著者
木村 文隆 伊丹 千晶 LU Hui-chen HUANG J-y
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

大麻の有効成分であるカンナビノイドは、逆行性の神経伝達物質として注目を受けたが、近年では、感覚皮質においてのスパイクタイミング依存性可塑性の長期抑圧を導く伝達物質として再度注目されている。一方、長期抑圧が誘導されると、入力線維はしばしば刈り込まれることが知られている。このことは、カンナビノイド投与単独でも入力線維の刈り込がおこる可能性を示している。我々は、視床-皮質投射において、発達期にカンナビノイド受容体依存性の長期抑圧が起こることを見出した。視床-皮質投射の変化を調べたところ、長期抑圧が起こっている時期に一致して軸索の退縮が起こることも見出した。外因性にカンナビノイドを投与することによって退縮が起こるかは現在検討中である。
著者
岩下 達雄
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

片頭痛発作と気象との関係について個々の臨床・気象データを検討したところ、片頭痛発作は低気圧の接近前後に起こる傾向があり、気圧変化との関連が示唆された。天気が悪くなると頭痛が起こるなど、片頭痛患者の間で感覚的に語られていたことと同様の傾向であった。また、片頭痛の病態解明を目的とした研究で、脳硬膜に侵害刺激を加えると、三叉神経節でERKリン酸化が起こること、皮質拡延性抑制(cortical spreading depression:CSD)は三叉神経節においてERKリン酸化を誘発させることを明らかにした。これらの結果は、CSDと三叉神経血管系の活性化との関係に重要な知見を提示するものと考えられた。
著者
徳田 誠 田中 誠二 川浦 香奈子 軸丸 裕介
出版者
佐賀大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

様々なイネ科植物を摂食するがオオムギは摂食しないというトノサマバッタの寄主特異性に着目し、オオムギ品種Betzesの染色体を1対ずつコムギに導入したオオムギ染色体導入コムギ系統を用いて、トノサマバッタの行動や寄主選好性、生存率や発育期間に影響を及ぼすオオムギ側の要因を解明すべく研究に取り組んだ。コムギを与えて幼虫を飼育したときに比べ、オオムギ染色体導入コムギ系統6Hで生存率が有意に減少し,2Hで1齢および2齢幼虫期間が有意に遅延し。以上より、オオムギの6番染色体および2番染色体には、それぞれトノサマバッタの生存および発育に負の影響を与える遺伝的要因が含まれていることが示唆された。
著者
山下 俊一 高村 昇 光武 範吏 サエンコ ウラジミール
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

チェルノブイリ原発事故後、放射線ヨウ素内部被ばくによる甲状腺発癌リスク以外に、ニトロソアミン系における発癌動物モデルが証明され、近年の環境汚染問題でヒトにおいてもその可能性が報告されている。そこで、ベラルーシの甲状腺癌症例の地域別分布と放射線ヨウ素被ばく状況、大量有機農薬使用による水質汚染に着目し、その関連性について包括的なデータの検証と共同論文発表を行なった。これに合わせて、福島原発事故後の甲状腺超音波検査の解析結果から、スクリーニング効果以外の甲状腺癌発見増加の原因として、川内村の異なる水源の飲用水中の硝酸・亜硝酸動態を測定し、その因果関係を検討したが、有意な関係性は認められなかった。
著者
吉川 裕之 前田 平生
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

HLAクラスIIと子宮頸部発癌の関連を解明するために健常者341名、CIN1/2 591名、CIN3/子宮頸癌321名を横断的研究で比較し、CIN1/2 454名ではCIN 3進展についてコホート研究も行った。健常者・CIN1/2と比べて、DRB1*0901、DRB1*1302頻度はCIN3/子宮頸癌で有意に低かった(P=0.00001, P=0.006)。CIN1/2 454名のコホート研究では、10年間のCIN3への進展リスクは、DRB1*1302患者で有意に減少していた(3.2% vs.23.7%, P=0.03)。DRB1*1302はCIN3/子宮頸癌進展への予防効果を有する。
著者
糸川 昌成
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

我々はメチオグリオキサールの分解酵素glyoxalase 1(GLO1)に50%活性低下をもたらすフレームシフト変異を持った家系を同定し、それをきっかけとして内科合併症を持たない統合失調症の46.7%で末梢血にAGEsの蓄積を同定した(Arai et al. Arch Gen Psychiatry 2010)。統合失調症と関連する揮発性分子に注目し、その合成代謝経路を明らかにすることで病態を解明することを目的とした。病棟の空気を捕集し、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて、揮発性分子を同定した。
著者
河野 裕彦 木野 康志 秋山 公男 関根 勉 菅野 学
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

