著者
大野 一典 熊本 悦明 毛利 和富 青木 正治 豊島 真 杉山 善朗
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.1486-1492, 1985-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
8

機能的 (心因性) インポテンスにおいて, そのパーソナリティーを十分に把握することが本症の診断治療に役立つものと考え, 投影法による心理検査を行った. この場合対照として正常人のみならず, 性染色体異常症である Klinefelter 症候群, 低 androgen 状態である類臣官症についても同様の検討を加えた.機能的インポテンス患者では, 男性としての性的役割, 性的同一視が Klinefelter 症候群, 類宦官症に比較して確立している傾向にあるにもかかわらず aggressiveness が乏しく, 内向的で感情の抑制が強いと言う結果であった. このことから, 機能的インポテンスの治療を行う場合心理学的アプローチにより, aggressiveness 低下という点を改善する必要があると思われた.
著者
青木 一雄 牧野 芳大 鄭 奎城 勝亦 百合子
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ド国サントドミンゴ市の小児(15歳未満)1,031人(男性505人、女性526人)に対し、上部消化管に関する健康調査を実施し、以下の(1)~(5)の結果を得た。(1)ド国小児のH.pylori感染率は、6-10歳において男女間で有意差(p<0.01)が認められたが、他の年齢階級においては、男女間で有意な差は認められなかった。また、慢性萎縮性胃炎(CAG)有病率は、どの年齢階級においても有意な差は認められなかった。小児の男性、女性ともに、加齢とともにH.pylori感染率は増加していたが、CAG有病率は、男性、女性ともに加齢変化は認められなかった。(2)ド国小児のH.pylori菌の病原性の指標になるCagA抗体の陽性率は、男性、女性とも加齢とともに増加していた。また、全体(男性、女性合計)で陽性者、強陽性者の合計は、0-2歳;0.143,3-5歳;0.210,6-10歳;0.356,11-15歳;0.480と加齢とともに有意(p<0.01)に増加していた。(3)H.pylori感染リスクをロジスティック回帰分析で検討した結果、自覚症状として下痢を有していた小児は、同症状を有していない小児に比し、1.6倍高く、男児は女児に比し1.5倍高かった。また、小児の年齢、同居している小児の人数、及び血清ガストリン値は、それぞれ、年齢が1歳高くなるとH.pylori感染のリスクは1.3倍、同居している小児の人数がひとり増えるとそのリスクは1.2倍、さらに血清ガストリン値が1pg/ml増加するとリスクは1.008倍になっていた。(4)CAGのリスクをロジスティック回帰分析で検討した結果、H.pylori感染者では、非感染者に比し2.7倍高かった。また、H.pylori菌の病原性と関与するCagA抗体の多寡もCAGのリスクを2.1倍高め、血清ガストリン値の上昇(1pg/ml)は、CAGのリスクを1.006倍高めていた。(5)H.pylori感染とCagA抗体陽性率の関連性の検討において、男性においては、H.pylori感染者のCagA抗体陽性率は、陽性者、強陽性者を併せて0.883であり、女性においてのそれは0.901であった。また、H.pylori感染の有無別のCagA抗体陽性率は、男女間で有意な差は認められなかった。
著者
大島 慶一郎 江淵 直人 青木 茂 深町 康 豊田 威信 松村 義正 北出 裕二郎 舘山 一孝 二橋 創平 小野 数也 榎本 浩之 木村 詞明 田村 岳史
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

海洋中深層循環及びその変動を決めうる海氷生産量を、衛星データ等から見積もるアルゴリズムを開発し、そのグローバルマッピングを初めて行った。沿岸ポリニヤでの高海氷生産過程を長期係留観測から明らかにし、アルゴリズムの検証も行った。南極第2の高海氷生産域であることが示されたケープダンレー沖が未知の南極底層水生成域であることもつきとめた。南極海とオホーツク海では、海氷生産量の変動が底層水や中層水の変質とリンクしていることを明らかにし、中深層循環弱化の可能性を指摘した。
著者
青木 善治
出版者
三条市立月岡小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

