著者
青木 聡子
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.63-89, 2020-02-21 (Released:2021-09-24)
参考文献数
19

本稿では、長年にわたり展開されてきた住民運動、なかでも名古屋新幹線公害問題をめぐる住民運動を事例として取り上げ、運動を続けざるを得ない現状を検証し、運動の終息に向けた課題を検討する。名古屋新幹線公害問題では、国鉄(当時)との和解成立(一九八六年)から三十年以上を経た現在も、原告団・弁護団が活動を続けている。こうした住民運動の長期化によってもたらされたのは、運動の負担が、原告団のなかでもいまだ運動に従事し続ける少数のコアメンバーに集中するという事態である。JR側の担当者が数年で入れ替わるのに対して、原告団側は、その数が減りはしても、増えることも新しいメンバーと入れ替わることもない。原告団とJRとのあいだには、部分的な信頼関係ができつつあるものの、原告団にとってJRはいまだに、「何しよるかわからん」相手でもあり、住民運動をやめるわけにはいかない。この長期化した住民運動の幕引きには、行政による積極的な介入が必要であり、本稿の事例では、原告団が描く幕引きのシナリオは、住民運動が果たしてきた役割を名古屋市が担うようになるというものである。だが、実際には名古屋市による積極的な取り組みは特定のイシューにとどまり、継続性も懸念される。発生源との共存を強いられる人びとの苦痛や負担を和らげ、少数の住民に負担が集中する住民運動を軟着陸させるためには、いまだ制度化されざる部分の制度化が必要である。
著者
牧 祥 本間 善之 土屋 英俊 田中 一成 青木 滋 武岡 元 三木 猛生 大島 博 山本 雅文 森本 泰夫 小川 康恭 向井 千秋
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.7-18, 2013-06-28 (Released:2017-09-04)
参考文献数
16

地上の1/6の重力環境(1/6G)の気相中における浮遊粒子状物質(SPM)の挙動を調べるため、パラボリックフライトによる擬似弱重力環境下で模擬月砂粒子(シュミラント)を実際にチャンバー内で拡散させた。エルトリエータのカットオフ値が1/6Gでは√<6>倍に増加することを利用し、気相中の浮遊粒子状物質(SPM)の重力影響を検証した。その結果、気相中の弱重力環境下を浮遊するSPMの沈降速度がストークスの式を使って表せることを明らかにするとともに、浮遊時間が重力の逆数に比例することを示した。SPMの粒径別濃度変化を数値計算した結果、重力が低く、天井が高い屋内ほど粒子が長時間残留することが示唆された。これは月面上でダストが屋内に侵入した場合、その除染作業に多くの時間がかかることを意味している。浮遊時間が粒径により異なるため、ばく露の危険性も粒径で異なっていると考えられる。ばく露の危険性がSPMの浮遊時間の長さにのみ依存すると考えるのであれば、粒径1.0μm以下の微細粒子や10μm以上の大形粒子には、重力差の影響を考慮した対策は必要ない。一方、粒径2.5〜10μmの粒子は、地上では浮遊時間が比較的短いが、月面上ではやや長時間浮遊する。この範囲の大きさのSPMに対しては、安全基準を厳格化などの新たな対策が必要であると考える。

1 0 0 0 華国風味

著者
青木正児 著
出版者
弘文堂
巻号頁・発行日
1949
著者
青木 孝
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.61-118, 1985 (Released:2007-03-09)
参考文献数
75
被引用文献数
13 14

