著者
鶴井 香織 高橋 佑磨 森本 元
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.33-37, 2015-03-30

クラインとは、連続した生息地において量的形質や対立遺伝子頻度が示す空間的に滑らかな地理的変化をさし、測定可能な変異の勾配として観察される。クラインは、古くから数多くの生物において報告されてきた身近で関心の高い現象である。生態学や進化学では、注目している形質が示すクラインを利用し、その変異の時空間的変化を調べることで形質の適応進化の因果やプロセスを明らかにしてきた。ベルクマンの法則の発見をはじめとする種間・種内で認められる形質の地理的変異に関する数々の研究成果は、クラインの重要性を象徴している。しかし、数多くのクライン研究成果の基礎をなす「クラインそのものに対する理解」はいまだ混沌としており、クライン研究は脆弱な基盤によった砂上の楼閣といえる。その背景には、クラインを形成する「測定可能な性質」が異なるクラインに対する認識および解釈の混乱などが挙げられる。本稿では、クライン研究の体系的枠組み構築のため「質的クライン」と「量的クライン」という分類方法を提案する。
著者
高橋 哲也 星野 聡孝 溝上 慎一
出版者
京都大学
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-15, 2014-12-01

This paper presents the results of an analysis of students' learning processes and learning outcomes using e-portfoliosand student surveys along with performance data from Osaka Prefecture University (OPU). Student surveys wereintroduced in 2007 and have been conducted continuously since. E-portfolios were introduced in 2012 by modifying theCourse Experience Questionnaire introduced in 2005 to survey learning outcomes for each semester, and also to encouragestudents to reflect on their learning experience. This study's most important finding concerns daily student behavior andits relationship to GPA at OPU. Namely, GPA was related solely to the seriousness of a student's attitude toward his or herstudies; no relationship was found between time spent learning outside of the classroom or other behaviors. Additionally, only a student's knowledge of his or her discipline exhibited a relationship with GPA among questions concerning acquiredskills and learned abilities. In accordance with these findings, OPU will reform its performance evaluation method andimplement an active learning approach in all undergraduate courses.
著者
高梨 成次 大幢 勝利 高橋 弘樹
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.85-90, 2009 (Released:2010-02-23)
参考文献数
5

強風等により,足場が倒壊する災害が,多く発生している.足場は水平方向には不安定な構造物である.その対策として,壁つなぎで足場を建設中の建築物等と連結し,水平安定性を確保している.強風による足場の倒壊災害の多くは,この壁つなぎの破損に起因すると考えられる.そのため筆者らは,すでに壁つなぎ材の強度に着目した実験的研究を実施している.それによれば,既存の壁つなぎ材の強度は十分に高いが,それらの設置時に施工誤差が発生することによって,安全性が低下する可能性が高いことを示した.本論では,それらの壁つなぎ材がALCパネルに固定された場合の引張強度と圧縮強度を実験的に調べた.その結果,アンカーの強度は引張強度,圧縮強度ともに壁つなぎ材の強度に比べて著しく低いことが分かった.そのため,足場の壁つなぎをALCパネルに固定する場合には,壁つなぎ材の強度の他,アンカーの強度を考慮して,壁つなぎの数量を増すなどの配慮が必要であることが分かった.
著者
石倉 照之 奥野 龍禎 荒木 克哉 高橋 正紀 渡部 健二 望月 秀樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-000757, (Released:2015-10-28)
参考文献数
15
被引用文献数
3

症例は23歳男性である.先行感染後に強直間代性痙攣を発症し,抗てんかん薬による治療にもかかわらず,痙攣発作を繰り返した.ウイルス学的検査や抗神経抗体は検索した範囲では陰性で,原因不明であったことから,new-onset refractory status epilepticus(NORSE)と呼ばれる症候群に合致する臨床像であった.ステロイドパルス療法,免疫吸着療法及び経静脈的免疫グロブリン療法を行い痙攣の頻度が減少したが,意識障害は遷延した.本患者血清を用いてラット脳の免疫染色を行ったところ,海馬神経細胞の核及び細胞質が染色され,自己免疫介在性であることが示唆された.
著者
沖村浩史 高橋清著
出版者
裳華房
巻号頁・発行日
1991
著者
高橋 梯二
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.395-412, 2012 (Released:2013-10-08)
著者
高橋 光輝
雑誌
研究報告デジタルコンテンツクリエーション(DCC)
巻号頁・発行日
vol.2013-DCC-3, no.6, pp.1-8, 2013-01-14

