著者
脇田 晴子 水野 章二 村井 康彦 西川 幸治 武田 佐知子 京楽 真帆子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究は(1)巨大都市における居住形態・衛生・身体的状況の歴史的研究、(2)都市における信仰・宗教・祭礼・芸能の歴史的研究としているが、平成10年度に(2)を、11年度に(1)を中心として研究交流・共同調査を行った。フランス側からは、クラビッシュ・ズベール、P.スイリ-、M.コラルテル、A.ブッシイの諸氏を招き、国立歴史民族博物館、東京日仏会館、京都大学会館において、研究報告と討論を行い、続いて都市としての東京・鎌倉の考古学発掘と都市研究成果、続いて京都、奈良、今井町、日本のコミューンともいうべき郡中惣の現地である甲賀・伊賀・小倭地方、近江の堅田、安土城、彦根城などの現地調査を共同で行って討論した。パリで行ったシンポジュウムは、10年度は11月に日本文化会館で「都市における表象と社会」をテーマとして、P.ペルトン、鈴木正崇、武田佐知子、松岡心平、脇田晴子、P.スイリーの6人が報告した。11年度は9月に、パリ国立民族博物館において、シンポジュウム「都市における文化的環境の比較史研究」を開いた。考古学・平安京・中近世・近代の巨大都市にわかって討論し、佐原真、田中琢、M.コラルテル、長志珠絵、P.ローゼンタール、西川幸治、水野章二、橋本裕之、が報告した。司会者・ディスカッサントには西洋史・東洋史の専攻のフランス人を主として頼み、日本人のフランス研究者にも協力を仰いだので、広い問題の視野のなかで討論ができ、新たな視角をお互いに開拓し、日本史学の成果を提示できたと思う。コラルデル氏が20余年間発掘されたパラドリュ湖、コルチェル遺跡などの都市的集落・城砦の発掘現場、個人所有の城砦、原子力研究センターで原子力方法による修復研究所を訪問、研究の視角、方法、文化財の保存のあり方等について討論を行う事が出来た。申請したとおりの研究日程をこなし、予期以上の効果を挙げる事ができた。これらは成果報告書として提出するが、出版の予定も立っている。
著者
小塩 トシ子
出版者
フエリス女学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

1)これまで数年にわたって本研究者は、エリザベス朝英国の一般文化に照らして、バラッドとくに"broadside ballad"とシエイクスピア劇の関係をみてきたが、昭和61年度は、"traditional ballad"がシエイクスピアの悲劇、なかでも『リア王』にどのように取り上げられたかを調べ、劇構成の中での位置づけと意味づけを行なった(昨年度末添付の紀要論文参照)。2)昭和61年4月西独ベルリンにおける第三回世界シエイクスピア会議(World Shakespeare Congress)に、発題者として参加、シエイクスピアの日本的受容の現況につき、『リア王』を中心に論文を提出した(昨年度報告書に添付ずみ)。そこでとり上げた黒沢明監督の映画『乱』と『リア王』をめぐって、原作の翻案と解釈の問題が、トロント大学ホーニガー教授、リバプール大アン・トムプソン女史、ケニス・ミユア教授らによって、受けとめられ、討論も実りの多いものであった。3)もうひとつ当初の研究目標であったシエイクスピアの「詩作品」におけるネオプラトニズムの要素と音楽的秩序観については、詩作品「不死鳥と,雉子鳩をとり上げて論じた(フエリス女学院大学紀要22号、添付論文参照)。この作品の音楽的構成と内容に加えて、じっさいに作曲された音楽(1984年発表、ジョン・ジュベール作曲の室内楽)についても言及・紹介した。
著者
丸尾 猛 FERNANDEZ J. L.
