著者
気賀沢 保規 高橋 継男 石見 清裕 神鷹 徳治 櫻井 智美 高瀬 奈津子
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は6世紀から9世紀頃の中国南北朝後期隋唐期における石に刻まれた文字資料の「集成・データベース構築」とそれによる「地域社会文化」の研究を目的とした。今日、当該時代の墓碑や墓誌など石刻資料が第一次資料として注目される、しかし資料の系統的、網羅的な整理・把握とその情報の共有化の態勢が不十分である、その反省に立ち、資料の収集・整理・データベース化とその考察に努めた。以下のような具体的成果をあげることができた。(1)およそ7千点にのぼる唐代墓誌の所在を整理して『新版唐代墓誌所在総合目録』を刊行した。このことで内外の学界関係者から評価され、この時期の墓誌研究を前進させるために貢献できた。(2)唐代に先立つ時期の墓誌を初めて全面的に集約した「隋代墓誌所在総合目録」(483点)・「北朝墓誌所在総合目録」(779点)を刊行した。あわせて北朝から階代の関中(陝西省)の民族問題を石刻資料から論じた馬長寿著『碑銘所見前秦至隋初的関中部族』(全111頁)を、関連石刻も補って翻訳し、石刻による「地域社会」研究を進めた。(3)石刻関係資料の系統的入手と整理発信を長期的に可能にするため、東アジア石刻文物研究所(於明治大)を設署し、機関誌『東アジア石刻研究』創刊号を刊行した。並行して貴重石刻拓本の収集、新出・新報告資料の把握に努め、それら収集資料の一部は毎年、「解説」を付して展示公開とシンポの準備をした(次年度以降毎年開催)。(4)石刻資料研究では現地調査が必要で、三度にわたり院生・若手研究者を帯同して山東・河南・河北一帯の遺跡と文物所蔵機関を調査し、調査結果と情報を研究会で報告し、2本の報告論文にまとめた。(5)石刻をめぐる研究分担者の成果は「中国石刻史料をめぐる諸問題」と「石刻史料から探る北朝隋唐仏教の世界」の2セミナーで報告し、それを『中国石刻資料とその社会』論集に集約して、「地域文化」研究に繋げた。
著者
吉岡 斉
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は、次の3つである。(1)冷戦終結後の世界の核エネルギー研究におけるリストラクチャリングの動向を概観すること。(2)リストラクチャリングにともなう研究資源(研究者、研究施設、研究資金など)のコンヴァージョンを促進するための主要国の政策について概観すること。(3)日本におけるリストラクチャリングおよびコンヴァージョン政策の在り方について、批判的分析を行うこと。コンヴァージョン政策が重要である理由は、2つある。第1は、リストラクチャリングの副作用を抑えること。第2は、コンヴァージョンの受け皿を用意することによって利害関係者の抵抗を弱めること。なお本研究では主として、民事利用の分析に力点を置いた。それは第1に、軍事利用分野に関しては世界的に調査が進んでいるからである。また第2に、日本の場合は軍事利用事業自体が存在しないからである。研究成果の相当部分はすでに出版されており、そのリストは報告書にある。代表的な3点のみを裏面に記す。主な研究の知見は次の3点である。(1)欧米諸国では周到なコンヴァージョン政策が不在であるにもかかわらず、リストラクチャリングは比較的順調に進んでいる。(2)それとは対照的に日本では、従来からの基本政策の見直しがいまだ実現しておらず、リストラクチャリングは限定的なものにとどまっている。その主要な原因は、日本の政策的意思決定機構の閉鎖性にある。そこでは当該政策の所轄官庁の利害が、過剰に保護されるのである。(3)リストラクチャリングを進めるためには、政策的意思決定機構の抜本的な改革が絶対的に不可欠である。それと同時に、適切で効果的なコンヴァージョン政策の立案が重要である。
著者
鈴木 雅一 執印 康裕 堀田 紀文 田中 延亮