トリチウム壊変が引き起こすDNAの鎖切断過程を探索するため,密度汎関数強束縛法に基づいた反応動力学シミュレーションを行った。反応時の電荷の変化を定量化するマリケン電荷と各原子のエネルギーの変化を定量化する原子分割エネルギーを使った。トリチウムがβ壊変後Heとして脱離すると,電荷再配置の後,実質的にトリチウムが引き抜かれたDNAは中性となって,ラジカル的な性質を持つ。この条件下では,糖の3'C あるいは5'Cにトリチウムがある場合,隣接するリン酸基のP-O結合が切断することがわかった。この反応は1本鎖切断で終わっており,修復が困難な2本鎖切断に至る可能性は極めて低いことがわかった。
著者
伊川 正人
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

エネルギー産生などに重要な細胞内小器官であるミトコンドリアには、細胞核と独立したゲノムDNAが含まれる。また、ミトコンドリアDNAに変異があると、様々な病態を引き起こすことが知られている。今回、我々は最新の標的遺伝子組換え技術であるCRISPR/CAS9システムを活用することで、ミトコンドリアDNA (mtDNA) の標的遺伝子組換え技術を開発することを試みた。ES細胞でのミトコンドリア遺伝子破壊を試みたが、残念ながら、標的遺伝子が破壊された細胞株を得ることができなかった。今後は、ES細胞を用いて処理数を増やすと同時に、ミトコンドリア移行効率を上げるなどの、戦略変更の必要があると結論した。
著者
岡ノ谷 一夫 池渕 万季 戸張 靖子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

家畜化された動物には、白斑がある、頭が丸い、攻撃性が弱い、ストレス耐性が高い等の共通点がある。これを共通して説明するのが家畜化の神経堤細胞仮説である。神経堤細胞は、色素細胞や顎組織、副腎髄質を形成するので、攻撃性が低い個体を選択するうち、これらに関連する特性が弱まるという仮説である。ジュウシマツは野生の小鳥、コシジロキンパラを250年前から日本で家禽として育てた亜種である。両亜種の差異が神経堤細胞仮説に合致するかを検討した。結果、ストレスと白斑、および大脳歌制御システムについてはこれが合致するが、嘴の長さや体の大きさ、扁桃体の大きさなどについては差異が認められなかった。
著者
志村 浩己 古屋 文彦 一條 昌志 一條 昌志
出版者
福島県立医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