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

子宮筋腫や子宮腺筋症に伴う過多月経の長期管理では、LNg-IUDを子宮腔内に装着すると定常的な黄体ホルモン様作用により子宮内膜の分泌腺と間質の増殖能抑制とアポトーシス誘導が惹起され子宮内膜は強く萎縮、菲薄化して月経時出血量の著明な減少をみる。しかし、LNg-IUD装着後3ヶ月間は少量の不規則な出血(spotting)が出現し、同IUD使用時の臨床的問題となっている。そこで本年度の研究では、子宮筋腫や子宮腺筋症に伴う過多月経患者を対象に、LNg-IUD装着前ならびに装着3ヶ月後に採取した子宮内膜における血管新生関連因子(VEGF、アドレノメヂュリン等)発現を免疫組織学的に検討した。VEGFに関しては、LNg-IUD装着前には子宮内膜腺ならびに間質にその強い発現が観察されたが、LNg-IUD装着3ヶ月後にはその発現は大きく減弱した。一方、アドレノメヂュリンはLNg-IUD装着前には子宮内膜にその発現は観察されなかったが、LNg-IUD装着3ヶ月後には、その発現は子宮内膜腺ならびに間質において増強していた。このことから、LNg-IUD装着後3ヶ月間の少量の不規則な出血(spotting)はLNgによるアドレノメヂュリン発現の亢進によると推察された。甲状腺機能低下症ではしばしば流産を伴う。受精卵の着床に際しては絨毛外トロホブラスト(EVT)が重要な役割を果たすことから、甲状腺ホルモンがEVT機能発現に及ぼす影響を検討した。これまでにEVT培養細胞系を確立、EVTに甲状腺ホルモン受容体が存在し、甲状腺ホルモンが培養EVTのFas/FasL、caspase-3、PARP、Bax、Bcl-2蛋白発現調節を介してEVTのアポトーシス発現を抑制することを明らかにした。
著者
大槻 晃 橋本 伸哉 土屋 光太郎 佐藤 博雄 吉田 次郎 和田 俊 石丸 隆 松山 優治 前田 勝 藤田 清 森永 勤 隆島 史夫 春日 功 鎌谷 明善 村野 正昭 多紀 保彦 平野 敏行 白井 隆明 荒川 久幸 兼廣 春之 平山 信夫
出版者
東京水産大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

本研究はROPME-IOCの要請に答えるものとして計画された。本年度の主目的は、調査海域を更に広げて昨年と同様な継続的な観測を行うと共に、ROPME側から要望のあったホルムズ海峡における流向・流速の係留観測を再度試みることであったが、ROPME側で係留流速計の調達が出来なかったこともあり、急きょ底生動物採取等に時間を割り振ることになった。又本年度は、最終年度となるため、ROPME事務局のあるクウェートに入港するこを計画した。本研究グループは、研究練習船「海鷹丸」を利用する海域調査班(研究者7名、研究協力者8名)と車で海岸を調査する陸域調査班(研究者4名)とに分かれて行動した。海域班としては、ROPME事務局が計画した調査航海事前打ち合わせ会(9月26〜27日)に、研究代表者と「海鷹丸」船長2名がクウェートに赴き航海計画、寄港地、ROPME側乗船人数等を伝え、要望事項を聴取した。陸域調査班は、10月28日成田を出発し、バハレーンを経て、クウェートに入り、車を利用して海岸に沿って南東に下り、サウジアラビアのアルジュベールで調査を終了し、11月7日に帰国した。各地点で原油汚染・被害の聞き取り調査、研究試料・魚類試料の収集、水産物の流通・利用の調査を行った。海域調査班は、11月15日に遠洋航海に出発する「海鷹丸」に調査研究器材を積載し、アラブ首長国連邦アブダビ港で乗船すべく12月11日成田を出発した。シンガポールを経て、アブダビに到着、13日には「海鷹丸」に乗船し、器材の配置等研究航海の準備を行った。12月14日ROPME側研究者14名(クウェート4名、サウジアラビア7名、アラブ首長国連邦1名、オマーン1名、ROPME事務局1名。尚、カタールから1名乗船予定であったが出港時間迄に到着しなかった)をアブダビ港で乗船させ、12月15日朝調査を開始するため、出港した。先ず、ホルムズ海峡付近に向かい、1993年に調査した最もホルムズ海峡側の断面から調査を行い、徐々に北上、アラビア湾中部海域に向った。アラブ首長国連邦クワイアン沖からサウジアラビア・アルジュベール沖までの7断面24地点の調査を行い、12月26日予定より1日早くクウェートに入港し、ROPME側研究者及び日本側研究者全員下船した.調査成果の概要は、以下の通りである。1)全ての地点で、湾内水塊移動及び海水鉛直混合調査のためのCTD観測、溶存酸素及び塩検用試料採取と船上分析を行い、観測データを得た。