著者
岡本 正人
出版者
金沢工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

昆虫のような小さな翼に作用する空気力は非常に微小であることから、レイノルズ数が10,000以下の翼の空力特性に関する実験データはほとんど得られていない。そこで、この小さな翼の空力特性を得るための専用の低圧風洞装置を開発した。その結果、レイノルズ数が1000~10,000の翼に作用する空力係数が精度よく測定できるようになった。そのため、本風洞を用いてさまざまな翼の空力特性について実験を試みたが、特にコガネムシの鞘翅に見られる大きなキャンバの円弧薄翼の空力特性で興味ある結果が得られた。このような小さな翼の空力データは、小型の冷却ファンや昆虫サイズの超小型航空機の翼の開発に役立つと考えられる。
著者
榧木 啓人 亘理 龍
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、均一系触媒を用いる二酸化炭素の水素化反応によるメタノール合成法を実現する目的で、二酸化炭素→ギ酸類→メタノールの変換に有効な分子触媒の開発に取り組んだ。アミジン塩基 (DBU)存在下、銅触媒が二酸化炭素の水素化活性を示すことを見いだした。また、DBUとヨウ化銅から得られる新規錯体が触媒活性を示したことから、DBUはギ酸を捕捉する塩基かつ銅触媒の配位子として機能していることが判明した。さらにPNPピンサー型ルテニウム錯体による二酸化炭素の水素化反応がアミンポリマー上で進行することを見いだした。アミンポリマーのホルミル化と続く水素化を経て、直接メタノールを合成することに成功した。
著者
松田 和之
出版者
福井大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

コクトーの文学・芸術について考察する上で重要な手掛かりとなるのが、彼が晩年の12年間に書き残した厖大な分量の日記で構成される『定過去』だが、そこでは、「空飛ぶ円盤」や「前衛考古学」など、いわゆる「オカルト」として学問的な考察の対象から除外されがちな話題が数多く取り上げられている。本研究において、その背景を慎重に探った結果、エメ・ミシェルをはじめとする在野の若い学者たちとの交流を通じて現代物理学に異議を唱える「超科学」の思想に共鳴したコクトーが、UFOや超古代文明の存在を肯定的に捉える彼らの思想で以て自らの時間観・死生観を理論武装しようとした可能性を指摘するに至った。
著者
古谷 ミチヨ 中塚 幹也 川村 千恵子
出版者
森ノ宮医療大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、性同一性障害(MTF)当事者の望む性での実生活経験(RLE)を支援するプログラムの開発に向けた質的および量的調査研究である。質的研究では女性パートナーと結婚経験があり子どもを持つMTF当事者が自身の性を探り、性別移行を決心していく過程を支える援助について検討した。量的研究では61名のMTF当事者を対象に治療、望む性の表現状況、就労、カミングアウト、対人関係上の困難等について把握し、治療段階や婚姻状況、戸籍の性別変更等と関連付けた支援を検討する必要性を確認した。
著者
竹内 比呂也 川本 一彦 白川 優治 國本 千裕 岡本 一志 姉川 雄大 藤本 茂雄
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

大学図書館による学習コンテンツの提供,ラーニングコモンズおよび学習支援サービスの有機的結合によって形成される新しい学習環境が学生の学習行動,情報探索行動にどのように影響を与えるかを明らかにし今後の学習環境整備の方向性を示すことを目的として,千葉大学アカデミック・リンクを対象に学際的なアプローチの下,定量的,定性的調査分析を実施した。その結果,新しい学習環境が学生の多様なニーズを満たしていること,また,間接的ながら,学習成果に影響を与えていることが示唆された。
著者
小助川 貞次 月本 雅幸 高田 智和 渡辺 さゆり 呉 美寧 朴 鎭浩 WHITMAN John ALBERIZZI Valerio luigi
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

