著者
高橋 美樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.p49-60, 1992-12

本稿では取引コスト・モデル(経済学)を応用して,「ネットワーク型産業組織・企業間関係」の下での「中小企業問題」を論じる。中小企業による「戦略的提携」あるいは,その全体像としての「ネットワーク型産業組織・企業間関係」というときには,中小企業全般の研究開発力・マーケティング力・経営管理力の向上や,新しい企業間関係が積極的に評価される。しかしながら,「ネットワーク型産業組織・企業間関係」の下での「中小企業問題」の解明は,十分になされているとはいえない。そこで,ここでは,上に述べたような「積極評価」と「問題性」との双方を視野にいれた新しい分析を試みる。そして,中小企業分野を中心に,「技術の専有可能性」(技術の模倣されにくさ)と「補完資産」(開発技術・製品から利益を得るために必要な,補完的製造技術,販売網など)という2つの概念を用いて,イノベーションと企業間関係の関連を分析し,結論として,「ネットワーク型産業組織・企業間関係」の下でも「問題」が無くなったわけではなく,「新しい」問題,すなわち「技術取り引き」に関わる問題が生じうることを示し,今後,予想される傾向として,次の諸点を示す。(1)中小企業経営戦略の一貫として,「技術の専有可能性」を高める戦略,すなわち他企業の追随を許さないような「ダントツ技術」の開発戦略や知的財産権・特許管理戦略がますます重要になる。(2)中小企業分野でも,「技術取引の適正化」という(独占禁止政策上の)課題の重要性が高まる。(3)「ネットワーク型産業組織・企業間関係」の下での「企業規模間格差」問題というときも,「企業規模」の基準は単なる従業員や資本金の大きさではない。従業員や資本金の大きさは,本稿で考察してきた「技術の専有可能性」向上や「補完資産」獲得の上での有利・不利を左右して初めて意味を持つ。
著者
高橋 雄一郎 森川 清
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.275-282, 2004 (Released:2004-07-01)

職務発明にかかる相当の対価請求訴訟が注目されている。本稿では,職務発明制度と相当の対価額の算定方法について概説した後,相当の対価請求訴訟における訴訟物,要件事実,間接事実等を検討し,これら事実をどのように立証すべきかを論じた。最後に,職務発明訴訟において実務上発生する問題に言及し,訴訟代理人の行動指針について検討した。また,本稿末尾には,相当の対価請求訴訟における訴状のサンプルを掲げた。
著者
脇田 美佳 前田 文子 濱田 陽子 高橋 恭子 瀬尾 弘子 福留 奈美 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.17, 2004

[目的] 天丼、うな丼など丼物は古くから日本人になじみがある。また、近年多忙なサラリーマンや、手軽でおいしいものを求める若者のライフスタイルにマッチするためか、丼物のファーストフード店がブームである。本研究では丼物の種類や食材の種類、食べ方についての実態を知り、丼物が食生活の中で果たしている役割と新たな可能性を探るとともに、丼物と若者の食との関わりについて考察することを目的とした。<br>[方法] 全国の大学、短大等の学生及び職員に、1年間に家庭で食べた丼物・味付け飯についてアンケートを行った。調査期間は2003年10月から11月、1371名から回答を得た。<br>[結果] 家庭でよく食べられる丼物は親子丼、牛丼、カツ丼、天丼であり、これらについての地域差はほとんどなかった。また、親子丼、他人丼、そぼろ丼は手作りが多いのに対し、うな丼、牛丼、天丼、ビビンバなどは、調理済み食品あるいは半調理品の利用が多かった。ひとつの丼に材料として用いられる野菜は0から2種類、肉・魚・卵については1から2種類が多かった。丼物を家庭で食べるとき、22%の人は丼のみを食べ、丼に1品を添えて食べる人は44%で、添えられる品は汁物が多く、2品を添える人は26%で、汁物に加えて漬物・野菜・海草料理を食べる例が多かった。丼物を好きな人は82%、家庭で食べる頻度は月1から2回以上が66%であった。食べる理由は、好きだから、調理や後片づけが簡単という理由が多く、栄養的なバランスをとりやすいからという理由は少なかった。丼物は汁物や野菜料理等と組み合わせて食べることで栄養のバランスもとれ、また、手軽に楽しめることから、食事が偏りがちな若者の食生活改善にも有効である。
著者
杉浦 美恵子 柴田 興一 斉藤 聡志 西村 芳子 高橋 浩一 佐倉 宏
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.530-535, 2019 (Released:2019-08-29)
参考文献数
30
被引用文献数
1