2)全ての地点で、栄養塩測定用試料採取(オルト燐酸イオン、珪酸、アンモニュウムイオン、硝酸塩、亜硝酸塩)を行い、更にそれらの船上分析を行い、観測データを得た。3)海水中の原油由来の溶存微量炭化水素分析用の試料採取、及び船上抽出を行った。4)全ての地点で、底泥の採取に成功した。5)全ての地点で、ボンゴネット及びプランクトンネットによる動・植物プランクトンの採取を行い、幾つかの地点で基礎生産力の測定を行った。6)全ての地点で、海水の光学的特性と懸濁粒子の分布調査を行った。7)全ての停泊地点で、3枚網、籠網、縦縄、釣りによる魚類採取を行う予定であったが、航海後半の悪天候の為、前半に6調査地点に限られた。8)全ての地点で、稚魚ネット引きを行い試料を得た。12月27日には、ROPME事務局関係者2名、日本側研究者7名及び、ROPME研究者7名が参加し、ROPME事務局において、「海鷹丸」による調査結果を主体とした成果発表会をどのように行うか検討会がもたれた。その結果、1995年12月5〜8日まで東京水産大学で行うことが決定した。12月30日クウェート空港を出発し、シンガポール経由で12月31日参者全員帰国した。
著者
片岡 大右
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

19世紀末の象徴主義運動から20世紀初頭の古典主義復興運動を経て1930年代に至るまでの文学状況を、当時の政治状況との絡み合いの中で把握する作業に取り組んだ。文学作品、批評、時事的文章を初めとする多様な文献を渉猟し、基本的な流れを再構成するとともに、注目に値する諸々のテクストの精緻な分析を心掛けながら。また前世紀末のフリードリヒ・ニーチェの仕事がフランスにおいて経験することとなった奇妙な運命にも注目した。公表された業績としては、第一に、日本フランス語フランス文学会秋季大会(於岩手大学)における学会発表「隠遁者、野生人、蛮人--シャトーブリアン『歴史研究』におけるギボンの活用」がある。本研究において重要な位置を占めるこのフランス作家は、19世紀的な文学的感受性の嚆矢とみなしうる。ここではその点が、上記三つの形象が彼の作品において果たす役割に即して論じられた。第二に、『人文学報』第98号に掲載の「「野生」の観念とその両義性--モンテーニュからシャトーブリアンまで」がある。こちらでは、同様の問題関心に立ちつつも、「野生人」あるいはその前提となる「野生的なもの」の観念それ自体に分析対象を絞りつつ、より広い歴史的パースペクティヴを獲得することが目指された。いずれの研究においても基底に横たわるのは、19世紀において勝ち誇ることとなる市民社会=文明に対する異質性の意識が、古典主義とロマン主義をめぐる議論の中でどのように表現されていたか、この点を究明しようとの意図にほかならない。
著者
森 真理
出版者
(財)生産開発科学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

昨年の我々の報告では、感染症等にかかり易い小児、特に重症心身障害者施設入所者ではカスピ海ヨーグルト(クレモリス乳酸球菌<LCFC>)の摂取により、栄養改善効果やインフルエンザワクチンの抗体価並びに免疫賦活効果を確認した。その他、元気に活躍しているお年よりの集団で同検討を行ったところ、免疫能と関係が深い好中球貪食能でカスピ海ヨーグルト群の有意の増加を認めるなど、ヨーグルト摂取と免疫能には関係があると考えられた。そこで食の乱れから慢性的な野菜不足や極端なダイエットなどで便秘気味な女性が増加傾向にあり、腸内環境が良好でないことが推測され、充分な栄養素を体に取り込みにくい状態が考えられる若い世代で検討を行った。充分な説明に対して同意の得られたS大学在学中の学生77名を対象にカスピ海ヨーグルト200gを毎日摂取してもらった。摂取前後には空腹時採血を含む健康診断、摂取中3回の採便回収と毎日、食事日誌と採便記録を付けてもらった。血液データの所見に特に問題はなく、8週間後の健診でも特に変化はなかった。免疫賦活効果に関わる貪食能もプラセボとの差はみられなかった。採便調査や日誌から「記入漏れ」や、「摂取率70%以下」の者を対象外とした30名(試験群15、プラセボ群15)の検討では、排便日数、排便回数では改善傾向がみられ、排便量で摂取前と比較し有意(p<0.01)な改善がみられた。さらに、便秘傾向者18名(試験群8名、プラセボ群10名)では、同じく排便日数、排便回数では改善傾向がみられ、排便量で摂取前と比較し有意な改善、プラセボ群と比較し3-4週目と7-8週目で有意(p<0.05)の群間差を認めた。回収した便の状態を示すPHではプラセボ群で有意(p<0.05)の悪化を確認し、アンモニア量では試験群の状態が良くプラセボ群と比較し有意なの群間差(p<0.05)を認めた。
