著者
水野 直樹 駒込 武 松田 吉郎 堀 和生 藤永 壮 松田 利彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、朝鮮・台湾に対する日本の植民地支配の特徴を歴史学的視点から明らかにするために、両地域を総体的に把握するとともに、両者を比較しその違いを念頭に置きながら、進められた。扱われた分野は、政治・経済・警察・軍事・教育・文化など多岐にわたっている。朝鮮と台湾との比較研究に関しては、例えば、「植民地住民登録制度」(台湾の戸口調査簿と朝鮮の民籍)の成立過程を検討することによって、それらの特徴を明確にした。また、「日本帝国」という広がりの中で朝鮮・台湾の占めた位置をも考察した。日本帝国における機械の生産・流通を統計的に分析することによって、帝国において植民地である朝鮮・台湾がきわめて大きな比重を占めていたことが明らかにされた。近年、植民地支配に関わる歴史資料の公開が韓国・台湾において急速に進んだが、本研究ではそれらの文書資料、および日本に残されているできる限り利用して、実証性を高めることができた。例えば、台湾における私立学校設立認可に関わる文書(台湾文献委員会所蔵)をもとにして、台湾総督府の教育政策の性格を実証的に解明した。研究代表者・分担者は、韓国・台湾の学会・シンポジウムなどで研究発表を行なうとともに、両国の学会誌・論文集に論文を掲載して、両国の専門研究者から批評を受けることとなった。これを通じて、植民地支配の歴史をめぐる国際的な研究交流・討論を深めることができた。
著者
篠原 渉
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

マレーシア・キナバル山のマレーホウビシダに含まれる、形態形質と細胞学的形質で区別できる4個のサイトタイプ(「2倍体・有性生殖・大型」、「3倍体・無配生殖・標準型」、「3倍体・無配生殖・大型」、「4倍体・無配生殖・大型」)間の生育環境の差異を明らかにした。さらに遺伝的解析により、「3倍体・無配生殖・大型」が「2倍体・有性生殖・大型」と「3倍体・無配生殖・小型」の交雑起源であることを明らかにした。
著者
中川 一郎 中村 佳重郎 田中 寅夫 東 敏博 藤森 邦夫 竹本 修三
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

ジオイドは、地球表面におけるさまざまな測地学的測定の基準面であるばかりでなく、その起伏が地球内部の構造と状態とを反映することから、ジオイドの精密決定は、測地学のみならず、地球物理学においても、きわめて重要で、かつ、基礎的な課題の一つである。本研究は、人工衛星アルチメトリィ・データや海上重力測定データや検潮データに加えて、陸上における重力測定やGPS精密測位および水準測量などのデータを総合し、西南日本におけるジオイドの起伏を精密に決定するとともに、得られたジオイドの起伏と地殻および上部マントルの密度異常との関係を明らかにし、その物理的な意義を解明することを目的として、つぎの研究を実施した。1.西南日本におけるジオイド面の起伏を精密に決定にするためのデータ・ベースとして、重力測定データ、水準測量データ、鉛直線偏差データならびに検潮データなどに加えて、トペックス・ポセイドン衛星のアルチメトリィ・データを収集した。2.近畿地方から九州地方にかけての東西約600kmの範囲内で選定された26地点において、可搬型GPS受信機6台を用いたGPS観測を実施し、これらの地点の楕円体比高を求めるとともに、水準測量によって標高を決定した。その結果、すでに得られている結果とあわせて、西南日本における合計57地点のジオイド比高が決定された。3.鳥取,別府,紀伊半島および西国の各地域におけるGPS観測点において、ラコスト重力計を用いた精密重力測定を実施した。4.気象庁および大学の地震観測データを用いて、西南日本の地震波速度異常の3次元的構造を決定することを試みた。5.ジオイド面ならびに3次元地震波速度構造の空間表示を行なうための面像処理プログラムの開発を行なった。
著者
鉾井 修一 朽津 信明 宇野 朋子 小椋 大輔
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

