- 著者
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今村 文彦
片田 敏孝
牛山 素行
越村 俊一
- 出版者
- 東北大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2003
人間は知覚機能などを通じて外的な脅威に関する情報と自分の現在の状況を収集し,その相互関係で危険を認識する.さらに,避難行動の際にも経路の状況を判断して,より安全に避難場所へ移動しようとする.このような知覚機能を重点に置き情報と人間行動の関係を検討することを目的とした.研究の中で,過去の災害データ,ハザードマップ,体験型学習,避難訓練を通じて,住民や行政担当者にどのようにして認知されそれが知識化し,どの位の期間まで記憶化されるのかを調査研究を行った.その中で,2003年5月の宮城県沖の地震では,三陸沿岸各地で震度4〜6弱が観測され津波襲来が直ちに懸念されたが,津波を意識して避難した住民は,全体のわずか1.7%であった.この要因を把握するため,住民の避難行動とその意識的背景を分析した結果,避難の意思決定を避難情報や津波警報に過度に依存する姿勢や,正常化の偏見による危険性の楽観視,過去の津波経験による津波イメージの固定化といった住民意識の問題点が明らかとなった.このような現状を踏まえ災害情報の受取側の課題を解決するために,津波災害を対象に地域および学校での2種類の取り組みを実施した.1つは,住民参加型の津波防災サイン検討会における住民参加型防災対策の実施であり,地域住民のみならず観光客も対象とした津波避難サインの設置を目指した.もう1つは,体験・参加型の学校での学習である.いずれも,課題を解決する内容を含んでいるものの,既存の活動や教育プログラムに取り込む方法や継続的な内容にする工夫が必要であることが分かった.