著者
新原将義 太田礼穂 広瀬拓海 香川秀太 佐々木英子 木村大望# 高木光太郎 岡部大介#
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第57回総会
巻号頁・発行日
2015-08-07

企画趣旨 近年,ヴィゴツキーの「発達の最近接領域(ZPD)」概念はホルツマンによって「パフォーマンス」の時空間として再解釈され,注目を集めている(e.g., Holzman, 2009)。パフォーマンスの時空間という考え方によってZPDは,支援者によって「測定」されたり「支援」されたりするものから,実践者らによって「創造」されるものへと転換したといえるだろう。 こうした潮流において現在,パフォーマンスの時空間を創造するための手法として,インプロ及びそれを題材としたワークショップ形式の実践が注目されている(Lobman& Lundquist, 2007)。こうした試みの多くは,単発的な企画として実施される(e.g., 上田・中原,2013;有元・岡部,2013)。 こうしたインプロ的な手法は,確かに対象についての固定化された見方から脱し,新たな関係性を模索するための手法として有用なものであり,また直接的には協働しないがその後も互いに影響し合う「触発型のネットワーク」を形成する場としての機能も指摘されつつある(青山ら,2012)。しかしインプロやワークショップを,単発の企画としてではなく実践現場への長期的な介入の手法として捉えた場合,ただインプロ活動やワークショップを実施するのみではなく,「それによって実践現場に何が起こったのか」や,「インプロやワークショップは実践現場にとって“何”であったのか」,そもそも「なぜ研究者の介入が必要だったのか」といったことも併せて考えていく必要がある。インプロという手法がパフォーマンスや「学びほぐし」のための方法論として広まりつつある今,問われるべきは「いかにインプロやワークショップ的な手法を現場に持ち込むのか」だけではなく,「パフォーマンスという観点からは,介入研究はいかにあり得るのか」や「インプロやワークショップの限界とは何か」といった問いについても議論するべきであろう。 社会・文化的アプローチではこれまでも,コールの第五次元(Cole, 1996),エンゲストロームの発達的ワークリサーチ (Engeström, 2001) など,発達的な時空間をデザインすることを試みた先駆的な実践が複数行われてきた。本企画ではこうした知見からの新たな取り組みとして,パフォーマンスの時空間の創造としての介入研究の可能性について考える。長期的な介入の観点としてのパフォーマンス概念の可能性のみではなく,そこでの困難や,今後の実践の可能性について,フロアとの議論を通して検討したい。公園で放課後を過ごす中学生への“学習”支援:英語ダンス教室における実践の記録広瀬拓海・香川秀太 Holzman(2009)の若者を対象とした発達的活動には,All Stars projectにおける「YO!」や,「ASTSN」といった取り組みがある。これらの背景には,学習・発達を,社会的・制度的に過剰決定されたアイデンティティや情動をパフォーマンスによって再創造することとしてとらえる哲学および,このような意味での学習・発達の機会を,学校外の場において社会的に奪われた人種的マイノリティの若者の存在がある。近年,日本においても経済的な格差が社会問題化しはじめている。これらの格差は,日本においても子ども達の学校外の体験格差としてあらわれ,特に情動性・社会性といった面での発達格差をもたらすと考えられる。 話題提供者はこのような関心のもと,2014年3月から,放課後の時間に公園で屯する若者を主な対象とした計6回の活動を実施してきた。これは,調査対象者の「英語学習」に対する感情の再創造を目的として,彼らが「興味あること」として語った「ダンス」を活動の基礎に,外国人ダンサーがダンスを英語で教える学習活動を組織したものである。外国人ダンサーとのやりとりの中で,子ども達がデタラメや片言で英語を「話している」状態を作り出すことによって,学校での経験を通して形作られた彼らにとっての英語学習の意味が解放され,新たに創造されることが期待された。 本シンポジウムでは特に,これらの活動に子ども達を参加させることや,ダンスというアクティビティに子ども達を巻き込むうえでの困難に注目してこの活動の経過を報告する。そしてそれらを通して,日本においてこのようなタイプの学習の場を学校外に組織していく上で考慮すべき点について議論したい。パフォーマンスとしてのインプロを長期的に創造し続ける: 方法論から遊びの道具へ木村大望 話題提供者は,2010年10月にインプロチームSAL-MANEを組織した。発足当初のチームは,子どもから大人までを対象とした対外的なワークショップ活動を積極的に行っていた。インプロは「学びほぐし」の方法であり,それを通じた自他の学びや変容が関心の中心であった。しかし,2012年に話題提供者が海外のインプロショーを鑑賞したことをきっかけに,チームは定期公演を主軸としたパフォーマンスとしてのインプロの追究へ活動の方向性をシフトさせた。ここでインプロはチームにとって「遊び」の道具となり,それ以前の方法論的理解は後景に退くこととなった。それに伴い,チームの活動は対外的なワークショップ活動から対内的な稽古的活動に転換していく このようにSAL-MANEの活動はインプロを方法論的に用いて第三者の学習を支援するための場づくりから,チームに携わるメンバー自らがパフォーマンスを「創造」する場づくりへ変遷している。この背景には,インプロに対するメンバーの理解や認識の変化が密接に関連している。インプロを手法として用いながら,自らがインプロによって変容した事例と言えるだろう。 本シンポジウムでは,この経過の中で生じた可能性と課題・困難について報告する。パラダイムシフトする「場」:21世紀のドラマへ佐々木英子 2000年前後から,同時多発的に世界各地で急速に発達してきた応用演劇という分野がある。この多元的な分野は,演劇を応用した,特定のコミュニティや個人のための参加者主体の参加型演劇であり,産業演劇とは一線を画している。この現象は,急速なグローバルチェンジの波を生き延びるための,多様性の中で相互作用によりオーガニックに変容し,持続可能な未来を「再創造」しようとする人類の知恵かもしれない。 話題提供者は,英国にて,応用演劇とドラマ教育を学ぶと共に,それに先駆け,2000~2003年,この21世紀型ドラマの「場」を,社会への「刺激」として,勉強会を行い身の丈で提案活動をした経験がある。社会から突然変異と見られたその活動は,子ども時代,正に「ZPD」において手を差し伸べられず,発達しようとする内的衝動が抑圧され腐らされるような苦痛の中,どうすれば生き延びるかを,体験と観察,思考を積み重ねた末に行った自分なりの代替案でもあった。 本シンポジウムでは,提案活動のきっかけとなった自身の子ども時代のドラマ体験,2001年の発達障害の子ども達が参加した演劇,また,最近では2014年に中学校で行った異文化コミュニケーション授業を通して経験・観察された可能性や困難などについて報告する。
著者
幡生 あすか 原田 雅史 高橋 由武 渡辺 俊輔 山下 典之 伊藤 世士洋 岡本 晃典 高木 達也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
情報化学討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.P22-P22, 2011