新規に発見した微細緑藻類Parachlorella sp binos (Binos)は,福島第一原子力発電所事故にて環境中に放出された主な核種である放射性ヨウ素およびセシウム,ストロンチウム等の放射性陽イオンを高効率に取り込むことを明らかにした。さらに,二次元質量分析により,ヨウ素は細胞質内に取り込み,陽イオンはアルギン酸に富む細胞外マトリックスに結合することにより吸着することを明らかにした。さらに,ヨウ素は光合成により発生された活性酸素により能動輸送されることにより取り込まれることを明らかにした。本藻類を利用した環境中の放射性物質の除染方法は,現在,実際の福島県内の除染に利用されている。
著者
清水 晶子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、日本の性的少数者の政治言説を分析するとともに、個別の物理的身体をめぐる近接性の政治と「集団」における差異の政治とを接続しつつ、差異をもつ諸身体の共生と連帯の可能性を提示することを目的としたものである。具体的には、フェミニズム/クィアの政治が多様に異なる諸身体の共生と連帯をどのように模索したのか(あるいはそれに失敗したのか)を整理した上で、今世紀の日本におけるジェンダーとセクシュアリティの政治が女性や性的少数者の権利の承認を目指す中で、諸身体の差異をめぐる政治がどのように展開してきたのかを明らかにするとともに、マイノリティ身体にとっての近接性と連帯の困難と可能性についての考察を行った。
著者
熊野 直樹
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究の主たる目的は、第二次世界大戦期の「満」独阿片貿易の実態解明であった。特に、どのような経緯を経て、「満洲国」とナチス・ドイツ間の主要な交易品が満洲大豆から阿片に代わったのか、その際、誰が主導したのか、を明らかにするのが本研究の目的であった。 「満」独通商協定によって、両国は主に満洲大豆とドイツ製機械をバーター取引していたが、満洲大豆の不足によって、「満洲国」側は貿易赤字に陥った。その結果、ドイツ側はその決裁の手段として、満洲大豆に代わって阿片を要求するに至った。1941 年 5 月の「満独通商協定延長に関する第二次協定」において正式に両国の間で、阿片取引がなされることになった。その責任者が、「満洲国」側は古海忠之であり、ドイツ側がドイツ経済使節団代表のヘルムート・ヴォールタートであった。戦時中、両者が両国間の阿片貿易の責任者であった
著者
及川 靖広 池田 雄介
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、光音響効果を用いた音源生成の理論を確立し、最終的にはそれを気体中に適用することで任意の音源を再生可能な空中音源の生成を目指している。本年度は、初年度の成果に基づき、物体表面を音源位置とする音響信号の再生を目指し、システム構築、実験を行なった。光学的音響計測器を構築し、音波生成の様子を確認した。具体的には、以下の課題について取り組んだ。(1)複数の周波数を再生可能なシステムの構築:初年度は光音響効果という物理現象の基礎的な特性を明らかにするため、正弦波などの単純な定常音の発生を対象としたが、レーザパルスの周波数を変えることにより複数の周波数の音を再生可能なシステムを構築した。レーザを金属、木材、炭化コルク等に照射して、音の発生を確認した。光を照射する物質との関係など、光音響効果に関わる様々な要因を実験により確認した。(2)音源のプロジェクションを目指した処理:可動式ミラーによりレーザ光照射位置を変えることができるシステムを構築し、光を照射した場所を音源とすることができることを確認した。このシステムにより移動音源を生成可能であることを実験により確認した。(3)光学的音響計測による音源近傍の計測:我々がこれまで開発してきた位相シフト干渉法と偏光計測技術を組み合わせた空気の屈折率変調を定量的かつ高速高空間分解能で計測可能な計測器を用いて、音波発生の様子を計測するために音源近傍の観測を行ない、音波発生の様子を可視化した。
著者
宮崎 充功 坪田 敏男 下鶴 倫人
出版者
北海道医療大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、「冬眠」を長期間の寝たきり状態と仮定して、冬眠動物(ツキノワグマ)がどのような仕組みを利用して骨格筋量を維持しているのか、筋肉細胞の中のタンパク質や遺伝子の働きに注目して解析しました。その結果、骨格筋量の維持に影響を与える因子のうち、筋タンパク質合成を促進する命令系統が冬眠後の筋肉で活性化されていることや、筋肉が大きくなり過ぎないようリミッターの役割をしている遺伝子の働きが冬眠中に抑えられていること、などがわかりました。
著者
笠井 孝久
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、子どもたちがナマハゲ行事によって感じる恐怖の性質を明らかにした。子どもたちはナマハゲに対して強い恐怖を感じるが、それらは一過性のものでトラウマにならない。その要因は、ナマハゲが神性をもつ存在として、地域住民の生活の中に位置づけられているという文脈によるものと考えられる。また、恐怖の感じ方、表現は年齢による変化があることが明らかになった。ナマハゲ行事は、子どもたちに恐怖とどのように向き合い、どのように統制していくかを経験させる機会となっていると考えられる。
著者
大森 不二雄 杉本 和弘 立石 慎治
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

1.インターネット調査の実施準備を完了した。現在の職場や職務内容、現職の任期、現職の雇用条件、在籍した博士後期課程等、キャリア・経験等を調査項目とし、項目ごとに詳細に設問した調査票を完成した。大学と他組織(企業等)との間の差異や同等性をも把握するため、博士課程出身の非正規労働者全体を調査対象とすることとし、調査対象は「博士課程出身者(博士号取得者、ならびに、単位取得後退学した満期退学者)かつ非正規労働者(大学・短期大学、公的研究機関等、民間企業、非営利団体、官公庁、その他の組織に任期付で雇用されている者。職務内容を問わない。)」と定義した。所属部局の研究倫理委員会による承認を得た。同承認が3月となり、年度内の発注・納品というスケジュールでは十分な回収数が得られない可能性もあったため、次年度の早期に調査を実施することにした。2.シンポジウム「エビデンスに基づく科学教育」(4月)に参加し、ポスドクが科学教育専門家としてのトレーニングを受けて活躍する北米の知見を得るとともに、講師のカール・ワイマン氏(ノーベル物理学賞受賞者、科学教育研究者)等と協力関係を構築した。また、シンポジウム「博士の選択2017~これからの博士・ポスドクのキャリアを考える~」(10月)に参加し、大学における博士人材のキャリア等に関する情報を収集した。さらに、文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)主催「第10回政策研究レビューセミナー」(12月)に参加し、「博士人材のキャリアパス把握と分析」を含む諸発表を聴き、情報収集を行った。3.上記2のワイマン氏等が大きな役割を果たしたDBER(discipline-based education research)の発展及び博士のDBER人材としての育成・活用等に関する論考を刊行するとともに、学会シンポジウムにて日本固有の課題の一つとして博士の活用を論じた。
著者
登坂 学
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

