著者
山口 美和
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.28-40, 2007-03-30

本稿の目的は、「<親>になる」という出来事の重層的な構造を明らかにすることである。親子関係の構築を愛着形成過程と捉える従来の見方を留保し、<子>との関係の中で<親>が被る戸惑いや苦しみの経験を、NICU入院児の親の語りに即して解明することを試みた。物語論的視点から語りを整理・分析する作業を通じ、<親>という主体が生成する三つの局面が見出された。<子>との直接的対面関係に基づく第一の局面と、家族・社会等における役割関係に基づく第二の局面では、「<親>になること」は養育責任者としての一般的役割の遂行と見分けがつかない。しかし、<子>を理解する枠組みとしての物語が破綻する状況において、役割関係を超えてなお<子>へ応答を差し出そうとする第三の局面が垣間見られる。<親>は、物語る行為の中で、三つの局面のあいだを視点移動させながら「<親>になる」経験を重層的・循環的に理解していることが明らかになった。
著者
松岡 秀明
出版者
東京大学文学部宗教学研究室
雑誌
東京大学宗教学年報 (ISSN:2896400)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.13-25, 1998-03-31

The Church of World Messianity (Sekai Kyusei Kyo), a Japanese new religion, has propagated in Brazil since 1956. The religion claims that it has 250,000 followers and 95 percent of them are non-Japanese. By comparing Messianity with Catholicism and kardecismo, a Brazilian spiritualism, this paper tries to elucidate the reason why the religion was accepted by non-Japanese Brazilians. Messianity defines itself as a religion that realizes the prophecy of Christianity. Further, Messianity's care of its followers is attractive for Catholics because liberation theology, which has retained remarkable influence in Brazil since the 1970s, focuses on the salvation of society rather than on individual salvation. Kardecismo is closer to Messianity than Catholicism, however. Both Messianity and kardecismo (1) believe in the existence of the spirit world, (2) put importance on the procedures which transfer transcendental energy from one human being to another (3) believe in reincarnation, (4) urge spiritual evolution; raise the spirit's level in the spirit world. These similarities are not by coincidence. Western spiritualism reflects in Messianity's doctrine, because the founder Okada Mokichi was interested in Western spiritualism and read its literature in Japanese translation. With its closeness to Catholicism and kardecismo both in doctrinal and practical aspects, Messianity has achieved success in propagation in Brazil.
著者
木村 賢史 西村 修 太田 祐司 三嶋 義人 柴田 規夫 稲森 悠平 須藤 隆一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.720, pp.15-25, 2002-11-22
被引用文献数
2 2

葛西人工海浜における造成後の魚類, 鳥類及び, 水辺植生の遷移の過程を検討した. 東なぎさの魚類種数は造成終了前後の時点に回復しているが, 個体数は変動が大きく河川水による塩分濃度の低下が制限要因と推測された. 葛西人工海浜 (東なぎさ) の鳥類は立ち入り禁止という高い安全性と干潟の面的広がり等により造成前の種数に戻っており, 個体数は, 主な餌である底生動物の個体数と関連することが推測された. また, 東なぎさの水辺植生は, 造成後15年を経て遷移初期のヨシ湿原の段階にあり, 植生も多様化の傾向に向かっていると推測された.
著者
平野 敏明
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.A1-A11, 2013

