた. 連続切片からアニサキスはIIc部分から刺入したと思われた. アニサキスが癌や潰瘍など粘膜の脆弱部から胃壁内に進入する可能性はすでに指摘されているが, 本症例のごとく慢性化した場合, 虫体が鏡視下に視認出来ないため好酸球肉芽腫を癌の一部と誤認する可能性があり, 診断上注意が必要である.
著者
中谷直司 金杉 昭徳 近藤 邦雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.2346-2355, 1999-05-15
参考文献数
8
被引用文献数
6

遺伝的アルゴリズムはダーウィンの進化論に基づいた最適解探索手法であるが その一方でダーウィンの進化論以外にも多くの進化論が提案されている. ウイルス進化論はその1つであり 生物はウイルスの感染により進化するという考えに基づいている. 本論文ではこのウイルス感染による進化という点に着目し ウイルス進化論に基づく新しい進化型アルゴリズムを提案する. 提案するアルゴリズムでは ウイルスを単体の生物ではなく遺伝子を運ぶ生物器官の1つとしてとらえるとともに 交叉を用いずウイルス感染を唯一の探索操作としている. また このウイルス感染はいくつかの遺伝子が急速に集団全体に拡散 進化することを意味しており 提案手法は遺伝的アルゴリズムよりも短時間での解の探索が可能となる. 提案手法の有用性を確認するため計算機実験を行い 提案手法と遺伝的アルゴリズムとを比較した. その結果 提案手法は計算時間が短かく 収束も速く また 最適解を得る確率も高いということが確認された.Genetic algorithm is a method to search optimum solution based on Darwinism. On the other hand the evolution theories are not only Darwinism but also a lot of theories. The virus theory of evolution is one of these theories. This theory is based on the idea that a virus evolves life. This paper proposes a novel evolutionary algorithm based on the virus theory of evolution. In this algorithm, we think that a virus is the organ to carry genes and we define infection with a virus as one and only search operator. An infection operator spread out the piece of genes into a population quickly. Therefore the calculation time of our proposed algorithm is shorter than the time of genetic algorithm. We have made computer experiments using proposed algorithm. In these experiments, we have compared the proposed algorithm with a genetic algorithm. The results show the efficiencies of proposed algorithm.

2 0 0 0 OA 王註老子標釈

著者
近藤元粋 訂
出版者
青木嵩山堂
巻号頁・発行日
vol.上篇, 1908
著者
近藤 恵子 佐藤理史 奥村 学
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.11, pp.119-126, 2000-01-27
被引用文献数
3

本稿では,格変換による単文の言い換えを機械的に実現する方法を提案する.我々は,そのために必要な42の格変換規則と,言い換えに必要な情報を得るために使用する「動詞辞書」「自動詞?他動詞対応辞書」「有情/非情名詞辞書」の3つの辞書を作成した.格変換規則は,格のマッピング,述語のマッピング,名詞句の制約条件,動詞の制約条件から成る.名詞句の制約条件は,入力文の名詞句が有情か非情かで規則の適用を制限する.動詞の制約条件は,入力文の動詞の種類,使役形のタイプ,受動の可否,格から規則の適用を制限する.辞書は,変換する動詞を得るためと,制約条件を確認するために使用される.我々は,この規則と辞書を実装した言い換えシステムを作成した.言い換えシステムは,格変換規則を繰り返し適用することで言い換えを実現する.我々はこのシステムの実験を行い,有効性を確認した.This paper proposes a method of automatical paraphrasing of a simple sentence by case alternation. We make 42 case-alternation rules and three dictionaries: the verb dictionary, the dictionary that records intransitive verbs and their corresponding transitive verbs, and the dictionary that records animateness/inanimateness of nouns. A case-alternation rule consists of a cases mapping, a predicate mapping, a condition for a noun phrase, and a condition for a verb. The condition for a noun phrase restricts to applying the rule to an input sentence by whether the noun phrase in the sentence is animate ness or inanimateness. The condition for a verb restricts to applying the rule to an input sentence by the verb's type, the causative voice, the passive voice, and cases. We have constructed the paraphrase system implemented these alternation rules. This system generates all possible paraphrasing. We have conducted an experiment with this system, and show the effectiveness of the method.
著者
坂本 裕規 村上 慎一郎 近藤 浩代 村田 伸 武田 功 藤田 直人 藤野 英己
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab1306-Ab1306, 2012

