著者
池田 真一
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

運動は筋インスリン感受性を亢進することで、メタボリックシンドロームや2型糖尿病の予防・治療に極めて有効であるが、その分子メカニズムは明らかにされていない。我々は、運動により骨格筋内の抗炎症性マクロファージであるM2マクロファージ数が増加し、これにより、筋インスリン感受性の亢進が起こっていると仮説した。C57BL6Jマウスに一過的トレッドミル走を施すと、骨格筋内のM2マクロファージ数は増加し、これに伴い筋インスリン感受性の亢進も認められた。しかしながら、運動前に全身のマクロファージを枯渇させる薬剤であるクロドロネートリポソームを投与すると、運動後に認められたM2マクロファージ数の増加、筋インスリン感受性亢進の両方が起こらなかった。このとき、いくつかのシグナル伝達経路の活性化を検討したところ、インスリンシグナル(Akt-AS160)やAMPK経路は運動やクロドロネートリポソームによる変化は認められず、PKC経路が運動により活性化されており、この活性化はクロドロネートリポソームにより抑制された。これらのことから、運動による筋インスリン感受性亢進は、M2マクロファージがPKC経路を介して引き起こしていることが示唆された。
著者
小野 哲也
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

放射線による腸死に対し幹細胞移植による治療の可能性を探るためマウスを用いたモデル実験を行うのが目的である。昨年の結果から胎仔期の小腸上皮細胞を用いれば幹細胞移植がより効率的に行える可能性が示唆されたので、本年度はまず小腸上皮細胞をsingle cellとしてより多く回収する方法を検討した。具体的には細胞が緑の蛍光を発するように改変されたEGFPマウスの17.5~18.5日齢胎仔小腸を用い、文献情報から得られたコラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、パンクレアチン、トリプシン、DNase I、EDTAの単独及びそれらの2つ以上の組み合わせた処理について検討した。また処理方法は0℃×60分、20℃×20分、37℃×20分についてチェックした。指標としてはsingle cell suspensionが得られるか、蛍光蛋白が細胞内によく保持されているか、細胞の収率はよいかの3点で行った。その結果、EDTA存在下でヒアルロニダーゼを37℃×20分処理後トリプシン+DNase Iを20℃×20分を行うのが最適であることが分かった。この時の細胞の回収率は0.3~1×10^5 cells/マウスであった。次にこの細胞を用い10Gy照射したマウスの尾静脈に投与した結果、マウスの生存期間は9~11日であった。これは何も処理しない時の生存期間とほぼ同じであり、生存率への影響はみられなかった。このとき小腸にはかなりの数の移植された蛍光細胞がみられたが、幹細胞から絨毛上皮に向けた直線状の細胞のつながりは見えなかったので、幹細胞をうまく移植できたかどうかは不明である。個体の腸死を回復させるためには今後さらなる検討が必要である。
著者
A Al-Mahboob
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

有機デバイスの根幹物質であるペンタセン(Pn)の、グラファイト(HOPG)およびルチル型二酸化チタン(110)(ルチルTiO_2)上における真空蒸着による薄膜成長を低速電子顕微鏡/電子線回折装置を用いてin-situ観察した。Pn薄膜は、基板や作成条件を制御により、デバイス特性上好ましいとされるstanding-up構造(立配向)を作成可能なことが報告されているが、真空蒸着では成長した薄膜結晶同士のお互いに阻害するために、輸送特性上好ましくないドメイン境界をもった多結晶となる。本課題では、Pn薄膜が速度論的にa軸に比べてb軸が優先的に成長しやすいことに着目し、基板、温度の最適化による解決を試みた。HOPG表面は、Pnの主骨格であるベンゼン環だけから構成される表面であり、Pnとの相互作用が強く働く系である。この表面上への室温における蒸着の結果は、第一層にPnの濡れ層が形成された後、様々な配向をとる多結晶状態となった。また、Pnの吸着、脱着が平衡状態となる90℃においても制御できなかった。一方、Pnと基板の相互作用が弱い系では、濡れ層から立ち配向への自発的な転移が、Pn間の強い配向安定性から起こることが報告されている。ルチル型TiO_2は、無機物であるためにこの系に該当すると予想され、また表面再構成の結果[001]方向に一次元の酸素原子列をもつ凹凸を持つため、種結晶の初期形成を制御が期待される。作成条件の最適化の結果、Pnは表面の原子ステップ上に沿った成長、および濡れ層から1層目から結晶方向の揃った立配向への転移が起こることや、b軸成長が支配的な成長モードであることを確認したが、もともと基板表面上に存在する格子欠陥や局所的なアイランド構造から形成された異なる配向も同時に確認された。この制御のためには、表面が原子レベルで綺麗な幾何構造をもっパターン基板を用いる必要があることがわかった。
著者
渡辺 公次郎
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、住宅・土地利用計画支援システムを開発することである。まず、徳島市周辺部を対象に、セルオートマトンモデルを用いて市街化を予測するモデルを開発し、それを用いて地区別に世帯数を予測した。次に、世帯数変化の特徴を明らかにするため、世帯数変化傾向を、小地域統計データを用いて分析し、変化の特徴を類型化した。これらの成果から、住宅・土地利用計画支援システムで用いる世帯数予測モデル開発に関する知見を示した。
著者
吉田 浩之 原田 隆史 来田 宣幸
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

