著者
近藤 章 田中 福三郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.211-216, 1989-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
12
被引用文献数
5 4

実験室内においてスクミリンゴガイを餌として与えた場合のヘイケボタル幼虫の発育と捕食能力,および寄主選択性について検討した。1) スクミリンゴガイで飼育した場合のヘイケボタルの飼育開始79日後における供試卵数に対する全幼虫数の割合は63.4%で,カワニナの場合(86.3%)よりやや劣るものの,幼虫はスクミリンゴガイで比較的良好に発育した。2) ヘイケボタル幼虫は全明・全暗条件にかかわらず,どの齢においてもスクミリンゴガイとカワニナを同程度に選択した。3) スクミリンゴガイの密度に対するヘイケボタル幼虫の捕食反応を,幼虫の齢と貝の大きさを変えて調べたところ,大部分の組合せで飽和型曲線を示した。幼虫の1頭1日当り最大捕食貝数は,ふ化数日後の貝では2齢幼虫で0.7頭,3齢で2.3頭,4齢で3.2頭であった。4) 貝の大きさと4齢幼虫の最大捕食量との間には直線関係が認められ,捕食可能な貝の最大殻高は1.1cmと推定された。
著者
小倉 幸雄 井上 芳光 近藤 徳彦
出版者
大阪国際大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

高温下運動時における摂取水分の温度と量が体温・循環調節反応に及ぼす影響を,(1)摂取水温の相違,(2)夏季スポーツ活動時の飲水量と飲みやすさ,(3)摂取水温の相違と飲水量,から検討した.その結果,摂取水温の相違は,飲水量が等しい場合には低水温ほど運動の早期から物理的な冷却効果により直腸温を抑制し,自由飲水の場合には低水温の冷却効果と飲水量の調節による影響が推察された。さらに,実際のフィールド運動時においても 5℃水温では物理的冷却効果による体温上昇の抑制,発汗量の抑制,脱水率の軽減を導くことが窺え,5℃程度の水分補給が生体負担度を軽減し,ひいては熱中症予防に有効であることが示唆された.
著者
近藤 祐磨
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

Ⅰ 問題の所在と研究目的<br> 昨今の環境保全運動の高まりとともに,環境保全運動を対象とした研究もさまざまな学問領域で蓄積されつつある.しかし,社会化された自然という観点からの研究は少ない.環境保全研究における地理学の独自性は,英語圏で展開されていて社会化された自然を主題とする「自然の地理学」研究から示唆を得ることができる.そこで,本研究は,福岡県糸島市における2つの海岸林保全運動を事例として,海岸林がいかにして「保全すべきもの」として見出されたのか,保全運動がいかなる主体間関係の構築によって展開されたのかを明らかにする.<br>Ⅱ 深江の浜における海岸林保全運動<br> 糸島市二丈深江地区では,「深江の浜」を保全対象とする「深江の自然と環境を守る会」が2011年4月に発足し,地域住民を主体とした保全運動が実践されている.<br> 保全運動は,行政が始めた地域活動への人的・財政的支援制度が契機で始まった.2012年5月には,市民・企業・行政が連携した大規模な環境美化活動の一環として,市との共催で活動が実施され,校区内の小中学校や事業所が活動に積極的に参加するようになったり,活動内容も増えたりと,運動が拡大した.校区内のさまざまな主体が次々と加わって,地域的な社会運動に発展しているといえる.<br> 同団体は海岸林を郷土の誇りであり,防風・防砂機能を果たすものだと意味づけており,校区住民の世代間交流を図りながら保全運動を行うことを目指している.<br>Ⅲ 幣の浜における海岸林保全運動<br> 糸島市志摩芥屋地区では,市を象徴する海岸林「幣の浜」を保全対象とする「里浜つなぎ隊」が2013年2月に結成され,移住者や外部者を主体とした保全運動が実践されている.<br> 保全運動は,福島第一原発事故で東京から移住した元新聞記者の女性が,2012年秋のマツ枯れ被害に衝撃を受けたことが契機で始まった.女性は,相談相手であった近隣の移住者(大学教員)の仲介と,公私にわたる交友関係を生かして,研究者や専門家,政治家・市職員との人的ネットワークを急速に拡大させ,大規模な運動を展開している.<br> 活動には,計画中も含めて,①市民参加型のイベントを主催して広く参加を募るものと,②既存の海岸林保全策とは異なる方法を提示するものがある.①は,マツ枯れの拡大を防ぐための枝拾い活動,②は,環境系NPO法人から影響を受けて,マツ枯れの主たる原因をめぐる論争(森林病害虫説と大気汚染説)のうち大気汚染説に立脚した,土壌の酸性化を中和させるための炭撒き活動である.<br> 同団体は,国によるマツ枯れ防止の薬剤散布を絶対視する地元住民の風潮と,薬剤の子どもに対する健康上の影響に疑念を抱いている.同団体は空間一帯を新しいコモンズのモデルを創出する場と意味づけており,薬剤散布によらない市民主導の海岸林保全と,マツ林にこだわらない新たな海岸の創成を目指している.しかし,市を象徴する白砂青松の復活を目指すメディアや民間企業から,マツ林復活に取り組む団体と誤解されている節がある.<br>Ⅳ 主体による認識と実践の多様性<br> 本研究から,海岸林保全運動において,対象となる環境への社会的な意味づけが,同じ環境を共有する地域内でも主体によって多様であることが判明した.また,保全運動が起きている複数の事例間でも内部の様相は異なるため,特定地域内部における意味づけの多様性と地域ごとの特殊性が,環境保全運動をめぐる状況をきわめて複雑なものにしている.海岸林保全運動の契機・主体・意味づけのいずれもが多様で複雑である.<br> しかし,本研究ですべての主体の意味づけが具体的に明らかになったわけではない.とくに保全運動の中核を担っていない一般住民による意味づけの量的な研究や,玄界灘地域全体での海岸林保全運動がリージョナルにどのような影響を与えているのかについての研究が今後の課題である.
著者
近藤 智靖 高橋 健夫 岡出 美則
出版者
Japanese Society of Sport Education
雑誌
スポーツ教育学研究 (ISSN:09118845)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.11-26, 2005-07-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
25

