著者
米林 喜男 濱野 強 藤澤 由和 佐々木 正道
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

現在、わが国においては多種・多様な調査が実施されており、それらに関しては非常に精度の高い、有用なデータが多く含まれている。欧米諸国においては、公的機関により実施された調査データはもちろんのこと、公的な助成により得られた調査データに関しては、一定の期間が経過した後には個人が特定されない形での公開が一般的に行われている現状にある。そこで、本研究においては、保健医療分野における調査データの公開制度に関してその具体的な課題抽出と、それらを可能とするための諸要件より検討を行うことを目的としたものであった。具体的には、前年度までの研究成果であるソーシャル・キャピタル研究におけるデータアーカイブの活用実態をもとに、わが国における適応可能性に関して検討した。すなわち、データアーカイブにおける基本的要件を整理し、わが国における背景との適合性を検討することにより、保健医療分野におけるデータアーカイブの可能性を具体的に示したものである。さらにデータアーカイブは、データの公開に際して個人の情報などプライバシー、および情報のセキュリティなどを十分に検討する必要があるが、この点に関しては法律的な観点、および情報技術的観点からそれぞれの専門家らとの意見交換を行ない、オープン・リソースを展開していくための通信技術と個人情報保護との関連性などに関して専門的視点より明らかにした。
著者
平林 晃 PIER-LUIGI Dragotti
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,スパース信号に対する複数チャンネル標本化と,スパースサンプリングに基づく画像特徴量抽出に関する研究に取り組んだ.前者は主に初年度の課題であり,信号の事前分布とl1ノルム最小化原理をそれぞれ利用した2種類の信号再構成アルゴリズムを提案した.また,次年度は主に後者に取り組み,画像に含まれる直線エッジの完全抽出アルゴリズムを開発した.そして,提案手法の雑音耐性が従来手法より約10dB優れていることを計算機実験により示した.
著者
大佐賀 敦 近藤 克幸
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題では、PCの位置をリアルタイムに把握する手段として、ロケーションサーバとアクティブ型電子タグを採用し、その応用可能性を検討した。位置情報を利用し、1)診察室や研究室、院外等へモバイルPCを持ち運んだ際、各場所に応じたファイル・セキュリティを自動適用し、利用者が意識することなくデータ保全を行う仕組み、2)PCを診察室等へ持ち込んだ際には、持ち込んだPCと診察室の端末が自動的に互いを認証し、シームレスなデータ交換が可能となる機能を開発した。これらのシステムを医療場面での利用に合わせた最適化を行い、実用的な性能が得られることを評価した。
著者
蔡 兆申 都倉 康弘 北川 雅浩 高橋 義郎 占部 伸二 竹内 繁樹 小芦 雅斗 樽茶 清悟 工位 武治
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

1.事後評価報告書作成の為、総括班メンバーによる会合を2回開催(4月24日、理研東京連絡事務所-6月12日、WTCコンファレンスセンター)し、以下の通り成果を確認した。:量子サイバネティクス領域は、高度で複雑な量子状態制御を目指している。応募時には、①新規な量子制御・検出の実現と、②多様な物理系においての包括的な量子制御の理解、を領域の目標として挙げた。また応募時の研究期間内の成果の一例として、混合量子系での単量子の操作や検出の目覚ましい進展を挙げた。数多くの混合量子系の可能性の中で、特に人工原子量子光学での飛躍的発展や、人工原子と機械振動の結合、微視量子系と固体素子量子系の結合の実現などに言及した。5年の研究の結果、領域内の全ての物理系で、量子状態制御の科学技術大きく進展し、設定目標はほぼ達成された。「①新規な量子制御・検出」に関しては、超伝導人工原子での高忠実度状態制御や量子非破壊・単事象観測などをはじめ、すべての物理系で目覚ましく進展を遂げた。「②多様な物理系においての包括的な量子制御の理解」に関しては、例えば超伝導人工原子量子光学と、従来の自然原子の量子光学との比較より、特に「単原子」量子光学に関する新規な知見を得、より包括的な理解を確立した。また他の多くの新規な混合量子系を実現した成果から、より包括的な理学が生まれた。また目標には当初なかった、新規な量子効果である超伝導細線でのコヒーレント量子位相滑りの実現などの成果も達成した。全論文数372件、内トップ1%引用論文は20件あることから、遥かに標準を超えた成果が生み出されたことが分かる。また既存の学問分野の枠に収まらない新興・融合領域の創成という目標に対し、数々の学際的な研究成果を達成した。2.研究成果報告書(冊子体)の作成に向け、会合を開催(9月30日、筑波大学東京キャンパス)し、全113頁の報告書を作成した。
著者
難波 啓一 今田 勝巳
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