画像診断の分野で,診断の迅速化および医師の診断支援を目的に,健常者と患者の画像データを統計的に比較する手法が考案されてきた。しかし複数の疾患の可能性を比較,検討し,予測するためには,健常者と患者の判別だけでなく,疾患同士の比較,判別が必要である。そこで,脳血流画像の座標点を脳の機能区分に分け,分類に必要な区分を選択し,サポートベクターマシンによるアルツハイマー病とパーキンソン病の分類に取り組んだ。
著者
高木 浩一 高橋 克幸 上野 崇寿 秋山 雅裕 佐久川 貴志
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.202-215, 2011-03-25
参考文献数
29
被引用文献数
10

パルスパワーは,軍事や慣性核融合を目的に,世界中の発電電力規模の,大型な装置技術として発達してきた.このため,世に広く普及とまではいかず,限られた施設や研究グループのみで扱われてきた.しかし"ちょっとした"パルスパワー(ちょいパル?)が使えると便利なことも多い.水処理,殺菌,ナノパウダー,オゾン生成,きのこ増産,イオンドープ,食品保存,バイオ応用,医療応用など多くの場面で活用できる.また園児・児童・生徒を相手にしたサイエンス教室でも,100円かみなり,脱色やプラズマのデモなどに使用できる.ここでは,学術を少し離れ,簡単に,安価なパルスパワー発生回路を作ることに比重をおく.想定は,4.1,4.4節は理系コースの高校生(物理履修)が,4.2,4.3節は電気系大学生が作ることになる.ここで取り扱う回路は,電圧が数kV〜数十kV(数万ボルト)で,製造コストはお菓子の買える価格帯(100円程度)から高級家電(数十万)になる.
著者
中林 美奈子 寺西 敬子 新鞍 真理子 泉野 潔 成瀬 優知 吉田 佳世 村田 直子 高木 絹枝 若松 裕子 下田 よしゑ 横井 和子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.655-665, 2006-01