身体経験論は、ドイツのスポーツ教授学分野の中の一つの考え方である。この考え方は、現在のノルトライン・ヴェストファーレン州学習指導要領に一定の影響を与えている。本論ではその論に着目し、その概念や実践及びそれを巡る論議についてFunkeとGrupeとの関わりを中心に考察を進めていく。この検討を通じて身体を教科の中で位置づける際に、何が論点になるのかを明らかにする。結果、次の点が明らかになった。1. Funkeが身体概念を検討する際に、常にGrupeの存在を意識していた。Grupeの理論にFunkeは一方で共鳴をしつつ、他方でその在り方に疑問を呈していた。2. 1983年のADL大会でFunkeの考え方はGrupeによって批判された。Grupeは身体経験概念の不明確さと経験の選択基準の曖昧さを批判した。しかし、この批判を契機としてFunkeは理論や実践を再考しはじめた。こうしたドイツの身体経験論の論議と変容過程を踏まえて、我が国の体育科教育学分野で身体の問題が議論されるべき際に論点となることは次の三つである。1. 体育科教育学において身体概念をどのように捉え、どのような論議をしていくのか。2. 学習内容を設定する際に、どのような経験を保証し、その選択基準をどうするのか。3. 学習内容に適した素材をどうするのか。
著者
近藤 智靖 高橋 健夫 岡出 美則
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.533-543, 2005-09-10 (Released:2017-09-27)