著者
井伊 あかり
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本年度は研究をまり包括的かつ領域横断的なものとするために、問題意識の重なる他分野(歴史学、社会学、美術史、思想など)の文献を収集し、精読する作業を行った。ニューヨーク出張では、ヴィオネ作品に関しては2番目の規模を誇るコレクションを有すメトロポリタン美術館、および諸資料を所蔵するファッション工科大学(FIT)にて資料調査を行い、アメリカにおけるヴィオネ研究の現状を把握、自身の研究の参考とした。国内では関西に出張し、今春ヴィオネに関する展覧会を開催予定の神戸ファッション美術館、およびヴィオネ作品を数多く所有する京都服飾文化研究財団(KCI)にて調査を実施した。これらの資料調査で得たものを土台に論文執筆に取り組んだ(この作業は現在進行中である)。また執筆の作業と平行して、講演をする機会を複数得た。5月17日、IFI財団法人ファッション人材育成機構にて「マドレーヌ・ヴィオネ-身体とモード」という題目の発表を行った。マドレーヌ・ヴィオネの作品を、時代背景を考慮しつつ、おもに身体論の視点から分析するという内容のものである。これは本研究の主眼となるテーマである。さらにロレアル財団主催ロレアル賞連続ワークショップ2005(第1回「東京を色から読む」、11月24日)にて「東京ファッションの色」を発表、東京のストリート・ファッションを社会現象として読み解き、その特質を検証した。これは昨年刊行の著書『ファッション都市論』で展開した論をふまえたものである。またパネラーの森川嘉一郎氏(建築学者)、永山祐子氏(建築家)とともに東京という都市の独自性を色と言う切り口で分析するという内容のディスカッションを行った。
著者
PEZZOTTI Giuseppe (2009) PEZZOTT G (2008) PORPORATI A.Alan PORPORATI A. Alan
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

半導体材料における応力/歪みに関するサブミクロンスケールの定量的解析を海外の様々な研究グループと協力体制のもと研究を実施した。この研究では、応力/歪み印可に伴い、スペクトルバンドの波数変化が生じる現象に基づく、ピエゾ分光法を利用して応力/歪み解析を高空間分解で行った。異なるドーピングレベルを持つ既知の系列である、一連のIII-V族半導体(GaAs,AlGaAs等)の試料におけるカソードルミネッセンスによるバンドギャップ発光は、厳密に分析される必要に応え、発光バンドの形態論におけるキャリア濃度の寄与を研究した。発光スペクトルの特性(半値幅、ピーク位置、強度等)からキャリア濃度及び歪みのそれぞれの測定を行うことに成功した。AlGaAs及びInGaP結晶における応力とカソードルミネッセンス発光を繋ぐケース(歪みポテンシャル)を正確に測定し、発光における歪みの影響を及ぼす電子ディバイスを分析する道を開いた。一方、GaN物質に同じような測定する目的でまず吸収の影響を解明する必要があり、カソードルミネッセンス分光にGaNの独特な吸収現象を定める式を発表した。
著者
大橋 謙策 山崎 美貴子 上野谷 加代子 福山 和女 対馬 節子 本田 芳香
出版者
日本社会事業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

地域ケアシステムにおけるソーシャル・ケア実践の効果、ケアマネジメント及びコーディネイト機能を評価する枠組みとして、ソーシャル・ケア・スタンダードの構築を試みた。1.ソーシャル・ケア・スタンダードの概念及び分析枠組みの構築のために、モデルとして英国の「ソーシャルケアワーカーのための行動規範(2002)」についてカテゴリー分類を行い、1)実践のプロセス2)実践における責任の所在3)サービスの提供方法4)サービス提供の結果5)実践の根幹にあるものという5項目が明確になった。2.日本、米国、英国の特定地域での保健福祉職対象の聞き取り調査結果について、サービス提供管理者及び従事者の専門的行動の意識化の側面から分析し、その結果をもとに日本版ソーシャル・ケア・スタンダード試案を作成した。[管理者のスタンダードの枠組み]1)組織・事業所の業務を遂行する責務2)ソーシャル・ケア従事者による専門性に基づいた業務遂行の保証3)専門職の業務遂行を評価する責務4)ソーシャル・ケア従事者の技能向上促進の責務5)ソーシャル・ケア従事者間のチームアプローチの促進[従事者のスタンダードの枠組み]1]組織・事業所の一員としての業務責任を遂行する責務2)専門性に基づいた業務遂行の責務3)専門職として業務を評価する責務4)自己の技能向上促進の責務5)チームメンバーとしての業務遂行の責務地域ケアシステムの質を担保するには、サービスが適切に提供されているかという評価と、サポート体制が必要である。サービス評価にあたって実践者それぞれの専門性のもとでの実践行動を明確にする意味においては、この試案の実用性を見出せる。地域ケアシステムのサポート体制としては、社会一般の人々の信頼と信任を促進するために、全国レベルでの第三者評価機構設置の必要性が明確になった。