1研究目的造形的な活動を通して、子どもたちが周囲のもの、人、こととの関係において、自己をつくり変え、自分が生きている社会や文化との通路をつくりだしていくためには、子どもたちの学習活動を生きることと学ぶことを一体化した全人的な人間形成の視点から捉えなおし、真に学びがつくられていく学習状況へとつくり変える必要がある。そこで、これまでの造形教育を成り立たせてきた個人活動モデルの枠組を問い直し、次の点について明らかにすることを目的とした。(1)一人ひとりの子どもが教材(もの)、場(状況)、活動、他者(人)とのかかわり合いを通して、社会的で文化的に新たな行為をつくり生きることが可能となる行為と活動の論理を明らかにすること。(2)こうした行為と活動の論理に基づきつくられた学習状況において、子どもたちが行うつくり表す行為を、もの・こと・人との相互行為の視点から捉えなおす試みを繰り返すことにより、全人的な表現活動を展開することが可能となる教育実践の在り方とその開発研究の在り方を実践的に明らかにすること。2研究方法造形的な学習場面をビデオカメラを用いて記録し、会話、相互作用、相互行為、造形行為を記述し、子どもの活動世界とつくり表していくものとの世界とが、どのような関係性において相互的につくられていくのか、相互行為分析を行い捉えなおした。3研究成果子どもが学びを生成していく行為や活動の論理に基づき、新たな活動状況を開発し再実践することにより、子どもたちがもの・こと・人との相互行為を通して、自身の行為や活動の論理と、学びを拡張する在り方について検証と考察を行った。その結果、子どもたちがもの・こと・人と生き合う学びの過程をつくり成り立たせていく「学力」や「基礎・基本」、その過程を支援していく「評価」のあり方を研究開発する上で基本となる臨床的な実践研究開発法において大切なことを実践的に明らかにすることができた。
著者
日高 恵喜 青木 光広 村木 孝行 泉水 朝貴 藤井 岬 鈴木 大輔 辰巳 治之 宮本 重範
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.325-330, 2008-12-20

【目的】本研究の目的は,未固定遺体8股を用いて腸骨大腿靭帯の上部線維束と下部線維束を選択的に伸張することができる股関節肢位を明らかにすることである。【方法】変位計測センサーを各線維束の中央部に設置し,伸び率を測定した。また3次元動作解析装置を用いて股関節角度の測定を行った。靭帯を伸張させた際に緩みがなくなったときの変位の値を開始距離(L0)として計測を行った。上部線維束は6肢位,下部線維束は7肢位で伸び率を測定した。【結果】上部線維束の伸び率は内転20°+最大外旋,最大外旋,内転10°+最大外旋の順に大きく,最大伸展の伸び率より有意に大きな値を示した。下部線維束の伸び率は最大伸展,外旋20°+最大伸展の順に大きく,最大外転の伸び率より有意に大きな値を示した。【考察】上部線維束では最大外旋,内転位の最大外旋,下部線維束では最大伸展,外旋位の最大伸展が腸骨大腿靭帯のストレッチング肢位として有用であると考えられた。本研究結果は腸骨大腿靭帯の解剖学的走行に基づいた伸張肢位と一致した。
著者
高砂 敬一郎 矢満田 健 牧内 明子 近藤 竜一 沼波 宏樹 花岡 孝臣 町田 恵美 宮澤 正久 吉田 和夫 青木 孝學 羽生田 正行 天野 純
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.627-631, 1999-07-15
被引用文献数
4 3

症例は75歳, 女性.1992年3月21日, 左下葉の肺硬化性血管腫に対して核出術を施行した.術後, 外来で経過観察されていたが, 手術より約4年後の1996年5月, 胸部X線写真上, 左上下肺野に腫瘤陰影が多数認められ, 擦過細胞診で肺硬化性血管腫と診断された.本症例はその臨床経過より再発と考えられた.従来より肺硬化性血管腫の手術術式は核出術が一般的であったが, 核出術施行後の局所再発症例の報告や本症例を考えると, 可能であれば部分切除術以上の術式の選択が必要と思われた.また, まれではあるが再発を念頭においた術後の経過観察が必要と思われた.
著者
土方 嘉徳 青木 義則 古井 陽之助 中島 周
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.566-576, 2002-02-15
被引用文献数
10