明らかな医学的異常がない児をもつ母親を出産後4〜18ヵ月まで追跡し, 精神健康度の変化とそれにかかわる要因を明らかにした。精神健康度はGHQ28日本語版の要素スケールである「不安と不眠」スケールを用いて評価した。その結果, 1)産後4〜18ヵ月の母親の精神健康度の変化として, 4ヵ月時点での良好さを18ヵ月まで維持していた者(良好維持群)28.1%, 良好さを維持できなかった者(悪化群)19.8%, 4ヵ月調査での不良さを改善していた者(改善群)9.4%, 不良さを継続していた者(不良継続群)42.7%いう実態が示された。2)産後4ヵ月の母親における精神健康度悪化予測要因として, (1)夫から情緒的ならびに情報サポートを受けていないと感じていること, (2)身体的疲労感を自覚していること, (3)イライラしておこりっぽいと自覚していることが抽出された。3)産後4ヵ月の母親における精神健康度不良継続要因として, (1)夜間に1回以上覚醒すること, (2)気分や健康状態が悪い, 疲労回復剤を飲みたい, 疲れを感じる, 身体が火照る・寒気がするなどの身体的症状を自覚していること, (3)いつもストレスを感じる, いろんなことを重荷に感じる, 不安を感じ緊張するなどの不安と不眠症状を自覚していることが抽出された。4)育児期間にある母親の心の健康を良好に保つためには, 産後4ヵ月時点で母親の精神健康度とその関連する要因を評価し, 予測的に働きかけることが重要である。
著者
高木 允 森 康真 田村 慶一 北上 始
出版者
社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.93-104, 2008-03-15

本研究では,ブログの書き手であるブロガに焦点を当て,ブロガをノード,トラックバックによるつながりを辺としたグラフから,数カ月にわたって頻出し,かつ重複を許したコミュニティを発見する手法を提案する.提案手法は,複数のグラフから頻出部分グラフを抽出し,得られた頻出部分グラフに重複を許したクラスタリング手法を適用することにより,重複を許した頻出コミュニティを発見する.頻出部分グラフの抽出については,頻出部分グラフ抽出の問題を頻出アイテム集合抽出の問題に変換し,LCM 法を用いることで頻出部分グラフ抽出を達成している.重複を許したクラスタリングについては,頻出部分グラフをNewman らのクラスタリング手法を応用し,縮約グラフの作成と再クラスタリングすることで達成している.提案手法の有用性を確認するために,複数カ月にわたりブログデータを収集し,頻出コミュニティの抽出を行った.その結果,共通の興味・関心を持って頻出するコミュニティと,複数のコミュニティに重複してクラスタリングされるブロガを発見できた.In this study, we focus on bloggers who are writers of blog articles and propose a technique which extracts frequent and overlapped communities across multiple months from graphs consisting of nodes and edges. A node is defined as a blogger and an edge is a connection of trackback. First, the proposed technique extracts frequent communities by extracting frequent subgraphs. Second, the proposed technique extracts overlapping communities by clustering the extracted subgraphs. In the procedures of extraction of frequent subgraphs, we transform the frequent subgraphs extraction problem to the frequent itemsets extraction problem. In the first step, the LCM algorithm is applied to extract the frequent itemsets. In the second step,we applied the Newman's algorithm to find overlapping clusters. To confirm the availability of proposed technique, we collected the graph data and extracted the frequent communities.As a result, frequent communities which have common interests and the bloggers who are clustered into multiple clusters are extracted.
著者
高木 伸之 王 道洪
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

冬季雷雲下の風力発電設備において上向きに開始する落雷の前兆現象を3つ確認した。一つは落雷開始の数秒前から数アンペアの電流が流れる前兆電流である。二つ目は落雷前に発生する微弱な発光を伴う放電現象で風車先端から数メートル程度進展して停止する現象である。三つ目は落雷前に風力発電設備周辺での地上電界強度が正または負の極性に偏る現象である。前兆電流については2秒前には落雷の発生を予測できることを確認した。
著者
川崎 浩二 飯島 洋一 高木 興氏 小林 清吾
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.676-683, 1991-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
15