生命機能を支える生体超分子の動作のしくみを解明し、医療やナノテクノロジーに役立てるためには、原子分解能での立体構造解析法の確立が必須である。電子顕微鏡像の解析による超分子立体像解析では原子分解能達成は困難であるが、構成分子のX線結晶解析による原子モデルを超分子立体像に組み込むことにより、擬似原子分解能での解析が可能になる。本研究課題では電子顕微鏡像解析のさまざまな工夫によりその分解能の向上と解析時間の短縮を図り、原子モデルの組み込み精度を高めて、原子レベルでの動作機構の解明を実現した。
著者
前田 美香
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

脊髄運動神経は、その軸索が脊髄を脱して移動していく一方で、細胞体は脊髄の内に留まり情報を受け取る必要がある。その仕組みを知る目的で、ゼブラフィッシュ胚で運動神経と移動中の神経冠細胞に発現する接着分子Tag1に注目し、研究を行った。Tag1が発現していない場合、神経冠細胞の軸索への異常な配列や細胞死、異常なSchwann細胞の分化が起こり、さらにこのような胚では運動神経細胞体の軸索からの脱落が観察された。魚類の運動神経細胞体の保持には、Tag1を介したSchwann前駆細胞の軸索への配列が重要な役割を果たしており、ニワトリやマウスと同様に神経冠由来細胞が関わっている事がわかった。
著者
佐古井 智紀 岡田 和徳 石井 亮太 メリコフ アーセン
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

温度分布のある環境下での温熱生理状態を推定するため、実サーマルマネキンを用いて必要な環境データを得る理論を示し、実サーマルマネキンを用い実証した。黒と銀の円筒型サーマルマネキンを開発し、近赤外熱源がある場合とない場合で比較計測を行った。近赤外熱源がない条件での放射率と近赤外熱源が有る場合の近赤外に対する吸収率は大きく異なることを確認した。CAD上と3Dプロッタでサーマルマネキンの基礎形状を出力し、左手と左前腕のサーマルマネキンを具体化した。
著者
宮田 真人
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

ヒト肺炎の原因菌などとして知られるマイコプラズマは菌体の片側に"滑走装置"を形成し、固形物表面を滑るように動く、 "滑走運動"を行う。これまでの研究代表者らの研究によりこの運動のメカニズムのアウトラインが最速種、Mycoplasma mobile(マイコプラズマ・モービレ、以下モービレと略)について明らかになっていた。本研究では、これまでよりさらに踏み込んだ実験を行い、メカニズムの本質に迫った。また、最速種で得られた知識や技術をヒト肺炎病原菌である、Mycoplasmapneumoniae(マイコプラズマ・ニューモニエ、以下ニューモニエと略)に応用した。
著者
田丸 理砂
出版者
フェリス女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究ではヴァイマール共和国時代の女性と文学の関係を都市大衆文化の文脈から探った。ヴァイマール時代のベルリンに成立した都市大衆文化は女性作家に表現の可能性を拓いた。マスメディアは多くの読者を獲得するために女性の表現者を求め、女性作家の中には、当時の憧れの女性像「新しい女」のイメージを代表する都市の女性ホワイトカラーの現実を、女性の視点から描く者も現れた。ヴァイマール時代の女性作家の急増は文学の大衆化をもたらし、文学における女性の世界の発見へと導く一方、結果として文学の場に新たなジェンダー構造を築くことにもつながった。
著者
寺田 元一
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

