著者
白石 智子 関口 和正 大森 毅
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本鑑識科学技術学会誌 (ISSN:13428713)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.159-165, 2003 (Released:2009-04-11)
参考文献数
16
被引用文献数
5 5

‘OC-Hemocatch’, an immunochromatographic test for the detection of fecal occult blood was evaluated for the forensic identification of human blood. ‘OC-Hemocatch’ showed positive results for human blood to a dilution of 1:500,000 and provides the strongest detection line for a dilution of 1:20,000. On the other hand, the human blood diluted to 1:100 was negative for ‘OC-Hemocatch’ because of the high dose hook effect. While heating at over 150°C, long term exposing to sunlight, washing and bleaching of bloodstains prevented the detecting of human hemoglobin using ‘OC-Hemocatch’, contamination of blood with various body fluids did not affect it. Furthermore, ‘OC-Hemocatch’ detected human hemoglobin from old bloodstains stored for 15 years at room temperature when 5% ammonia was used for extraction. These results demonstrate that ‘OC-Hemocatch’ can be effectively applied to forensic identification of human blood.
著者
関村 利朗 松原 あゆみ 蘇 智慧
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.46-52, 2017

<p>アフリカ産のアゲハチョウ: オスジロアゲハ(<i>Papilio dardanus</i>),フォルカスミドリアゲハ(<i>Papilio phorcas</i>),ルリアゲハ(<i>Papilio nireus</i>),アフリカオナシアゲハ(<i>Papilio demodocus</i>)と日本に生息するアゲハチョウ科のチョウとの分子系統関係を,ミトコンドリアDNAの <i>ND5</i>,<i>COI</i> と<i>COII</i> 遺伝子領域の塩基配列を使って分析し,検討した. アゲハチョウ属(<i>Papilio</i>)の分子系統樹を作成するにあたっては,本研究で得られた10種のチョウの塩基配列データの他に20種類の<i>ND5</i>,<i>COI</i> と<i>COII</i> 遺伝子データを米国国立生物工学情報センター(NCBI)から取得して利用した.特に,本研究ではアフリカと東・南アジア(日本を含む)地域に生息するチョウのベーツ擬態の起源に注目した.本研究で得られた主な結果は以下の通りである.(1)オスジロアゲハ(<i>P. dardanus</i>)とフォルカスミドリアゲハ(<i>P. phorcas</i>)は,姉妹関係を示したが,日本に生息するアゲハチョウ属のチョウと分子系統的類縁関係を持たない.(2) ルリアゲハ(<i>P. nireus</i>)は,マダガスカルに生息するオリバズスルリアゲハ(<i>P. oribazus</i>)そしてエピフォルバスルリアゲハ(<i>P. epiphorbas</i>)と姉妹関係を示した.しかし,日本産のアゲハチョウ類とは類縁関係を示さなかった.(3) アフリカオナシアゲハ(<i>P. demodocus</i>)は,アジアの東部および南部地域に広く生息するオナシアゲハ(<i>P. demoleus</i>)と姉妹関係を示した.これは,この2種のチョウが近縁であり共通祖先由来であることを示唆している.この結果は<i>COI</i>,<i>COII </i>と<i> EF-1α </i>遺伝子を用いた Zakharov <i>et al</i>.(2004)のものと一致する.(4)クロアゲハ(<i>P. protenor</i>)とオナガアゲハ(<i>P. macilentus</i>)に観察される雌雄両性擬態はシロオビアゲハ(<i>P. polytes</i>)とナガサキアゲハ(<i>P. memnon</i>)に見られる雌限定の擬態と緊密な関係があることが示唆された.(5)<i>P. glaucus</i>(clade J)と<i> P. clytia</i>(clade K)の姉妹関係は強く支持された.最後に,アフリカと東・南アジア(日本を含む)に生息する蝶に見られる雌限定擬態について,分子系統学的議論だけでなく他の視点(例えば,最近発見された目的遺伝子)からも議論した.</p>
著者
原周 一郎 別宮 若菜 松川 淳 佐々木 恵子 益子 尚子 関川 佳奈 佐藤 美和 齋藤 裕 浅田 弘法
出版者
日本産科婦人科内視鏡学会
雑誌
日本産科婦人科内視鏡学会雑誌 (ISSN:18849938)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.103-107, 2019

