著者
鈴木 伸一
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.61-74, 2001-12-25 (Released:2017-01-06)
参考文献数
74
被引用文献数
11

1.日本のコナラ林について植物社会学的な種組成および分布の検討を行った.各地域から報告された既発表文献と筆者らの報告した合計562の植生調査資料を用い,総合常在度表により広域的に比較した.その結果,日本のコナラ林群落を次の9群集にまとめ,イヌシデ-コナラ群団,コナラ-ミズナラオーダー,ブナクラスに位置付けた.1)オニシバリ-コナラ群集,2)ノグルミ-コナラ群集,3)アベマキ-コナラ群集,4)ケネザサ-コナラ群集,5)ケクロモジ-コナラ群集,6)クヌギ-コナラ群集,7)クリ-コナラ群集,8)カシワ-コナラ群集,9)オクチョウジザクラ-コナラ群集   2.コナラ林は各群集の分布状況から,沿岸地域,西南日本地域,中部内陸地域,東北日本地域および日本海地域の5つの分布型にまとめられることを明らかにした.特に西南日本地域と東北日本地域はほぼフォッサ・マグナを境界とし,植物区系上の境界である牧野線に対応していた.  3.垂直分布では,コナラ林は沿岸低地から海抜1350mまでみられ,2つの分布パタ-ンに大別される.1つはヤブツバキクラス域のみに分布する群集で,自然立地をもたない集約的管理によって形成されてきた二次林である.中国大陸の夏縁性ナラ林との類縁をもつと考えられる.他の1つはヤブツバキラス域から下部ブナクラス域まで分布する群集で,二次林だけでなく自然植生としても存在する.ブナクラスの種群が優勢で,二次林としては下部ブナクラスの夏縁広葉樹自然林に由来すると考えられる.
著者
合田 正人
出版者
日本ミシェル・アンリ哲学会
雑誌
ミシェル・アンリ研究 (ISSN:21857873)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.15-28, 2015 (Released:2019-07-12)

Comment lire Le bonheur de Spinoza, mémoire du DES rédigé par le jeune Michel Henry sous la direction de Jean Grenier à Lille au cours de l’année universitaire 1942-1943 ? Avant la publication de ce texte en 2004, il y avait peu de gens qui sentaient la nécessité de se référer à Spinoza afin d’analyser les textes de Henry. Aussi le texte imprévu sur Spinoza a-t-il plus ou moins étonné les lecteurs de Henry ; étonnement est devenu d’autant plus grand qu’après ce texte-là Henry n’a plus mentionné Spinoza ou presque. Etant donné que le sujet même du mémoire a été proposé à Henry par Grenier, n’étatit-il qu’un produit tout à fait accidental ? Ou bien, l’‘‘esprit de Spinoza’’, comme le dit Jean-Luc Marion, survivait-il malgré l’apparence dans tout l’itinéraire de Henry ? Ces deux hypothèses nous paraissent inadmissibles. Dans ces conditions, nous nous sommes propososé de montrer que la découverte des contradictions ou de la limite insurmontable du spinozisme dans Le bonheur de Spinoza était nécessaire à Henry pour élaborer les positions de L’essence de la manifestation. En deuxième temps, nous avons pris Levinas, admirateur de Henry, pour un autre cas de ‘‘forclusion de Spinoza’’(Jean-Luc Nancy) ; mais le ‘‘forclos’’ ne reviendrait-il pas dans Levinas aussi bien que dans Henry ?
著者
上野 修
出版者
日本ミシェル・アンリ哲学会
雑誌
ミシェル・アンリ研究 (ISSN:21857873)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-13, 2015 (Released:2019-07-12)
参考文献数
7