【はじめに、目的】 骨格筋量は30歳を頂点として加齢と共に減少する。また、筋力低下による活動量の減少は生活習慣病発症の危険因子である肥満を助長する。一方、筋力や体型は運動や食事などの環境要因だけでなく遺伝的要因も関与する。運動能力に関する遺伝子は200以上、肥満に関しても127以上の遺伝子の関連が報告されている。これらは筋力やBMI、体脂肪量に関連する。しかし、筋力低下や肥満に関係する遺伝子多型の情報は臨床応用には未だ至っていない。高齢者における遺伝子のこれらの遺伝子多型を解明し、筋力低下や肥満を生じやすい対象を特定できれば、予防的な早期介入が可能になると考える。本研究では高齢者における筋力や体型に関係すると考えられる遺伝子の多型が筋力や体組成に及ぼす影響について検証した。【方法】 対象は地域在住の健常女性164名(72.8±7.08歳)とした。体型や筋力に関係すると考えられる成長ホルモン受容体(GHR)、毛様体神経栄養因子(ZFP91-CNTF)、アクチニン3(ACTN3)、インスリン様成長因子受容体(IGFR-1)に関する遺伝子多型の解析のため口腔粘膜から得た細胞を用い、核DNAを抽出(Gentra Puregene Buccal Cell Kit,QIAGEN)した。TaqmanプローブによるリアルタイムPCR法でアレルの検出を行い、遺伝子多型(SNP)を同定した。筋力と体型を評価するため、握力、膝伸展力、足把持力の等尺性筋力を測定した。さらに、超音波機器を用いて大腿遠位部内側における内側広筋の筋厚を計測した。体組成の測定は、BMI、脂肪量、体脂肪率とした。測定結果の統計処理には一元配置分散分析とTukey-Kramerの多重比較検定を用い、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当該施設における倫理委員会の承諾を得て行った。また対象者には実験の目的と方法を詳細に説明し、同意を得た上で実施した。【結果】 GHRにおけるSNP頻度はAA型20%、AG型50%、GG型30%であった。内側広筋の筋厚では、GG型はAG型に比べて有意に高値を示した。また膝伸展力と足把持力は、GG型がAA型に比べて有意に高値を示した。さらに握力でも同様に、GG型はAA型とAG型に比べて有意に高値を示した。この結果からGHRのGG型においては筋力や筋量が高く、A型アレルを持つ高齢女性は筋力や筋量が有意に低くなることが明らかとなった。次にZFP91-CNTFのSNP頻度はAA型44%、AT型38%、TT型18%であった。足把持力は、AT型はTT型に比べて有意に高値を示した。また脂肪量は、TT型がAA型に比べて有意に高値を示した。同様にBMIと体脂肪率においてもTT型はAA型とAT型に比べて有意に高値を示した。この結果よりTT型のSNPを持つ高齢女性では筋力が低く、肥満傾向が高いことが明らかになった。一方ACTN3とIGFR-1の遺伝子に関しては、各SNP間に有意差を認めなかった。【考察】 健常高齢女性において、GHR遺伝子多型は筋厚と筋力に、ZFP91-CNTF遺伝子多型は筋力と体組成に関与することが明らかになった。GHR遺伝子多型は筋厚と筋力の両方に影響を及ぼしていたことから、GHR遺伝子多型は筋肥大による筋力に関連することが明らかとなった。またZFP91-CNTF遺伝子多型は筋厚には影響を及ぼさなかったことから、ZFP91-CNTF遺伝子多型は神経系が関与する筋力に関係すると示唆された。先行研究ではGH投与によって青年の除脂肪体重が増加するとしている。またCNTF遺伝子多型は成人の筋力に影響を及ぼすとされている。以上のことから、健常高齢女性においてもGHR遺伝子多型は筋量に、ZFP91-CNTF遺伝子多型は筋力に関与すると考えられる。ACTN3遺伝子に関して、持久力を要するスポーツ選手と瞬発力を要するスポーツ選手の間で遺伝子型が異なるとの報告がある。一方、ACTN3遺伝子多型は筋力に影響を及ぼさないとする報告もある。本研究では、高齢女性におけるACTN3遺伝子多型は骨格筋量や筋力に影響を及ぼさなかった。異なるスポーツ特性間では差異を認めるが、地域在住の健常女性のような一般的な対象者では差異を認めなかったため、ACTN3遺伝子はトレーニングへの反応性に影響を及ぼすものと思われる。また本研究ではIGFR-1遺伝子多型は筋力と体組成の両方に影響を及ぼさなかった。先行研究ではIGF-1遺伝子多型が筋力に影響を与えるとされているが、その先行研究では対象が白人と黒人に限定されている。本研究の対象は日本人のみであったため、人種の違いによって異なる研究結果がもたらされた可能性がある。今後は対象集団を拡大することと、理学療法介入の効果を検討することが課題であると考える。【理学療法学研究としての意義】 GHRとZFP91-CNTFの遺伝子多型が高齢女性の筋力や体組成に影響を及ぼす事が明らかになったことから、筋力低下や肥満を生じやすい者を特定し、早期から理学療法士が介入できるようになる可能性が示唆された。
著者
近藤 健 徳永 義昌 齊藤 正男 中川 達雄
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.729-733, 2012-11-15 (Released:2012-12-13)
参考文献数
13
被引用文献数
2 5