<p><b>Introduction:</b> Myomas are a common disorder in women of reproductive age, affecting 20%–50% of the population. The relationship between myomas and infertility is still unclear, and the effect of myomectomy on reproductive outcomes is uncertain. We retrospectively investigated patients with infertility who had laparoscopic myomectomy (LM) in our hospital and discussed the impact of LM on reproductive outcomes.</p><p><b>Methods:</b> A total of 54 patients with infertility who underwent LM in our hospital between January 2015 and September 2016 were analyzed. All patients received both preoperative and postoperative treatments for infertility, such as timed intercourse, intrauterine insemination (IUI), and assisted reproductive technology (ART).</p><p><b>Results:</b> Mean age was 37.0 (29–44, median 39) years. Of 54 patients, 34 (63.0%) conceived after LM (timed intercourse = 10, IUI = 1, and ART = 23). Mean duration between the operation and pregnancy was 9.2 (4–24, median 8.5) months. Uterine cavity distortion did not have an influence on reproductive outcomes. All pregnant women delivered by cesarean section. No uterine rupture was observed.</p><p><b>Conclusion:</b> LM may be offered to patients who do not become pregnant after infertility treatment.</p><p></p>
著者
関 耕平
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、1)鳥取・岡山両県の県境に位置する人形峠におけるウラン鉱山から排出された放射性廃棄物(ウラン残土)残置問題の解決過程の分析、2)これまでの産業廃棄物の不法投棄事件との異同を明確化すること、3)放射性廃棄物の保管・処理や移動・撤去をめぐる地域紛争の現状と政策課題を明らかにすること、である。とくに福島原発の事故以降、各地で放射性廃棄物の中間貯蔵施設建設・立地をめぐって地域紛争が生じている状況に対し、残置状態から完全撤去へと至った人形峠ウラン残土問題の解決過程を踏まえて分析し、コミュニティ再生の重要性とその政策課題について明らかにした。
著者
戸嶋 裕徳 小柳 仁 藤田 毅 橋本 隆一 矢崎 義雄 河合 忠一 安田 寿一 高尾 篤良 杉本 恒明 河村 慧四郎 関口 守衛 川島 康生
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.27, no.12, pp.1033-1043, 1995

1994年9月までに提出された日本循環器学会心臓移植適応検討会の適応判定申請例は50症例に達した.うち2例は取り下げとなったが,判定を行った48症例につき調査し以下の結果を得た.<BR>1)5例は公式の検討会開催を待たずに死亡した.<BR>2)資料の不備や現時点での適応なしなどの理由により6例は保留と判定された.また1例は肺血管抵抗増大のため適応なしと判定された.<BR>3)適応ありと判定された36例中14例が2年以内に心不全または突然死により死亡した.7例は米国において移植手術を受けた.<BR>4)内科的治療によって3例は改善して当面は移植の必要性がなくなった.1994年末現在の待機中患者は13例である.<BR>5)心臓移植適応ありと判定後最長余命1年を予測しうる指標を求めるために,判定後1年以内に死亡した12例に対し2年以上生存した7例および臨床像の改善を認めた3例の計10例を対照群として,多変量解析数量化理論第II類を応用して生死の判別を試み,両群をよく判別しうる予後指数を求めることができた.<BR>6)今回の解析結果から得られた1年以内の予後不良因子は,心機能NYHA IV度,3回以上のIV度心不全の既往の他,従来用いられてきた血行動態的指標よりは低電位差(肢誘導<5mm),異常Q波>2誘導,QRS間隔の延長といった心電図に関する情報が心筋自体の高度の病変を反映する所見として予後不良を示唆し,心臓移植の適応を考える上で重要な意義をもつと思われた.ただし統計処理に用いた症例数が少ないので,今後も引き続き症例を増すと共に今回は検討できなかった血中ノルアドレナリン,ANPおよびBNPなどの神経体液性因子その他の予後予測因子をも含め再検討することが望まれる.
著者
今関 敏子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.43-55, 1992-02-10 (Released:2017-08-01)