情報検索におけるユーザ分析では,ユーザが閲覧したコンテンツのどの部分に興味を持ったのかを取得することが重要となる.既存の手法でこのようなユーザの興味に関する情報を取得しようとすると,ユーザにアンケートに答えてもらうという手間をかける問題や,Webページ中の一部分というような細かい単位では自動取得できないという問題があった.本稿では,ユーザのWebページ閲覧中のマウス操作を利用して,ユーザが興味を持ったと思われるテキスト部分を全体のテキストから自動抽出する手法を提案する.本研究では,まず事前調査としてユーザのWebページ閲覧中のマウス操作の観察とインタビューを行い,どのような種類の操作がユーザの興味と関連があるのかを明らかにする.次に,これらの操作の対象となるテキスト部分が実際にユーザが興味を持った部分であるのか否かを,「TextExtractor」と呼ぶ実験システムを実装し,被験者実験を行うことで検証する.実験の結果,テキスト中におけるユーザが興味を持ったキーワードの割合は,文書全体よりも,これら各々の種類の操作が対象とするテキスト部分の方が高いことが検証された.また,これらの操作すべてを使ってテキスト部分を抽出した場合,ユーザが興味を持ったキーワードを抽出する精度は,ランダムにキーワードを抽出する方法に比べて約4倍,tf・idfに比べて約1.4倍高いことが確認できた.In the area of information retrieval, it becomes important to acquire which portion of the content the user was interested in. The existing techniques for acquiring this information have the problem which forces the user to answer questionnaires or the problem which cannot carry out automatic acquisition in a fine unit like the portion in a Web page. This paper proposes a method for extracting the text parts which the user might be interested in from the whole text of the Web page based on the user's mouse operation.First, we conduct observations and interviews to discover what kind of operation is related to the user's interest.Second, we build a system called ``TextExtractor'' and conduct an experiment to see the effectiveness of the discovered operations. The result showed that the ratio of the keywords which the user was interested in was higher in the targeted text parts of any kind of the discovered operations than that in the whole document.When we extracted texts using all kinds of discovered operations, the precision to extract keywords of TextExtractor was about 4 times compared with that of random extraction and about 1.4 times compared with that of tf-idf.
著者
青木 一勝 大藤 茂 柳井 修一 丸山 茂徳
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.313-332, 2010-04-25
被引用文献数
10 24

The Sanbagawa metamorphic belt in SW Japan was previously considered to extend in the E-W direction from the Kanto Mountains to Kyushu Island, a distance > 800 km. However, Aoki <i>et al.</i> (2007) recently demonstrated that protoliths of metamorphic rocks in the Oboke area of the belt in central Shikoku accumulated at the trench after <i>ca.</i> 90-80 Ma. Furthermore, Aoki <i>et al.</i> (2008) showed that these rocks suffered blueschist metamorphism at 66-61 Ma, which differs from the timing of the Sanbagawa metamorphism. Thus, these results show that the Sanbagawa belt in Shikoku is a composite metamorphic belt. We, therefore, redefine the traditional Sanbagawa belt; the structurally upper part is the Sanbagawa metamorphic belt (<i>sensu stricto</i>). It formed as an accretionary complex at <i>ca.</i> 140-130 Ma and subsequently experienced BS-EC facies metamorphism at <i>ca.</i> 120-110 Ma (Okamoto <i>et al.</i>, 2004). By contrast, the structurally lower segment termed the Shimanto BS facies metamorphic belt, formed as an accretionary complex after <i>ca.</i> 90-80 Ma and experienced peak metamorphism at <i>ca.</i> 60 Ma. Our observations have important implications for the lateral extension of these two metamorphic belts in SW Japan. The accretionary ages of the traditional Sanbagawa belt in the Kanto Mountains are younger than the Sanbagawa peak metamorphic age (Tsutsumi <i>et al.</i>, 2009), clearly indicating that the entire region of Kanto Mountains Sanbagawa must belong to the Shimanto metamorphic belt. The same timing relationships were also found for the Sanbagawa belt on Kii Peninsula (Otoh <i>et al.</i>, 2010). These results, therefore, indicate that the Shimanto metamorphic belt is exposed in Shikoku, Kii, and Kanto, thus the spatial distribution of Sanbagawa belt (<i>ss</i>) is less than half of its previous extent. The metamorphic grade of the Kanto Mountains in the Shimanto metamorphic belt ranges from pumpellyite-actinolite facies to epidote-amphibolite facies. Therefore, the higher-grade rocks of the Shimanto metamorphic rocks are exposed in the Kanto Mountains in comparison with Shikoku and Kii Peninsula. Hence, these two distinct BS-EA-EC (?) metamorphic belts are virtually equivalent in terms of spatial distribution, metamorphic range of grade, and facies series. Pacific-type orogenic belts typically comprise accretionary complex, high-P/T metamorphic belt, fore-arc sediments, and batholith belt landward from the trench (Maruyama <i>et al.</i>, 1996). In SW Japan, the Sanbagawa belt (<i>ss</i>) is paired with the Ryoke low-P/T metamorphic belt and with the <i>ca.</i> 120-70 Ma Sanyo TTG batholith belt. Furthermore the related fore-arc basin may have developed penecontemporaneously with the Shimanto BS-EA orogeny, which is paired with the late Cretaceous to early Tertiary San-in TTG belt, which extending along the Japan Sea coast. In-between the intervening Izumi Group, a fore-arc basin deposit formed during the Campanian to Maastrichtian. Thus, these two groups of orogenic units, which formed during independent orogenies were both extensively modified during the opening of the Japan Sea <i>ca.</i> 20 Ma. The southward thrusting of the Ryoke and Cretaceous TTG belts over the Sanbagawa extended beyond the southern limit of the Sanbagawa, leading the up-down relationship of the Sanbagawa (<i>ss</i>) and the Ryoke belts.
著者
青木 一勝 飯塚 毅 平田 岳史 丸山 茂徳 寺林 優
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.5, pp.171-183, 2007-05-15
被引用文献数
10 65

