著者
目黒 祐子 藤井 俊勝 月浦 崇 山鳥 重 大竹 浩也 大塚 祐司 遠藤 佳子
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.251-259, 2000 (Released:2006-04-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1

一般に言語性短期記憶は音韻情報の保持容量を指標としているが,言語情報は通常,意味と結びついているはずである。そこで単語レベルについては音韻の短期記憶 (音韻性ループ) に加えて意味の短期記憶 (意味性短期貯蔵庫) を仮定した。標準失語症検査の単語レベル課題の成績がほぼ同じ2症例に,単語系列を聴覚的および視覚的に提示し,口頭反応 (音韻情報保持) と線画指示 (意味情報保持) の成績を比較した。前頭葉損傷の症例1は刺激を聴覚提示した場合には指示スパンが低下しており,視覚提示した場合には聴覚提示に比べて明らかに成績が低下していた。一方,側頭-頭頂葉損傷の症例2では課題により成績に差を認めなかった。すなわち,症例1では複数情報が継時的に入力された場合,音韻情報と意味情報の保持に乖離を認め,さらには視覚情報から音韻情報への変換過程にも障害が見られた。しかし症例2では音韻性短期貯蔵庫の容量が削減していても意味情報として保持可能であることが明らかとなった。
著者
阿部 隆 立木 孝 村上 裕 遠藤 芳彦 伊藤 俊也
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.110-117, 1990

Kemp & Bray製作のILO88を用いて内耳性難聴者90名154耳のclickに対するeOAEを測定し, 内耳性難聴の程度との関連を検討した。 (1), eOAE波形が認められかつ再現性が40%以上の場合をeOAE (+) とすると, 0.5k-4kHzの4周波数平均聴力が35dB未満の81耳では, 94%の確実性でeOAE記録が可能, 35dB以上の73耳及び40dB以上の63耳では, 89%及び92%の確実性でeOAE記録が不能であった。 1kHzと2kHzの2周波数平均聴力が40dB以上の64耳では, 94%の確実性でeOAE記録が不能であった。 (2), eOAE記録可能の84耳では, 内耳性難聴の程度とeOAEパワー (total echo power及びFFT解析図のhighest peak power) の間に負の相関 (r=-0.44) が認められた。 以上の結果から, ILO88を用いて, 4周波数平均聴力レベル35-40dB以上の内耳性難聴のスクリーニングが可能と思われた。
著者
福迫 陽子 遠藤 教子 紺野 加奈江 長谷川 和子 辰巳 格 正木 信夫 河村 満 塩田 純一 廣瀬 肇
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.209-217, 1990
被引用文献数
2 2

脳血管障害後の痙性麻痺性構音障害患者のうち, 2ヵ月以上言語訓練をうけた24例 (平均年齢61.6歳) の言語訓練後の話しことばの変化を聴覚印象法 (日本音声言語医学会検査法検討委員会による基準) を用いて評価し, 以下の結果を得た.<BR>(1) 0.5以上の評価点の低下 (改善) が認められた上位7項目は, 順に「明瞭度」「母音の誤り」「子音の誤り」「異常度」「発話の程度―遅い」「段々小さくなる」「抑揚に乏しい」であった.<BR>(2) 重症度 (異常度+明瞭度の和) は24例中16例, 約7割に何らかの改善が認められた.<BR>(3) 一方, 「音・音節がバラバラに聞こえる」「努力性」「速さの程度―遅い」などでは評価点の上昇 (悪化) も認められた.<BR>(4) 症状の変化は症例によって多様であった.
著者
赤嶺 有平 遠藤 聡志 上原 和樹 根路銘 もえ子
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.438-447, 2014-01-15

交通渋滞は,経済損失を発生させるだけでなく環境へ悪影響も与えるため,その解決が強く求められている.一方,スマートフォン等の普及により位置情報の取得と通信による情報共有が安価に実現できるようになっており,得られた交通情報を活用した渋滞解消策が望まれる.本論文は,プローブカー等により所要時間のリアルタイムデータの推定や過去の蓄積データが利用可能な状況下において,適切な出発時刻および経路をユーザに提示することで,時間・空間的に交通量を分散する手法を提案する.さらに,パーソントリップ調査に基づく実データを用いたシミュレーション実験によりその効果を検証する.Traffic congestion is a major problem in many modern cities because it causes large economic losses and negatively affects to the city environment. In the meantime, traffic information has been easily collectable in real time with popularization of mobile devices that are able to communicate and localize itself. A solution using the traffic information is desired. In this paper, we propose a method to spread traffic demand temporally with indication of appropriate departure time and route for user under the situation that hourly trip time is available in real time by probe cars. In addition, we prove the efficiency of the method by the traffic simulation using actual data of person trip census.
著者
遠藤 貴士
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.310-320, 2009 (Released:2009-12-28)
参考文献数
15
被引用文献数
10 15