著者
田村 真広 菅井 直也 関矢 貴秋 保正 友子 山本 美香 平野 優 阪野 貢 保住 芳美 矢幅 清司 池田 幸也 大橋 謙策 北本 佳子 阪野 貢 長谷川 豊 馬場 清 原田 正樹 平野 和弘 平野 優 保住 芳美 宮脇 文恵 矢幅 清司 芦川 裕美 岡 多枝子 田中 泰恵 崔 太子
出版者
日本社会事業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

高等学校の専門教科「福祉」の教育改善と教師教育に関する総合的研究である.(1)理KOMI論を活用して介護福祉の基礎から実習教育を一貫させる教材開発、(2)高等学校福祉科の卒業生の就労状況や福祉教育への意識を調査したライフコース研究、(3)での後期中等教育段階にEUおけるケアワーカー養成・教員養成システムを調査した研究、(4)特色ある高校づくりの要に教科「福祉」を位置づけた教育課程改革の実態調査.これらの研究成果をもとに、教科「福祉」の教員教育のあり方について問題提起した.
著者
マッケナ キースパトリック
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

プロジェクトの提案課題(1-3)に則して、以下に個別の結果をまとめる。1.手法の開発:HfO_2におけるカチオン欠陥と正孔との相互作用をモデル化するために、CONによるアプローチを拡張した。この手法は自由電荷キャリアの生成につながるカチオン欠陥からの正孔の熱的解放を記述することができる。そのような効果をモデル化できることは、光エレクトロニクスや光触媒への応用を伴うp型酸化物の性質を理解する上で重要である。本研究はNature Materialsへの投稿を準備中である。2.酸化物表面における電子-正孔捕獲:MgOの表面らせん転移による電子捕獲を、水素との相互作用を含めてモデル化してきた。これまでにない数の原子をフルに量子力学レベルで取り扱うために、埋め込みクラスタ法によるアプローチを用いた。これにより、転移が強力な表面電子トラップとして働くだけでなく、表面の水素が転移と出会うことによってプロトンと電子に解離することが示された。この予測はFritz-Haber研究所のH-J.Freund教授のグループによって最近行われた実験と一致する。3.酸化物界面における電子-正孔捕獲:正孔ドープされた条件でのHfO_2粒界の非平衡融解を分子動力学法によってシミュレーションした。このアプローチにより電気的なバイアス下でのHfO_2多結晶膜を突きぬける漏れ電流の効果をシミュレートできる。電流は温度上昇を引き起こし、酸素欠陥の拡散や、粒界の電気抵抗のスイッチングを引き起こす。これは不揮発性でエネルギー消費の少ない情報記憶デバイスへの応用に結びつく重要なテクノロジーである、酸化膜における抵抗スイッチングに対する直接的なモデルを与える。このように、本研究プロジェクトでは応用面と手法面の両方において多くの重要な結果を生み出すことに成功した。WPI-AIMRの職を辞するためプロジェクトを早期に終了することになったが、むこう数ヶ月のうちに本課題を謝辞に引いたインパクトの高い論文を多く出せると期待される。
著者
鈴木 宏正
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究ではX線CT装置による実体計測技術をベースとした新しいエンジニアリングを実現するためのモデリング技術について研究している。特に、CTデータから物体の表面を表す3次元のポリゴンデータ(メッシュデータ)を生成する。このような処理を等値面抽出というが、平成15年度は、特に多媒質境界抽出手法を開発し、アルミ、鉄、空気の3媒質などの場合の多数の媒質が出会うところの非多様体を生成する手法を開発した。これは、CTデータから面貼りに必要な情報と領域を抽出する3次元の画像処理アルゴリズムと、それに対して面を生成するMarching-Cubeabilityという概念を創案し、新しいアルゴリズムを作った。16年度は薄板のCTデータから、その中立面ポリゴン生成機能を重点的に研究した。この中立面生成機能では、従来の等値面抽出法を適用することができないプレス部品のような板構造を扱う。