シャノンの情報理論(Shannon 1949)1),伝統的な命題論理や述語論理を応用したラムダ計算(Frege 1997)2),そしてチュアリングマシン(Penrose 1995)3)などの発達により,デジタル技術は大規模情報処理を可能にさせた.今日の社会において,デジタル技術はコンピュータ工学から人間コミュニケーションの分野にまで多大な影響を与えている.その代表例がFacebook,YouTube,Blogなどをはじめとするソーシャルネットワーキングサービス(以下:SNS)の台頭である.情報社会において,SNSは人間コミュニケーションの必要不可欠な意思伝達手段として急速に広まりつつある(ソーシャルメディア白書2012)4).いわば21世紀の近代コミュニケーションに多大な影響を与えているものとしてSNSの存在感が増しているといえる.本論文ではこうした背景を捉えつつ,デジタルコミュニケーション論(高橋2011,2012)を通してどうSNSが今日のコミュニケーションに貢献しているのかを探る.第1章では,SNSの具体例としてFacebook,YouTube,Blogの特徴をそれぞれ取り上げ,どう今日の人間コミュニケーションにおいて活用されているのかを概説する.第2章では,筆者が2011年と2012年に独自に調査した,中国と日本のそれぞれの大学生のSNS使用状況に関するアンケートをもとに,実際にSNSがどういった動機により使用されているのかを分析する.その上で,SNSが人間コミュニケーションに与える影響を模索する.第3章では,中国と日本のSNS事情より考えられる情報拡散の可能性や問題性を捉え,広く社会に対する影響を論じる.第4章では,こうした社会問題を解決する際に考えられる事項を情報と意味の観点より考察し,メディアリテラシーの本質を探る.
著者
高橋 秀樹
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.100, no.9, pp.1568-1588,1669-, 1991

In differentiating the character of the term ie 家 (family; household) found in early medieval Japanese documents with the same term found in earlier records, two points should be taken into account: ie as a social entity and ie as inherited property. In the research done to date on the subject, the origin of the medieval ie has thought to have been related to such factors as the establishment of a family occupation, a permanent family plot of land, or the family name. In the present article the author approaches its, origins through an investigation of its successors. chakushi 嫡子, from the standpoint of when these inheritors first came into existence and what exactly it was that they inherited. The medieval chakushi institution, which was far different in social significance from the rules outlined in Japan's ancient ritsuryo legal codes, first came into existence among the bureaucratic classes during the 11th and early 12th centuries and was then adopted by the aristocracy in the mid-12th century. Among the aristocrats, chakushi inherited the political power, influence and privilege of their ancestors to a much greater extent that their fellow siblings. The fact that they were entitled almost exclusively to the ownership of family records, important related documents, and paraphrenalia symbolizing the family organization is proof enough that they were truly the inheritors of the ie structure. The chakushi system was adopted by locally-based land proprietors during the early 12th century and it is thought to have been brought about by the establishment of shiki 職 rights and their inheritability. The social position of these local proprietors was usually based on their shiki rights, indicating the passage of this rights from generation to generation was none other the process of ie inheritance. Furthermore, since this indivisible set of shiki rights, privileges and duties sufficiently constituted family wealth, the concept of ie among these local families took on the character of an economic enterprise that needed to be managed. The establishment of an inheritable ie and the chakushi institution for passing it on came into existence amongst such political and social changes as the ritualization of political affairs, the farming out of administrative duties, and the rigid systemization of shiki rights. Since these changes came in response to the needs of the state, the aristocracy and powerful religious institutions, the author is led to the conclusion that the medieval (inheritable) ie and the chakushi system of inheritance both were established as means for satisfying these needs in the best way possible.
著者
高橋 信晴 八村 広三郎 吉村 ミツ
雑誌
じんもんこん2003論文集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.31-38, 2003-12-17