The progression rate of newly occurred pit and fissure incipient caries of first molars was investigated every 6 months for 24 months. The subjects were 93 1st and 2nd grade elementary school children who did not perform school-based fluoride mouthrinsing. The progression rate after 12 months was approximately 60%, and the non-progression rate was approximately 40%. Cumulative progression rates after 12 months were approximately 60% for the 1st grade, and 40% for the 2nd grade, and the same rates after 24 months were 70% for the 1st grade, and 60% for the 2nd grade. These data were compared with our previous data derived from the same grade of elementary school children who performed school-based fluoride mouthrinsing. There was no statistical difference in the progression of incipient caries between these two schools. This lack of difference may be explained in terms of the complicated form of pits and fissures, or it may be that the fluoride mouthrinsing period was too short to be effective against caries progression.
著者
高木 千恵 タカギ チエ Takagi Chie
出版者
大阪大学大学院文学研究科社会言語学研究室
雑誌
阪大社会言語学研究ノート
巻号頁・発行日
vol.7, pp.73-87, 2005-03

本稿では、大阪方言における述語の否定形式とそれを用いた否定疑問文を取り上げ、~コトナイという分析的な否定形式を中心に記述した。~コトナイは形容詞否定形式の一つだが、疑問形式と融合した~コトナイカは認識的モダリティとして固有の用法を持つ文末形式である。~コトナイカは、話し手にとって真偽が不明なことがらについての話し手の見込みを聞き手に伝え、話し手の判断の妥当性を聞き手に問うモダリティ形式であり、基本的に、話し手の認識を表す否定疑問文と置き換えることができる。否定疑問文はさまざまな用法を担っているが、~コトナイカはその中の一つの用法に特化したモダリティ形式であるということができる。また、「思う」の否定疑問形式にも~コトナイカに類似した用法がある。
著者
玉山 昌顕 角田 晋也 都留 信也 木本 研一 深尾 徹 鳴尾 真二 石井 三雄 北見 辰男 高木 清光 一之瀬 快朗 町田 道彦
出版者
日本マクロエンジニアリング学会
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.65-70, 2006 (Released:2009-08-07)
参考文献数
11

他研究グループと当学会合同研究会との討論会の基礎的項目の構築を図る。貨物と旅客の優先性、国家百年の計なのか、着工待ったなしなのか、ビジネスジェット機受入は、中継ハブ空港なのか、真のハブ空港にするための国家戦略は何か、24時間営業の空港がなぜ首都圏に必要か、必要ならばその機能と運用方法の整備、新幹線駅と地方空港間の交通の利便性、東京湾の環境保全・海運、埋め立てに反対、補償問題・騒音問題等々が議論された。結論は無く、継続審議の価値ある主題である。
著者
井上 祐輔 竹岡 志朗 高木 修一
出版者
日本情報経営学会
雑誌
日本情報経営学会誌 (ISSN:18822614)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.59-71, 2014-09-30

This article discusses some methodological considerations about using Text Mining technology. We interpret the result of Text Mining, based on New Institutional Theory. As a result, we made clear that sign representation is the leverage point in an understanding either isomorphism or differentiation. Moreover, we designate the diffusion of innovations as to be common sign representations. Finally, we suggest the method of Text Mining as how to analyze the diffusion process.
著者
上田 哲男 中垣 俊之 中垣 俊之 高木 清二 西浦 廉政 小林 亮 上田 哲男 高橋 健吾
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

