著者
佐藤 禎紀 柏原 昭博 長谷川 忍 太田 光一 鷹岡 亮
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.1P3OS2103, 2019 (Released:2019-06-01)

Web調べ学習では,Web空間を探索して与えられた課題(初期課題)に対して網羅的,体系的な学習が求められる.一方Web空間では,学ぶべき項目や順序(学習シナリオ)は与えておらず,学習者は学習課題に対する知識構築と次に学ぶべき課題の展開を並行して行うため,認知的負荷が高い.筆者らはWeb調べ学習におけるプロセスをモデル化したWeb調べ学習モデルを提案し,そのモデルに沿った学習を促すシステムiLSBを開発した.一方で学習者はiLSBを用いても初期課題と関係ない課題を展開する場合があり,学習シナリオの診断が必要である.しかし一般的な,解となるシナリオと学習者のシナリオの比較による診断は学習者の主体性を阻害してしまう.そこで本研究では,Web上の関連データをリンク付けしたLOD(Linked Open Data)を用いて,学習者の主体性を阻害せず課題展開を診断することで,より妥当なシナリオ作成を促す手法を提案する.また,本稿では提案手法の評価実験を行った.その結果,提案手法は学習者の課題展開への見直しを促し,妥当なシナリオ作成に有効であることが示された.
著者
齋藤 晃 長谷川 裕也 内田 正哉
出版者
公益社団法人 日本顕微鏡学会
雑誌
顕微鏡 (ISSN:13490958)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.39-46, 2013-04-30 (Released:2019-09-10)
参考文献数
31

本稿では,らせん状の波面をもつ電子波の物理的基礎を概説し,最近われわれが行った電子らせん波の生成,伝播および干渉についての結果を紹介する.透過電子顕微鏡の照射レンズ系にFIB加工したフォーク型回折格子およびスパイラルゾーンプレートを導入し,試料上でのビーム径がナノメーターオーダーの電子らせん波を生成した.特にスパイラルゾーンプレートをもちいた実験では,±90ћという大きな軌道角運動量をもつ電子らせん波が生成できた.また,回折格子等を通過した電子がらせん波を形成するまでの伝播過程を観察し,その強度分布がフレネル伝播理論にもとづくシミュレーションときわめて良い一致を示すことを明らかにした.さらに2つの電子らせん波をもちいた干渉実験を行い,互いの軌道角運動量によらずそれらが干渉することを見出した.この結果から,軌道角運動量はスピンと異なり,位置や運動量と同時計測不可能な物理量であることが確認できた.
著者
長谷川 博 中村 励 茶園 雄大 柳岡 拓磨 岩橋 眞南実
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.307-316, 2020-08-01 (Released:2020-07-15)
参考文献数
30
被引用文献数
2

Intermittent exercise performance in a hot environment is lower than in temperate conditions. Cooling strategies at rest are important; however, the appropriate cooling temperature is not clear. The purpose of this study was to investigate the effect of temperature for cooling leg during half-time (HT) on intermittent exercise performance. Eleven men performed two pre-tests and three experimental trials of a 2 × 30 min intermittent exercise protocol in the heat (33°C; 50% relative humidity). During HT, three experimental conditions were set: no cooling (CON), cooling at the thigh using 12°C ice packs (COOL), and cooling at the thigh using 0°C ice packs (ICE) for 15 min. During the 2nd half, which consisted of 5 s maximal power pedaling every minute separated by 50 s of unloaded pedaling (80 rpm) and rest (5 s), the subjects repeated 2 × 15 sets of the intermittent exercise protocol. The peak power output under the COOL condition (694 ± 80 W) was significantly higher than that of the CON (653 ± 84 W). Thigh skin and deep temperatures showed a significant difference between each condition. In the COOL, thermal sensation was significantly lower, and thermal comfort was significantly higher. In a protocol that simulates intermittent athletic competitions such as soccer in a hot environment, using ice packs at 12°C to cool the thigh during HT lowered thigh skin and deep temperatures and improved heat perception and intermittent exercise performance. This cooling strategy is practical, suggesting that it would be effective for actual competitive situations.
著者
井関 直政 長谷川 淳 羽山 伸一 益永 茂樹
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.37-55, 2002 (Released:2007-09-28)
参考文献数
66
被引用文献数
4 4