漢文訓読は日本以外の漢字文化圏でもそれぞれの言語で行われていた言語活動であるが、一般社会における認識は極めて低く、また漢文訓読に関する学術用語の国際的共有も進んでいない。本研究では国内外の研究者と連携・協力しながら「国際的共有知財としての漢文訓読」というテーマのもとで問題解決を試み、「漢文訓読用語集」(日本語・韓国語・英語・イタリア語)の公表(共著)と「東アジア漢文訓読史概説」の大学教育での実験を行った。
著者
宮口 英樹 石附 智奈美 宮口 幸治 西田 征治 安永 正則
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

DSM‐5による発達性協調運動症(DCD)は、生活年齢における日常生活の諸活動を著しく妨害していると表記されるが、日常生活では多岐にわたる認知機能が要求されるため、身体運動を中心とした介入プログラムでは、日常生活活動の遂行能力を実際に改善するかどうか検証はされていない。そこで本研究では、認知機能トレーニングを包含した介入プログラムを独自に開発し、医療少年院入院少年のうちDCDを有する対象者に3ヶ月間10回実施した。効果検証は、日常生活活動の運動とプロセス技能を定量的に観察評価するAMPSを用い、介入前後で有意なスコアの改善が認められた。
著者
橋爪 健一
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ガンマ線をエネルギー源とするシリコン半導体およびテルル化カドミウム半導体を用いた放射線電池を開発し、5%以上のエネルギー変換に成功した。発電効率は、素子の厚さ、照射温度に顕著に依存した。これらの特性は、照射によって生成した電子-正孔のキャリアの寿命、拡散長に起因することが分かった。また、長期照射に伴う発電効率の低下は避けられなかったが、素子の加熱焼鈍によって回復することが分かった。
著者
志賀 隆 山本 三幸 先崎 浩次
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

「くすぐったい」感覚は皮膚刺激の1つであるが、脳内での感覚情報処理機構は不明であった。本研究でヒトを被験者として足底の皮膚に筆を用いてくすぐり刺激を加えると中心後回と中心前回に相当する脳部位の血流量が刺激特異的に変化することを明らかにした。また実験動物としてマウスの背部に筆を用いて皮膚刺激を加えると、大脳皮質と海馬におけるセロトニン受容体の発現量が変化することが明らかになった。
著者
筒井 久美子 矢野 謙一
出版者
熊本学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

北朝鮮の教科書には、金日成や金正日が必要不可欠・国父的存在であることや人民として取るべき模範的考え方や行動が、さまざまな修辞法(例えば、反復、説得、比較、非言語的描写、問答形式)を通して確実に学習できるようになっている。また人民は守られ幸福であることが、外国を否定的に描くことにより示されている。これらの修辞的技法は現在でも政治体制を継続するため、また人民の言動や思考を操作するために使われているのである。
著者
武田 邦彦 中島 江梨香
出版者
中部大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

海洋資源の利用、エネルギーおよび食糧資源の確保などの極めて重要な視点から高濃度CO2を活用した藻類の大量培養を進める必要があると考えられるが、本研究を通じて、早期に研究が必要なものは関連する化学工学の研究、それに付随して海洋工学、藻類研究と化学工学の融合である。工業化の研究段階は初歩的段階であるが、研究の社会的意義が大きいので公的資金獲得が可能であるので「有望である」という概念や研究申請が先行し、エネルギー収支、環境影響、科学的合理性に対する検討がまったく不十分であることが分かった。本研究を通じてCO2利用研究が単なる研究費獲得のための活動にならないことがもっとも重要であることが分かった。
著者
田村 宏治
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ペンギンの胚発生研究を可能とする実験基盤を構築した。ペンギン卵を胚操作できる状況を各種許可申請を得るなど制度的にも実質的にも作り出した上で、細胞系譜追跡実験など胚操作実験を行った。その結果、ペンギン前肢の第1指形成不全が発生段階27以降に生じること、この過程で細胞増殖の低下が見られること、過剰なbmp4遺伝子の発現が見られること、などが明らかとなった。風切羽形態の特殊性を明らかにするために、ニワトリ胚における風切羽発生について詳細な記述を行った。本研究計画によって、世界で唯一かつ初めての試みとしてペンギン胚の発生研究モデル化の基盤が構築できた。
著者
河上 敬介 宮津 真寿美
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