巨大なアメーバ様細胞である真正粘菌変形体の特徴を活用し、細胞に秘められたる計算の能力を引き出す実験を行うと共に、その計算アルゴリズムを細胞内非線形化学ダイナミクスに基づいた数理モデルを構築し、解析・シミュレーションした。(1)粘菌による最短経路探索問題(スタイナー問題、迷路問題)の解法:粘菌を迷路内に一面に這わせ、2点(出入り口)に餌を置く。粘菌は餌に集まりながら迷路内に管を形成するが、迷路内の最短コースを管でつなぐ(迷路問題を解いた)。粘菌を限られた領域内で一様に広がらせて、何箇所かに餌を置き、領域内部での管パターンの形成を見る。2点の場合、最短コースで結ぶ管が、3点の場合、中央で分岐したパターンが、4点の場合、2箇所で3つに分岐するパターンというスタイナーのミニマム・ツリーが形成された。(2)粘菌における最適ネットワーク(最短性、断線補償性、連絡効率)設計問題:粘菌の一部を忌避刺激である光で照射し管形成をみた。粘菌は危険領域を短くし、丁度光が屈折(フェルマーの定理)するように、管を作った。このように管パターン形成には環境情報をも組み入れられている。複数個に餌を置くと、最短性のみならず、一箇所で断線しても全体としてつながって一体性を維持する(断線補償性)という複数の要請下で管形成をすることがわかった。(3)管構造の数学的表現と粘菌の移動の数学的表現:振動する化学反応を振動子とし、これらが結合して集団運動する数理モデルを構築した。全体の原形質が保存されるという条件、粘菌の粘弾性が場所により異なるという条件を入れることで、粘菌の現実に合うような運動を再現することができた。(4)アルゴリズム:管は、流れが激しいとよりよく形成され、逆に流れが弱いと管は小さくなっていく。この管形成の順応性を要素ダイナミクスとして取り入れ、グローバルな管ネットワーク形成の数理モデルを構築した。迷路問題、スタイナー問題、フェルマー問題等実験結果のダイナミクスまでもシミュレートできた。
著者
高木 正洋 津田 良夫 和田 義人
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.223-228, 1995
参考文献数
12
被引用文献数
12

羽化後4∿5日齢の未吸血雌1,478頭を螢光塗料(0.5% Rhodamine B水溶液)でマークし, 長崎大学医学部キャンパス内のグビロガ丘に放逐した。再捕獲雌数の時間的変化および空間的な違いを調査するために, 固定した10ヵ所で9日間人囮採集を行った。その結果, 合計348頭(23.55%)の雌が再捕獲された。捕獲地点間で観察されたマーク個体数の違いを, 各捕獲地点の放逐地点からの距離とそこで捕獲された無マーク虫数を独立変数とした重回帰によって分析した。放逐地点からの距離の標準回帰係数は時間経過とともに低下し, 一方無マーク虫のそれは逆に高くなった。また, 再捕獲虫数の時間的変化を対数回帰分析し, 放逐地点および調査地域におけるマーク個体の生残確率を求めた。
著者
比嘉 由紀子 津田 良夫 都野 展子 高木 正洋
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.205-209, 2000
被引用文献数
4 16

1998年9月, 長崎大学熱帯医学研究所敷地内で家屋周辺の茂み及び裸地においてヒトスジシマカの24時間採集を行い, 周辺環境の異なる採集場所における吸血活動性と密度のちがいを調べた。ヒトスジシマカの密度は茂みで高く, 屋内や裸地で低かった。吸血活動は薄明薄暮に高まり, 夜も高かった。最も活動性が高い薄暮には, 統計的な有意差はみられないが, 昼間や夜間に比べて屋内や裸地で採集される雌個体の割合が高かった。以上の結果からヒトスジシマカの生態における夜間の吸血活動の重要性と薄明薄暮には茂み以外に裸地や屋内などでも吸血される機会が増加することが示唆された。
著者
名郷 直樹 浅井 泰博 三瀬 順一 高木 史江 佐々木 將人 奥野 正孝 五十嵐 正紘
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.215-220, 1998-08-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
14

目的: evidence-based medicineによるレジデント教育の効果を知識, 行動面の変化から評価する.研究デザイン: 自己および外部コントロールによる対照試験セッティング: 大学附属病院対象: 平成6年度自治医大地域医療学で研修中のレジデント15名介入法: 4回の講義と週1回の輪番制のevidence-based medicineに基づく抄録会結果の測定: 1.記述試験による試験点数の変化.2: MEDLINEによる文献検索回数の前年度までの地域医療学レジデント, 内科レジデントとの比較.結果: 4か月後の筆記試験の結果, 平均42点 (100点満点) の点数の上昇が認められ, 全レジデントにおいて点数が上昇した.内科レジデント, 前年度地域医療学レジデントに比し有意な文献検索回数の増加が認められた.結論: evidence-based medicineによる短期間のレジデント教育において, 知識, 行動の両面で好ましい教育効果が認められた.
著者
柴田 弘文 SAXONHOUSE G DENOON David INTLIGATOR M DRYSDALE Pet 韓 昇洙 PANAGARIYA A MCGUIRE Mart 井堀 利宏 猪木 武徳 福島 隆司 高木 信二 舛添 要一 八田 達夫 安場 保吉 佐藤 英夫 PANAGARIYA Arvind CHEW Soo Hong HON Sue Soo
出版者
大阪大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