化学物質による野生鳥類の研究史についてわが国の取り組みを紹介した.ダイオキシン類の汚染が大きな注目を浴びた近年,それらの問題に向けた対策や技術は大きな社会現象にもなった.わが国における化学物質による野生動物への影響に関する研究は,未だ少ないのが現状である.著者らは,魚食性鳥類であるカワウに着目し,ダイオキシン類の体内残留レベルを明らかにすると共に,既報の日本産鳥類のデータと比較した.その結果,カワウは最も高濃度に蓄積する鳥種であった.またPCDD/Fs の残留パターンは, 2,3,7,8-置換体PCDD/Fsが優占し,WHO-TEF (birds) を用いた毒性値への寄与には,1,2,3,7,8-PeCDDや2,3,4,7,8-PeCDF,CB126が大きな寄与を示した.肝臓におけるこれらのコンジェナーは,筋肉や卵よりも特異に蓄積していた.カワウにおけるダイオキシン類の半減期を算出し,環境濃度から卵への濃度を予測した結果,孵化率への影響は1970 年代をピークに減少傾向であることが推察された.現在のダイオキシン類の曝露による未孵化率は27%と見積もられ,個体群の減少には影響しないことが結論づけられた.しかしながら,別のエンドポイントや免疫などの調査の必要性が考えられ,これらを遂行するための非捕殺的モニタリング手法など,カワウ個体群をリスク管理するための新たな取り組みが期待された.
著者
長谷川 伸 小野 高志
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.227-235, 2012 (Released:2012-04-28)
参考文献数
39
被引用文献数
2 3

The primary purpose of this study was to investigate whether the baseball pitchers have asymmetric characteristics of muscle thickness (MT) in upper extremities, trunk, and lower extremities because of repetitive pitching. The secondary purpose of this study was to investigate the relationship between MT and ball speed. Twenty-six college baseball pitchers participated in this study. Twenty-six sites were selected to quantify the asymmetric characteristics of MT. The MT was measured by a B-mode ultrasound. The ball speed, measured by a radar gun, was used to quantify the pitching performance. The MT of forearm, subscapula, and chest in dominant side (pitching side) were significantly greater than those in nondominant side, and the MT of abdomen, lateral abdomen, and anterior thigh in nondominant side were significantly greater than those in dominant side. On the other hand, the MT of forearm in both sides and the MT of lateral abdomen in dominant side were significantly and positively correlated with ball speed. These results suggest that asymmetric muscle thickness in upper extremity, trunk, and lower extremity in baseball pitchers resulted from repetitive pitching, and the MT of forearm and lateral abdomen are related to the ball speed.
著者
長谷川 正義
出版者
The Iron and Steel Institute of Japan
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.451-468, 1955-04-01 (Released:2010-01-19)
参考文献数
117
被引用文献数
1 1
著者
越後谷 和貴 岡田 恭司 皆方 伸 長谷川 弘一 若狭 正彦 木元 稔 齊藤 明 大倉 和貴 須田 智寛 南波 晃
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.E-183_2-E-183_2, 2019