Le bonheur de Spinoza, a Masters dissertation of young Michel Henry, is of more than a curiosity. It is of great interest in that it betrays its relation so close and yet so far to Baruch de Spinoza’s ontological ethics. In this paper I will discuss how young Michel Henry felt himself akin to Spinoza in respect of the quest for bliss in union with Nature-God, and how he was disappointed with its outcome. Henry sees in Spinoza a contradiction between desire for beatitude and geometrical demonstrations the Ethics deploys to achieve it. He believes this rationalistic vein would rule out any possibility of a sentiment of union by replacing it simply with its pale intellectual concept. I will show the contrary is true. Spinoza’s bliss is essentially linked with the geometrical manner. The eyes of the mind are demonstrations themselves, he says, which alone can make us “feel and experience” our own eternity by means of an eternal vision that leads us to the truth of being as a body in union with Nature-God. In this respect it is Spinoza that is so close to and yet so far from Henry. Finally I will propose to look at the paradoxical figure of Spinoza in the context of contemporary French thought, i.e., in the tension between phenomenology and anti-phenomenology tenets since the late 1930s, where certain Spinozist ideas seem to be present in both camps, such as the pantheistic immanentism we see in Henry on the one side and Jean Cavaillès’ conviction of Spinozan necessitarianism on the other.
著者
林 尚孝 森泉 昭治 弓矢 智生 唐橋 需 森本 国夫
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.343-348, 1985 (Released:2010-04-30)
参考文献数
18

耕うんの効果を判定するためには, 土壌状態の変化を評価できる試験法が確立されねばならない。そのためには砕土状態や反転状態を定量化して表現する必要がある。砕土状態を表わす土塊分析法にも多くの問題がある。採土法や篩の目開き体系などが標準化されていない上, 篩別された土塊の評価法も確立されているとは言えない。本報告では, レイリー分布によりロータリ耕うん後の土塊分布がきわめて良く近似でき, 近似式のふたつのパラメータから平均重量直径と標準偏差, その他の土塊に関するパラメータが簡単に求められることを明らかにした。砕土状態を数量化することができるので, 土塊分析にとり本方法は有力な手法となろう。
著者
笹田 朋孝 Ch. アマルトゥブシン G. エレグゼン L. イシツェレン
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

モンゴル国内で初めてとなる製鉄遺跡の発見に成功し、ホスティン・ボラグ遺跡の発掘調査を実施した。遺跡から出土した土器や木炭の放射性炭素年代(紀元前2世紀~紀元後1世紀)からこの遺跡は匈奴のものである。スラグの分析結果などからこの製鉄技術は同時代の中国とは大きく異なっており、南シベリアなどと類似していることから、草原を西から伝わってきた製鉄技術である。これまで匈奴は製鉄技術を持たないとされてきたが、おそくとも紀元前1世紀のモンゴル草原では、匈奴が遊牧国家として独自の製鉄技術を保有し、システマティックに鉄器を生産していたことが明らかになった。
著者
河村 吉紀
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.70, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
19

【要旨】ヒトヘルペスウイルス 6B(HHV-6B)は乳幼児期に好発する熱性発疹症である突発性発疹の原因病原体である。本症は熱性けいれんや急性脳症といった中枢神経系合併症の合併頻度がほかの熱性疾患にくらべて高い。脳炎、脳症に加え、近年 HHV-6B の関与が示唆されている中枢神経疾患として内側側頭葉てんかん(MTLE)がある MTLE の主要な病理所見である内側側頭葉硬化症(MTS)の発症には、小児期のけいれん重積や複雑型熱性けいれんとの関連が示唆されている。本稿では、MTLE 発症における HHV-6B の関与について最新の知見を交え概説する。
著者
木村 由美
出版者
北海道大学大学院文学研究科北方研究教育センター
雑誌
北方人文研究 (ISSN:1882773X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.43-71, 2018-03-31

