著者
尾崎 俊介
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アメリカ及び日本で人気の高い自己啓発本の誕生経緯と発展経緯について調査・研究を行い、その成果は "American and Japanese Self-Help Literature" と題し Oxford Research Encyclopedia に掲載された。またこれに加え、19世紀半ばのアメリカで流行し、自己啓発思想を誘発する契機となった「精神療法」についての論考や、哲学者のラルフ・ウォルドー・エマソンを自己啓発思想の生みの親として捉え直した論考、さらに女性向け自己啓発本についての論考や、自己啓発本出版史におけるアンドリュー・カーネギーの役割を論じた論考など、計4本の論文を発表した。
著者
柴田 博仁
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1204-1213, 2009-03-15

本稿は,ディスプレイ構成の違いが業務にもたらす影響を定量的に測定することを狙いとするものである.知的財産管理業務を行う8人の被験者を対象に,17インチのシングルディスプレイ環境(Small条件)から,24インチの大画面ディスプレイ環境(Large条件),あるいは2つの17インチディスプレイを並置する多画面ディスプレイ環境(Dual条件)へと移行した前後で,およそ2週間ずつ実業務でのウィンドウ操作ログを取得した.ディスプレイ構成の違いによる業務効率化の程度は,ウィンドウ操作に要する時間の総和でとらえることができるという考えに基づき,ウィンドウの切替え,移動,サイズ変更というウィンドウ操作に要する時間を条件間で比較した.結果として,Small条件では,コンピュータ操作を行っている時間のうち8.5%をウィンドウ操作に費やしていることが分かった.これは,現状のウィンドウシステムにおける改善の必要性を示唆するものである.さらに,Small条件に対して,Large条件ではウィンドウ操作のコスト削減は見られなかったが,Dual条件では13.5%のコスト削減が見られた.これは,ウィンドウ操作に要するコストという観点から,大画面ディスプレイに対する多画面ディスプレイの優位性を示すものである.
著者
宮内 崇 藤田 基 末廣 栄一 小田 泰崇 鶴田 良介
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.191-200, 2014-05-15 (Released:2014-09-01)
参考文献数
42
被引用文献数
1

軽症頭部外傷は救急外来を受診する頭部外傷のなかで最も多い。近年,スポーツ選手や軍事活動に従事する兵士のように,軽症頭部外傷を繰り返し受傷した人たちが,受傷から数年後に慢性的な認知機能障害や抑うつ状態を呈することが報告され,繰り返される軽症頭部外傷に関連する慢性外傷性脳症(chronic traumatic encephalopathy: CTE)が注目されている。軽症頭部外傷の患者の多くは比較的若年者であり社会的な影響が大きいため,海外ではその病態の解明や診断,治療法の研究が盛んにおこなわれている。軽症頭部外傷のうち受傷直後から頭痛,めまい,嘔気,意識消失などの一過性の症状を呈し,画像上明らかな異常を認めないものを脳振盪と呼ぶ。脳振盪は明確な診断基準がないため,アセスメントツールを用いて症状の経過をフォローして診断を試みる。脳振盪を含む軽症頭部外傷に関連する病態としてCTEの他,急性期に発生するセカンドインパクトシンドローム(second impact syndrome: SIS),急性期から引き続き起こる脳振盪後症候群(post-concussion syndrome: PCS)がある。これらの病態は軽症頭部外傷を繰り返すことによって発生するリスクが高くなるといわれているが,そのメカニズムは明確ではない。現在のところ,軽症頭部外傷を受傷した患者に対しては再度頭部に衝撃を与えないように安静を保つことが重要である。スポーツでは,プレー中に受傷した選手は直ちにプレーを中止させる。またプレーへの復帰は段階的に行い,症状の変化を経時的に観察し,重症化の徴候を見逃さないように注意する。治療は対症療法が中心で,重症化,慢性化の予防に対する薬物療法などの有用な治療法はない。軽症頭部外傷に対しては保護者・指導者の教育が重要である。リスクの高い環境にいる場合,とくに脳が発達過程にある小児に対しては,繰り返す受傷を予防できる環境と,受傷した場合への対策を整える必要がある。そのため本邦のガイドラインの作成と軽症頭部外傷への理解,プロトコールの遵守の徹底が望まれる。
著者
卯野木 健 林田 敬 河合 佑亮 對東 俊介 安藤 守秀 飯田 有輝 笠井 史人 川崎 達也 神津 玲 近藤 豊 齊藤 正和 櫻本 秀明 佐々木 信幸 佐浦 隆一 中村 謙介 大内 玲 岡本 菜子 岡村 正嗣 栗原 知己 栗山 明 松石 雄二朗 山本 憲督 吉廣 尚大 矢坂 泰介 安部 諒 飯塚 崇仁 井上 拓保 内山 侑紀 遠藤 聡 大倉 和貴 太田 浩平 大塚 貴久 岡田 大輔 小幡 賢吾 片山 雪子 金田 直樹 北山 未央 喜納 俊介 草葉 隆一 桑原 政成 笹沼 直樹 高橋 正浩 髙山 千尋 田代 尚範 立野 淳子 田村 貴彦 田本 光拡 土谷 飛鳥 堤 悠介 長門 直 成田 知大 名和 智裕 野々山 忠芳 花田 匡利 平川 功太郎 牧野 晃子 正木 宏享 松木 良介 松嶋 真哉 松田 航 宮城島 沙織 諸見里 勝 柳 尚弥 山内 康太 山下 遊平 山本 夏啓 劉 啓文 若林 侑起 渡辺 伸一 米倉 寛 中西 信人 高橋 哲也 西田 修 日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.30, no.Supplement2, pp.S905-S972, 2023 (Released:2023-12-10)