東南アジアでは、多くの石造・レンガ造文化遺産が植物および微生物による被害を受けている。本研究では、遺物に及ぼす藻類の影響を検討し、藻類の成長予測モデルの提案を目的とした。具体的には、スコータイ(タイ国)の大仏を対象として、藻類の成長に及ぼす環境の影響について検討を行った。藻類の成長予測には藻自身の含水率を予測することが重要であることを明らかにするとともに、環境条件を考慮した藻類の成長モデルを提案し、その妥当性を検証した。
著者
山田 明徳
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究計画の主要な仮説は「熱帯林床のリター(枯葉、枯枝)をめぐって、微生物とシロアリとの間に競争関係がある」のではないか、というものである。前年度までに、微生物によるリターの分解量(リターの炭素無機化量=呼吸量による二酸化炭素の放出量)が雨期になると増加することを示してきた。「熱帯林床のリター(枯葉、枯枝)をめぐって、微生物とシロアリとの間に資源獲得競争関係がある」とすれば、微生物によるリター分解量が比較的少ない乾期にシロアリによるリター分解量が多くなることが予想される。そこで、タイ国・サケラートのシロアリによるリター分解を代表するキノコシロアリの菌園の現存量(土壌中に分布するキノコシロアリの菌園の現存量)を雨期と乾期とで比較し、乾期に比べると雨期では統計的有意に少なくなることを明らかにした。したがって、熱帯林の降水量の変化は微生物とシロアリによる分解量のそれぞれに逆の影響を及ぼし、微生物とシロアリが結果として相補的に熱帯林床におけるリターの迅速な消失(分解)に関係していることが示された。熱帯林におけるリター分解におけるシロアリの重要性は上述のように定量的には明らかになってきたが、空間的にどのようにシロアリがリター分解に関わっているか、ということは明らかになっていない。しかしながら、リターの分解過程を詳細に明らかにし、熱帯林の炭素循環や二酸化炭素収支などを考える上では、空間的に不均質に分布するシロアリによるリター分解パターンを解明することは必要不可欠である。そこで、メッシュサイズが異なる2種類のケージを用いてそれを比較することで、シロアリによるリター分解の強度と頻度を調査した。その結果、シロアリによるリター分解は微生物によるリター分解と比べると局所的・集中的に起こることが明らかになり、シロアリはリターの分解過程を空間的に不均質にするような効果があること明らかになった。
著者
前原 由喜夫
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本年度は昨年度から行ってきた協同実行機能課題に関する実験を継続すると同時に,成人の「心の理論」における作動記憶の役割に関する研究成果を英語論文にまとめた。また,新たな成人の「心の理論」課題も開発して国際学会で発表した。さらに,小学校で注意欠陥多動性障害(ADHD)児童の療育の実施とスーパーバイズを行い,共同研究者とともにADHD児童の社会的場面における実行機能の改善に焦点を当てたトレーニング課題を論文化する準備を進めてきた。実行機能は人間の目標志向行動を支える認知機能の総称であり,前頭葉にその脳機能が集中しているとされ,今まで数多の研究が行われてきたが,他者との協力場面における実行機能の働きについては検討されてこなかった。そこで,協同実行機能課題に関する研究では,他者との協力場面における実行機能の働きをコンピューターとの協力場面における実行機能の働きと比較することによって検討した。実験の結果,相手が人間のときのほうが自分の反応をうまく抑制できていることが判明し,対人状況での共感性が高い人ほど自分の反応のコントロールも十分にできていることがわかった。この結果は,対人協力状況における実行機能の働きが,従来調べられてきたコンピューターを相手にして1人で課題を遂行するときの実行機能の働きと異なる特徴を備えている可能性を示唆している。ADHDは実行機能の障害が原因だと広く考えられてきたため,実行機能課題を繰り返し訓練して注意制御能力の改善を実現した研究はいくつか存在する。しかし,注意制御能力が改善されても多動性や衝動性といった問題行動の改善が見られていない。そこで,上述の協同実行機能研究の知見を踏まえて,対人協力場面で実行機能を駆使する必要のあるトレーニング課題をADHD児童に実施し,行動制御能力の改善を試みる研究を行った。
著者
田中 宏明 山下 尚之 吉谷 純一 中田 典秀 八十島 誠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

遊離体と抱合体のエストロゲンの前処理を簡易化し、回収率を大幅に改善させる分析法を開発した。2008年1月と9月の降雨時期に 英国テムズ川流域で調査を行った結果、E2 やグルンクロン酸抱合体のエストロゲンが放流水や河川水で検出され、合流式下水道越流水の影響が無視できないことが明らかとなった。また我国で検出されないEE2 が流入下水や下水処理水で検出された。グルクロン酸抱合体よりも硫酸抱合体が、またE2 やE1 よりもEE2 は分解が遅いことが実験で明らかとなった。
著者
小杉 賢一朗 水山 高久 里深 好文 堤 大三 宮田 秀介 勝山 正則 佐山 敬洋 藤本 将光
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