四国中央部大歩危地域に分布する三波川結晶片岩類は,原岩層序に基づき構造的上位から下位に向かい三縄層,小歩危層,川口層に分類されてきた.今回,それぞれの層から火成ジルコンを分離し,LA-ICP-MSを用いてU-Pb年代測定を行った結果,三縄層中のジルコンの多くが1900-1800Maの火成年代を示した.一方,小歩危層・川口層中のジルコンから得られた火成年代は三縄層よりも若く,その中で最も若い年代は,それぞれ92±4Ma,82±11Maであった.両層の堆積年代は更に若く,その年代は,四万十帯北帯の付加年代と一致する.このことから,従来,三波川帯と見なされてきた小歩危層,川口層は,四万十帯北帯であることが明らかになった.したがって,三縄層と小歩危層の層境界は,三波川帯/四万十帯境界にあたる.また,大歩危地域における構造的累重関係は,三波川変成帯が四万十帯の構造的上位に位置することを示している.
著者
津田 勝男 山下 紘平 坂巻 祥孝 櫛下町 鉦敏 青木 智佐 飯山 和弘 岡田 斉夫 河原畑 勇
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.119-122, 2005
被引用文献数
2

長期間保存されたNPVについて、その病原性を確認するためにハスモンヨトウ幼虫により生物検定を行った。多角体を水に浮遊して4℃の条件下で24年から34年間保存した7種類のNPVウイルス株を供試した。この結果、6種類のウイルス株が病原性を保持していることが確認された。病原性が確認された各ウイルス株のLC50値(PIB/ml)は、ハスモンヨトウNPV福山株は5.5-6.1×10(5)、ワタヨトウNPVエジプト株は6.1-8.6×10(5)、ヨトウガNPV芸北株は1.5-2.0×10(9)、ヨトウガNPV東京株は1.9-4.3×10(8)、シロモンヤガNPVは3.9-4.7×10(8)、アワヨトウNPVは3.6-5.7×10(7)で、24年から28年間の長期保存の間に病原力は低下したが、病原性が残存していることが明らかになった。一方、保存期間が34年であったクサシロキヨトウNPVでは病原性が消失していた。また、長期間の保存によって病原力が低下した場合でも、再接種を行い虫体によりウイルスを増殖させることによって病原力が回復することが確認された。
著者
櫻井 啓志 宮本 貴朗 青木 茂樹 岩田 基 汐崎 陽
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.442, pp.213-220, 2011-02-24

近年,通常のキーボード操作による非定型文を対象としたキーストロークの特徴を利用したユーザ認証に関する研究が行われている.本稿では,複数のキーストロークの特徴から得られる指標を組み合わせてユーザを認証する手法を提案する.まず,予め登録しておいた複数のユーザのテンプレートを用いて,各指標のパラメータをユーザごとに適切な値に設定する.次に,設定したパラメータを用いて,ニューラルネットワークの結合重み係数をユーザごとに学習させる.そして,ログイン後に文字を入力することに,テンプレートとの類似度を各指標からそれぞれ算出し,これらの値をニューラルネットワークに入力し,ユーザを認証する.提案手法を用いて実験を行った結果,他人受入率が0.17%,本人拒否率が2.38%となり,従来手法と比較して高い認証精度が得られた.
著者
青木 芳夫
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.28, pp.77-93, 2000-03

本稿では、再び家族と一緒に5ヵ月間生活することとなったペルー・アンデス南部村落のユカイ村がこの5年間にどのような持続と変容を経験したのかを分析する。第一の特徴である持続では、エネルギー・資源利用ならびに食生活を通じて、今日でも自足を旨とし、現金支出はできるだけ抑制しようとする姿を記述する。第二の特徴である変容では、社会経済的変化に伴う兼業化・離農を契機とした、自給農業における労働力調達や伝統的宗教儀礼における人間関係の変容を指摘する。
著者
青木 陽二
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.469-474, 2001-03-30
参考文献数
94
被引用文献数
1 3