そのために板の中立面に相当するボクセルからポリゴンを生成する方法を開発した。また、精度評価のための試験用サンプル部品を作成し、実際にCTデータを計測によって求めて、その評価を行った。その結果、我々の手法で作成された中立面は、マーチングキューブによって作成した表面メッシュとほぼ同等の精度を持つことが確認された。一方、薄板部品ではその強度が問題になる。そこで中立面に対して板厚も計算し、薄板の板厚分布を求める手法を提案した。また、より複雑な薄板構造物では、溶接によって複数の板が組み合わされる場合が多い。そのため、溶接部分を認識して、複数の部品に分解する方法を考案した。これによって溶接されている場合でも、それを複数の部材に分解して中立面を求めることができるようになった。
著者
持田 灯 富永 禎秀 佐藤 洋 吉野 博 高橋 正男 青木 泰伸 清水 敬二
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、産業廃棄物(酸性白土から石鹸等の化学製品を製造する過程で生成される土塊(粒径5〜30mm)。無害)を散布することにより、地表面の粗度長を大きくして地表面付近の風速を減じ、飛砂発生を制御するという新しいタイプの飛砂防止対策の実用化を図った。(1)沿岸部の飛砂の実態調査・沿岸部の砂地における飛砂の現状を、風速・風向・飛砂量等の長期測定等により調べた。(2)飛砂に関する風洞実験・風洞内に砂を敷き詰め、風速を段階的に増加させることにより、限界風速・限界摩擦速度等に関するデータを採取した。・次に、風洞床面上に砂を敷き詰め、産業廃棄物の土塊を散布し、その飛砂防止効果を確認した。(3)CFDによる飛砂メカニズムの解明・CFDにより、上部風速と地表面の粗度及び砂面限界摩擦速度等の関係、周辺の地形や建物の影響等について系統的に検討した。(4)飛砂防止工法の最適化・上記(2)、(3)の結果をもとに、本飛砂防止工法で散布する土塊の粒径、散布密度、散布位置の最適化を行った。(5)現場測定による本工法の有効性の検証・実際の砂地造成地に、産業廃棄物である土塊を散布し、風速・飛砂量の測定結果により、本工法の飛砂防止効果を確認。また砂地緑化の効果を確認するために、砂地や砂浜に種子を植え、生育状況を観察した。(7)効率的な施工方法の検討・今回の飛砂防止方法では、土塊をいかに均一に安価に散布するかも重要な問題となる。ここでは建設工事用のクローラダンプを応用した施工方法を開発し、試験施工によりその有効性を確認した。
著者
竹林 英樹
出版者
神戸大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

神戸市灘区の六甲山南麓市街地において実施した観測結果を基に,広域海陸風と冷気流の出現頻度の関係,及び,市街地における冷気流の影響距離に関する検討を行った.広域海陸風が弱い条件に限り,山際から1km程度までの市街地において冷気流による気温低下効果が期待できる.しかし,山から離れるとその可能性は低くなり,広域の風が強くなると冷気流は吹き消され,市街地での気温低下効果は期待できなくなる.谷の中での測定とモデル計算により,冷気の集積,流出の過程について検討を行った.谷の中の気温を比較すると,広域海陸風の弱い場合には,堰堤で最も低く,中間,上流の順になっており,冷気集積効果を反映していた.浅水方程式モデルにより,広域海陸風が弱い条件での冷気の集積,流出過程について検討を行った結果,地形により冷気が谷筋に集積され,重力に従って標高の低い方へ流出する様子が再現された.浅水方程式モデルを用いて,広域海陸風が弱い場合の神戸市全域における六甲山の谷等から流出してくる冷気流の分布(谷による集積)が求められた.樹林内における冷気生成メカニズムを知るため,実測調査と数値計算により気温鉛直分布の形成機構について検討を行った.晴天夜間は気温低下が大きく,上下気温差の変動も大きい.曇天夜間は日没後の冷気の集積と思われる一時的な気温低下が見られるが,その後の気温低下は小さい.数値計算でも実測結果と同様の現象を再現することができた.観測結果を基に,冷気流の市街地冷却効果としての活用可能性について考察を行った.斜面地に位置する市街地における熱環境の特性に基づいて議論されたワークショップの結果を基に,冷気流を積極的に活用する方法が提案された.今後の課題としては,計画指針図において緑化推奨ゾーンとして指定された場所で,屋上緑化などにより確保された緑被がどの程度の冷気源となり得るか,その下流域で立替協調によるスリット構造化ゾーンに指定された場所でどの程度効率よく冷気流を活用することが可能かという点について研究を進め,積極的な冷気流の活用に向けた検討を行っていく必要があると考えている.