Die "Laborschule" als ein Gesamtschulmodell in Bielefeld wurde 1974 gegrundet. Der Reformpadagoge Hartmut von Hentig leitete diese Schule und legte den Schwerpunkt auf eine "Erziehung zur Politik" und eine "Erziehung zur Verantwortung". Um diese Ziele zu erreichen, wurde die Laborschule zu einer "Curriculum-Werkstatt" weiterentwickelt. Weiterhin wurde groβer Wert auf die Idee von "Schule als Erfahrungsraum" und das gemeinsame Lernen von Schulern unterschiedlicher sozialer Herkunft gelegt. Von Hentig kritisierte die uberkommenen Bildungsprivi-legien und forderte eine gemeinsame und allgemeine Bildung fur alle Schuler. Hinter dieser Idee stand die Bildungsreform der 1960er und 70er Jahre in Deutschland. Der ursprungliche, von Reformpadagogen unterstutzte Gedanke dieser Reform war, dass die traditionellen sozialen Schichten sich verandern und alle Burger gleiche Bildungschancen haben sollten. Dieses Konzept hatte auch Einfluss auf den Bereich Sport in der Laborschule. Im Sportunterricht wurde darauf geachtet, dass die Schuler durch korperliche Erfahrung ihren eigenen Korper oder den anderer erfahren und an-nehmen. Um dieses Ziel zu erreichen, wurden nicht nur traditionelle Sportarten, sondern auch an-dere korperliche Aktivitaten in den Unterricht aufgenommen. Dadurch entstanden die Orientierung auf nicht-traditionelle Sportarten und die Korperorientierung im Sportunterricht. In dieser Arbeit geht es um das Verhaltnis von Bildungsreform, Laborschule und dem Bereich Sport in der Laborschule. Es wird analysiert, wie die reformorientierte Idee der Laborschule den Bereich Sport beeinflusste.
著者
近藤 宏 櫻庭 陽 香田 泰子 石塚 和重
出版者
筑波技術大学学術・社会貢献推進委員会
雑誌
筑波技術大学テクノレポート (ISSN:24354856)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.69-73, 2019-03

スポーツイベントにおける鍼・マッサージ施術のボランティア活動の実践を通じて,鍼・マッサージ施術のボランティア活動に視覚障がいを有する施術者が参加する際の配慮に関する課題と方策について報告する。いきいき茨城ゆめ国体自転車競技(ロードレース)リハーサル大会のために設けられた特設ブースにて,鍼・マッサージの啓発を目的として・マッサージ施術を実施した。ボランティア参加者は16 人で,うち弱視者が8 人(学生3 人含む),全盲者1 人,晴眼者7 人であった。大会関係者および来場した一般市民73 人に施術を行った。終了後にボランティア参加者より活動に関して意見聴取した。視覚障がい者が鍼・マッサージ施術のボランティア活動を円滑に行うためには,視覚障がい者と晴眼者がペアとなり施術すること,施術器具の配置,十分な事前説明を行うことなど,配慮が重要であることが活動を通じて明らかとなった。
著者
近藤 紀子 寺田 宏達 土村 まどか 山田 裕
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.493-499, 2009-07-15 (Released:2009-08-10)
参考文献数
8

近年, 超音波ガイド下神経ブロックが普及してきているが, ブロック針のクリアな描出に難しさを感じることが多い. 今回われわれは, 静脈留置針をブロック針として使用しIn vitro試験にて他の針と比較検討を行い, 視認性, 抵抗感とも良好な結果を得た. また実際の症例において, 大腿骨頸部骨折の83歳女性の観血的整復固定術の麻酔管理の際に, 静脈留置針をブロック針として超音波ガイド下末梢神経ブロックを併用した全身麻酔を行い, 速やかにブロックを施行できた. 静脈留置針は視認性・抵抗感の点で超音波ガイド下神経ブロックに有用と思われた.
著者
船津 和夫 山下 毅 本間 優 栗原 浩次 斗米 馨 横山 雅子 細合 浩司 近藤 修二 中村 治雄
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.32-37, 2005-06-30 (Released:2012-08-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1

目的・方法:近年,男性において,肥満者の増加に伴い生活習慣病の1つである脂肪肝罹患者数の増加が著しい.最近,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)やC型肝炎において瀉血療法により血中ヘモグロビン(Hb)を低下さることにより,肝細胞障害の改善とともに,肝細胞内の脂肪滴貯留が改善することが報告され,肝炎や脂肪肝において肝臓に蓄積した鉄がこれらの病態に関与していることが明らかにされてきた.しかし,脂肪肝と血中ヘモグロビンとの関係についてはこれまで検討されていない.そこで,中年男性を対象として,血中ヘモグロビン値と脂肪肝との関連について調査した.結果:非肥満者,肥満者ともに脂肪肝を有する群が無い群に比べ,血中ヘモグロビン値は有意に高値であった.また,血中ヘモグロビンの高値は肥満の有無にかかわらず,脂肪肝における肝機能検査値の異常にも関係していることが示された.さらに,ロジスティック回帰分析より,血中ヘモグロビンは飲酒量,肥満度とともに,独立した脂肪肝の関連因子であることが明らかにされた.結論:以上より,血中ヘモグロビンに含まれている鉄が間接的に脂肪肝の発症とそれに伴う肝機能障害に関連していることが示唆された.
著者
近藤 民雄 大賀 祥治
出版者
[九州大學農學部附属演習林]
巻号頁・発行日
no.83, pp.97-113, 2002 (Released:2014-07-18)