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1. 幼令スギ・ヒノキ林を対象に、斜面上部下部の蒸発散量、土壌水分、土壌呼吸量を計測するとともに、流域内の微気象の空間分布計測を行ない、斜面がもたらす不均一さを明らかにするための計測を進めた。1) 植栽された樹木の成長が斜面部位で異なることについて、谷を横断する側線約50mについて、樹高、幹直径、葉窒素含有量、土壌水分、地下水位、土壌溶液水質、土壌窒素量などが調べた。5年生のスギの成長が谷で旺盛であり、尾根部が劣る理由は、尾根部における水ストレスがもたらすものではなく、湿潤な谷部の土壌有機物の分解による窒素の供給が谷部の活発な成長に関わっているという結果をえた。2)レーザプロファイラのデータを用いて植栽された樹木位置と樹高を小流域単位で評価する手法について検討を進め、小流域の全域について樹高の分布が図化された。2. タイ国チェンマイ近郊のドイプイ山に位置するKog-Ma試験地(樹高約30mの常緑林)にある50mタワーにおいて取得された微気象データを解析し、斜面風の形成と樹冠上から林内の気温形成過程、風速鉛直分布の形成過程について、解析した。1)樹冠上から林内の気温形成過程に与える夜間斜面下降風の影響は、夜間に生ずる斜面下降風発生の発生、非発生は大気安定度の指標であるバルクリチャードソン数に関係している。夜間の放射冷却が弱いとき、気温鉛直分布における最低気温は林床近くで生ずる。放射冷却が強くなると、樹冠上部で最低気温が生ずる。そして、更に放射冷却が強くなると樹冠上を吹く斜面下降風が強くなり、再び林床付近で最低気温が生ずるという、3段階の気温鉛直分布形成機構があることが、明らかにされた。2)昼間の風速鉛直分布の形成過程は、夜間に比べて解析が困難であった昼間の風速鉛直分布について、大気安定度と鉛直分布の関係を解析した。
著者
桜井 泰憲 齊藤 誠一 BOWER John R. 山本 潤
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,スルメイカを対象として,気象の寒冷・温暖レジームシフト,アリューシャン低気圧の発達に影響される冬季季節風の強さ,海面気温などによって変化する本種の再生産・加入海域の表層暖水と季節混合層深度の季節・経年的変化が,再生産-加入過程を通して,どのように資源変動へと影響しているのかを明らかにすることを目的としている.申請年度3年間の成果は以下の通りである.人工授精により得たふ化幼生を用いて,各発育段階の幼生の鉛直方向への遊泳行動を精査した.その結果,発育ステージ31以降の幼生だけが,水温18-23℃の条件下で垂直上昇遊泳し,特に19.5-23℃の狭い水温範囲で最も活発に遊泳することを確認した.そこで,スルメイカの新しい再生産仮説として,「スルメイカの再生産可能海域は,水深が100m〜500mの陸棚から斜面上の表層暖水内であり,その水温が18〜23℃,特に19.5-23℃で,中層に水温躍層が発達する海域」を提案できた.この新再生産仮説に基づいて,2000-2005年の冬生まれ群の再生産海域である東シナ海の冬季の再生産可能海域を抽出した.その結果,黒潮流軸より大陸側の東シナ海に南西に伸びた細長くて狭い陸棚斜面域と薩南海域が,スルメイカの産卵からふ化幼生の生残に最も適した海域であることが明らかにできた.さらに,ネット採集したふ化直後の1mm未満の幼生は,九州南東の黒潮内側の複雑な渦流域の表層に集積することが判明した.特に,薩南海域では黒潮の前線波動による集積と本州沿岸への受動的輸送の可能性を見出した.また,新再生産仮説に基づいて,1970-80年代の寒冷レジーム期における冬の再生産海域は著しく縮小もしくは消滅し,1980年代後半からは陸棚斜面に沿って形成されることが明らかにできた.これにより,より精度の高い気候変化に応答する再生産機構の成否の解明に,新たな研究展開の道ができた.