最大の成果は上海でSNH48のファンに対するインタビューを実施し、そこから重要な知見を得たことである。典型的事例として日本のAKBファンを経て後にSNHファンになったAさん(20代女性)のケースを紹介する。Aさんは高校生の頃(2009年頃)AKBの板野友美のファンとなった。きっかけはネットでAKB48の人気番組「AKBINGO」視聴したことであった(著作権上問題だが、中国では「字幕組」と呼ばれるボランティアが日本の人気テレビ番組を録画したものに素早く中国語字幕を付し次の日にはネット上にアップする)。アイドルに魅了されてからというもの彼女はCD(中に握手券や総選挙の投票券が封入されている)やグッズを買ったり、総選挙の投票のための募金活動(応援会が投票券入りCDを大量購入するため資金調達活動を行う)に身を投じることとなる。SNHには既に約10万元(≒170万円)を消費した。アイドルグループのファンになって日常生活や意識に何か変化はあったか、との問いに「娯楽生活が豊富になった」とし、「微力だとしてもアイドルのために自分の力を尽くしたいと思う」ようになったと述べた。また「ファンコミュニティは一つの社会のようで、一人の学生にとって、前もって社会に足を踏み入れたようなものだと思う。少しビジネスのやり方を学んだし、他者への接し方や処世術を学んだ。」と述べた。ボランタリズムと社会性が涵養されたのである。「劇場」や「アイドル」とは何かとの問いに「劇場は自分にとって同好会のラウンジだ。ここで多くの人に出会ったし、皆は同じ趣味を持っていて、同じアイドルを応援して一緒に様々な思い出を作れたからだと答えた。「アイドルは私にとって一種の信仰、ブラスのエネルギーをもたらす信仰。彼女の成長を見ていると、私はとても幸せな気持ちになる。」コミュニティは「居場所」であり「自己肯定感」を醸成するのである。
著者
半田 康 吉岡 英治 佐々木 成子 岸 玲子
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

食肉中のエストロゲン濃度について、日本産とフィリピン産、アメリカ産の牛肉、鶏肉を対象として国別に比較を行った。エストラジオール濃度、エストロン濃度ともに牛肉ではアメリカ産、フィリピン産、日本産の順に高濃度で、鶏肉ではアメリカ産、日本産、フィリピン産の順に最も高濃度だった。フィリピン産牛肉の脂肪部位のエスラジオール濃度は日本産よりも8倍高濃度で、日本産鶏肉の脂肪部位のエストロン濃度はフィリピン産の鶏肉よりも12倍高濃度だった。これらの違いは外的に投与されたホルモン剤の残留によると考えられた。ヒトの脂肪組織中エストロゲン濃度の比較は日本とフィリピンの2カ国で行った。閉経後女性の皮下脂肪中のエストロン濃度、エストラジオール濃度は、フィリピン人女性(n=6)が日本人女性(n=15)よりも高濃度であった。食事頻度調査においては、日本、フィリピンの2国間で食肉摂取の違いが見られた。このヒトの皮下脂肪中エストロゲン濃度の違いは、食肉中エストロゲン濃度、食事頻度調査のみからは説明が困難で、症例数が少ないためBMIの違いを補正できないことに起因する可能性を否定できなかった。本研究では、ホルモン剤使用食肉の摂取とヒト組織中エストロゲン蓄積との関連、ホルモン依存性癌の発生率の関連について、結論を出すことはできなかった。今後、ヒトの検体数を増やして再度検討を行う必要がある。
著者
山田 正俊 田副 博文 楊 国勝
出版者
弘前大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

福島第一原子力発電所事故後の環境試料中の236U濃度と236U/238U同位体比をモニタリングするために、誘導結合プラズマ質量分析装置による環境試料中の236U分析法の開発を行った。開発した分析法の信頼性は認証標準物質を用いて評価した。福島原発事故により汚染された46土壌試料中の236U濃度及び236U/238U同位体比を測定した。その結果、236U濃度は(0.469-24.4)×10-5 Bq kg-1、236U/238U同位体比は(0.099-1.35)×10-7であった。これをPu同位体の結果とともに解析して、福島原発事故により極微量ではあるが236Uが放出されたことを明らかにした。
著者
倉林 敦 住田 正幸 広瀬 裕一 浮穴 和義 澤田 均 中澤 志織 逸見 敬太郎 ベンセス ミゲル マローン ジョン ミンター レスリー ド プリーツ ルイス
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

フクラガエルが生殖時に用いる糊の物理的特性と化学成分、および糊候補遺伝子の探索を行った。本研究の結果、フクラガエル糊の接着強度は、およそ500g/cm2であり、その主要構成要素は蛋白質であることが分かった。さらに、糊物質候補は、他のカエルで報告されていた皮膚分泌物と似た3種の蛋白質と、1種の新規蛋白質があることが示唆された。また、アメフクラガエルについて、人工繁殖を試みた。その結果、Amphiplexと呼ばれるゴナドトロピン誘導ホルモン作動薬とドーパ混合ホルモン剤が、本種の排卵を促すことを明らかにし、世界で初めて飼育下での人工的な交尾の促進と、営巣・産卵までの観察に成功した。