中等教育の部活動の実態として教育目標とされている内容を, アンケート及びインタビュー調査によって定性的・定量的に検討し,部活動における具体的な教育目標の項目で構成される部活動の目的意識・行動達成度尺度を作成した.「競技力・専門性」, 「内面的成長」を含む10因子,45項目,5件法の尺度であった.45の項目は,部活動における具体的な教育目標であり,評価規準としての機能を持ち,生徒の教育目標到達度の評価を可能とした.また,本尺度をもとに部活動指導プログラムを作成し,中学校,高等学校の顧問教員を対象とした研修会で導入し,実践事例の検証を通じてプログラムの実効性を高めた.
著者
後藤 晃 下田 隆二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1.本研究は、我が国の公的研究機関のうち、特に国立の研究機関に焦点を絞り、そのイノベーション・システムにおける役割について、具体的な事例分析および論文、特許などの客観的なデータの計量的分析を通じ、実証的な分析を試みるものである。2.13年度においては、(1)12年度の研究調査研究、すなわち;(1)国立試験研究機関(国研)に研究費、研究者の推移、我が国の研究開発活動全般の中での位置付け、国研に関する各省庁の施策、関連の予算の推移を調査するための基礎資料の収集、(2)国研が保有する特許の現状、その実施許諾状況及び企業との共同保有の状況等の調査・分析、(3)工業技術院の筑波研究所学園都市所在の研究所の研究活動等、特に産業界への技術の移転状況、産業界との交流、協力関係などの調査、(4)国研に関する行政部局や政府関係機関への国研と産業界との関係等についての訪問調査、を踏まえ、調査・収集した資料・データに基づき、国研の研究活動とその産業界との関係について調査分析を進めた。(2)この結果;(1)国研の予算、人員については、過去20年間に亘って比較的安定的に推移し大きな変化がみられないこと、(2)新しい状況への対応のため研究機関の名称変更、統廃合等が若干みられるものの、平成13年度の独立行政法人化まで、組織的には大きな変化には乏しかったこと(3)基礎的な研究を行う大学、研究所を持つ大企業や先端技術開発を行うベンチャー企業等の民間との狭間で、これらとは異なる国研独自の役割が不明確となりつつあること、(4)国研保有特許のうちでは、国研と企業等とが共有している特許が実施に結びつき易い傾向がみられること、などが明らかになった。
著者
吉田 淑子 二階堂 敏雄 岡部 素典 小池 千加
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

羊膜上皮および羊膜間葉系細胞に含まれる幹細胞を純化し、疾患モデルでその効果を検討した。糖尿病モデルでは、一過性の血糖値の低下および延命効果が見られた。脊髄損傷モデルでは、損傷後1週間後に羊膜間葉系細胞を移植したにも関わらず、下肢の機能に有為な回復が認められた。骨欠損モデルでは、異種動物への移植であったにも関わらず、拒絶はほとんど認められず骨組織への再生が確認された。羊膜幹細胞は再生医療の細胞素材として有効である。
著者
今泉 敏 横田 則夫 出口 利定 細井 裕司 新美 成二
出版者
広島県立保健福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