モーションキャブチャシステムによって得られる身体動作データは,無形文化財としての舞踊のデジタルアーカイブおよび舞踊の研究にも利用されるようになってきている.本報告では,舞踊の身体動作をモーションキャブチャによって計測したデータを対象として,類似している身体動作データを検索するための手法を提案し,主に日本舞踊の動作を対象とした実験の結果と評価について述べる.身体動作の類似性の定義,動作データの正規化の方法,全身での検索と身体の一部分のみに注目した検索などについて検討し,実験により良好な結果が得られることが確認された.
著者
浜口 斉周 宮崎 勝 藤沢 寛 西村 敏 木村 徹 大竹 剛 望月 貴裕 高橋 正樹 米倉 律 小川 浩司 東山 一郎
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2010年秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.66, 2010 (Released:2010-11-15)
被引用文献数
1

テレビ・動画の視聴において、時間や場所の制約にとらわれないオンデマンド視聴や、口コミ・友人のお勧めに従うような、視聴スタイルのパラダイムシフトが起こっている。テレビ局は番組をただ放送するのではなく、適切なコンテンツを適切なユーザーに適切な形で届けることが求められている。本研究では、ビデオオンデマンドと番組レビューSNSを組み合わせたソーシャルTVにおける視聴行動に着目し、実験サイトを構築して被験者を集め、実際に行動ログの収集・分析を行なった。分析の結果、テレビ放送とは大きく異なる視聴行動の変化を捉えることができた。ソーシャルTV特有の視聴行動とその効果、サービス提供方法や必要な技術について論じる。
著者
小笠原 博信 高橋 克文 飯塚 兼仁 伊藤 清 石川 雄章
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.304-307, 1991-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

1. 大麦を原料として製麹した白麹は米を原料としたものに比べ多量のキシラナーゼを生産したが, これは大麦中のキシランが酵素生産の誘導源となった結果であることがわかった。2. 麦麹から調製した粗酵素液は米麹粗酵素液よりも大麦をよく溶解した。3. 精製キシラナーゼを添加することにより大麦の溶解速度, 溶解量が上昇し, 溶解補助効果が認められた。4. 麦麹を用いて大麦焼酎の小仕込みを行ったところ, キシラナーゼ等による溶解補助効果により発酵特性が改善され, 米麹区分に比較して発酵速度が大きく, またもろみの流動特性が著しく改善され, 発酵歩合も向上した。
著者
岩倉 成志 高橋 郁人 森地 茂
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.31-40, 2013

<p>相互直通運転が行われ,遅延が発生しやすい路線環境にある東急田園都市線と東京地下鉄半蔵門線を対象に,遅延の連鎖のメカニズムを分析し,列車ごとの遅延時間をマルチエージェントモデルで再現し,遅延対策効果を予測する技術を開発した.中核となる駅間走行時間推計モデルと乗降時間推計モデルの2つのサブモデルの現況再現性は良好な結果を得ることができた.サブモデルを統合したモデルの再現精度は,再乗車旅客の行動の再現に未だ課題があるものの一定の精度は得られたものと考える.またいくつか遅延対策の効果を予測した結果,示唆的な情報を得ることができた.</p>
著者
三好 勝利 高橋 純 堀田 龍也 山西 潤一
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
no.10, pp.83-89, 2015-12

英国の新しい情報教育カリキュラムとテキストの特徴を明らかにするため,英国における新旧のカリキュラム,日英のカリキュラム,日英のテキストの記述の比較を行った。その結果,英国の新カリキュラムでは「応用する(52%)」,「理解する(48%)」に関する記述が多かった。新カリキュラムに対応して制作された英国のテキストは「記憶する(25%)」,「理解する(9%)」,「応用する(27%)」,「分析する(19%)」,「評価する(33%)」,「創造する(20%)」に関する記述がみられた。英国の旧カリキュラムは「評価する(41%)」に関する記述が最も多く,次いで「応用する(39%)」が多かった。日本のカリキュラムは「応用する(44%)」,「理解する(41%)」に関する記述が多かった。日本のテキストは「記憶する」に関する記述が97%と最も多かった。比較を通して,英国の新しい情報教育カリキュラムは,以前よりも「理解する」が多くみられるようになり,また「応用する」は以前と変わらず多くみられるという特徴,また日本と同様に「理解する」,「応用する」が多くみられるという特徴が明らかとなった。情報教育のテキストに関しても,英国は日本と比べると,「記憶する(97%)」のように突出した分類項目はなく,様々な分類項目に関わる記述が一定程度みられた。