昨年度、レジスタンス運動による筋肥大モデル動物を確立し、筋肥大とサテライト細胞活性化の関係を明らかにすることを目的に検討したが、筋肥大を起こす条件や、活性化サテライト細胞の検出条件を決めることが困難で、研究デザインの改良が必要であることがわかった。そこで、平成21年度は、レジスタンス運動によって筋萎縮が回復する過程において、筋サテライト細胞が関与するかどうかを明らかにすることにした。まず、レジスタンス運動による筋萎縮回復モデルマウスの作製を行った。レジスタンス運動の方法は、警告音のあと床面から電気刺激を行い、壁スイッチを押せば、その電気刺激から回避できるレジスタンス運動ボックスを製作し、電気刺激の前の警告音で壁スイッチを押すようマウスを学習させた。壁スイッチの高さを、ラットが立ち上がり、踵が離地する位置に設置すると、警告音後、立ち上がってスイッチを押すようになる。このような立ち上がり運動を学習した後、尾部懸垂を1週間行い、下肢筋の萎縮を起こし、その後、立ち上がり運動を1週間行った。その結果、1週間の不活動により筋が萎縮すると、ヒラメ筋の筋線維横断面積の減少、筋核数の減少が起こるが、その萎縮筋に一週間のレジスタンス運動を行うと、筋線維断面積の早期回復、筋核数の増加が起こることがわかった。さらに、萎縮筋にレジスタンス運動を行うと、筋核数/筋線維断面積比が大きいことがわかり、レジスタンス運動による筋線維断面積の増大に先だって筋核数が増えることがわかった。増殖した核の数と位置を観察すると、レジスタンス運動2日目に筋細胞外に増殖核が増え、3日目に細胞内に増殖核が増えることが分かった。この現象は、レジスタンス運動によって筋サテライト細胞が活性化・分裂し、その後融合した可能性がある。今後、免疫学的手法により、増殖核がサテライト細胞の核であることを明らかにする予定である。
著者
野崎 剛一
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

鶏卵の輪郭を観察すると卵の左右に差が生じていることが観察される。鶏卵の左右回転方向が雌雄に大きく関与しているという仮説を立てた。卵の歪み計測で卵の捩れを検出するために、卵の全輪郭を捉える3台のカメラ構成による計測システムを考案した。卵の捻れ方向を解析すると、卵の歪みや傾きは、振り子の強制振動と同じリミットサイクルと酷似している。この特性は、卵の回転方向が雌雄で逆、つまりメス卵は右に回転し、オス卵は左に回転しているものと想定される。3面撮影のプロトタイプシステムの構築と検証を行い、実現すれば、採卵鶏種のオスひな殺処分問題の解決につながり、鶏卵を孵化前に食料、ワクチン開発の需要に使える道が開ける。
著者
海部 陽介 篠田 謙一 河野 礼子 米田 穣 後藤 明 小野 林太郎 野林 厚志 菅 浩伸 久保田 好美 國府方 吾郎 井原 泰雄
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、旧石器時代の琉球列島に現れた人々がどのように海を渡ってきたかについて、その理論的枠組みを定めるため、文理問わず多彩な分野の研究者が情報を共有して、総合的モデルをつくることを目指した。彼らは草・竹・木のいずれかを素材とした漕ぎ舟に乗り、男女を含む少なくとも10人程度の集団で、黒潮の流れる海を、漂流ではなく意図的に航海してきたと考えられる。このモデルを、現在進行中で連動して行なっている実験航海に反映して、当時の航海を再現してみれば、そのチャレンジがどれだけ困難なものであったのかが見えてくるであろう。
著者
樋口 満 坂本 静男 田口 素子 東田 一彦
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