話し相手の心を理解するコミュニケーション機能を支える脳機構とその発達を研究した。まず、話し言葉から話し相手の心を理解するテスト(音声課題)を作成し、小、中学生、成人合計339名を対象にその能力の発達を調査した。文章による比喩・皮肉文理解課題(文章課題)も行った。その結果、言語的意味と話者の感情とが一致しない皮肉音声やからかい音声に対して、他者の心を理解する能力が小学生から中学生に掛けて有意に上昇し発達するものの、中学生になってもなお成人の成績には達しないことが分かった。特に、からかい音声から話者の発話意図を理解する能力は中学生でも成人より有意に低いものだった。低年齢児の能力を評価するためには音声課題の方が文章課題より適していることが示された。さらに、健常成人24名(男性12名,女性12名)を対象に,感情(「喜び」と「憎しみ」)を込めた音声から,話者の気持ちを判断する場合(感情課題)と語の言語的意味を判断する場合(言語課題)の脳活動をfMRIで解析した。その結果,女性に比較して男性の反応時間は有意に長く、正答率も低かった。脳の賦活パターンには両課題とも性による違いが観測された。感情課題では,心の理論や社会的・倫理的推論で重要な役割を果たす前頭内側部(FMC)が男性でのみ有意に賦活した。左右上側頭回や左下前頭回の賦活も男性のほうが高かった。話し言葉から相手の心を理解する脳機能には性差があり,男性では推論作業が重要であることが示唆された。以上の結果に基づいて、音声から話し相手の心を理解するコミュニケーション脳機能を計測する装置を開発した。この装置によって、言語理解障害、感情認知障害、心の理解障害と、それらの機能の発達障害を検査できることが示された。
著者
若本 夏美
出版者
同志社女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究を通して、外国語環境下にある日本人英語学習者のための新たなストラテジー・トレーニング・モデルの理論的及び実践的基礎の構築を試みた。具体的には、研究の知見に基づきつつ(1)外向性・内向性という学習スタイルに注視し、(2)学習者同士のインターラクションを組み込み、これまでにない新たなストラテジー・トレーニング・モデルの初期モデルを構築することができた。
著者
吹野 卓 江口 貴康 片岡 佳美 福井 栄二郎
出版者
島根大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、過疎集落において「聞き書き文集」を発行し、それが住民間の「共感形成」に及ぼす効果を検討する実験的な研究である。文集のような日常的対話とは異なる新たな媒体が一定の効果を持つこと、および過疎化・高齢化が進行している集落では「家」の垣根を越えた援助行動が必要となっており、そのために住民相互の「共感」がもつ意味が大きいことが判った。またこの手法は地方自治体の新人研修に応用された。
著者
筒井 茂義
出版者
阪南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

進化計算の新しい流れの一つである確率モデルGAを取り上げ,部分解利用における多様性維持機構について研究した.この方法では,一つの新個体を生成する際,集団の分布推定に基づいて生成する部分は一部分とし,残りの部分は現集団に存在する個体の一部分(部分解)を利用する.これにより,集団の多様性維持が有効に機能する.本研究では,この方法の有効性を組合せ最適化問題を用いて研究した.またその並列化モデルの研究も行った.
著者
吉井 博明 松田 美佐 羽渕 一代 土橋 臣吾 石井 健一 辻 泉 三上 俊治
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

日韓台の携帯電話及びインターネットの利用実態を調査した結果、日韓台ともにほぼ同じ頃に急速に普及したという点では同じであるが、その利用形態には大きな違いがみられることを実証することができた。また、これらの通信メディアの使い分けは、各国・地域のコミュニケーション文化を色濃く反映する「通信文化」と呼ぶべきものが存在し、それに強く規定されていることがわかった。たとえば、韓国では、携帯電話を通話に使うことが非常に多く、日本では通話よりメールがよく使われている。この背景には、親しい人への連絡手段の選択に際して、相手が置かれている状況への配慮をどの程度すべきかというコミュニケーション文化の違いがある。韓国の場合は、「ウリ」と呼ばれる親しい集団の間では、遠慮をすることがあってはならないという文化があり、通信手段の選択に関しても遠慮しないことが求められ、その結果、リッチネスが高いメディアである、通話が積極的に使われる。これに対して日本では、親しい人への連絡に際しても、相手への配慮を欠いてはいけないとする「抑制」のコミュニケーション文化があり、このためメールが多用されるのである。また、日台の携帯電話利用の比較をしてみると、もっとも大きな違いは、利用の効用として「家族とのコミュニケーションが増えた」ことをあげる人の割合が日本では少ないのに対して、台湾では非常に多いことがあげられる。携帯電話利用がその社会でもっとも親しい集団の凝集力を強化する働きがあるという点では共通しているが、それがどの集団化ということになると、台湾では家族であり、日本ではふだんよく会う友人集団、韓国では「ウリ」という仲間集団ということになるのである。以上述べたように、日韓台の比較調査により、それぞれの国や地域に固有な通信文化が存在し、それが携帯電話を含む通信メディアの使い分けを規定していることがわかった。
著者
片野 修
出版者
独立行政法人水産総合研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