ヒバリ <i>Alauda arvensis</i> の個体数におよぼすヨシ焼きの影響を明らかにするために,栃木県南部の渡良瀬遊水地で繁殖期にヒバリの個体数調査を行なった.渡良瀬遊水地は,面積3,300 haの大部分がヨシを主とする高茎植物で覆われている.ここでは,毎年3月中旬に全域でヨシ焼きが実施されているが,2011年にはヨシ焼が行なわれなかった.そこで,ヨシ焼き前後およびヨシ焼きのあった2004, 2005年となかった2011年との比較を行なうことで,ヒバリの個体数におよぼすヨシ焼きの影響を検討した.2004年4月中旬から7月下旬にかけて1週間ごとにヒバリの個体数と草丈を記録したところ,ヨシやオギの高茎植物はヨシ焼き後に徐々に成長し,ヨシ焼き後100日あたりでは草丈が約2.1mに達した.一方,ヒバリの個体数は,草丈が約60cmに成長するヨシ焼き後40日でピークとなり,その後急速に減少し,ヒバリの個体数と高茎植物の草丈とのあいだには,有意な負の相関が得られた.また,草丈の高い2か所の調査地では,ヒバリの個体数はヨシ焼きを実施した年のほうがヨシ焼きを中止した年より有意に多かった.さらに,ヨシ焼きを実施した年におけるヨシ焼き前後の調査では,草丈の低い調査地ではヒバリの個体数に差がなかったが,草丈の高い調査地2か所のうち1か所ではヨシ焼き後のほうが有意に多かった.これらのことから,渡良瀬遊水地では,ヒバリはヨシ焼きによって古いヨシやオギが焼失することで広大な繁殖環境を得ていることが示唆された.もし,2011年の繁殖期のようにヨシ焼きが中止されると,ヒバリは道脇や堤防,ヨシ刈り地など極めて限られた場所で繁殖しなければならなくなると考えられた.
著者
上和田 茂 中島 只義 村田 洋
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.64, no.516, pp.129-135, 1999
被引用文献数
1 1

Overlap phenomenon between dry and wet occur on the by-path for players when swimming meet is being held. We made clear the structure of that phenomenon and the cause of it as follows. The connection path between main-pool and sub-pool that is made as dry-zone is used by players as wet-zone. The common path is substitued as circulation to mainpool in wet-zone. The by-path from gallery that must be dry is invaded by wet because of common use between by-path and wet circulation to main pool. In accordance with these analyzation, we designed model plan for improvement.
著者
吉岡 陽
出版者
日経BP社
雑誌
日経エコロジー (ISSN:13449001)
巻号頁・発行日
no.79, pp.55-57, 2006-01

燃料電池があなたの家にやってくる日もそう遠くないだろう。メーカーは3年後の量産開始をにらみ、準備を進めている。次世代コージェネの本命と目される固体酸化物型燃料電池(SOFC)も実用化が見えてきた。 2005年は「燃料電池元年」と言われる。春には、東京ガスと新日本石油が家庭用燃料電池システム(用語解説参照)として初めての商用機を首相公邸に設置。
著者
河合正治著
出版者
新人物往来社
巻号頁・発行日
1984
著者
黒羽 敏明 渋谷 晟二
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.925-929, 1972

クリスタルバイオレットを用いる銅中の微量水銀の抽出吸光光度定量法を検討した.<BR>EDTAを含む銅のアルカリ溶液からジエチルジチオカルバミン酸-トルエン抽出により水銀を分離したのち,ヨウ化カリウム,臭素酸カリウムおよび臭化カリウムを含む硝酸(0.7<I>N</I>)溶液で水銀を逆抽出し,ついでクリスタルバイオレットを加えトルエンで水銀を抽出し光度定量することにより銅中の水銀の定量ができた.<BR>本法を妨害する元素として銀と金があるが,銀はジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムの添加量を増すことで,金はジエチルジチオカルバミン酸錯塩としてトルエンで抽出したのち,0.5<I>N</I>の硝酸溶液で洗浄することにより水銀の損失を招くことなく金を除去することができた.<BR>銅2gを採取すれば0.25ppmまでの水銀の定量が可能である.
著者
岡崎 平夫
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.14, no.12, 1978-12-01
著者
大沼 学 ZHAO Chen 浅川 満彦 長嶺 隆 桑名 貴
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.27-31, 2012-03-01
参考文献数
15

ヤンバルクイナ(<I>Gallirallus okinawae</I>)の消化管内寄生虫2種についてDuplex real-time PCR assayを開発した。本法はヤンバルクイナ由来のDNAの影響を受けずに2種を同時に検出できることを確認した。また,寄生虫卵1個分のDNA量も検出でき,糞便にも応用可能であった。本法はヤンバルクイナ飼育個体群を対象として寄生虫検査を糞便サンプルで実施する場合に特に有用な手法である。
著者
今井 葉子 角谷 拓 上市 秀雄 高村 典子
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.15-26, 2014-05-30