『生理学要綱』の最大の典拠と推定されるハラー『生理学原論』をラテン語で読み、それ自体が、ハラーの生理学者としての研究成果であるだけでなく、ヨーロッパ中の生理学関係の古典ならびに最新著作を整理した総合的著作であること、その科学的かつジャーナリスト的活動は『百科全書補遺』の生理学項目執筆にも継承されたことを解明した。ディドロはそのような間テクスト的ハラー生理学を唯物論的に換骨奪胎することで『生理学要綱』を執筆した。そのテクスト生成の研究は今後の課題だが、それに必要なSP写本の暫定的校訂版を作成し、HPに掲載した。
著者
日比 美和子
出版者
東京芸術大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本年度は、第1に、戦後の北米におけるピッチ・クラス・セット理論が、ほぼ同時代に展開されたそれと強い結びつきのあるシェンカー分析、変換理論、新リーマン理論、クランペンハウアー・ネットワーク、といった分析方法と、どのように互いに関係しながら理論的に展開されてきたのかを明らかにした。まず、ピッチ・クラス・セット理論及びクランペンハウアー・ネットワークと、シェンカー分析との関係について、階層構造及び多層構造の点において類似性が見られることを明確にした。また、ピッチ・クラス・セット理論とシェンカー分析との関係についてはイデオロギーの排除・中立的な理論である点において、変換理論とシェンカー分析の関係については変換理論の一部とシェンカー分析が持つ中景構造の意識という点において類似性を指摘することができた。(東京藝術大学音楽研究科、音楽文化学論集において発表。)さらに、新リーマン理論において跳躍を含む理論が異なるセット・クラスの比較を可能にしたことが、ピッチ・クラス・セット理論の弱点を補う結果となったことを明らかにした。第2に、ピッチ・クラス・セット理論を含め、上記のポスト調性理論(シェンカー分析を除く)のいくつかがそれ以前の音楽分析の手法とまったく異なるものとして見なされやすいことに対して、それらが西洋の理論の伝統に根ざしていることを示した。たとえば、新リーマン理論と調性理論の関係については、新リーマン理論におけるスライドSLIDEという概念とロシアにおいて調性音楽及び無調音楽分析の分野で用いられてきた共通三度という概念との類似性が挙げられる。ピッチ・クラス・セット理論とそれ以前の理論との関係については、組み合わせ可能性、Z関係、セット、音程の視点から19世紀後半及び20世紀初頭の著述家が発表した方法との類似性を指摘した。
著者
足立 頼俊
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

量子鍵配送は遠く離れた二者間でランダムなビット列(秘密鍵)を共有する手段の一つであり、BB84や6-state、BBM92、DPSなど、これまでに多くの方式が提案されている。最初に提案されたBB84は2種類の基底で測定して盗聴の有無を判別するが、6-stateは3種類の基底を用いるため、6-stateにおける盗聴有無の判別には、BB84に比べていくらかの優位性があると思われる。これは理想的な単一光子源を利用した場合には正しいことが分かっているが、多光子を放出するような現実的光源では不明であった。私は現実的光源と現実的な光子検出器を利用した場合の6-stateの安全性を証明し、確かに現実的光源においても6-stateの優位性が保たれていることを示した。また、この証明法は拡張したBBM92にも適用できるため、エンタングルメントした状態を取り扱う光源での安全性も包括している。一方で、DPS方式も世界中で非常に注目されている。これは状態の非直交性を利用した方式であるため、BB84などと異なり、多光子からも秘密鍵を生成できる可能性がある。しかし、これまでに理想的な単一光子源、光子検出器を利用した場合の安全性証明しか行われておらず、実際の実験系への適用はおろか、方式の優位性も正確に把握できていなかった。私は理想的な単一光子源を現実的光源に置き換えた際の安全性証明に取り組み、2光子を放出する事象に対し、秘密鍵を生成できることを示した。また、この証明法はどの多光子放出の事象においても、秘密鍵の生成条件を示せる可能性も含んでいる。
著者
大河内 信弘 福永 潔
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

肝細胞癌の遺伝子異常に関しては未だコンセンサスを得られていない。本研究ではアンチセンスRNAに注目し、肝細胞癌でのセンス/アンチセンスRNAの網羅的解析を行い、癌部非癌部の比較で発現変化に有意差のあるアンチセンスRNAを同定した。さらに、C型肝炎ウィルス陽性肝細胞癌を対象に詳細な分析を進め、アンチセンスRNAの発現に癌部・非癌部の比較で発現変化に有意差のあること、及び組織型毎の比較でも発現に有意差のあることを確認した。
著者
鎌田 佳奈美 楢木野 裕美 石原 あや 吉川 彰二 通山 由美子 森 瞳子 鈴木 敦子
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、看護職が潜在的な虐待のリスクをもつ家族をアセスメントするためのツールを開発することを目的とした。小児病棟および救急病棟、小児外来、救急外来、保健センターに勤務する看護職12名の面接調査を行ない、虐待が起こるかもしれないと感じた子どもや家族の言動を抽出した。これらの項目の重視度について、子どもと家族にかかわりをもつ看護職を対象に質問紙調査を実施した。全国500床以上の病院および小児専門病院で、調査の協力に承諾の得られた72病院に勤務している看護職729人に質問紙を送付し郵送にて回収し、326人(回収率44.7%)より回答を得た。子どもと家族の観察項目で看護師が重要視する割合の高い内容をもとに、潜在的な虐待リスクをもつ家族をアセスメントするツールの試案を作成した。
著者
辻 隆之 土肥 健純 安水 洸彦 藤里 俊哉 佐田 正晴 宮脇 富士夫
出版者
国立循環器病センター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