現行の解釈に拠れば、『古今集仮名序』の「花になくうぐひす、みつにすむかはづのこゑをきけば、いきとしいけるもの、いづれかうたをよまざりける。」のうたをよむ主体は、鶯、蛙を代表とする動物ということになる。本稿では敢えて、この古註以来の解釈に、文脈上及び論理整合上の理由で疑問を提示する。そして、うたをよむ主体をめぐって仮名序の言語意識を探り、"人"と"ことば"を中心に展開される和歌観について考察する。
著者
関沼 幹夫 春日 重光 岡部 繭子 畠中 洸 濱野 光市
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.14, pp.89-91, 2016-03

野辺山ステーションは,ソバを対象とした研究やそば打ち実習などの教育を行ってきた。また,2014年度に食堂・厨房設備の改修工事を終えてキッチンスタジオのような設備となった。その設備を活用したそば打ち集団向けの教育プログラムを行った。野辺山ステーションは,これまで以上に栽培から食品加工までを一貫して学べる場として,そばの文化・食品において重要な「そば打ち」を取り入れたプログラムが可能となり,今後の活用が期待される。
著者
栗林 正俊 富樫 均 浜田 崇 尾関 雅章 大和 広明 陸 斉 畑中 健一郎
出版者
長野県環境保全研究所
巻号頁・発行日
no.13, pp.47-53, 2017 (Released:2018-03-23)

長野県環境保全研究所では,気候変動影響調査と市民への環境学習の機会の提供を兼ねた講座とし,毎年8月に長野県内の6箇所(長野,上田,飯田,松本,伊那,大町)で,セミの抜け殻調査を1回ずつ実施している。本研究では,2012~2016年の5年間のデータから,セミの分布状況や年次変化を示し,各種セミの抜け殻数と気候条件の相関関係を基に年次変化の要因を考察した。この結果,エゾゼミは標高700m以上の涼しい調査地点で確認され,ニイニイゼミは標高700m未満の暖かい調査地点で確認された。松本会場ではエゾゼミが,長野会場ではニイニイゼミが,それぞれ減少傾向にあるが,長野,上田,松本の3会場ではミンミンゼミが増加傾向にあった。この3会場全てで,ミンミンゼミの抜け殻数は5月の月平均気温と有意な正の相関があった。今後も各地点での調査を継続すると共に,定点で時期を変えて複数回の調査を行い,調査のタイミングによるセミの抜け殻の種類の違いを評価することが課題である。
著者
横井 愼一 関口 麻衣子 加納 塁 小林 哲郎
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.211-215, 2010
被引用文献数
2

7歳6カ月齢の雄のヨークシャーテリアの顔面,右後肢から臀部にかけて,丘疹,鱗屑および痂皮を伴う脱毛が認められた。病変部の皮膚押捺塗抹検査では棘融解細胞を疑わせる円形の細胞が見られ,皮膚掻爬検査では鱗屑中に糸状菌の菌糸を認めた。病理組織学的には液状変性を伴う表皮内および毛包壁へのリンパ球浸潤からなる境界部皮膚炎の像を示し,角層中にはPAS陽性の菌糸様構造物を認めた。角層の真菌培養および遺伝子検査の結果, <i>Trichophyton rubrum</i>が検出されたことから,本症を<i>T. rubrum</i>による皮膚糸状菌症と診断した。<br>
著者
井関 龍太 川崎 惠里子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.105, 2009

過去の出来事を思い出すときには,自分自身がその場にいて実際に周囲の状況を見ているかのように思い出す場合と(一人称の視点),第三者の立場に立って外部から自分を見つめているかのように思い出す場合(三人称の視点)がある。このような想起の視点は,現在の自己との整合性が低い記憶を想起する場合には三人称になりやすいことが報告されている。このことから考えると,現在からより離れた時点の記憶を想起するときほど,三人称の視点で想起されやすいと思われる。そこで,本研究では,手がかり語のイメージ性を操作して自伝的記憶の想起を求めた。一般に,イメージ性の高い語は,より過去の出来事を想起させることが知られている。実験の結果,高イメージ語は,低イメージ語よりも,より過去の出来事を想起させた。しかし,想起の視点は,手がかり語の違いによって有意には異ならなかった。想起の鮮明性は,高イメージ語の場合に高い傾向が見られた。
著者
高木 周 関 和彦 神保 泰彦 榛葉 健太
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-07-30