<p>【目的】</p><p> 脳卒中後片麻痺患者のうち、リハビリ開始時に杖なしで自立歩行が可能な患者では、歩行パターンに何らかの異常を有しても、歩行自立の妨げにはならない程度の異常と言える。よってこれらの異常を定量的に明らかにできれば、片麻痺患者に歩行自立を許可する基準となると考えられる。近年、簡便かつ定量的に歩行パターンを評価できるツールとして足圧分布が種々の疾患で広く調べられており、片麻痺患者でも応用が期待できる。本研究の目的は、回復期リハビリ開始前から自立歩行が可能であった片麻痺患者の歩行パターンを、足圧分布を用いて解析し、自立歩行を許可しうる異常を明らかにすることである。</p><p>【方法】</p><p> 回復期リハビリテーションを受けた脳卒中後患者31名のうち、入院時に杖なしで歩行が自立していた右片麻痺患者8名(自立歩行群;男6名、女2名、平均年齢62 ±7歳、梗塞4名、出血4名)と、75歳未満の地域在住者で下肢に整形疾患のない14名(健常群;男7名、女7名、64 ± 6歳)を対象に足圧分布測定システム(F-scan Ⅱ、ニッタ社製)を用いて、10 m 快適歩行における足圧分布、および歩行速度を計測した。足圧分布のデータより、踵、足底中央、中足骨、母趾、第2-5趾の5領域の荷重圧比、足圧中心軌跡の足部長軸方向の移動距離比である%Long をそれぞれ3回計測し、平均値を算出した。統計学的検討では健常群と比較した入院時の特徴を明らかにするため、荷重圧比、%Long、歩行速度の群間比較に対応のないt 検定を用いた。また荷重圧比、%Long と歩行速度との相関をSpearman の順位相関係数で検討した。解析ソフトはSPSS 21 を用い、有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p> 健常群に比べ、自立歩行群では右足(麻痺側)の足底中央への荷重圧比が高値(健常群2.9 ± 1.7% vs.自立歩行群 8.3 ± 6.4%)を示し、第2-5趾への荷重圧比が低値(8.8 ± 4.0% vs. 5.4 ± 1.5%)で、%Longは低値(78.7 ± 7.4% vs. 70.1 ± 8.3%)を示した(それぞれp = 0.008,p = 0.014,p = 0.030)。左足(非麻痺側)では足底中央への荷重圧比が高値(2.8 ± 2.1% vs. 8.2 ± 8.1%)を示し、%Longは低値(77.8 ± 6.8% vs. 68.2 ± 6.1%)を示した(それぞれp = 0.034,p = 0.004)。自立歩行群で歩行速度は低値(1.3 ± 0.2 m/sec vs. 1.0 ± 0.2 m/sec)を示した(p = 0.006)。</p><p> 歩行速度は右足の踵(rs = .49,p = 0.022)、%Long(rs = .45,p = 0.035)とそれぞれ有意な正の相関を示し、足底中央(rs = ‐.56,p = 0.007)とは有意な負の相関を示した。また左足の踵(rs = .56,p = 0.007)、%Long(rs = .49,p = 0.022)とそれぞれ有意な正の相関を示し、足底中央(rs = ‐.60,p = 0.003)とは有意な負の相関を示した。</p><p>【考察】</p><p> 健常群に比べ自立歩行群では麻痺側、非麻痺側とも足底中央への荷重圧比が高く、足部長軸方向への移動距離比である%Longが低値で、かつ%Longと歩行速度との相関性が注目された。脳卒中後患者では両側の%Longが健常者の85%程度あれば、自立歩行を許可することが可能と考えられた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> 書面で説明を行い、同意書を得た上で開始した。測定中は理学療法士が傍に着き、事故のないように配慮した(秋田県立リハビリテーション・精神医療センター倫理審査委員会28-5)。</p>
著者
池田 里奈 吉田 圭佑 髙橋 諒 松澤 暢 長谷川 昭
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