運動前の糖質摂取によって引き起こされるインスリンショック(運動誘発性低血糖)と呼ばれる現象について、主に朝食摂取の有無による違いに着目し研究を行った。本研究の結果、絶食条件だけではなく、実際のスポーツ現場に近い状態である朝食を摂取した条件においても、運動誘発性低血糖を発症する場合があることが明らかになった。さらに、低血糖の発症のしやすさには個人差が認められ、絶食条件においては、高いインスリン分泌能を有している者が、また朝食摂取条件においては、高い有酸素性能力を有している者が、運動誘発性低血糖を生じやすいことが明らかとなった。
著者
梶 光一 吉田 剛司 久保 麦野 伊吾田 宏正 永田 純子 上野 真由美 山村 光司 竹下 和貴
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ニホンジカの島嶼化プロセスとメカニズムを解明するために、島に導入されたニホンジカの生態・形態・遺伝の年代的変化を調べた。餌資源化で体の小型化が生じ初産齢が上昇したが、間引きによって体重の増加と初産年齢の低下が生じた。餌の変化に対応して第一大臼歯の摩耗速度は初回の崩壊後に早まった。一方、臼歯列サイズは、減少から増加に転じた。有効個体群サイズおよび遺伝的多様性も一度減少したが、その後それぞれ安定および増加に転じた。以上は、餌資源制限下で形態・遺伝に対して正の自然選択が働いた可能性を示唆している。
著者
日向 博文 片岡 智哉 青木 伸一 加藤 茂
出版者
愛媛大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

Worldview-2(Wv2)画像がもつ可視光域から近赤外域までの波長域におけるプラスチックのスペクトルを把握するため,ハイーパースペクトルカメラ(以下HSC)を用いた撮影実験を実施した.撮影実験は国総研屋上(標高12m) から真下にHSCを向けて行った.撮影実験にはNH-7(EBA JAPAN社製)を使用した.被写体は木片,海岸砂の上に設置したポリプロピレン(PP)とポリスチレン(PE)である.RGBの3バンドを使用してプラスチックを検出した場合,PPおよびPEが検出可能であるが背後の海砂もプラスチックとして検出されるが,Wv2の8バンドを使用した場合,海砂の誤検知はほとんど起きなかった.
著者
桜井 武
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

ナルコレプシーは日中の強い眠気を主訴とする特徴的な睡眠障害であリ、視オレキシンを産生するニューロン群の後天的な脱力によって発症する。その症状のひとつであるカタプレキシーは、喜びや笑いなどポジティブな情動によって誘発される脱力発作であるが、その発動機構は未解明のままである。本研究では、カタプレキシーを発動する神経回路を明らかにすることを目的にし、ナルコレプシーモデルマウスにおいてレム睡眠の制御にかかわる領域や、報酬系にかかわる領域および情動にかかわる領域に光遺伝学的刺激を行い、数種の領域において、カタプレキシーを誘発する刺激条件を見出した。
著者
浅野 茂 嶌田 敏行
出版者
山形大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

IR先進国とされる米国においても、IR部署及びアセスメント部署が提供するデータを実際の意思決定につなげるのは一筋縄ではいかない。その理由を「ゴミ箱モデル」や「コンティンジェンシー理論」の枠組みに沿って考察したところ、大学の執行部はデータを絶対視するのではなく、意思決定に向けた合意を形成するための参考情報として活用し、ある共通認識の醸成へ向けて、各種情報を活用するという地道な努力の積み重ねが重要であることを明らかになった。データ利用者がデータ提供者であるIR部署等のデータをどのように活用しているかの先行研究は乏しいなか、本研究を通じて仮説的にではあるが一定の知見を示すことができた。