河川群集において,魚類は藻食性の水生無脊椎動物を捕食することによって,栄養カスケードを介して底生藻類を増加させる。この栄養カスケードの強さに影響する要因を実験的に解析した。栄養カスケードの強さは環境の異質性や撹乱によっては影響されなかった。しかし,水面に飛来する成虫と底部の餌の両方を摂食する昼行性の魚種は強い栄養カスケード効果をもたらした。これらの結果は河川で主に藻類を摂食するアユ資源の増大に資するほか,藻類の制御に役立つと期待される。
著者
桐本 東太 村松 弘一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は古代中国における地理情報(Geographic Information)の作成と管理についての解明を試みるものである。戦国秦期の天水放馬灘秦墓出土の木製地図を分析の対象としてとりあげた。地図は西漢水流域を示していたと仮説を立て、当該地区の早期秦文化遺跡との関係、河川の分岐と距離の関係などを検討した。また、『山海経』『水経注』『穆天子伝』などの古代文献の検討から古代地理書の作成過程について研究した。
著者
良永 彌太郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

わが国の社会保障制度では、社会保険が中核的地位を占めている。わが国の社会保険は、一般制度としての年金保険、医療保険および介護保険があり、特別制度としての労働関係に特有の労災と失業を給付事由とする労働保険(労災保険と雇用保険)がある。そして1950年代後半から1960年代初頭にかけて整備された「国民皆保険・皆年金体制」をわが国における社会保険の原型とすると、その特徴の一つは被用者保険と非被用者保険の二本建制度であった点である。しかし、わが国における社会保険の原型は、これが形成されて約半世紀を経過した今日までに劇的に変容してきた。具体的には、1982(昭57)年の老人保健法による老人医療制度、1985(昭60)年の新・国民年金法、2000(平12)年実施の介護保険法において本格的に導入された保険者拠出金制度、基礎年金における第3号被保険者の保険料徴収対象からの除外、介護保険法における第2号被保険者の保険料負担と給付との極端な希薄化等、である。本研究では、特に、以上のような社会保険給付の費用負担関係に現われている急激な変化に着目し、費用負担に関する新しい規範論理の構築を目指した。その研究成果は、以下の研究報告で発表済みである。1.「社会保障法体系論からみた社会保険の規範的意義」社会保険法理研究会、平成18年5月7日、熊本大学、2.「労災補償の生活保障理論-その形成と展開-」荒木先生生誕82年祝賀研究会、平成18年10月21日、唐津シティホテル、3.「労災補償の生活保障理論-その形成と展開-」社会法研究会、平成18年12月9日、熊本県立大学、4.「(論文紹介)江口隆裕『社会保険と租税に関する一考察-社会保険の対価性を中心として-』」社会保障法研究会、平成19年3月27日、鹿児島大学、5.「社会保険給付における費用負担の法関係」社会保険法理研究会、平成19年6月30日、熊本大学、6.「社会保険給付費用の負担の法関係」社会法研究会、平成20年2月2日、九州大学。本研究で明らかになったことは、社会保障法における財源調達手段としての社会保険システムについて、今日の段階では対価性という規範論理のみでは把握できず、個別の保険者集団を越えた一種の社会連帯が存在しており、その社会連帯の主体、要件、内容を明確化することが求められていることである。
著者
田中 宏暁 清永 明 熊原 秀晃
出版者
福岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