著者
金子 成彦 斎藤 登 渡邉 辰郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故で発生した、温度計ウェルの流れ方向振動に起因する温度計さや管の自励振動に関係するものである。動燃事業団(現:核燃料サイクル事業団)から提出された報告書によると、特定の一本の温度計ウェルが損傷した理由は、損傷した温度計ウェル内の熱電対が曲がって挿入されたため熱電対鞘管の内壁に接触し、温度計ウェルは1自由度系として振る舞い、大きな振動が発生し疲労破壊に至ったとのことである。この事実は、損傷を受けなかった他の温度計ウェルでは、熱電対が熱電対鞘管の内壁に常時接触してはいないので、振動することが可能で、熱電対は副振動系の役目を果たし、ダイナミックダンパを構成し、熱電対鞘管の振動を抑制したため破損しなかったことを示唆している。このように対称渦によって発生する流体振動現象は、複雑で、完全には解明できていない現象である。そこで本研究では、電力中央研究所我孫子研究所にある重力落下式水槽を用いて、加振円柱に作用する対象渦の放出による変動流体力の詳細な測定を行い、その結果を、定常流体力、加振変位に比例する変動流体力、加振変位と90度位相のずれた変動流体力に分けて、換算流速(無次元流速)と加振振幅の非線形関数で表現したデータベースを構築した。その結果を元に、振幅がある一定の大きさになった時に始めて発振が起こる硬発振の振動系であることを明らかにした。これまでにデータの蓄積ない、微小振幅の条件下での流体力の測定に初めて成功し、流れ方向の抗力は、対称渦が発生しているときには、その大きさが約二分の一に減少するという事実が判明した。
著者
岡島 厚 上野 久儀 溝田 武人 岡野 行光 木綿 隆弘 木村 繁男
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

工業プラントの配管内センサーに用いられるブラフな断面構造物の後流域は、流れの剥離による複雑な渦構造を呈し、構造物は後流渦によって様々な自励振動現象が生じる。高速増殖炉「もんじゆ」のナトリウム漏洩事故の主な原因であった低流速域で起こった流れ方向振動も自励振動の一つである。本研究は円柱や矩形柱断面柱などの構造物の流れ方向流力振動の発生機構に関し、風洞実験、水槽実験、数値シミュレーションによって、主として両端弾性支持円柱した自由振動試験によって、次のようなことを明らかにした。(1)振動する円柱及び種々な断面比の矩形断面柱周りの流れ(レイノルズ数Re=10^4)をスモーク・ワイヤー法によって可視化し、振動特性と流れパターンの対応を示し、共振流速の1/2を境にして二つの励振域において、それぞれ振動円柱周りの対称渦及び交互渦の鮮明な可視化映像を得た。(2)表面粗さを導入して、臨界域以上の高いレイノルズ数領域の円柱周りの流れを実現して、高レイノルズ数領域の渦励振の様相を明らかにした。臨界域では直角方向振動が極端に抑制されることを見出した。(3)矩形断面柱の流れ方向振動に関しては,断面比が小さく垂直平板に近い場合には交互渦による第二励振域が断面比が大きくなりアフターボディーが長くなると、対称渦を伴う第一励振域が支配的となることを明らかにした。(4)二自由度弾性支持円柱の流れ方向の流力振動時の対称渦及び交互渦の渦構造を数値シミュレーションして、それぞれの後流の三次元構造の様相には、相違があることなどを見出し、2つの励振現象は後流の交互渦の形成強さと密接に関係していることを示した。
著者
小林 俊光 川瀬 哲明 吉田 尚弘 大島 猛史 和田 仁 鈴木 陽一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

耳管開放症の疫学研究を行った。とくに慢性腎不全に伴う腎透析患者における耳管開放症の発症の実態を調査した。その結果、腎透析を行った147人中13人(8.8%)が透析後に耳管開放症を発症したことが透析病院での検診結果で判明した(Kawase T, et al.:参考文献)。腎透析と耳管開放症の関係を示した世界で初めての報告である。耳管開放症の画像診断を検討した。その結果、座位で行うCTが有用で臨床応用可能であることを示した。また、バルサルバ法の負荷によって、診断精度が向上することを示し、臨床的な重症度ともよく相関することを示した(Kikuchi T, et al.:参考文献)。耳管開放症・耳管閉鎖障害に影響する因子としての聴力の影響を検討した。その結果、耳管開放症の症状は難聴があると、軽減つることが判明した。例えば、鼓膜穿孔、耳硬化症、真珠腫などのために伝音難聴があると、経耳管的に中耳に伝達され知覚される自声が低く知覚されるために、耳管開放症の症状が軽減する。しかし、一度、手術などの治療によって、聴力が改善すると、知覚される自声が大きくなり、不快な症状が自覚されることとなる。このような病態を潜在性(隠蔽性)耳管開放症と新しく提唱した。中耳真珠腫においても、以上のメカニズムが働いているかどうかを、真珠腫新鮮例171例において検証した。真珠腫の中には約30%の鼻すすり型耳管開放症が含まれているが、鼻すすり(+)群と鼻すすり(-)群の聴力の比較を行ったところ、鼻すすり(+)群が有意に聴力は良好であった。また、術後に鼻すすりを継続した群は鼻すすりを停止した群よりも有意に聴力が良好であった。つまり、鼻すすり癖の停止、継続には、聴力が影響すること、そしてそれは自声強聴を知覚する度合いの違いによるものと解釈された(Hasegawa J, et al.:参考文献)。