重症患者に対する標準化された質の高いリハビリテーションの提供は,取り組むべき重要課題である。日本集中治療医学会では,2017年に「集中治療における早期リハビリテーション ―根拠に基づくエキスパートコンセンサス―」を発行したが,系統的にエビデンスを評価したものではなく,あくまでも専門家のコンセンサスに基づくものであった。そこで,日本集中治療医学会では,質が高く,かつ,医療従事者が理解しやすく,その意思決定に資することを目的に,システマティックレビューおよびGRADE(grading of recommendations, assessment, development and evaluation)アプローチを用いた診療ガイドラインを作成した。 重症患者に対するリハビリテーションに特化し,かつ,GRADEアプローチを用いた診療ガイドラインとしては,世界初の試みである。本ガイドラインは日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会を核に,ワーキンググループ,システマティックレビュー班,アカデミックガイドライン推進班から構成された診療ガイドライン作成グループの合計73名からなるメンバーで作成した。リハビリテーションでは多職種連携が非常に重要であることはいうまでもない。本ガイドラインも多職種,かつ多様な専門分野を持つ医師や医療従事者,ICU患者経験者を含む多くのメンバーが作成に寄与した。 本ガイドラインでは,グループメンバーによる議論に基づいて,8領域を注目すべき臨床重要領域とした。その上で,各領域から重要な14の臨床疑問(clinical question, CQ)を作成した。 パブリックコメントの募集を計2回行い,CQに対する回答としては,10のGRADEによる推奨,4つの背景疑問の解説が示された。また,CQごとに情報を視覚的診療フローとして作成し,各CQの位置付けがわかりやすいように配慮した。多職種が関与する重症患者に対するリハビリテーションにおいて,本ガイドラインが活用されることを期待する。
著者
釜野 さおり 山内 昌和 千年 よしみ 布施 香奈 小山 泰代 平森 大規 岩本 健良 藤井 ひろみ 申 知燕 三部 倫子 武内 今日子 石田 仁
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

性的マイノリティは学術的にも社会的にも注目されているが、現状把握に必要な全国を統計的に代表するデータはない。本研究では日本全体に一般化できるデータに基づいて、経済状況、健康状態、出生や移動などの人口学的行動や意識が、性的マイノリティ当事者と非当事者との間でどのように異なるのかを、統計的な裏付けにより明らかにすることを目指す。一般人口対象の無作為抽出による全国調査を実施し、性的指向および性自認のあり方(SOGI)が生活に及ぼす影響を定量的に示す。SOGIに関する調査で普及しているモニタ型ウェブ調査を実施し、無作為抽出調査の結果と比較する。SOGIを捉える設問を精緻化させ、ガイドラインを確立する。

154 0 0 0 OA 政事要略

著者
惟宗允亮 [著]
出版者
巻号頁・発行日
vol.[8],
著者
T. Makino
出版者
The Botanical Society of Japan
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.265, pp.en11-en23, 1909 (Released:2007-04-05)
被引用文献数
1 1
著者
佐藤 勢紀子 大島 弥生 二通 信子 山本 富美子 因 京子 山路 奈保子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.154, pp.85-99, 2013 (Released:2017-02-17)
参考文献数
12

人文科学,社会科学,工学の3領域9分野14学会誌合計270編の日本語学術論文を対象に,15の構成要素を設定して中間章の構造分析を行った。その結果,《実験/調査型》,《資料分析型》,《理論型》,《複合型》の4つの基本類型とその下位分類としての11の構造型が抽出された。これらの構造型の分野別の分布状況を調べたところ,工学領域では典型的なIMRAD形式を持つ《実験/調査型》が圧倒的であり,一部に《理論型》が存在することが確認された。一方,人文科学・社会科学の領域では,多様な構造型が混在する傾向が見られた。これらの領域では《資料分析型》が共通して認められたが,その出現率には分野によって大きな差があり,一部の分野では《実験/調査型》が優勢であった。論文の構造型は分野によって決まる場合もあるが,むしろ研究主題や研究方法に応じて選定されるものであり,留学生の論文作成・論文読解の支援を行う際にその点に留意する必要がある。
著者
下澤 楯夫
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.98-107, 2016-09-29 (Released:2016-10-17)
参考文献数
28

