著者
岡尾 恵市
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

3年間を通じての研究成果は、別紙『報告書』に掲載した論文および諸資(史)料・翻訳を通じて示したが、以下の様に要約される。(1) 近年の女性の陸上競技選手たちの樹立する記録の水準の高さには驚かされる.1998年段階での女性選手の成就している世界記録は、一部の例外を除けば、1936年の「オリンピック・ベルリン大会」当時から戦後の1950年代に出された男性の世界記録に匹敵するとともに、日本記録と比較すれば、1964年の「オリンピック・東京大会」当時の男性の出した記録をも凌駕しているものさえある。(2) こうした世界レベルの女性競技者による記録の飛躍的進展は、女性の身体的特性の研究に立脚した科学的トレーニング方法の急速な進歩とともに、今日世界に普及・発展した「陸上競技」を実践する数千万人という女性競技人口があるからに他ならない。(3) しかし、世界の陸上競技界にとって「女性の陸上競技」が組織として公然と活動を開始するのには幾多の「茨の道」を歩んできた.男性の近代陸上競技は、1850年代の英国に萌芽が見られ、1860年代の後半に「規則」が整備され、組織が確立して、今日の基礎になる姿を示すが、女性の競技は、米国の女性プロ選手による「賭け」競技として一部行なわれていた形跡が見られるものの、19世紀末までその出発を待たねばならなかった。(4) しかも、当初は「女性が競技をする」事に対し、男性の側からの蔑視や非難・妨害が多々あり、第一次大戦以降、当時の先駆的な女性たちが「女権獲得・選挙権獲得」等の運動と連動させながら、組織を創って立ち向かう中から今日の活動の基礎を築いてきたを忘れてはならない。(5) しかしその競技内容は1920年代以降、今日に至るまで約80年間にわたって、男性に「追いつけ追い越せ!」の思想の下で、用器具の軽量化・短小化・距離の短縮化等を行なうことによって男性種目の女性種目への転用をはかった、いわば「男性種目のミニコピー化」であったことが明かとなった。(6) 今後、「女性陸上競技」が、21世紀に入ってもその路線を継承・発展させていくべきか、それとも「女性独自」の種目や内容の陸上競技を創出していくべきかについては、競技スポーツの本質を決定づける問題であろうが、筆者はこの研究を通じて、女性の身体特性に合致した「女性独自の競技種目」をこそ新たに創出・誕生させなければならないとの確信を持つに至った。
著者
伊藤 孝 鈴川 一宏 木村 直人 熊江 隆
出版者
日本体育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

競技能力の向上を図る目的として、運動選手は一週間から一ヶ月にわたる強化合宿を実施している。本研究では、選手の健康管理および傷害発症の予防から、強化合宿時およびその後の回復時における生体の免疫機能の変化、特に好中球の活性酸素種産生能(ROM産生能)について、調査(1);男子長距離選手(n=11)を対象とし、夏季における4回の強化合宿期間中(約40日間)の変化、調査(2);女子長距離選手(n=7)を用い夏季強化合宿中および合宿後の回復時における変化について、それぞれ調査・検討を行った。採血は、早朝空腹時、安静状態にて正中皮静脈より11ml採取した。好中球のROM産生能は、ルシゲニンおよびルミノール依存性化学発光法におけるpeak height(PT;photon/sec)を用いて評価した。調査期間中における血清CPKはいずれも経日的に増加を示し、合宿後には両調査において有意な上昇が見られた。一方、調査(1)における好中球のROM産生能は、経日的に僅かに減少を示したものの、合宿後には逆にルミノール依存性化学発光によるPHは約2.3倍の上昇を示していた。したがって、調査(1)では、合宿中の運動ストレスに対して生体は適応を示していたと考えられる。それに対して調査(2)における好中球のROM産生能は合宿直後においていずれも有意に低下した。この結果から、調査(2)では、運動ストレスによる生体負担が高まり、免疫機能を抑制したと思われる。しかしながら、終了3日後には反対に著しく上昇し、さらに終了20日目においてもこれらの上昇は継続していた。この原因の一つとして生体内における恒常性の保持に、その後の代償的反応が相加的に加わったことがよりいっそう免疫機能を亢進させたものと推察した。
著者
長尾 誠也 山本 正伸 藤嶽 暢英 入野 智久 児玉 宏樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は。重要ではあるがデータの蓄積に乏しく、季節や地域によりその変動幅が大きく、沿岸域での炭素の吸収と放出量の見積もりを行う上で不確定要素の1つと考えられている河川から海洋への有機体炭素の移行量と移行動態を検討するものである。そのために、寒冷、温帯、および熱帯域の河川を対象に、河川流域の特性、植生、気候による土壌での有機物の分解と生成機構・時間スケールと河川により供給される有機物の特性、移行量との関係を難分解性有機物である腐植物質に着目して調べた。泥炭地を有する十勝川、湿原を流れる別寒辺牛川、褐色森林土の久慈川、スコットランド、ウクライナ、インドネシアの河川水中の溶存腐植物質を非イオン性の多孔質樹脂XAD-8を用いた分離法により分離生成し、いくつかの特性について分析を行った。また、河川水中の有機物の起源と移行動態推定のために、放射性炭素(Δ^<14>C)および炭素安定同位体比(δ^<13>C)を測定し、両者を組み合わせた新しいトレーサー手法を検討した。その結果、放射性炭素(Δ^<14>C)は-214〜+180‰の範囲で変動し、土壌での溶存腐植物質の滞留時間が流域環境により大きく異なることが考えられる。上記の検討と平行して、連続高速遠心機により河川水20〜100Lから懸濁粒子を分離し、放射性炭素および炭素安定同位体比を測定した。その結果、久慈川では年間を通してΔ^<14>Cは-19〜-94‰、炭素同位体比(δ^<13>C)は-24.0〜-31.1‰の範囲で変動し、石狩川ではΔ^<14>Cは-103〜-364‰、δ^<13>Cは-25.9〜-34.2‰、十勝川ではΔ^<14>Cは-111〜-286‰、δ^<13>Cは-25.0〜-31.6‰であった。これらの結果は、流域の環境条件および雪解けや降雨による河川流量の変動等がこれら炭素同位体比の変動を支配している可能性が考えられる。以上の結果から、放射性炭素および炭素安定同位対比を組み合わせる新しいトレーサー手法は、河川の流域環境の違いを反映し、移行動態および起源推定のために活用できることが示唆された。また、現時点では、大部分の地域では核実験以前に陸域に蓄積された有機物が河川を通じて移行していることが明らかとなった。
著者
國崎 彩
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