本稿では国立公文書館所蔵『引揚者在外事実調査票』を基本資料とし、戦後、樺太深海村から北海道への引揚げについて分析した。これにより、樺太南部の漁村である深海村から北海道への引揚げについて実態を明らかにし、「樺太-北海道の上陸地-最初の住所-昭和31(1956)年現在の住所」と長いスパンで引揚者の動向を分析し、職業等と関連付けて定着地への軌跡を検証した。深海村では樺太全体と比べて「公式引揚」以前の、「緊急疎開」と「脱出」で引揚げた者の割合が高かった。また引揚出発港が、「公式引揚」で使用された真岡ではなく、大泊が最多であったことも特徴といえる。北海道では引揚げの最初の上陸地である稚内、函館、枝幸に定着した者が多く、また炭鉱都市へ定着した者も多かった。引揚げから昭和31年までの間に、6割以上の世帯が転居をしていることも明らかとなった。引揚後は漁業から、農業、炭鉱、日雇、公務員への転職が見られ、無職となった者もあった。深海村の公務員の引揚げについては、個別の事例を挙げて明らかにした。公務員は優先的に「再就職」されるよう考慮されたが、全員が「再就職」できたわけではなく、郵便局員と教員は同じ職に「再就職」したが、役場吏員の「再就職」は1名だけであった。学校は、教員の「再就職」先としてだけでなく、「小使」や「学校事務員」として転職した者もみられ、引揚者の受入先としても大きな役割を果たした。
著者
加藤 哲久 川口 寧
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.38, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
18

【要旨】ウイルスは感染伝播の必要性から、ウイルス粒子にゲノムをパッケージングしなければならない。この生存に必須な過程を効率化するため、ウイルスはゲノムサイズを最少化させ、遺伝子重複や選択的スプライシング等の非標準的なエレメントを獲得することで、限られたゲノムに多様な遺伝情報を搭載してきた。近年、大型 DNA ウイルスである単純ヘルペスウイルス1 型(HSV-1)もまた、非標準的遺伝子をコードすることが明らかとなりつつある。本総説では、chemical proteomics を駆使した非標準的ウイルス遺伝子の解読の確立と解読した新規遺伝子産物である piUL49 の HSV-1 神経病原性への関与に関して解説する。
著者
鴨井 久博 小倉 喜一郎 佐藤 勉 丹羽 源男 鴨井 久一
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.185-190, 2001-04-30 (Released:2017-12-08)
参考文献数
13

亜鉛(Zn)は必須微量元素の1つで,その摂取不良は成長遅延や免疫低下,味覚異常など多岐にわたる臨床症状を示すことが知られているが,Zn欠乏時の臨床症状の発現機構やZn代謝については不明な部分も多い。このため,本研究では口腔粘膜組織,おもに歯列組織周辺に対するZn欠乏の影響を調べる目的で,生後4週齢のWistar系雄性ラット12匹を対照群とZn欠乏群の2群に分け,特殊精製粉末飼料にて3週間飼育した。その結果,Zn欠乏群において体重増加は対照群に比べ緩やかであり,実験開始2週目ころより腹部,頸部などにおける脱毛がみられ,血清Zn濃度,血清ALP活性ともに価値であった。走査電子顕微鏡観察においては,Zn欠乏群に異物の蓄積や不規則な形態を呈した。また光学顕微鏡観察では今回の実験においてZn欠乏群に歯局組織の変化はみられなかったが,口蓋部における粘膜表層の角化や歯肉境移行部付近から頬粘膜にかけて錯角化が観察された。
著者
佐々木 顕
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.287-291, 1987-11-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
15

The evolution of natal emigration is studied theoretically assuming exogamy. The model predicts that extremely sex-biased pattem of natal emigration should be evolved, and that less productive sex is to leave the natal troop. Observed patterns of natal dispersal in bird alld nammal species are discussed, in relation to the present model.
著者
髙橋 由佳 河原 弘太郎 遠藤 敏喜
出版者
学校法人 自由学園最高学部
雑誌
生活大学研究 (ISSN:21896933)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.50-63, 2016 (Released:2017-04-21)
参考文献数
21