風景や景観を表題にする著作が近年になって多くなった。これは風景というものに対する興味が人々に現れた結果であると考えられる。明治以降に出版された風景や景観を表題などに含む本について, 風景という現象に対する理解がどのように変遷して来たかについて調べた。その結果最初は人間の外界にある現象だと思われていたが, 次第に人間の心に生ずる特別な現象であることが理解されるようになった。人間の五感を通した大脳の機能による現象であることが指摘されるようになり, これをもたらしている景観体験について, 時間の長さを変えて, また気候や文化などによる影響について明らかにする必要が分かった。
著者
伊東乾 榊原 健一 青木 涼子 小坂 直敏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.19, pp.79-82, 2000-02-17

五線記譜法に由来する音高や音色などの概念は、作曲や聴取、分析に深い影響を及ぼしている。本稿では正弦波モデルによる音楽音声の新しい取り扱いを提案する。能楽の発声と記譜の事例に関して正弦波モデルを適用して考察し、合わせて観世榮夫氏の協力で行った研究制作「能オペラ『邯鄲』」にも触れる。The concepts of pitch and timbre, which have their origin in western classical music notation system, deeply ruled the music thinking of composition, listening and analysis. In this article we propose a new treatment of musical voice based on a sinusoidal model. Noh music theater, Japanese traditional opera, have proper charactaristics in its singing technique and notation system to be analysed with a sinusoidal model. We also report research = production "Quand-Temps" Noh-Opera after the concepts of M. Duchamp and J. Cage, which is a collaboration with Hideo KANZE, prominent Noh actor in KANZE style.
著者
青木 輝勝 安田 浩
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.109-120, 2011-01-15

近年,インターネット上ではCGM(Consumer Generated Media)コンテンツが急増している.CGMはこれまで困難であったエンドユーザの発信を可能にするという特徴を持つが,もう1つの特徴として,個々のコンテンツ自体の価値に加え,その集合体または融合体としてのコンテンツ群の価値が高いことがあげられる.この集合体・融合体としての価値の高さは「共創効果」によってもたらされたものと広く考えられている.その反面,共創効果に関しては概念論のみが先行し,それを定量的に測定するための方法論や共創効果を高めるために情報通信システム・情報通信サービスが何を行うべきかについてはこれまで十分な議論が行われていない.本稿では,筆者らが開発したDMD2.0と呼ぶシステムを用いて開発したAnimepediaという複数ユーザによるCGMアニメ制作システムを基盤として,ツリー型CGM制作における共創効果の定量化を試みる.まず,共創曲線と呼ぶ概念モデルを仮定し,実験を通じてこの曲線の存在を実証する.続いて,この曲線を用いた共創効果の最適化方法について提案を行う.
著者
青木 義次 大佛 俊泰
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

我々は自分の頭の中に描いたある種の概念図形を利用して,実際には見ることのできない巨大な都市空間を理解している。本研究では,都市の基本骨格となるような環状の鉄道路線について,その地理的イメージを計量的に抽出し,どのような概念図形を用いて理解しているのかについて検討した。まず,イメージマップを用いた山手線に関する過去の研究をもとに,同じ環状構造を有する大阪環状線について同様の分析を行った。その結果,大阪環状線はほぼ円に近い円環状の形態として,また,内部を縦断する御堂筋線は直線に近い形態として,非常に単純化した概念図形のもとに理解されていることが判明した。さらに,居住歴の長い人ほどイメージ変形は小さいと予想されたが,イメージ変形の程度と居住歴との間には相関性は認められなかった。以上のような地理的イメージ形成に重要な概念図形は,文化的な枠組みを背景として形成されることから,文化の異なる場所では概念図形自身が異なっていたり,イメージ変形のメカニズムが異なっているという可能性がある。そこで,このことを比較検証するため,大韓民国ソウル特別市の環状線(2号線)について,韓国人と日本人(何れもソウル市に在住の人)に同様のイメージマップを用いた調査分析を試みた。その結果,山手線・大阪環状線についての調査結果と同様に,環状線である2号線を横長の楕円状の形状として,実際の形態を非常に単純化して理解していることがわかった。すなわち,図式による理解構造には,文化的枠組みの違いや,(ソウル市内での)居住暦の差異に依存した傾向は見いだすことができなかった。以上の結果を総合すると,本研究で調査分析した環状の鉄道路線に限って言えば,文化的な枠組みにはそれ程影響されない幾何図形のような普遍的なものが模式図として用いられていると言える。