CTの進歩により小さな肺結節が多数発見されるようになった.それらの病変を術中に同定することは困難な場合があり,しばしばニードルマーカーが使用される.しかし,この手技に伴う空気塞栓の合併が稀に報告されている.当院ではこれまで139例のCTガイド下針マーキングを施行し,2例の空気塞栓を経験したので,考察を加えて報告する.1例目は71歳女性,網状影に加えて両肺多発粒状影を指摘された.結節の一つに対してマーキングを施行したところ,直後に意識消失を来たした.CTにて脳空気塞栓症と診断した.2例目は72歳男性,右下葉肺腫瘤と,右中葉に小結節を指摘された.この小結節にマーキングを施行したところ,直後に胸痛が出現した.CTにて冠動脈空気塞栓症と診断した.2例とも安静等により空気栓が減少し,症状も改善した.空気塞栓症は重篤な経過をたどる可能性もあり,マーキングの適応については熟慮を要する.
著者
藏澄 美仁 土川 忠浩 近藤 恵美 石井 仁 深川 健太 大和 義昭 飛田 国人 安藤 由佳 松原 斎樹 堀越 哲美
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.115-127, 2012-11
参考文献数
55
被引用文献数
1

本研究の目的は、屋外環境における至適温熱環境の範囲を提案することである。実験は、夏季と冬季の屋外温熱環境における人体の生理的・心理的反応を求める実測を被験者38名を用いておこなった。延べ実測数は906であった。ETFeと人体の生理的・心理的反応との関係を明確にした。得られた知見を以下に示す。暑くもなく寒くもない温熱的に中立な温冷感申告をすると考えられる夏季のETFeは31.6℃、冬季のETFeは36.0℃を得た。季節により温冷感申告の評価に違いが示され、夏季の場合と比較して冬季の場合の方がETFeに対する傾きが大きくなり、暑さに対する反応よりも寒さに対する反応が強くなる傾向を明らかにした。快でもなく不快でもない快適感申告をする寒い側の温冷感申告値は44.7、暑い側の温冷感申告値は55.1を得た。この条件を快適温熱環境範囲としてETFeと温冷感申告値との関係から快適なETFeの範囲を求めると、ETFeが31.6〜38.5℃を得た。