著者
柴田 真志 若村 智子 柴田 しおり
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究の主たる目的は、起床時体温低値児童の日常身体活動量、就寝時メラトニン量、体温日内リズムなどの特性について検討することであった。本研究で明らかになった主な結果は、次の通りである。1)朝型夜型得点は、早寝早起きや身体活動量と相関関係が認められた。2)身体活動量が多い歩数高値群の体温日内リズムは、起床時と就寝時に差がなく、昼が有意に高かったが、一方歩数低値群は、起床時が昼および就寝時に比べ低値であった。3)日歩数と就寝時メラトニン量の間には、有意な正の相関関係が認められた。4)日歩数とΔ体温値(起床時体温-就寝時体温)の間には正の相関関係が認められた。したがって、日歩数が高値であるほど、起床時に比べて就寝時の体温が低く、睡眠導入が容易であると推察された。5)起床時体温低値児童の夜間体温変動を観察したところ、一般児童に比べ、夜間最低体温時刻が朝方に後退していることが認められた。6)夏の体温(全対象者の平均値)は、冬に比べて起床時、昼および就寝時ともに高かった。冬の日歩数が夏に比べて8,000歩ほど低下した児童もまた同様な傾向であった。しかしながら、冬の日歩数が夏に比べて増加した上位11名(4,500歩ほど増加)の児童では、冬の起床時体温の低下が抑制され、夏と有意な差は認められなかった。以上のことから、日常身体活動量は、体温の日内リズムに影響を及ぼす可能性が示唆された。低い身体活動量によって、就寝時メラトニン量が低値で、就寝時体温に十分な低下が見られず、夜間最低体温時刻が朝方に後退した結果、起床時体温が低値である可能性が考えられた。
著者
吉岡 基 幸島 司郎 天野 雅男 天野 雅男 荒井 一利 内田 詮三 大谷 誠司 小木 万布 酒井 麻衣 白木原 美紀 関口 雄祐 早野 あづさ 森 恭一 森阪 匡通
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ミナミハンドウイルカの保全のために必要な基礎情報を得るため,分布や移動経路の把握,地域個体群間の関係に関する検討,行動解析,繁殖生理値の収集を行った.その結果,(1)伊豆鳥島周辺に本種が分布し,その個体群は小笠原や御蔵島の個体群との間に関係を有すること,(2)奄美大島での調査により,本種が同島周辺を生活圏とすること,(3)御蔵島個体群の社会行動の分析から,その頻度が性や成長段階によって異なること,(4)飼育個体の性ホルモン分析から,オスの精子形成は春~秋により活発になることなどが明らかになった.
著者
佐藤 裕子 中木 高夫 濱田 悦子 川島 みどり 木村 義 齋藤 彰 平木 民子 奥原 秀盛
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究は看護学生の論理的思考を育成する教育方法の1つとして、看護方法学の授業教材として使用できるコンピューター・ソフトウェアの作成を目指した。このソフトウェアの基盤を構築するために未だ明らかにされていない看護者に特有な推論構造を解明する目的で平成10年度に予備調査を実施した。結果、経験の厚い看護者の推論をより密着して詳細に調査することが必要となり、平成11年度には本調査を実施した。結果、手がかりから仮説へと至る看護者の推論プロセスの特徴、対・患者場面で看護者の即座の行為を導く推論の特徴、さらに看護者に追加される情報によって推論が発展していくことが明らかとなった。得られた資料を土台として、平成12年度から平成13年度にかけて、ソフトウェアの主軸となるルールセットを構築していった。このルールセツト作成作業では現象データからどのような推論が生まれてくるかをシミュレーション化したうえで、現象→推論→根拠→否定手段の4要素のルールからなるセットを蓄積していった。これらをシステムに組み込む作業を経たうえで、ユーザーインターフェイスを開発、ソフトウェア化していった。これと平行し本研究で作成するソフトウェアの適用対象となる看護学生の思考発展調査を平成12年度から13年度にかけて行った。結果、看護学の専門的知識を学習する前の時期は自らの生活体験や身近な家族・親戚、ぞして講義などの影響が大きい学生の思考は、基礎実習を経ることによって、さらに看護過程や看護専門知識の学習を経ることによって、現象を見る視点が多様化し語彙量が増え、表現豊かになっていくという思考の発展が明らかとなった。学生の思考発展に応じた適切な時期と活用法を考慮に入れながら論理的思考を育成することを目指す本ソフトウェアの授業教材化と評価が今後の課題である。