土石流に対するハード対策・ソフト対策を的確かつ効率よく実施する為に,豪雨に伴う表層崩壊の発生と崩土の土石流化のメカニズムを解明し,予測手法を開発した。表層崩壊については,地形のみでは発生メカニズムを十分に説明できず,基岩内部の地下水流動を把握する必要があることが明らかとなり,電気探査や空中電磁探査に基づく予測手法が提示された。さらに,基岩からの湧水が土石流の規模を増大させる可能性があることが確かめられた。
著者
立川 康人 寳 馨 佐山 敬洋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

治水計画の基準となる河川流量を求める場合、わが国では、降雨の確率規模を設定していくつかの降雨パターンを想定し、流出モデルを用いて対象地点の河川流量を求めるという手順をとる。このとき、入力となる降雨は、ある確率規模を定めたとはいってもその時空間パターンには無数のバリエーションがある。また流出モデルも完全なものではない。したがって予測される河川流量には多くの不確かさが含まれる。基本高水はこの予測の不確かさを把握し総合的な判断のもとに決定される。したがって、予測の不確かさを定量化し、不確かさが発生する構造を明らかにすることが重要である。予測値と共にその予測値の不確かさを定量的に示すことができれば、治水計画を立案する上で有効な判断材料を提供することになる。河川流量の予測の不確かさは、主として1)入力となる降雨が不確かであること、2)流出モデルの構造が実際の現象を十分に再現しきれないこと、3)流出モデルのパラメータの同定が不十分であること、から発生する。これらは基本的には観測データが十分に得られないことが原因であるが、洪水を対象とする場合、100年に1回といった極めて発生頻度の低い現象が対象となるため、すべての流域でデータを蓄積して問題を解決しようとするのは現実的ではない。ある流域で観測されたデータをもとに観測が不十分な流域での水文量を推定する手法を開発し、その推定量の不確かさを定量的に示すこと、またその不確かさができるだけ小さくなる手法を追求することが現実的な方法である。そこで本研究では1)降雨観測が不十分な流域における確率降雨量の推定手法の開発、2)降雨の極値特性を反映する降雨の時系列データ発生手法の開発、3)不確かさを指標とした流出モデルの性能評価と分布型流出モデルの不確かさの構造分析、を実施した。
著者
辻本 豪三 平澤 明 木村 郁夫 奥野 恭史 輿水 崇鏡 足達 哲也 寺澤 和哉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

研究対象(各種がん株化細胞)に対する包括的トランスクリプトーム解析による疾患・治療関連のcRNA/ncRNA群の抽出、それらのネットワーク解析に基づく機能予測、細胞レベルにおける遺伝子発現調節の検証と生物機能学的効果の同定、更にこれらを統合する新たな生命制御機構の発見を目的とする。平成22年度は(1)cRNA/ncRNA包括的トランスクリプトーム解析:昨年度までに構造決定した約2,000種のncRNAに関して、通常のマイクロアレイDNAチップでは検出感度の問題から、低発現量のcRNA/ncRNA群に関してはその量的変化が正確にモニター出来ない可能性があることから、企業と共同研究開発した超高感度DNAチップをプラットフォームに用いて、主としてncRNA,それらの機能対象候補cRNAの量的変化をモニターする新たなチップ解析用ツール開発技術を用いてオリゴDNA合成により相補的プローブを合成してDNAチップに固相化し、miRNAを含む包括的トランスクリプトーム解析チップを作製した。このチップと従来型のチップの機能に関しての比較検証を行った。(2)解析の対象:対象としては、疾患関連cRNA/ncRNA群の解析実験には、各種患者検体より株化された食道がん細胞や乳がん細胞を用い、細胞増殖と各種抗がん剤による作用の経時変化と同時に採取された組織から抽出されるRNAの包括的トランスクリプトーム解析用DNAチップによる発現プロファイル解析を行い、更に各種薬物治療によりこれらの遺伝子群がどのような発現変動を行うかを経時的にモニターし、個体における発現型変動(生理、生化学パラメーター)との相関を一部解析した。食道がんよりバイオマーカー候補を同定し、知財化した。
著者
田中 克己 チャットウィチェンチャイ ソムチャイ 田島 敬史 小山 聡 中村 聡史 手塚 太郎 ヤトフト アダム 大島 裕明
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