生物の生きる仕組みの動作原理をヒトの技術へ転化するバイオミメティクスを紹介する。生物の機能の全ては,特定の構造に裏付けられている。生きる仕組みの理解を目指す生理学では,「構造の無い機能は幽霊,機能の無い構造は死体」である。生物は全ての機能的(適応的)構造を,極ありふれた元素のみから作る。コガネムシが金の原子を1個も使わずに常温常圧で金色の鞘翅を作り上げる能力は,技術と呼ぶにふさわしい。ガルバーニが,金属との接触でカエルの筋肉が攣縮する仕組みを追い求めたことが,電池の発明を惹き起こして世界を一変させた。パソコンでクリックした際に動作するシュミットトリガー回路は,イカの巨大神経軸索のパルス発生機構に由来し,現実の世界経済を支えている。サカナの眼のレンズは単に球形なのではなく,中心部の屈折率が高い屈折率分布レンズで,球面収差が補正されている。生理学ではマーティセン比として知られるこの結像原理の二次元版が光ファイバであり,現在の光通信を支えている。物理学が人間の英知で解き明かし制定したかのように言い触らしている法則の多くは,生物が既に十分に使いこなして物作り技術にまで高めていた自然の性質の1億年遅れの再発見に過ぎない。
著者
柳本 武美 安楽 和夫
出版者
統計数理研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

代表者の提案した障害的残差尤度の概念が実際的にAncillaryの概念より有用であることを検証している。本年特に重点的に研究を行ったのはGamma分布の母数の推定の場合である。Gamma分布は正の分布として代表的であるが、驚くべきことにその母数の推定については良く調べられていない。計算手段の向上にともなって推定法の改良が意義のあるものになっている。多くのシミレーションを通して研究した。周辺尤度を用いる方法については共同研究の遂行を行ったが初期の成果を上げることはできなかった。継続研究として次年度に成果を得るべく努力中である。しかしながらこの研究との関連において山本英二氏(岡山理大)とベータ2項ロジスティックモデルについて1つの結果を得ることができた。更に他の分布における推定においても条件付最尤法の良さについての研究を行った。この場合推定量の良さを何で捉えるが問題となる。統計推論の基礎としての規準についての研究と実際の推定量の良さの研究を平行して研究している。安楽は分割表において母数を多く含む場合に、尤度法の近似として得られる検定量を提案し、その比較を行った。
著者
金 信琴 勝浦 哲夫 岩永 光一 下村 義弘 井上 学
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.9-16, 2005-02-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
32

This study measured and analyzed the amount of saliva and the taste threshold in response to lighting conditions (illuminance and color temperature) in different ethnic groups. Ten Japanese and ten Chinese healthy non-smoking male college students participated in the study. According to the results of repeated-measure ANOVA, the effect of illumination on the amount of saliva was significant in the Japanese students, and the Chinese students showed same tendencies regarding their saliva response, but not significant. On the other hand, the effect of illuminance on the taste threshold was considered significant in both these groups. Regarding the effect of color temperature, this study found significant changes in taste threshold only for Chinese. It is interesting to note that significant differences in the taste threshold regarding a salty taste were seen between the subject groups. The results of the present study indicated that the lighting condition could be considered an important parameter of taste sensation.
著者
高橋 慧 藤井 義明
出版者
資源・素材学会
雑誌
資源・素材学会春季大会講演集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.25-1, 2014-03-26

汚染水注入6事例(200~501286 m^3)、地熱回収5事例(塩水、4838~28771 m^3)について、注入体積と誘発地震の最大マグニチュードとの関係を求めた。これと並行して、我が国のM1.8~7.0の40個の地震についてマグニチュード・深度と最大震度との関係を求め、これらの式から、注入流体体積と最大震度との関係式を導いた。この関係式を米国のシェールガス採掘にも適用できるとすれば、一つのサイトにつき2.69~13.6 Mt/年の水が注入されているので、予想される最大震度は1年間で1.7~2.4、30年間で3.3~4.0となり、社会的に容認される震度 を1とすればこれを超える。また、この式が超臨界二酸化炭素の注入にも適用できるとすれば、IPCCにおけるCCSでの世界のCO2削減目標が2050年時点で17%なので、サイトの運転年数を30年と仮定した場合、我が国で発生するCO2の17%を一箇所のCCSサイトに注入すると、予想される最大震度は5.0となり、社会的に容認されない。最大震度を1以下に保ちつつ上記と同じ量のCO2を貯蔵するためのサイト数は2.2万基となり非現実的である。