北太平洋西部における台風の発生および日本への台風の襲来について、地域分布や年変化、経年変化などの気候学的特徴を明らかにした。台風の発生については1953-1982年の30年間を解析の対象とした。日本への台風の襲来は、さらに長い期間の資料を収集して、1913-1982年の70年間について解析した。台風が多く発生したときと少ないときの両者について、発生場所や500mb高度場、雲量、海面水温を比較した。また台風が日本へ多く襲来した年と少ない年における台風の襲来数の分布の違いを調べた。日本各地の台風襲来数の年変化型の地域差を主成分分析で明らかにし、得られた固有ベクトルに対応する振幅係数を使って日本の地域区分を行った。 次に、東部赤道太平洋における海面水温の異常現象であるエル・ニーニョと台風の発生数との関係を見いだすとともに、北太平洋の海面水温と1953-1982年の30年間における台風の発生数および日本への台風の襲来数との相関関係を解析した。大きな相関係数が得られた海面水温、すなわち台風が発生する前年と2年前の北太平洋の海面水温を予測因子として重回帰分析を行ったところ、北太平洋の海面水温が、台風の発生数や日本への台風の襲来数を長期予報するための資料として役立つことがわかった。
著者
青木 勝也 杉多 良文 吉野 薫 谷風 三郎 西島 栄治 津川 力
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1086-1089, 2000-12-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
6

Penaが発表したtotal urogenital mobilizationは総排泄腔長が3.0cm以下の総排泄腔遺残症に対して施行される根治術で, 合併症が少なく, ほぼ正常に近い外観が得られると報告された.今回我々は総排泄腔遺残症の1例に対してtotal urogenital mobilizationを行い満足のいく結果を得たのでその手技を報告する.症例は9カ月女児.posterior sagittal approachにて総排泄腔後面に到達したあと, 総排泄腔より直腸を分離し膣と尿道を一体として受動せしめ会陰部に開口させ, 最後に肛門形成を行った.術後1年が経過して膣狭窄, 排尿障害などの合併症はなく, 外観的に正常に近い状態が得られている.total urogenital mobilizationは総排泄腔遺残症の患児に対して手術時間の短縮, 尿道膣瘻, 膣狭窄などの合併症の軽減が期待でき, 外尿道口と膣口が近接することからより正常に近い外観が得られる優れた手術法であると考えられた.

1 0 0 0 OA 我や人妻

著者
青木苫汀 著
出版者
広文堂
巻号頁・発行日
1907
著者
青木 佐奈枝 小野 聡士 福井 晴那 川嶋 真紀子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.93.21310, (Released:2022-08-30)
参考文献数
19

The purpose of this study was to understand the psychological support problems brought about by the COVID-19 pandemic and differences in responses to these problems. The results of a web-based survey of 318 clinical psychologists showed that 90 % of participants believed that problems occurred due to infection prevention measures, while about half of the participants believed that problems occurred due to changes in the framework of support, such as the introduction of remote psychological support and the reduction of face-to-face support. The four problems that arose in psychological support were “poverty of conversation,” “difficulty in communication,” “difficulty in stable support,” and “disagreement among staff.” Psychologists responded to the problems in three ways: “devising communication,” “verbalization,” and “strengthening multidisciplinary cooperation.” From the results, it was clear that problems such as poor conversation, communication difficulties, and difficulties in stable support occurred in both face-to-face support under infection prevention measures and in the introduction of remote psychological support.
著者
浅井 悠佑 青木 俊介 米澤 拓郎 河口 信夫
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2022-UBI-75, no.21, pp.1-8, 2022-08-29

コンピューティング技術や深層学習技術の発達に伴い,自走式配送ロボット (AMR) の利用が進んでいる.産業面での利用も加速しており,物流倉庫においては配送ロボットがピッキング作業の一部を担うなど,オートメーション化の流れは必至であると言える.しかし,物流倉庫には棚や商品が所狭しと置かれており,ナビゲーションをする際には多くの死角が存在する.従来の AMR は搭載センサのみを用いてナビゲーションするため,死角の多い環境においては,衝突の危険性がある.死角となりうる箇所を対象に見えない障害物の動きを対象とした手法が提案されているが,死角の場所が建物に依存している場合や実験室環境もしくは簡易なシミュレーションによる検証のみにとどまっている場合が多い.そこで本研究では,これらの問題を解決するために実環境でのセンシングを行い,センシング情報を配送ロボットナビゲーションに利用する仕組みを提案する.死角の位置の変化を念頭に,時間変化を考慮したコストマップ構築手法を提案し,実際の物流倉庫を模したシミュレーション環境において実験,評価を行う.