ミニブタが異種臓器移植用ドナー動物として世界に認知され、遺伝子組み換えが欧米で試みられている、我か国では数が現状ではきわめて少ない貴重なミニブタの受精卵にヒト遺伝子を導入するマイクロインジェクション法について効率的なデバイスを開発することが本研究の目的である。そのために低侵襲的に卵胞卵を採取できる三次元視硬性内視鏡を開発した。さらに薄層(50μm)緻密ガラスで表面コーティングしたマイクロポーラスガラス板にマイクロポケット(直径150μm)をマトリックス(5×5)状に穿ち、それをハウジングに固定して卵浮遊液を循環するミニブタ卵培養装置を開発した。それを三次元視正立顕微鏡に取り付けてCRTでマイクロポケット内に吸引固定された卵胞卵を立体視し、培養液の性状(pH.02、CO2など)を制御して卵胞卵を体外培養し、体外受精させる。三次元マイクロステージをコンピュータで制御し、受精卵保持システム内の受精卵にヒト遺伝子を導入するシステムを開発した。
著者
星河 武志
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本の外貨準備高は巨額であり、約1兆ドルである。膨大な外貨準備高の累積の背後には外国為替市場介入の存在が挙げられる。本研究では、為替政策の影響を分析した。その結果、大規模な円売りドル買い介入によって、為替相場が円安方向に動かされている可能性が示された。また、為替政策が為替相場のボラティリティに影響を与えていること、円売りドル買い介入が日経平均株価に対してプラスの効果を持つことが示された。
著者
徳永 正二郎
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