現在、木質バイオマスを原料として、セルロース成分等を酵素加水分解して糖に変換した後、発酵してエタノールを製造する技術が注目されている。そのプロセスではセルロースの反応性を高める前処理が必要となる。粉砕処理は効果的な前処理技術の一つであるがコスト高が課題であった。近年我々は、経済的な粉砕前処理方法として湿式メカノケミカル処理技術を開発した。この技術ではセルロース成分をナノサイズの繊維にまでほぐしている。生成したナノ繊維は、セルロースの結晶性が保持され、さらにリグニンが残存していても、高い酵素反応性を示した。我々が開発した前処理技術は、木材やセルロースが持つナノ構造の特徴を活用した方法である。
著者
諸星 典子 遠藤 久 斎藤 兆古 堀井 清之
出版者
The Visualization Society of Japan
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.235-238, 2001

Visualization of interactive mutation inside reader's mind while reading a book has been studied by employing the discrete wavelet analysis. Readers are attracted to the book world as if they are. However, it is difficult for the readers to keep concentrating their own minds on the book world. Since reading a book is to switch the book and real worlds constructed by some layers of the story, then this sometimes confuses the readers. The layers are classified into two types. One is a real world in the story as character's life. The other one is a virtual world representing character's thoughts or recollections. To clarify the effects of these layers, movement among them is visualized by the wavelet multi-resolution analysis. In the present paper, Ekuni's novel, Rakka suru Yuhgata, is studied to extract the opportunities when the text lets the readers move from the book to real worlds.
著者
大澤 博隆 栢野 航 遠藤 航 三浦 友博 丹波 正登 守谷 友里 結城 明 長野 正
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1128-1136, 2016-04-15

技術の発達によって機器の機能が増加している.増加した機能をユーザに分かりやすく伝える手法として,擬人化エージェントを用いた機能説明が提案されてきた.本研究では擬人化エージェントを実世界に拡張させる演出を用いて,複合機(Multi-Function Printer,MFP)の操作説明を行い,人間のインタラクションがどのように変化するか検証した.検証結果として,スクリーン上のエージェントの説明を実世界に拡張することにより,その後のユーザの操作時間が有意に短くなることを確認した.また,ユーザの発話量が有意に増加すること,説明後に学習への興味が向上することが評価結果から示唆された.Technological advancements have enabled both home and office appliances to have more functions, and these increasing features makes the appliance more difficult to learn. Explanation from an anthropomorphic agent have been proposed for explaining such complex features. We propose to extend an agent that instructs users about the features of MFPs by extending representations with real-world actuators. The agent hides its real eyes and arms in onscreen mode, and extends them in real-world mode. We created the movable devices and evaluated how this transitional expression supports users' understanding of how to manipulate the MFP and enhances users' motivation to use it. The result suggests that transitional explainer decreased manipulation time of users compared with non-transitional condition. We also surveyed increasing users' verbal behaviors and increased impressions scores that suggest user increased interest for repairing MFP.
著者
大久 長範 鈴木 直樹 三浦 みどり 遠藤 耕介 藤田 康弘
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.442-446, 2012-09-15
被引用文献数
1 5

小麦粉に8% (w/v)食塩水を添加し24時間熟成した後に手で伸ばし製麺したところ,稲庭うどん等に見られている空隙が形成された.熟成温度を10℃から23℃,30℃と高くすると空隙が大きくなった.稲庭うどんの生地から酵母(M1株とM2)を単離した.いずれの株も,グルコースをはじめ5種類の単糖,二糖類を発酵しガスを発生し,可溶性デンプンを資化し,10% (w/v)の食塩水溶液にも耐性を示した.rDNAのITS領域の塩基配列および糖の資化性から,これらの菌株を<I>Hyphopichia burtonii</I>と同定した.M1株,M2株を小麦粉に添加しドウを作製し30℃に保存すると,10時間以降にドウ体積の増加した.対照および<I>Hyphopichia burtonii </I>NBRC10837では,36時間にわたりこのようなドウの膨れは認められなかった.稲庭うどん等の手延べ乾麺の空隙形成に耐塩性酵母が関与していると考えられた.
著者
遠藤 和子 唐崎 卓也 安中 誠司 石田 憲治
出版者
農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所
雑誌
農村工学研究所技報 (ISSN:18823289)
巻号頁・発行日
no.210, pp.37-48, 2010-03
被引用文献数
2