安全保障問題の近年の急変転は目をみはるものがある。当国際学術研究の第1年目は東西冷戦下で資本主義と社会主義の二大陣営の対立から生まれる安全保障上の緊張とそれを突き崩そうとする潜在的な両陣間の貿易拡大の欲求が共存するもとでの安全と貿易の関係を探るべくスタ-トした。ところが第2年目には、ベルリンの壁の崩壊と共に東西の対立が氷解し、自由貿易の可能性が拡大して、もはや安全保障に対する考慮は必要なく、この研究課題も過去のものになったかとさえ見えた。しかし、東西の対立の氷解が直ちに全ての対立の霧散に向かうものではなかった。民族間の局地的対立はかえって激化し、更に貿易でなく直接支配によって原油資源を確保しようとする試みは湾岸戦争を引き起こした。世界の政治の経済の根本問題が貿易と安全保障の問題と深く関わっていることを最近の歴史は如実に物語っている。本研究課題が世界経済の平和的発展の為の中心的課題であることが再度認識された。しかし貿易と安全保障の相互関係の分析に正面から取り組んだ研究は少ない。分析のパラダイムがまた確立されていないことにその理由がある。従って当研究では基礎的分析手法の開発を主目的の一つとした。先づ第一に柴田弘文とマックガイヤ-の共同研究は安全保障支出によって平和が維持される効果が確率変数で与えられるとして、安全保障支出がもたらす一国の厚生の拡大を国民所得の平時と有事を通じての「期待値」の増大として捉えて経済モデルを開発した。このモデルは例えば国内産業保護策と、安全保障支出は代替関係にあることを示唆することによって、貿易と安全保障の相互依存関係の理論的分析の基礎を提供することになった。柴田は更に備蓄手段の大幅な進歩から有事に当たっての生活水準の維持のためには全ての国内産業を常時維持することよりも安価な外国商品を輸入し、有事に備えて備蓄することの方が、効率的である点に注目して、安全保障費支出、国内産業保護、備蓄の三者の相互関係を明らかにする理論を構築した。更に柴田はパナガリヤと共同研究を行い、貿易と安全保障支出及びそれらが二敵対国の国民厚生に及ぼす効果を説明する理論を構成した。井堀は米国の防衛支出のもたらす日本へのスピルオ-バ-効果の日米経済に及ぼす影響についてのマクロ経済学的分析を行った。安場は東南アジア諸国の経済発展がアジア地域の安全保障に与える効果を研究した。佐藤は貿易と安全保障が日米の政治関係に及ぼす効果を国際政治学的に分析した。オ-ストラリヤのドライスデ-ルは近年の日本の経済力の著しい増加が太平洋地区にもたらす効果を分析した。八田はチュ-の協力を得て安全保障のシャド-プライズについての数学的理論を構築した。第2年目に基本理論の深化を主に行った。パナガリアは1990年9月に再び渡日して柴田と論文「Defense Expendtures.International Trade and Welfare」を完成した。更にチュ-ス-ホングは8月に来日し、柴田と共同研究を行い「Demand for Security」と題する共同論文の執筆を開始した。本研究の研究協力者である岡村誠は農業問題と安全保障の関係の分析を行って論文を執筆した。第3年目には理論の応用面への拡張に努力した。猪木は国の有限な人的資源を民需から軍需活動に移転することから起こる経済成長への負の効果と、軍関係機関での教育がもたらす人的資源の高度化から生まれる正の効果を比較する研究を行なった。井堀利宏は貿易関係にある二国間の安全保障支出を如何に調整するかの問題について理論的分析を行い論文を完成した。この三ヶ年に亘る日米豪の研究者による共同研究の結果、今まで国際経済学者によって無視され勝ちであった安全保障と貿易の相互維持関係を分析する基礎となる重要な手法を幾つか確立すると云う成果が得られたと考える。世界経済の安定的な発展のためには貿易と安全保障の相互関係についての深い理解が不可欠である。この共同研究課題で得られた知見を基礎として、更に高度な研究を続行することが望まれる。