ウエブからの同位語等の概念知識の抽出,ウエブ検索クエリの意図推定・自動質問修正,ウエブ情報の信憑性分析,ユーザインタラクションやウエブ1.0情報とウエブ2.0情報の相互補完による検索精度改善に関する技術開発を行った.
著者
今井 晴雄 岡田 章 渡邊 直樹 堀 一三
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

協力ゲーム分析の中心概念である提携について、多様な制約下での提携契約のあり方を比較検討し、これが非協力ゲームとのギャップを埋める上で重要であることを、理論を中心に実験や現実的な観察も交えて例証した。とくに、配分や行動についての提携機能の制限やその有効期間、不完備情報、動学的問題が影響することを一連の研究によって確認した。
著者
有木 進 加籐 周 谷崎 俊之 庄司 俊明
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

Lie理論において重要な役割を果たしているヘッケ代数と呼ばれる有限次元代数の表現論を研究した。とくに数理物理由来のフォック空間を有限次元代数で圏化する研究は近年大きな進展のある研究であり、その進展に寄与する結果もいくつか得た。具体的には、アフィンA型ヘッケ代数の既約加群の幾何的実現と代数的実現の同定、変形フォック空間の圏化による量子シューア代数の次数付分解係数の計算理論等が得られた。
著者
小川 正 熊田 孝〓
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

未知の問題に直面したとき、我々は試行錯誤をすることにより知識を獲得し適切に問題を解決することができる。しかしその過程における神経メカニズムについては十分に知られていない。この問題を調べるため、我々は試行錯誤を伴う視覚探索課題を開発し、前頭前野外側部(the lateral prefrontal cortex, LPFC)から単一神経細胞記録を行った。試行錯誤を伴う視覚探索課題において、サルは6つの異なる色刺激の中から1つの色刺激を選択しなければならない。選択された色刺激が、実験者が事前に決めた目標色であれば報酬(ジュース)が得られる。目標刺激の色は試行ブロックが変わるごとにランダムに変更されるが、サルには目標刺激の色、更新タイミングに関する情報が一切与えられない。このため、報酬のフィードバックにもとづいて試行錯誤により目標となる色刺激を探索する必要がある。サルは目標刺激の色が変更された後、通常、数試行にわたって目標以外の色刺激を選択するが、一度でも目標である色刺激を選択するとステップ状の正答率変化を示し、それ以後は90%程度の高い正答率を維持した。このようなステップ状の正答率変化は、知識ベースの学習であることを示唆する。学習が成立する前(試行錯誤期間)では異なる色刺激を次々に選択することが必要であるが、学習が成立した後(メンテナンス期間)では同一の色刺激を選択し続けることが必要となり、2つの期間で行動選択の方略が根本的に異なると考えられる。実際、試行錯誤期間とメンテナンス期間でLPFニューロンの神経活動を比較したところ、試行錯誤期間において特異的な活動を示し2つの期間を区別するニューロン群を見出した。このことから、LPFがオブザーバー的な役割を果たし、2つの期間で異なる方略を使い分けるための神経機構の形成に役立っている可能性が考えられた。
著者
泉田 啓 飯間 信 平井 規央
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

蝶の羽ばたき飛翔は,生成される流場を環境とする,移動知の一例である.本研究では特に,羽ばたきにより創成される渦列流場という環境が安定化とマヌーバに与える影響という観点から,飛翔における蝶の適応的行動能力を発現するメカニズムを解析し,他の移動知にも共通する移動知発現の力学的共通原理の解明に貢献することを目指す.具体的には,(1)生体の蝶の感覚器(センサ)入力および身体の応答動作との関係,(2)蝶の安定飛行と状態間遷移飛行を実現する制御機構に環境(流れ場)がどのように影響するか,という2点を研究期間にわたり調査した.A. 生物学的アプローチアサギマダラ蝶を経常的に供給できるようにした.実験装置を構築して観測実験を行い,蝶の運動と空気力を計測した.可能な能動的動作を知るために,マイクロCTを用いて解剖学的理解を進めた.B. 工学的アプローチ飛翔安定化およびマヌーバビリティ(状態遷移能力)を探るために2次元数値モデルを構築し,大摂動に対する回復過程と、飛翔の数理構造の解析に基づいた遷移制御の研究を行っている.3次元数値モデルを構築し,実験観測データと比較して,数値モデルの妥当性や精度を検討した.また,羽ばたき飛翔の周期解の探索,渦列流場と翅の柔軟性が安定性に及ぼす影響について検討した.その結果,渦列流場と柔軟性が移動知の共通原理の陰的制御と捉えることができることが明らかになった.
著者
河本 晴雄 坂 志朗
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