古来から多くの芸術家や研究者がそれぞれの目的で音楽の可視化・図形表現を試みている.本論文では楽譜の持つ音楽要素を縞模様で表現する.縞模様には,自由学園生活工芸研究所のオリジナル・テキスタイルであるプラネテを用いる.手法としては,計量情報学でよく知られているジップの経験則を用いる方法と,ヨハネス・イッテンの色彩論を用いる方法を紹介する.聴覚と視覚という異なる感覚を用いた表現メディアの融合の,縞模様を用いた新たな例を提供する.
著者
鶴巻 有香 安川 美智子 横尾 英俊
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP)
巻号頁・発行日
vol.2011-SLP-86, no.14, pp.1-6, 2011-05-09

滑舌訓練用の類似音の検索を行うことを目的として,日本語の子音の特徴に注目した早口言葉の検索方法を提案する.まず最初に,被験者実験を行い,言い間違いの具体例を調査分析した結果を報告する.次に,言い間違いは特に子音で生じやすいことから子音の特徴に注目した類似文字列の検索を提案する.漢字かな混じりの文字列を読み仮名に変換し,さらに母音の特徴を抽象化する記号体系に文字列を変換することにより,表記ではなく単語の読みの類似性で検索が行えることが期待できる.滑舌訓練用の例文を用いた評価実験により,提案法は従来法と比較して,類似音を持つ早口言葉の検索性能が高いことを確認した.
著者
時枝 久子 橋爪 伸子 大下 市子 五島 淑子 田代 文子 林 裕子 和仁 皓明
出版者
一般社団法人 日本家政学会 食文化研究部会
雑誌
会誌食文化研究 (ISSN:18804403)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.37-45, 2012 (Released:2022-02-25)
参考文献数
4

This chronology of comparative food culture has been prepared as a continuation of the previous two publications on the Taisyo = Meiji era and the Edo era of Japan. The present chronology covers the period from the Jomon = Yayoi period which is considered to be almost the same period as Neolithic age to 1602, end of Azuchi=Momoyama era; the year before the establishment of Tokugawa shogunate. The authors have compiled information on 476 chronological items from 245 sources, which include 222 published books and documents and 23 web pages and institutional electronic documents.In order to compare chronology of food cultural phenomenon with Asian countries excluding Japan, the American continent,the African continent and the Eurasian continent excluding Asia, the geographical designation and time span of events we have evaluated as being noteworthy of being recorded are included in this chronology. The classification of food culture phenomenon is identical to that of the previous papers.
著者
矢島 雅紀 千葉 大紀 米谷 嘉朗 森 達哉
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2021論文集
巻号頁・発行日
pp.365-372, 2021-10-19

DNS アンプ攻撃,DNS キャッシュポイズニング攻撃のように,DNS をターゲットとした攻撃の脅威は衰えることをしらない.また,フィッシングサイトや詐欺メールなど,ドメイン名の真贋性判定の困難性を悪用した攻撃は依然として猛威を奮っている.これらの DNS に関連した脅威に対する有効な対策として,様々な DNS セキュリティ機構が提案され,標準化と実装が進んでいる.しかしながら,これらのセキュリティ機構がインターネットの DNS エコシステムにおいてどの程度普及し,どの程度有効に機能しているかは明らかではない.このような背景をもとに,本研究は主要な DNS セキュリティ機構である DNSSEC,DNS Cookie,CAA,SPF,DMARC,MTA-STS,DANE,TLSRPT を対象とし,それらの普及状況に関する大規模な調査を行う.この結果,全体として多くの DNS セキュリティ機構の普及率は低い状況にあること,そしてより設定難易度が高いセキュリティ機構ほど普及率が低いことが定量的に明らかになった.これらの知見は DNS セキュリティ機構を普及させる上で,導入が簡単な仕組みが重要であることを示唆している.