著者
安田 延壽 余 偉明 山崎 剛 岩崎 俊樹 北條 祥子 松島 大
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

仙台市内の代表的幹線道路である国道48号線(北四番町通り、幅員27m)において、都市キャニオン(道路)内の窒素酸化物濃度(NOとN02のモル和)の高度分布を測定し、その特徴を明らかにしていたが、さらに乱流輸送理論に基づいて、その法則を明らかにした。高度約1.5m以下では、濃度は高さに依らず、等濃度層を成している。それより上空では、窒素酸化物濃度は、高度zの対数1nzの一次関数で表される。即ち接地気層と同様の対数則が成立する。等濃度層は、発生源が地表面より数十cm高いところにあることと、走行する車両によって強制混合されることにより形成されるものである。対数則層の濃度の高度分布より、摩擦濃度が決定される。この摩擦濃度は、等濃度層上端の濃度の関数であることが、大気境界層理論および観測により明らかになり、定式化された。さらに、一般には大気の温度成層は中立ではなく不安定あるいは安定成層をなす。この効果を、接地気層の理論に基づいて取り入れ、窒素酸化物の鉛直輸送量の日変化および地域分布を計算することが可能になった。広域に渡って窒素酸化物の鉛直輸送量を計算するためには、地上付近での窒素酸化物濃度のデータの他に、大気安定度に関する情報が必要である。この問題に対して、従来から東北大学気象学研究室で開発されてきた熱収支モデルをさらに改良して用いた。特に、東北地方では冬季には積雪があるので、そのような場合に対する熱収支モデルも開発し、窒素酸化物の鉛直輸送モデルに組み込んだ。これらの理論体系から、窒素酸化物の鉛直輸送量が評価された。1991年〜1998年の8年間の平均では、発生源である道路の場合、幅27m・長さ100mの道路より、N02換算で、年間625kgの窒素酸化物が上空に輸送されている。道路から離れた地域では、ほぼその1/3であった。
著者
川村 恒夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

平成10年度は,3条刈り自脱コンバインを供試し,選別部の籾,チャフ,及びそれらの混合物の流れを解析するために,超小型CCD-TVカメラと光源を選別部に組み込み,実作業中に画像を収録して流れの状態を解析した。その結果,エンジンが定格回転数(2750r.p.m.)では選別部に籾や藁の滞留は認められなかったが,10%程低下すると選別能力が低下し,2000r.p.m.程度まで低下した場合は,2番還元に籾と藁屑,及びささり粒が滞留するのが認められた。次に唐箕ファンや扱胴の回転による風速と風圧を熱線風速計で測定した。エンジン回転数の範囲が,約1800r.p.m.〜2750r.p.m.の時に,グレインシーブ上の風速は0.8m/s〜3.3m/s,静圧は0.1mmAq〜0.4mmAqであった。平成11年度は,籾やチャフ等の空気選別が行われる1番オーガからチャフシーブにかけての範囲と2番スローワで風速と風向を,熱線部分がセラミックで封止された西独ウェーバ社製のベントキャプターで測定した。その結果,水稲を流さずに測定した選別部の風速分布は,コンバインの胴体の端の方ほど風が強いこと,水平面からの角度が60°〜90°の時に風が強いことが明らかになった。また,選別部の溝体外側に近い場所の風速が中央部よりも1.5m/s程度大きいことも明らかになった。次に,水平面からの角度にして45°〜60°以上になると風速がほぼ一定値になることから,この方向が唐箕ファンから送られる風の流れる方向を示している。2番スローワ内の風速分布は均一ではなく,スローワの方向からすると下向きの-30°〜-15°付近や,スローワの上端を目指す方向の45°〜60°の風速が大きく,中心部付近で低下することが分かった。最後に,実際の刈取りを行いながら選別部内の風速を測定したところ,選別部内を流れる籾の流量による風速の変化は見られなかった。また,2番スローワの上ではエンジン負荷による影響を受けたが,1番オーガとグレインシーブの間の空間での風速はエンジン負荷の影響を殆ど受けていなかった。
著者
君塚 信夫 黒岩 敬太 松浦 和則
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