木質バイオマスからCOとH_2(合成ガス)を製造することができれば、従来天然ガスベースで行われている触媒での変換を組み合わせることで、現在石油より製造されている燃料、ケミカルスを木質バイオマスより製造することが可能になる。本研究課題は、一番のネックとなっているクリーンガス化(特にCO生産)に着目したものである。平成22年度の研究では、以下の成果が得られた。木材多糖より生成する代表的な揮発性熱分解物であるレボグルコサン、グリコールアルデヒド、ヒドロキシアセトン、蟻酸などはコーク(気相での炭化物)を生成することなく、CO、H_2、CH_4へと変換されることが昨年度の研究で示された。本年度は、これらのガスへの変換機構について検討した結果、水素の引き抜きにより生成するラジカル種の崩壊(β-開裂、α-開裂)による経路が重要な機構であることが示唆された。また、これらの熱分解物をガス状物質として気相に保つことで、脱水反応やグリコシル化反応などの酸性条件で進行する反応が抑制されたが、これについては、これらの反応を触媒する水酸基間の水素結合が気相では抑制されることによる機構が提案された。さらに、気相で効率的にCOとH_2へと変換するためには、本研究で使用してきたPyrexガラス管製の反応器の最高温度である600℃よりも高温での反応、あるいはラジカル生成を目的とした触媒の利用が有効であることが示された。これらの研究成果を基に、2台の管状炉を用いることで熱分解物を与える一次熱分解過程とこれら一次熱分解物の二次分解過程を異なった温度で加熱でき、なおかつ二次分解過程を触媒を作用させながら1000℃までの高温域で検討可能な二段階加熱装置を設計・試作するに至った。
著者
高木 博志 伊従 勉 岩城 卓二 藤原 学 中嶋 節子 谷川 穣 小林 丈広 黒岩 康博 高久 嶺之介 原田 敬一 丸山 宏 田中 智子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本における近代「古都」を、歴史学・建築史・造園史などから学際的に研究した。奈良・京都・首里といった古都と、岡山・名古屋・大阪・仙台・江田島・呉・熊本など旧城下町や軍都とを研究対象とした。研究会の他に、各地でフィールドワークも実施しつつ、「歴史」や「伝統」と政治的社会的現実との、近代におけるズレや関係性を考察した。また学都や軍都などの都市類型も論じた。個別業績以外に、論文集『近代歴史都市論』を発刊予定である。
著者
植田 和弘 森田 恒幸 仲上 健一 佐和 隆光
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
1991

発展途上国における環境保全型経済発展のあり方とその可能性に関する分析をすすめた。アジア諸国においては、日本における公害対策の進展が経済成長をしながらすすめられたことをもって、日本を持続可能な発展のモデルとみる傾向がある。そこで、日本の公害対策のうち最も成功したと言われている硫黄酸化物対策に焦点をあてて、中国および韓国を対象として環境政策の発展過程に関する基礎的データを収集・分析するとともに、政策の発展経緯をその経済性に着目して詳細に比較分析した。その結果、その同質性と特異性が明らかになり、後発性の利益を実現するための条件を解明した。開発プロジェクトの持続可能性の条件について、流域開発事業を事例に、環境費用・環境便益の社会的評価方法と開発プロジェクトの環境配慮の評価システムに着目して分析を加えた。その結果、開発インパクトと流域管理の国際比較に関する体系的なデータベースの構築が不可欠であることが確認された。環境政策の経済的手段について、ドイツ排水課徴金、公害健康被害補償制度賦課金、環境補助金、排出許可証取引制度、デポジット・リファンド制度、ごみ有料化、直接規制を取り上げ、その理論と実際の乖離とその原因について、理論の通説的理解の再検討と実証分析を行うことで検討をすすめた。その結果、これまでの経済理論の想定が非現実的であること、通常のミクロ経済理論が集合的意思決定の要素を十分に考慮できていないために、実際に導入されている経済的手段の合理性を説明できないことを論証した。また、財政学的な検討を加えることで、実際に導入されている経済的手段を費用負担のあり方の一形態として理解できることも明らかにした。