症例は41歳女性.腰痛の後,突然,起立時の頭痛が出現し,1週後,右耳閉塞感,めまい,1か月後に右手から始まり,同側の腕,側胸腹部,下肢へ広がるしびれが20~30分間出現し,同症状を繰り返すため入院した.頭部MRIで,円蓋部くも膜下出血(convexal subarachnoid hemorrhage; cSAH),脳皮質静脈血栓,硬膜肥厚,硬膜下血腫を認め,脊髄脳槽シンチグラフィーとCTミエログラフィーで髄液漏出像がみられ特発性低髄液圧症候群(spontaneous intracranial hypotension; SIH)と診断し,ブラットパッチを施行し症状は改善した.SIHは,症候が多彩で診断が困難なことがあるが,本例でみられた繰り返す片頭痛様前兆は,合併したcSAH,脳皮質静脈血栓症に関連し発現した重要な徴候と考えられた.

1 0 0 0 高橋記

著者
[高橋紹運著]
出版者
[鶴久明徳]
巻号頁・発行日
1985
著者
高橋 薫
出版者
駒澤大学
雑誌
論集 (ISSN:03899837)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.97-112, 1978-12
著者
高橋 正紘
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.170-181, 2008 (Released:2008-08-01)
参考文献数
33
被引用文献数
5 1

The purpose of this paper is to give an account of the vestibular nuclei from the point of view of phylogeny, behaviors, and neural networks of the vestibular nuclei. In the early vertebrates, the vestibular endorgans developed by isolation of the lateral line organ from the body surface. Although vestibular control based on inertial inputs works ideally under a stationary space, it breaks down in moving spaces. To compensate for the shortcoming, discomfort (motion sickness) was utilized to avoid moving spaces. Along with progress of locomotion, the vestibular cerebellum developed as a supplementary route of the vestibular nuclei to stabilize the gaze and posture; the flocculus for visual-inertial integration, and the uvula-nodulus for gravito-inertial integration. Further, the vestibular cerebellum (vermis) and the somatically arranged lateral vestibular nucleus developed for coordination of posture and four-limb locomotion. The superior vestibular nucleus is distributed centrally by the canal fibers and flocculus fibers of visual origin, and peripherally by the uvula-nodulus fibers of otolith origin. The nucleus carries spatial rotation with gravito-inertial axis to the ocular motor nuclei. Body balance is maintained by a somatic-to-spatial transformation of the coordinates, that is, transfer of contents of the cerebellum-fastigial-and-vestibular nuclues routes to the vestibular nucleus-motor nucleus routes. Thus, gaze and posture are stable when spatial coordinates remain still in space, but they become unstable when the coordinates are moving in space.
著者
根本 理 本田 智明 高橋 誠 竹内 正人 杉山 喜則
出版者
岩手県立大学総合政策学会
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.35-47, 2007-12