本研究では、分子組織性ハイドロゲルの分子設計の確立および、分子組織性ハイドロゲル中における蛋白質の機能制御を目的とした。その結果、短いアルキル鎖を含む疎水部構造および、複数のアミド結合を含むグルタミン酸骨格を有するアンモニウム脂質が芳香族スルホン酸イオンや、過塩素酸イオンなどの疎水性アニオンと疎水性イオン対を形成することで、分子組織性ハイドロゲルを形成することを明らかとした。例えば、カウンターアニオンとして2-ナフタレンスルホン酸イオンを用いたハイドロゲルにおいては、光捕集機能を有するハイドロゲルとなる。このハイドロゲルにおいては、ナフタレンが二分子膜ゲルファイバー中に高密度に集積化されており、光励起エネルギーはこのファイバー上を効率的に移動する。アクセプターとして1mol%の9,10-ジメトキシ-2-アントラセンスルホン酸イオンの添加により、ナフタレン由来の蛍光は大きく消光し、かわりにアントラセン由来の増感蛍光が大きく現れた。エネルギー移動効率は低濃度の水溶液状態よりも、ハイドロゲル状態において著しかった。これは、2-ナフタレンスルホン酸の二分子膜ファイバーへの結合率と相関しており、ハイドロゲル状態においての高い結合率が、高効率のエネルギー移動をもたらした。また、光捕集性のハイドロゲルのみならず、フェロセンカルボン酸などをカウンターアニオンに用いると、レドックス応答を有するゲルが得られる。このレドックス応答性ゲルはアクチュエーターやバイオセンサーなどの応用が期待される。このように、我々は、共有結合を使うことなく、機能性のアニオンと、自己集合性の短鎖アルキル脂質を用いることで、効率的に機能性アニオンを集積化させ、それに伴い機能性のハイドロゲルを作製することに成功した。
著者
室田 昌子
出版者
武蔵工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ドイツの社会都市に関する運用として、「地区マネージメント」に着目し、各州のモデル地域、先進州(ノルトライン・ベストファーレン州)、意欲的な取り組みを行っているベルリン市などの各地区の取り組みについて、実地調査、インタビュー調査、報告書などの資料調査を実施した。市担当者、地区マネージャー、関係者(地区団体、学校、住宅企業など)などの役割と活動を把握し、日本における地区マネージメントの可能性を考察した。
著者
橋本 勇人 藤澤 智子 井頭 昭子 土田 耕司 渡邉 賢二
出版者
鈴鹿医療科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は2つある.1つは,ソーシャルワーク(以下SW)教育の構造を,(1)体験の部分,(2)SWとケアワーク(以下CW)の共通部分,(3)SWの入門の部分,(4)専門のSWの部分からなるという仮説を基に,(2)と(3)で学んだことを明らかにすることである。この場合,CWには介護福祉士だけではなく,保育士も含む。2つは,満足できたSWの実習に影響を与えたものを明らかにすることである.そのため,524名を対象とした質問紙調査と13名を対象としたインタビュー調査を実施した.質問紙調査では,a.社会福祉士養成課程のみの修了者,b.介護福祉士養成課程のみの修了者,c.保育士養成課程のみの修了者,d.介護福祉士養成課程と社会福祉士養成課程の修了者,e.保育士養成課程と社会福祉士養成課程の修了者の5群に分けて分析した.第1研究についての結果は,次の通りである.(2)に関しては,「コミュニケーションの取り方」など10項目はa,b,c間で平均得点の差がなかった.(3)に関しては,「社会資源の活用」など9項目はaの方がb,cより平均得点が高かった.CWの中でも,「専門職としての倫理」など3項目では,cよりbの平均得点の方が高かった.aとbにSW養成を付加したd,cにSW養成を付加したeの3群間を比較したところ,cのいくつかの短所は,克服されないことが分かった.インタビュー調査では,cのいくつかの短所は,幾分か克服される傾向があることが分かった.第2研究についての結果は,次の通りである.満足できるSW実習に影響を与えているのは,いくつかの実習内容とスーパービジョンである.スーパービジョンのうち,直接影響を与えているのは,実習指導者のスーパービジョンである.大学の担当教員のスーパービジョンは,実習指導者のスーパービジョンに影響を与えることによって,間接的に影響を与えている可能性があった.