現代の貿易金融は、貿易金融の現地金融化、貸付金融と出資金融の複合化(ハイブリッド化)、貿易債権保全手法の資本取引化など、革命的ともいえる変化を遂げてきている。この変化の意味と原因について分析するために、本研究では、まず第一に、貿易取引と金融・決済のシステムがどのように発展してきたか歴史的に検討した。特に、産業革命(機械制大工業による大量生産システム)が確立した後の19世紀中葉に、英国を中心に生成発展したCIF売買(船荷証券や保険証券の準流通証券化なども含む)と荷為替信用システムについて分析し、このような新しい商契約と貿易金融システムの誕生が機械生産が生みだした世界的産業構造の再編成と深く関係していることを確認した。またその中で、新しい貿易金融方式に則した国内金融システムならびに国際決済制度が創り上げられていったことを解明した。この歴史的分析のもとで、つぎに現在急激に変化している貿易取引と金融システムの特徴について分析した。そこでは、現地法人による貿易と金融の手法、コンテナ貿易の進展と統一信用状規則の改訂問題、複合金融の実態(カウンタートレード、国際リース、プロジェクトファイナンス、開発輸入、シンジケートローンの債権化など)、さらには通貨スワップ・ベッジ債の発行など資本取引と融合した新しい貿易債権リスク・ヘシジ手法について、専門家の協力を仰ぎながら、分析した。現代貿易取引と金融の特質を体系的に明らかにするなかで、戦後期の先進国相互、先進国と途上国(とりわけOPECとNICS)との間の相互依存関係の深化と発展が、貿易金融イノベーションの背後にあることを確認できた。以上の成果は、他の三名の専門研究者との共同研究として『貿易金融イノベーション-変貌する貿易取引と金融』(有斐閣、5月刊行予定)にまとめて発表される。
著者
岸田 佐智 富安 俊子 芝崎 恵 佐原 玉恵
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本年度は、研究分担者及び不妊症看護認定看護師の協力を得て、不妊治療を受けている女性8名に対する半構成的インタビューを行った。インタビュー内容は、不妊治療中の身体的苦痛や不快、治療継続における悩み、パートナーや周囲からのストレス、生活上の問題、医療者への不満や、傷つけられた出来事、満足していることなどについてであり、1-2時間の面接を行った。インタビュー中は、MDレコーダーにてその内容を録音し、録音内容を逐語文にし、討議内容のメモも用いて、看護者が捉えている不妊治療中の問題点について質的に抽出を行った。昨年度の成果と合わせて、不妊治療における身体心理社会的側面の問題、(1)継続して行われる注射の方法(部位・角度、注入時間、(2)注射後の圧迫など)に関する問題、(3)治療に伴う副作用の無自覚や我慢、(4)人為的に作られた月経の辛さ、(5)不妊であることを認めたくない、(6)不妊であることや治療後に生じる喪失感、(7)妊娠を素直に喜べない、(8)繰り返し体験する痛みや恐怖からくる継続的緊張感、(9)治療の複雑さによる理解不足、(10)周囲との関係を控えようとする孤立化、(11)余儀なく変更されるライフスタイル、(12)経済的問題、(13)不妊である自分が理解されない、(14)血縁を存続させるための周囲からの圧力、(15)治療に伴う命の選択、妊娠するための治療を最優先する、(16)治療継続によりセックスレスな夫婦の関係、(17)不妊原因や治療失敗により生じる夫婦の軋轢、が明らかになった。そこから、不妊カップルへの包括的な看護援助を提供するため3つのケアモデル、(1)より効果的で、より痛みの少ない不妊治療に伴う注射方法を探索すること、(2)治療に伴う、苦痛への緩和方法としてホメオパチーを活用し、その軽減を図ること、(3)治療の内容や方法に関する理解を深め、治療や看護を連続的に提供できるようにするための治療計画手帳の作成をすることの必要性を見出した。
著者
日比野 直彦
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,鉄道駅整備計画を行なう際には,歩行者行動を分析し,その結果を計画に反映していかなくてはならないという立場から,その方法を議論するものである.まず,駅構内に設置されている保安用監視カメラを模してビデオカメラを設置し,それらから得られたビデオ画像を用い,歩行者データを獲得することを本年度実施した.具体的には,埼玉県春日部市にあり東武伊勢崎線と野田線の乗換え駅である春日部駅を分析対象駅として,駅構内および改札前に20数台ビデオカメラ設置し,ホーム,階段,エスカレータ,改札等の旅客流動を撮影した.撮影時間は,通勤ラッシュ前から夕方の帰宅ラッシュまでの連続した時間である.撮影は,平日1日,休日1日の2日間を行なった.撮影されたビデオ映像を1フレーム毎に画像として分解し,それらの画像に対して,画像処理の技術を援用し,個々の歩行者に着目した軌跡データ,空間利用に着目した密度データ,空間モデュールデータ等を作成すること行なった.本年度の研究成果は,第一に,歩行者行動分析に使用するための乗換え駅におけるビデオ映像を得ることができたこと,第二に,その映像から自動的に歩行者の位置座標,軌跡データ等を得るシステムを開発し,ある程度の精度でデータ取得可能であることを確認したことである.
著者
増田 有紀
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は,学習者の量に関する認識上の困難点を学習者の立場から特定し,学校数学における量に関する学習指導全体を再構築することである。昨年度と今年度の2年間は,学校数学で学習される量の中でも特に,独自の特性を有する「角の大きさ」に焦点をあて,はじめに,量とその測定に関する指導の順序を示す「測定指導の四段階」と角の概念が有する特徴との関連を精査しながら,小学校から高等学校までの複数の学校段階における角の計量的側面に関する学習の要件を理論的に解明した。次に,その要件の獲得に困難を示す場面を実証的に特定し,そのような困難性を抱える学習者の立場から,角の学習指導全体のあり方を学校段階に応じて総合的に検討した。その結果,以下の二つの研究成果が得られた:1.複数の学校段階にみられる角の学習上の困難点とその背後にある要因を顕在化し,困難点を解消する方法を探究する立場から角の学習指導の改善のための示唆を得る方法を解明したこと,2.角の学習指導に関する実践上の課題を解決するために,上述の方法を適用し,角の学習上の困難点とその要因の解明を通して得られる知見によって,学校数学における角の学習指導の改善の指針を提示したこと。本年度は,上述のような成果に関して,学位論文「角に関する学習上の困難点の特定とその解消の方法-学校数学における角の学習指導の改善に向けて-」を執筆し,平成23年3月25日付けで筑波大学より博士(教育学)の学位を取得すると同時に,第34回数学教育心理学会(PME34),第5回東アジア数学教育国際会議(EARCOME5),日本科学教育学会第34回年会,日本教材学会第22回研究発表大会,日本数学教育学会第43回数学教育論文発表会の学会で発表した。