優良形質木の大量増殖に最もかなった増殖方法として,通常さし木あるいは取り木が取り上げられる。クローン増殖がうまくいくかどうかは,多くの場合さし木あるいは取り木での発根の善し悪しで決められてしまう。このときにみられる不定根形成の原動力は,もともと無傷の個体で作動している内生オーキシン固有の発根制御作用と考えられる。従ってさし穂のホルモン処理は,極性移動する内生オーキシンが持つ本来の器官形成能に対する強化助長の処理とみなすことができる。オーキシン処理およびオーキシン以外のホルモンによる処理について概説すると共に,オーキシン処理の際発根部位にあたる,さし穂の基部でどのような生理的反応が進み,あるいは増幅されているか,主として発生上の対応と生化学的反応とに分けて紹介した。さし穂のオーキシン処理は従来含浸とか,塗沫といった一段の処理として取り扱われているが,むしろ誘導処理と始動処理とからなる二段の処理として取り扱うのが適当と判断された。つまり根の原基発生への誘導処理と,それに続く原基発達への始動処理とからなる二段処理として取り扱うのが,処理の実際面からも,また発根の仕組を理解する上からも妥当と考えられた。また内生オーキシンには発根について,促進と制御という2つの相反する作用の内生が予想され,誘導期には前者が,始動期には後者の軽減除去がそれぞれ優先することで発根促進がもたらされると理解される。
著者
近藤 則子
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.320-321, 2021-06-15
著者
近藤 公彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.26-36, 2020-12-20 (Released:2021-01-14)
参考文献数
33

この論文では,小売業におけるデジタル化とデジタル・トランスフォーメーションの諸相を考察し,それらを成立条件とするオムニチャネルの本質を規定するとともに,オムニチャネル化に向けた販売/コミュニケーション・チャネルの発展プロセスを成功裏に推進するための3つのオムニチャネル・ダイナミック・ケイパビリティ,すなわち,統合ダイナミック・ケイパビリティ,調整ダイナミック・ケイパビリティ,および分析ダイナミック・ケイパビリティを提示する.
著者
照井 洋平 中村 陽介 三上 浩司 近藤 邦雄
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 37.17 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.157-158, 2013-03-08 (Released:2017-09-21)
参考文献数
7

本研究では、協力型マルチプレイアクションゲームにおける、ユーザー体験の共通性について明らかにする。遠隔環境でマルチプレイする場合と同一の実在空間でマルチプレイする場合のそれぞれのプレイ中の脳波を計測し、スペクトル分析を行った。分析の結果,マルチプレイしているプレイヤー間の脳波には共通性が確認できた。このことからマルチプレイをしているプレイヤー同士は同等のゲーム体験をしていることが確認できた。
著者
大谷英雄・堀口貞茲・浦野洋吉・徳橋和明・岩阪雅二・近藤重雄
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.96-98, 1988

<p><tt><b>内径100mm,高さ100mmの円筒型容器を用いてホスフィンの爆発限界を測定した.点火にはニクロ ム線に直流電流を流して溶断する方法を使用した. 酸素濃度を約21.5vol%に固定してホスフィン濃度を大きくすると,1.61vo1%から圧力が発生するようになった.約1.71vol%までは発生圧力は徐々に上昇し,その後急激に上昇,約1.9vol%を超えると再び濃度による圧力の変化は少なくなった。発生圧力の小さいところでは容器内の混合気の一部しか反応していない、ただし,1.61vo1%以下でもニクロム線近傍では反応が起こったものと考えられるが,圧力上昇は観察されなかったことから,1.61vol%以上ではある程度火炎が伝播し・たものと考え</b></tt><tt><b>られる。窒素濃度を変化させた実験などから,空気中の爆発下限界は1.6vol%である. </b></tt></p>
著者
近藤 博之
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.171-191, 2019-06-30 (Released:2021-04-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