巣外育雛期初期(巣立ち後1ヶ月間)のイヌワシAquila chrysaetosの幼鳥の生存にとって重要な親鳥からの餌の受渡状況を解明するため、2000年と2002年に福島県の同じ営巣地から巣立った幼鳥各1羽を対象に目視調査による巣外育雛期初期の餌受渡状況調査結果とビデオ撮影による巣内育雛期後期(巣立ち前10日間)の餌搬入状況調査結果との比較を行った。その結果、餌受渡回数で評価した場合、幼鳥は巣内育雛期後期と同様に巣外育雛期初期もその生存に必要な餌を親鳥からの受渡に依存していることが明らかになった。餌受渡および同じ幼鳥を対象に分析した幼鳥の飛翔能力の発達状況のそれぞれの解析結果から総合的に考察すると、ハンティング能力が未発達な巣外育雛期初期の幼鳥の生存を確保するためには、親子関係が維持できるように、この時期に幼鳥の中心的利用エリア(営巣地から半径1.2kmの範囲)で工事などを行う場合には、巣内育雛期の親鳥に対する保護対策に準じた保護対策を講じることが必要であると考えられた。
著者
根本 理 本田 智明 高橋 誠 竹内 正人 杉山 喜則
雑誌
総合政策 = Journal of policy studies (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.35-47, 2007-12-01

巣外育雛期初期(巣立ち後1ヶ月間)のイヌワシAquila chrysaetosの幼鳥の生存にとって重要な親鳥からの餌の受渡状況を解明するため、2000年と2002年に福島県の同じ営巣地から巣立った幼鳥各1羽を対象に目視調査による巣外育雛期初期の餌受渡状況調査結果とビデオ撮影による巣内育雛期後期(巣立ち前10日間)の餌搬入状況調査結果との比較を行った。その結果、餌受渡回数で評価した場合、幼鳥は巣内育雛期後期と同様に巣外育雛期初期もその生存に必要な餌を親鳥からの受渡に依存していることが明らかになった。餌受渡および同じ幼鳥を対象に分析した幼鳥の飛翔能力の発達状況のそれぞれの解析結果から総合的に考察すると、ハンティング能力が未発達な巣外育雛期初期の幼鳥の生存を確保するためには、親子関係が維持できるように、この時期に幼鳥の中心的利用エリア(営巣地から半径1.2kmの範囲)で工事などを行う場合には、巣内育雛期の親鳥に対する保護対策に準じた保護対策を講じることが必要であると考えられた。
著者
新妻 靖章 高橋 晃周 黒木 麻希 綿貫 豊
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.145-150,165, 1999-10-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
21
被引用文献数
14 14