2010年に開催された第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)で合意された、愛知ターゲットの戦略目標Aにおいて、多様な主体の保全活動への参加の促進が達成すべき目標として掲げられている。この目標を達成し広範で継続的な保全活動を実現するためには、重要な担い手となる、市民の保全活動への参加あるいは保全行動意図をどのように高めるかが重要な課題である。本研究では、社会心理学の分野で用いられる意思決定モデルを援用し「生態系サービスの認知」から「保全に関連強い行動意図」(以下、「行動意図」)へ至る市民の意思決定プロセスを定量的に明らかにすることを目的に、市民を対象とした全国規模のアンケート調査を実施した。既存の社会心理学の意思決定モデルにもとづきアンケートを設計し、4つの「生態系サービス(基盤・調整・供給・文化的サービス)」から恩恵を受けていると感じていること(生態系サービスの認知)と「行動意図」の関係を記述する仮説モデルの検証を行った。インターネットを通じたアンケート調査により、5,225人について得られたデータを元に共分散構造分析を用いて解析した結果、「行動意図」に至る意思決定プロセスは、4つの生態系サービスのうち「文化的サービス」のみのモデルが選択され、有意な関係性が認められた。社会認知に関わる要素では、周囲からの目線である「社会規範」や行動にかかる時間や労力などの「コスト感」がそれぞれ「行動意図」に影響しており、これらの影響度合いは「文化的サービス」からのものより大きかった。居住地に対する「愛着」は「社会規範」や「コスト感」との有意な関係が認められた。さらに、回答者の居住地の都市化の度合いから、回答者を3つにグループ分けして行った解析結果から、上記の関係性は居住環境によらず同様に成立することが示唆された。これらの結果は、個人の保全行動を促すためには、身近な人が行動していることを認知するなどの社会認知を広めることに加えて、生態系サービスのうち特に、「文化的サービス」からの恩恵に対する認知を高めることが重要となる可能性があることを示している。
著者
池田 昌博
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学人間環境論集 (ISSN:13472135)
巻号頁・発行日
no.13, pp.93-110, 2014

The arguments on the privatization of Osaka Municipal Transportation Bureau are continued now. However, discussions of urban policy and transport policy are insufficient decisively. In addition, merits and demerits are accompanied by privatization. The increase in efficiency of management is required, however judging public works only by enterprise profits has too many problems. For example reduction of bus transit has serious influence for persons with disabilities and elderly people who cannot drive a car. Civil authority, transportation operators and users must discuss about social role of public transport enough. In order to stir up further discussions, we will report the results of the discussions by the members of the NPO KOALA to advocate urban planning by public transport.

2 0 0 0 OA 通俗花柳春話

著者
ロード・リトン 著
出版者
坂上半七
巻号頁・発行日
vol.初編, 1884
著者
宮本 孝二
出版者
桃山学院大学
雑誌
桃山学院大学社会学論集 (ISSN:02876647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1-26, 2015-09

The works of Emile Durkheim(1858-1917)have exerted an extraordinary influence over the development of modern social theory. This paper, the second one of my project `Giddens and Sociologists', aims to explore how Anthony Giddens, one of most famous sociologists in the contemporary world, grasp the entire structure and possibilities of Durkheim's social theory through studying his works. The main findings are as follows. First, Giddens got reflexivity which is the central concept in his structuration theory through critically studying Durukheim's theory of suicide. Reflexivity is the concept which means an essential quality of human existence as agent and a trait of social structure as condition and outcome of agency. Second, Giddens found that Durkheim's social theory is consistent and systematic by analyzing his main works. Durkheim constructed his social theory by tackling with problems concerning capitalism and nation-state in modernization. Third, Giddens succeeded in breaking through old images of Durkheim and getting clues to the development of Giddens' social theory in possibilities brought up by Durkheim.
著者
森 重雄
出版者
苫小牧工業高等専門学校
雑誌
苫小牧工業高等専門学校紀要 (ISSN:03886131)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.23-25, 2005-03-31

工学でよく見られる積分にガンマ関数を応用すれば, 学生が解を簡単に求めることができるようになる。