初年度に無線式の心音測定装置(マイクロフォン並びに記録装置)を開発し、明瞭な心音のサンプリングが可能な装置を開発した。当初、研究計画に予定されていた「音源分離法を用いたノイズ除去装置の開発」は、研究期間を通して基礎研究を実施してきたが、前年度に引き続き開発に困難を極め装置作成にまで到達できなかった。そこで、運動中のノイズ除去に関しては、心音サンプリングのレンジ(周波数域)を絞り、記録する周波数域を限定的にした事により、自転車運動中の体動によるノイズの混入が阻止できる装置が開発できた。さらに心音検出機能を向上させる為に、心電図のR波をトリガーとした検出プログラムに改良を加えたことにより、これ迄以上に明瞭かつ確実な心音サンプリングが可能になった装置が開発された。また、ワイヤレス式の心音自動解析装置の試作器を開発し、実際の健康づくりの現場にて本装置による運動処方としての有用性を検証したところ、有酸素能が向上することが確認された。研究計画に予定されていた音源分離法を用いたノイズ除去装置を用いる事無く自転車運動中に明瞭な心音測定が可能となった。本研究にて開発したプログラムと手法の一部に関して特許を申請した。
著者
茂木 信宏
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

大気中の黒色炭素(BC)エアロゾル(微粒子)の形状の分析法の開発は、人為起源エアロゾルの気候影響や微粒子計測技術の分野では最先端かつ重要な研究課題である。本研究では微粒子から放出される熱輻射光の方位.偏光依存性を記述する一般理論(Rytov理論)を実験的に検証することにより、BCの形状分析が可能な新しい原理を提唱した。Rytov理論によって推定されるように、光波長よりも小さなサイズの微粒子についても放出される熱輻射光の方位依存性.偏光状態が粒子形状によって決定されることを実証した。
著者
高橋 秀智
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

指先でものをなぞる際の感覚を提示できるデバイスの開発を行った. 本デバイスは, 指先が物体表面をなぞる際の相対運動と, 物体表面の凹凸による刺激を, 各々ホイールの定常速度成分と変調速度成分の合成で提示する. 粗さと硬さの異なるサンプルとデバイスによる提示を複数の人が触り較べる実験を行い, なぞる際の感覚を定量化し, デバイスの制御パラメータを変化させることにより, 提示される感覚を変化させられることを明らかにし, 本デバイスの有効性を示した.
著者
東野 史裕 進藤 正信 戸塚 靖則 北村 哲也 安田 元昭
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、腫瘍細胞で増殖し、正常細胞ではほとんど増殖しない腫瘍溶解アデノウイルスの開発を試みた。我々は、アデノウイルスの特定のタンパクを欠損したアデノウイルス(AdΔ)が、がん細胞では増殖でき、正常細胞では増殖できないことを解明した。さらに、AdΔはがん細胞で強く細胞死を誘導し、ヌードマウスに作成した腫瘍にも効果を持つことがわかった。これらの結果は、AdΔが腫瘍溶解ウイルスとして利用できることを示している。
著者
菅野 博史 ZHANG Wenliang
出版者
創価大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

張は、湛然の著作『金剛〓』、鮮演の『華厳経玄談決択記』、鳳潭の『金剛〓逆流批』などの解読を通じて、中国の天台宗も華厳宗もその根底に心性思想があり、しかもお互いに思想の交渉があることに注目し、主に鮮延と鳳潭の思想を中心として天台宗と華厳宗との交渉を検討した。「鮮延の性具善悪説」の中で、鮮延の心性説を考察し、澄観の華厳思想を継承しながら天台宗の性具善悪説を取り入れ華厳の心性説を改造したことを明らかにした。「鳳潭の中国華厳思想に対する批判と理論的意義」の中で、鳳潭は如何に澄観、宗密の華厳思想を批判し法蔵の華厳思想を堅持したかを考察し、澄観と宗密の「真心縁起」を否定し法蔵の「法性本空」の立場に立ち返ろうとした鳳潭の姿勢を分析した。「鳳潭と中国天台宗」の中で、山外家の華厳思想吸収の立場を批判し、智者大師の天台思想を守り、さらに「華天一致」の新説を打ち出した鳳潭の天台宗に対する認識を分析し、その思想的な価値と問題点を指摘した。以上の論文の中で心性問題をめぐって天台宗と華厳宗の立場の相違と思想の交渉を論じ、法性と仏性が一致するか一致しないかという問題をめぐって両宗が対立しながら、華厳宗が天台宗の思想を吸収し法性仏性一致の立場に変容した、という結論に到達した。さらにまた、華厳宗の心性論の変容を把握するために、中国で最初の『華厳経』注釈書である霊弁の『華厳経論』の「心」思想を考察した。霊弁の心性論の思想は、後の中国華厳思想に大いに影響したことを明らかにした。