地震の応力降下量は,地球内部の応力サイクルの理解の上で重要なパラメータである.小中地震の応力降下量は,従来,Brune (1970), Sato & Hirasawa (1973), Madariaga (1976)などの震源過程モデルの当てはめにより推定されてきたが,近年では,観測ネットワークの発達により小中地震の破壊伝播過程そのものについての推定もある程度可能になってきている.本研究では,2011年3月11日から2018年10月31日までに福島-茨城県境周辺で発生した小中地震 (Mw 3.3-5.2)の破壊伝播指向性を調べ,さらにそれを考慮して応力降下量の推定を行った. 初めに,経験的グリーン関数法を用いて,対象地震 (348個)の観測波形を近傍で発生したひとまわり小さな地震の波形でdeconvolutionすることにより,各観測点での見かけの震源時間関数を求めた.その結果,本研究で解析対象にした小中地震の多くに,見かけの震源時間関数の継続時間や振幅に明瞭な方向依存性が確認できることがわかった. 次に,楕円形断層の非対称破壊を含む一般化した震源過程モデル (Dong & Papageorgiou, 2003)を用いて,見かけの震源時間関数のコーナー周波数とその方向依存性から断層サイズと応力降下量,破壊の進展方向を推定した.楕円形断層の非対称破壊を導入することにより,従来の円形断層の対称破壊モデルよりも理論コーナー周波数の残差を大幅に減少させることができた.解析を行った348個の地震のうち,306個の地震が有意な破壊伝播指向性を持つことが分かった.破壊の進展方向には偏りがあり,本研究で解析した地震には,破壊が南東方向へ進展したものが多いことが分かった. 推定した断層サイズから求めた応力降下量は,対称破壊モデルを仮定して求めたものより系統的に大きな値を示した.このことは,円形断層の対称破壊伝播を仮定した場合には,同じ継続時間でも破壊域が大きくなり,断層サイズが過大評価されると考えられることから理解できる.推定した応力降下量の平均値は20.2 MPaであり,先行研究によりこの地域で推定されている最大剪断応力の大きさと同程度であった.このことは,個々の小地震が,断層面上の剪断応力の殆どを解消していることを意味するのかもしれない.
著者
長谷川 修司
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.437-445, 2008-07-10 (Released:2008-07-18)
参考文献数
2
被引用文献数
2 3
著者
岸本 征将 北 直人 李 亮 長谷川 恭子 田中 覚
雑誌
じんもんこん2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.97-102, 2019-12-07

本研究では最先端のバーチャルリアリティ技術やジェスチャ認識技術を用いる事で,有形文化財である「モノ」だけではなく,無形文化財といった「コト」を対象とした文化や伝統そのものもデジタルアーカイブ化が目標である.研究内容は祇園祭の粽(ちまき)投げを対象として,デジタルアーカイブ化された有形文化財を活用した仮想空間内でVR ヘッドマウンドディスプレイ(VRHMD)とジェスチャ認識技術を駆使する事で現在では行われていない粽投げの体験が可能なコンテンツを開発した.この様なシステムをデジタルミュージアムと捉え,従来のミュージアムでは体験出来なかった疑似体験によってもたらされる道具の使われ方や当時の様子,習慣等の推察やモノの本質的な理解が可能となった.
著者
香山 智佳子 後藤 友佳子 長谷川 信吾 藤田 岳 丹生 健一
出版者
Japan Otological Society
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.39-44, 2008-03-21 (Released:2011-06-17)
参考文献数
20
被引用文献数
1

Gentian violet (Pyoktanin) is known to have a potent antibacterial activity against Gram-positive bacteria including methicillin-resistantStaphylococcus aureus (MRSA).From November 2000 to August 2006, we have treated 91 patients for intractable ear infected with MRSA by topical treatment with gentian violet. There were 99 infected ears: 44 chronic otitis media, 11 otitis media with effusion treated with tympanostomy tube, 10 repetitive suppurative otitis media, 10 otitis externa, 8 postoperative discharging mastoid cavity for cholesteatoma, 6 cholesteatoma, 4 eosinophilic otitis media, 3 acute otitis media, 3 myringitis. The pathogens detected in those ears during the treatment period were as follows: MRSA in 92 ears, MRSA andP. aeruginosa7 ears. Topical treatment with gentian violet was performed 7.5 times on average. In the 92 ears (92.9%), topical treatment was performed 5.4 times on average. Noteworthily, 23 ears required only one treatment and 16 ears required twice, and this fact was suggesting that frequent treatments were not necessary to control the pathogens sensitive to gentian violet. This high cure rate (92/99) of the ear infected with MRSA also suggested that this treatment was especially effective for the treatment of MRSA infected ears.
著者
工藤 慎一 長谷川 英祐 小汐 千春
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は, 雄が抱卵する多足類ヒラタヤスデを対象とし, 配偶システムと繁殖行動の進化を理解することを目的とした。雄は, 菌類の感染から卵を保護していた。野外では, 体節幅の広い雄ほど繁殖に成功し抱卵数も多かった。これは, 体節幅の広い雄ほど雌に配偶者として選ばれ, 抱卵しながら複数の雌と配偶した結果であると考えられた。これらの結果は, 性選択が雄による子の保護の進化に重要な役割を果たすことを示唆している。