著者
藤田 潤 西山 博之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

一般に低温では細胞増殖・遺伝子発現ともに低下するが、哺乳類の精子形成細胞は体温よりも32度前後の軽度低温下でよりよく増殖・分化する。この理由・生物学的な意義は不明である。本研究では、軽度低温により特異的に誘導される低温ショック蛋白質Cirpの発現を制御する分子機構を明らかにし、ストレス応答との関連を解析した。またcirp遺伝子を欠失したマウスを作成し、Cirpの精子形成における役割を明らかにした。
著者
小林 俊行 大島 利雄 関口 英子 寺田 至
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

表現の分岐則は、空間の対称性の破れを記述する数学理論である。本研究では、無限次元表現の分岐則の理論を指導原理の一つとし、幾何構造の対称性を用いた大域解析の基礎理論を推進した。特に、擬リーマン空間形における共形反転変換に対応し、二次錐上のフーリエ変換という概念を導入し、D型単純リー群の極小表現のシュレーディンガーモデルの理論を確立した。また、複素多様体における可視的作用という独自のアイディアを用いて「無重複表現」の基礎理論を推進した。
著者
喜々津 仁密 奥田 泰雄 神田 順 河井 宏允
出版者
国土技術政策総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究課題では,竜巻による突風危険度に関する各種の評価を行うことを目的として,屋内型の竜巻発生装置を設計・製作した.そして,同装置を活用して低層建築物を想定した風圧模型実験を行うとともに,建築物への飛来物の衝突の様子を実験的に再現した.また,実験結果に基づいて屋根に作用する突風荷重モデルを構築し,荷重の大きさと建築物側の開口条件等との関係を明らかにした.
著者
平塚 良子 黒木 邦弘 端田 篤人 橋本 美枝子 滝口 真
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、多様な領域で実践するソーシャルワーカーの事例を活用して多面的・多角的実 践分析モデル(PDA モデル)の開発を行った。モデルの体系的な構造は、実践行為の7次元統 合体を基本に実践内容群とクリティカル思考の援用を試みた実践評価群とからなる。部分的に 検討課題が残ったが、既存収集事例及びソーシャルワーカーによる実験的適用では実用の可能 性が高いと確認できた。 加えて方法優位の発想から実践行為全体の把握への転換が明示できた。
著者
高橋 誠 海津 正倫 田中 重好 島田 弦 伊賀 聖屋 川崎 浩司 伊賀 聖屋 室井 研二
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

2004年スマトラ地震(インド洋大津波)の最大被災地、インドネシアのアチェ地域と中部ジャワ地震の被災地、ジョグジャカルタ地域を事例に、被災からの長期復興プロセス、特に生業・経済復興と災害文化の定着に焦点を置き、空間の改編から再生、普通の人々の被災経験、組織およびネットワークの再編の相互作用という視点からコミュニティベースの災害復興メカニズムを探ることによって、様々な社会-空間のスケールで機能する災害後復興ガバナンスの中にコミュニティを位置づける多層的復興モデルを導出するとともに、フォーマルな災害対応にインフォーマルな分権的アプローチを組み込む条件を指摘した。
著者
粟屋 憲太郎 伊香 俊哉 内海 愛子 林 博史 永井 均
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

第2次世界大戦において日独が行った数多くの残虐行為に対し、連合国はそれをどのように認識し、対処しようとしたのか。これまで個別分散化していた戦犯裁判研究を総合的に明らかにするため、大戦初期の連合国による戦争犯罪認識の形成過程から戦犯処罰方式の決定に至るまでの過程、さらに対日戦犯裁判政策の形成・実施・修正・終了のプロセスを全体的に明らかにすることを目指し、連合国による対日戦犯裁判政策に関する政策文書を収集・分析した。
著者
江口 浩二 高須 淳弘 大川 剛直
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本課題では、内部構造や外部構造を持つテキストデータとネットワークデータに対して確率的に表現された潜在構造を推定する技術を開発する。ここでいう内部構造とは、たとえば、テキストデータにおいてトークン(単語)が属性で特徴づけられたものを指し、ネットワークデータにおいては各頂点または辺が属性で特徴づけられたものを指す。また、外部構造とは、たとえば、所与のネットワーク構造における各頂点にテキストデータ群が関連付けられた状況を指す。このような複雑な構造をもつ大規模なデータから低次元の潜在構造を推定することで、様々な実問題に利用可能な「知識」を抽出する。情報の検索、推薦、予測と、時系列解析などに応用する。