「限界集落」という言葉がにわかに注目されるようになった。もともとは、大野が65歳以上の高齢者が集落人口の半数を超え、冠婚葬祭をはじめ田役、道役などの社会的共同生活の維持が困難な状況におかれている集落を限界集落と定義したことに始まる。農林業センサスによると1995年から2000年にかけておよそ5,000の集落が消滅している。その後も農村振興局の調査で1,400、国交省の調査で2,640の集落が消滅の危機に瀕していることが報告されており、「限界集落」問題の根拠となっている。筆者等は平成18年より、限界化が進む群馬県南牧村を対象に振興支援活動にかかわってきた。ところで、平成20年度、ポスト過疎法を議論する過疎問題懇談会から補助金ならぬ「補助人」を望む答申が出されたことを受け、特別交付税措置による集落支援員制度が創設された。本稿では、筆者等が南牧村の振興支援にかかわり行ってきた働きかけと、それらが現地に与えた影響を住民等の反応から整理、分析することにより、限界化が危惧される地域に対する支援方策について考察を行う。
著者
西嶋 規世 遠藤 彰 山口 和幸
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
年次大会 : Mechanical Engineering Congress, Japan
巻号頁・発行日
vol.2013, pp."J101022-1"-"J101022-3", 2013-09-08

Labyrinth seals have the potential to cause rotordynamic instability induced by the fluid force of seal flows. We conducted a computational fluid dynamics (CFD) study to investigate the rotordynamic characteristics of the shaft labyrinth seal of a steam turbine. The effects of different seal gap (0.42-0.85 mm) and seal length (47.6-357 mm) were systematically investigated. The predicted stiffness coefficients increased with increasing seal length as expected, but short seals (<100 mm) indicated stronger dependence on seal length. Stiffness coefficients of short seals also indicated strong dependence on seal gap, and increased inversely with decreasing gap, while stiffness coefficients of long seals depend less on seal gap.
著者
鳥屋 智大 遠藤 愛 野中 由紀 山田 幸雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.247_1-247_1, 2016

<p> 現在、男子テニスのダブルスの世界ランキングにおいて、日本人選手は200以内に1名も入っておらず、ダブルスの強化が課題となっている。ダブルスでは、サービス、ネットプレー、コンビネーションなどが重要であると言われているが、これらの要素について具体的なデータは乏しい現状にある。そこで、ダブルスにおいて最初にみられるサービスとネットプレーによるコンビネーションに着目し、世界の現在(World群)と過去(Past群)のトップ選手、現在の日本(Japan群)のトップ選手を対象に、その特徴および日本のダブルスの課題を明らかにすることを目的とした。その結果、① World群の特徴は、Iフォーメーションからペアによるネットプレーのコンビネーションであった。② Japan群の特徴は、雁行陣によるストロークとネットプレーによるコンビネーションであった。③ Past群の特徴は、雁行陣からペアによるネットプレーのコンビネーションであった。④日本のダブルスの課題として、第2サービス時のポイント獲得率を上げ、ネットプレーミスを減らし、状況によって様々なフォーメーションを使い分けることの必要性が示唆された。</p>
著者
遠藤 幹子 塩瀬 隆之
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

新興国での社会課題解決について、導入技術の技能継承マニュアルを整備してもプロジェクト終了と同時にその価値の再生産が不調に終わる。そこで筆者は、ザンビア共和国の農村部で実践した「マタニティハウス建設の物語とコミュニティの同時生成」について紹介する。絵画、踊り、歌などの芸術表現活動を参加住民が共有することで、地域住民への施設の周知や、建築計画から完成後の主体的な運営参加に引き込む仕掛けについて論じる。
著者
遠藤 ルッカス良 馬場 雪乃 鹿島 久嗣
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

感性評価を不特定多数の人から大規模に収集するにはコストがかかるため、効率的に評価を収集する方法が求められる。本研究では、クラウドソーシングによる評価とベイズ最適化による次探索点予測を組み合わせ、タスク生成・評価・予測を繰り返しながら逐次的にワーカから評価を収集する方法を提案する。評価実験の結果、感覚的な評価に対しクラウドソーシングを活用して効率的に探索を行うことができるということが示された。
著者
加納 政芳 遠藤 和也 中村 剛士
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

本稿では,入力された手書き文字をオノマトペによって変形する手法を提案する.本手法を用いることで,ユーザが手書き文字に対して付与したいイメージをオノマトペとして入力するだけで手書き文字が変化するため,直感的に文字表現を漫画の制作活動に活用することができる.
著者
木村 仁 遠藤 真美 小関 道彦 伊能 教夫
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.74, no.740, pp.806-813, 2008-04-25
参考文献数
17

A phenomenon that passengers are getting sleepy is often found in running cars or trains. If a mechanism can reproduce this phenomenon, it is feasible to put insomnia patients or infants to sleep without any harmful effects. This will bring extreme benefit for insomnia patients or parents of babies. The purpose of this study is to elucidate the sleep-inducing factors of running cars or trains, and the final goal is to develop a machine which reproduces the environment to put people to sleep. For the first step of this study, we investigated the relationship between sleepiness and vibrations on several trains. The sleepability of each train is discussed by the ratio of sleeping passengers. According to the vibration analyses, the results suggest that comfortable vibration for sleep has mainly low-frequency (〜2 Hz) vibration with particular fluctuation. In addition, it is also guessed that low level jerks contribute the sleepability.