超音波の脳神経系の刺激に関しては,神経細胞レベルで発火が観測されている複数の報告がある一方,マウスを用いた動物実験では,脳への超音波刺激による運動誘発は脳神経系への刺激ではなく,聴覚を刺激する音の影響によるものとする異なる内容の報告がなされている.申請者らは,超音波が神経細胞の活動を誘発し,生体の運動誘発が達成できる可能性について,独自の実験系や数値解析手法を利用して,その詳細を調べる.本実験で得られた知見は,今後,脳神経系に損傷を与えない低強度の超音波による脳活動の活性化などへの応用に繋がり,将来的にはリハビリや認知機能の改善などへの革新的技術へと展開していくことが期待できる
著者
藤山 友紀 立花 詠子 塚原 丘美 草間 実 今峰 ルイ 溝口 麻子 間瀬 創 佐藤 愛 関口 まゆみ 渡会 敦子 中島 英太郎
出版者
名古屋学芸大学管理栄養学部
雑誌
名古屋栄養科学雑誌 = Nagoya Journal of Nutritional Sciences (ISSN:21892121)
巻号頁・発行日
no.4, pp.9-16, 0208-12-25

糖尿病治療では、良好な血糖コントロールを行う上でエネルギー摂取量の遵守は重要である。しかし、糖尿病治療薬によっては安静時エネルギー消費量(REE)に影響を及ぼすことが報告されている。そこで、sodium glucose cotransporter 2(SGLT 2)阻害薬のREEに及ぼす影響を検討した。外来受診中の2 型糖尿病患者20名を対象に、SGLT 2 阻害薬服用前と3か月後でREE 測定、体組成測定、血液検査、食物摂取頻度調査を行い比較した。結果、REE は服用前後で1554±257kcal/ 日から1491±313kcal/日と低下傾向を示したものの有意差は認められなかった。また、体重当たりのREEも有意差は見られなかった。体重や体脂肪量が有意に低下したが、骨格筋量は有意な変化は見られなかった。以上の結果より、3ヶ月間のSGLT 2阻害薬服用ではREEに影響を及ぼさない可能性が示唆された。今後は症例数を増やした検討が必要である。
著者
鈴村 和大 飯干 泰彦 澤井 利夫 田附 裕子 関 保二 藤元 治朗
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.678-681, 2006
参考文献数
9
被引用文献数
2

小児の刺杭創は稀である.今回われわれは肛門より小腸脱出をきたした小児の直腸刺杭創の1例を経験したので報告する.症例は8歳男児.入浴中,シュノーケルで遊んでいたところ転倒し,肛門に突き刺さり,腸管が脱出しているとのことで当科受診となった.来院時,肛門より長さ約30cmの小腸が脱出しており,うっ血をきたしていたため用手的に直腸内に還納した.大腸以外の臓器損傷を精査すべく尿検査,CT検査を施行するも,明らかな損傷を思わす所見はなかった.大腸損傷の診断で緊急開腹術施行したところ,損傷部は直腸で挫滅の程度は軽度であり,また腹腔内の汚染も軽度であったため,人工肛門を造設せず1期的に縫合閉鎖した.経過は良好で術後17日目に退院した.文献的に検索しえた本邦小児報告例49例について検討を加えた.刺杭創は受傷状況を十分に把握し,刺入路を明確にしたうえで,損傷臓器を的確に診断することが重要である.
著者
丹 秀也 関根 康人 渋谷 岳造 宮本 千尋 高橋 嘉夫
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>木星の衛星エウロパは、表面を氷地殻に覆われており、内部には内部海を持つことで知られる。近年の望遠鏡観測により、木星の衛星イオ由来の硫酸がエウロパの公転後面を汚染している一方、汚染の少ない公転前面にはナトリウム塩などの内部海由来の物質が存在していることが示された(Ligier et al., 2016)。これは内部海での化学反応により硫酸が消費されている可能性を示すが、その反応や温度・pH 条件はよくわかっていない。本研究は、エウロパ内部での熱水環境における硫酸還元反応が消費過程として働く可能性を室内実験で検証し、温度やpH条件を制約することを目的とする。エウロパ海底条件1300気圧下で溶液のオンライン採取が可能なオートクレーブ装置により硫酸還元反応の速度のpH依存性を調べた。また、硫酸還元の反応率はpHが小さいほど速くなることから、エウロパ内部海では熱水環境が硫酸濃度とpHを安定化させる、負のフィードバック作用が働く可能性がある。</p>