著者
向井 紳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では研究代表者らが開発した氷晶テンプレート法により作製したマイクロハニカム状モノリス体の複合化による高機能化を目指した。まずはÅオーダーからサブAmオーダーのサイズを有する活性種をモノリス体に固定化する技術を確立した。これらの技術を利用し、光触媒、液相用固体酸触媒、イオン交換体として利用でき、流体に対する抵抗が非常に低いモノリス体の製造に成功した。さらに有機-無機ハイブリッドを前駆体に用いることにより、高い耐熱性を有するモノリス体の製造にも成功した。
著者
石川 健三 鈴木 久男 中山 隆一 河本 昇 末廣 一彦 JACKIW Roman WIEGMANN Pau 細谷 裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

低次元場の理論の研究とその応用をテーマとする本研究では、量子ホール効果の場の理論、重力の量子論並びに弦の量子論が中心的課題として取り上げられた。これら物理学の基本的諸問題に関する多方面にわたる研究が展開され、以下の成果があげられた(1)極めて特異な量子的な物理現象である量子ホール効果の厳密性に関して、ホール系のガス状態が負の圧縮率を持つことが示され、さらにこのことより縦抵抗が有限な値をとる現実の実験状況下でもホール抵抗の値が厳密に量子化されることがしめされた。また、量子的な多体効果が重要な働きをしている分数量子ホール諸問題について、空間の対称性を最大限に保つvon Neumann格子表現を使い、相互作用によりfluxが凝縮し、Hofstadterのbutterflyスペクトルと同様なものになる一粒子状態を持つflux相に基ずく新しい平均場理論が提案された。この意味で、Hofstadterのbutterflyスペクトルと分数量子ホール効果の関連が初めて明らかにされた。(2)時間や空間の反転に関する不変性を破る超伝導では量子ホール系と同様に電磁場に対するChern-Simons項が導かれる。磁場の役割をp波のCooper対凝縮がし、u(1)対称性が破れているときのChern-Simons項の係数には補正があること等について解明された。(3)任意次元に一般化された偶数次元のChern-Simons作用が無限階質量殻上既約という極めて特殊なゲージ対称性の構造を持つ理論であることが示されまたこの理論の量子化に成功した。(4)3次元Chern-Simons重力と4次元BF理論を格子上にのせる試みに成功した。(5)ストリング理論におけるD-Particleの有効理論のコンフォーマル対称性が示され、またハミルトンーヤコービ方程式を用いたストリングの新しい定式化にせいこうした。(5)超弦理論について、その相転移がヒッグス場による対称性の破れと解釈できる相転移点まわりでの物理量の計算について、定量的に解析する技術の開発に成功した。(6)量子情報理論における量子的絡み合い状態についてのエントロピーの持つ関係式の導出に成功した。
著者
斎藤 博 向井 茂 寺西 鎮男 谷川 好男 藤原 一宏 浪川 幸彦 内藤 久資 齋藤 博
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1.Alexeev,Sankaran教授を招いて1997年5月に名古屋大学においてモジュライ多様体の研究集会を開催し、アーベル曲面のモジュライに対する結果を発表するとともに一般次元主偏極の場合のトーリックコンパクト化について議論した.また、6月の数理解析研究所でもう一度会って、理解を深めることができた.この方面では(1、5)型と(1、4)型の場合に標準レベル付偏極アーベル曲面のモジュライ空間と対応する正多面体多様体の間の双有理写像を具体的に構成した.対数多様体の概念を使うと見通し良くなることと可積分系との関係がこの研究で得られた新しい知見である.2.夏からは研究計画3)の幾何学的不変式論に本格的に取組み1997年12月にはMumfordのものとは違ってlinearizationの取り方によらない商多様体の構成を発見した.これについては具体的な例でその有効性を検証中である.また、幾何学的不変式論の基礎を検証し、不変式環の有限生成性や簡約代数群の線型簡約性の証明を簡素化することができた.3.1996年度より続いている3次超曲面の周期写像の研究では幾何学的不変式論で得られるモジュライ空間と対称空間の数論的商を比較し、モジュライ空間としてふさわしいコンパクト化の候補を見つけた.これは本来問題としていたK3曲面のモジュライ空間のコンパクト化についても示唆を与えている.次数の低い場合に安定K3曲面の候補を色々実験している.