野外調査において対象としている鳥種の性を判別することは重要である.しかし,ウミスズメ類は明らかな性的二型を外部形態に,またどちらかの性のみによる繁殖ディスプレイを示さないため,外見から性を判別することは難しい.北海道北西部,日本海に浮かぶ天売島に繁殖するウトウ,73羽(雄34羽雌39羽)の外部形態を計測した後,内部生殖器によって性を判別した.嘴高,頭長とフショ長において,雄の方が有意に大きいという性的二型が認められたため,増加ステップワイズによる判別分析を試みた.その結果,以下の式が得られた.D=114.22-3.25BD-0.64HL(F2.70=71.96,p<0.001,BD:嘴高,HL:頭長)判別式が,D<0のとき雄,D>0のとき雌とウトウは性別され,雄,雌の判別率はそれぞれ91.2%と100%であった.しかし,外部形態は同一種であっても繁殖地間で異なることが知られているので,天売島以外で繁殖する個体にこの判別式を適用するには注意する必要がある.外部形態から性を判別することの利点は,野外調査において,その場で性を判別し実験操作を可能とするところである.
著者
高橋 秀榮 Takahashi Shuei
出版者
駒澤大学
雑誌
駒澤大學佛教學部研究紀要
巻号頁・発行日
no.67, pp.267-283, 2009-03
著者
有江 賢志朗 奈良間 千之 福井 幸太郎 飯田 肇 高橋 一徳
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<p><b>1.はじめに </b></p><p> 福井・飯田(2012)と福井ら(2018)は,飛騨山脈の多年性雪渓において,近年の小型かつ高精度な測量機器を用いて氷厚と流速の測定を実施した.その結果,流動現象が確認された六つの多年性雪渓は氷河(小窓氷河,三ノ窓氷河,カクネ里氷河,池ノ谷氷河,御前沢氷河,内蔵助氷河)であると判明した.飛騨山脈は,氷河と多年性雪渓が存在する山域となった.しかしながら,飛騨山脈のすべての多年性雪渓で氷河調査がおこなわれたわけではなく,飛騨山脈の氷河分布の全貌は明らかでない.福井ら(2018)は,飛騨山脈の未調査の多年性雪渓のうち,氷体が塑性変形を起こすのに十分な氷厚を持ち氷河の可能性があるのは,後立山連峰の唐松沢雪渓,不帰沢雪渓,杓子沢雪渓などごくわずかであると指摘している.そこで,本研究では,唐松沢雪渓において氷厚と流動の測定をおこない,現存氷河であるかどうかを検討した.さらに,本研究の唐松沢雪渓で測定された氷厚と流動速度を,氷河の塑性変形による氷河の内部変形の一般則であるグレンの流動則で比較し,唐松沢雪渓の流動機構について考察した.</p><p><b>2.</b><b>研究手法</b></p><p> 氷河と多年性雪渓は,氷体が顕著な流動現象を示すかどうかで区別される.本研究では,唐松沢雪渓の氷厚を測定するために,アンテナから電波を地下に照射し,その反射から地下の内部構造を調べる地中レーダー探査による氷厚測定を実施した.また,縦断測線と横断測線との交点ではクロスチェックをおこない正確な氷厚を求めた.測定日は2018年9月21日である.さらに,雪渓上に垂直に打ち込んだステークの位置情報を融雪末期に2回GNSS測量を用いて測定し,その差分から唐松沢雪渓の融雪末期の流動速度を測定した.また,雪渓末端の岩盤に不動点を設置し,2回の位置情報のずれをGNSS測量の誤差とした.2回の測定日は,2018年9月23日と10月22日である.図1に地中レーダー探査の側線とGNSS測量の測点を示した.</p><p><b>3.結果</b></p><p> 地中レーダー探査の結果,唐松沢雪渓は30m以上の氷厚を持ち,塑性変形するのに十分な氷厚を持つことが確認された.</p><p> また,流動測定の結果,2018年融雪末期の29日間で,P1で18cm,P2で25cm,P3で19cm,P4で18cm,P5で19cm,北東方向(雪渓の最大傾斜方向)に水平移動していた.雪渓末端部の河床の岩盤の不動点(P6)での水平移動距離は2㎝であった.今回の測量誤差を2㎝とすると,雪渓上の水平移動で示された雪渓の流動は,誤差を大きく上回る有意な値であるといえる.流動測定を実施した融雪末期は,積雪荷重が1年で最も小さいため,流動速度も1年で最小の時期であると考えられている.このことから,唐松沢雪渓は一年を通して流動していることが示唆され,現存氷河であることが判明した.</p><p> さらに,唐松沢雪渓で測定された表面流動速度は,グレンの流動則による塑性変形の理論値を上回っていた.このことから,唐松沢雪渓の融雪末期における底面すべりの可能性が示唆される.</p><p><b>引用文献</b></p><p>福井幸太郎・飯田肇(2012):飛騨山脈,立山・剱山域の3つの多年性雪渓の氷厚と流動―日本に現存する氷河の可能性について―.雪氷,74,213-222.</p><p>福井幸太郎・飯田肇・小坂共栄(2018):飛騨山脈で新たに見出された現存氷河とその特性.地理学評論,91,43-61.</p>
著者
高橋 行俊 篠永 英之 杉山 敬三 福家 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PS, 光スイッチング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.71, pp.39-44, 2003-05-22
参考文献数
8

離島の遠隔医療システムと小中学校ネットワークの構築を目的に2.4GHz帯無線LANシステムを用いて行われている鹿児島県奄美大島本島・離島間遠隔医療実験プロジェクトの紹介と、同様無線LANシステムを用いて10km以上離れた大学キャンパス施設間を結ぶネットワーク構築を目的に行った伝送実験の結果について報告する。