近年,格差是正や少子化対策の一環として教育の無償化が議論されている。これについては賛否両論があるものの,意見の分布に階層差はとくに見られないという。しかし,個人化された社会で人々の意識を扱うには単独の意見ではなく,諸々の意見が織り成す文脈に焦点を当てる必要がある。本稿では,ブルデューの社会空間アプローチを用いてこの問題に取り組んだ。具体的には,子どもの教育と高齢者の社会保障について個人と政府の責任を問うた質問(JGSS-2012)に注目し,それと他の諸々の意見との関連を多重対応分析により吟味した。 分析の結果,まず第1-2主成分で構築した政治的意識空間が経済的適応度と政治的参加志向によって特徴づけられることが示された。また,取り上げた意見の多くは第2象限から第4象限にかけて展開し,その並びが階層的様相をもつことが示された。社会的属性変数の布置からは,その並びが資本総量に一致することが確認された。他方,費用負担意識はそれに直交する第1象限と第3象限にかけて展開し,他の意識との関連は希薄であった。社会的属性の布置も,僅かに伝統的専門職と経営者・業主の間に対立的関係が見られるに過ぎなかった。さらに,意外なことに,学生や若者の位置が政府の責任増大を否定する領域に見出された。これらは,この問題が未だ議論として定着しておらず,単に現状を反映した回答がなされているに過ぎないことを示唆している。全体を通して,教育費負担意識の現状と社会意識分析に対する社会空間アプローチの有効性が示された。
著者
近藤 千明 野並 葉子 森 菊子 魚里 明子
出版者
兵庫県立大学
雑誌
兵庫県立大学看護学部紀要 (ISSN:13498991)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.65-75, 2005-03-15

在宅介護者は、介護のため長時間の外出は難しく、病院や看護相談に行くことが困難な状況にある。また、生活の場で行われる在宅介護は、介護者の生活習慣に少なからず影響すると考えられる。そこで、在宅にいながらでも利用可能な看護相談システムを検討することとした。今回は、在宅介護者に、電子メールを用いた生活習慣病予防のための看護相談を行い、その利用状況と相談内容について事例毎に検討を行うこととした。対象は、訪問看護を受けている在宅介護者3名とし、看護相談の実施期間は、平成15年9月から平成16年1月の4ヶ月とした。その結果、(1)3名の電子メールの利用回数は、5回、14回、12回であり、全員が利用できたが、利用時間帯や回数は個人差があった。電子メールの初心者には、電話窓口を設置したが、利用は1回のみであった。(2)A氏は、在宅介護者の生活習慣病予防のための看護相談であったが、要介護者に関する相談のみの利用であった。(3)B氏は、最初は要介護者に関する相談であったが、研究者が食事の内容や生活を尋ねていくと、介護者自身に関する相談へと変化した。(4)C氏は、最初から介護者自身に関する相談があり、研究期間の後半では、相談以外に楽しかった出来事の報告もあった。在宅介護者への電子メールを用いた看護相談は、要介護者の健康に間する相談と在宅介護者自身の健康に関する相談の両者に対応していく必要性が示唆された。
著者
山田 忠比古 後田 澄夫 近藤 芳孝
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌) (ISSN:03854205)
巻号頁・発行日
vol.114, no.6, pp.459-466, 1994
被引用文献数
1

Luminosity of wire corona has been observed by the technique of the computed tomography. The light output from wirecorona has been compared with the calculated result. Spatial distributions of space-charge and current density of each type ofcharges carrier in a corona field has been also determined by computing the ionization and attachment process under the Deutschassumption and compared with experimental results.<br>The calculated results along the symmetry axis of the electrodes show very good agreement with measurements.Unfortunately, there is a slight difference between the experimental results and those of the calculation under the Deutschassumption in the distribution of luminosity.
著者
沼崎 優介 兼松 祥央 遠藤 雅伸 近藤 邦雄 三上 浩司
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.317-321, 2019-09-13

エンターテイメントコンテンツにおいて安全が確保されていることは重要である.VRコンテンツにおいてもVR酔い対策や体験者の安全な機器の範囲設置の確保がある.本研究では体性感覚刺激を視覚からの情報によって変化させられるという仮説を立てた.体験中に視覚提示する傾き量を実際の傾きよりも増減できる舟型システムを用いて実験を行った.結果として視覚から与える傾き量を増減させても違和感なく感じることが示唆された.これらの知見を活用することで,安全を担保しつつ実際よりも小さい傾きを与えても楽しめるエンターテイメントコンテンツの開発に寄与できると考えられる.