「大正期の寶塚少女歌劇團の舞踊活動の考察」(研究ノート);秦豊吉とも関連が深い、昭和期のレヴュー・ブームに先鞭をつけた寶塚少女歌劇團(以下「宝塚」と略称)の大正期に焦点を当て、当時展開していた舞踊思潮を、機関誌『歌劇』の舞踊記事調査・分析をおこなうことにより検証した。結果、宝塚では、独自の形式「歌劇」を模索する中で、小林一三、久松一聲、楳茂都陸平、坪内士行、岸田辰彌、ルイジンスキー等の舞踊作家達が、それぞれ、実際の上演/『歌劇』誌の両面において舞踊について模索していた。宝塚を現在から振り返って捉えなおしてみると、新舞踊、バレエ、モダン・ダンス、同時代の浅草オペラで上演されていたような舞踊など、あらゆる新しい舞踊の流れを柔軟に受容していた、一つの舞踊の拠点であったと再評価できた。また、こうした大正期の宝塚における充実した舞踊の展開は、宝塚において、昭和期以降のレヴュー・ブームを可能にした要因の一つとなったのではないかと推測できる。「秦豊吉の近代化意識と舞踊観について」(第58回舞踊学会大会発表);秦豊吉が企画した日劇ダンシング・チーム(以下、NDTと略称)の戦前・戦中期についての考察をさらに進める目的において、まず、一次資料であるプログラム、チラシの調査・収集、当時の出演者への聴き取り調査を積極的におこない、舞踊上演の実際を検証した。そして、秦豊吉がMITに結実させた「近代化」とはどのようなものだったのか、そこに「舞踊」はどのように関わり、どのように表象されていたのかということを論考した。NDTでは、「近代的」な「大衆娯楽」としての「ショウ」形式のなかで、国内外のあらゆる舞踊が受容され、戦中期には「日本民族舞踊」として、秦の「近代化」が複雑な形で表象されることとなっており、興味深い。今後、楽譜、音源、台本などの一次資料のさらなる調査を経て、さらに深化させた論考を改めておこないたい。
著者
波多野 純 野口 憲治
出版者
日本工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

町家形式は、気候風土のみによって決定されるのではなく、より広い視点から、総合的に検討する必要がある。本研究は、いずれも雪国でありながら、町家の形式が大きく異なる金沢と仙台をとりあげ、町家形式の形成要因を明らかにすることを目的とする。まず、統一したルールで全国の宿場が描かれている『五街道分間延絵図』について、建築上の描写精度を検討し、その信頼性を明らかにした。その上で、「東海道分間延絵図」に描かれた各宿の屋根葺材に注目し、瓦葺の普及と人口の関連などを明らかにした。つぎに、金沢の町家について、元禄期には板葺と石置板葺屋根が混在し、卯建も一部に存在したことを示した。その様相は『洛中洛外図』に描かれた京町家に近い形式であり、他に農家風の建築があったことを示した。その後、天保期になると大半の町家が石置板葺屋根となった。仙台の町家については、芭蕉の辻に面して建つ城郭風町家およびその他の土蔵造町家について、検討した。城郭風町家の外観意匠は城郭建築の意匠を受け継ぎ、塗籠真壁風である。いっぽう、周辺の土蔵造町家は大壁である。初期江戸における城郭風町家には、三階建と二階建があり、当初は真壁風の外観意匠であったが、やがて大壁がふえる。仙台では、江戸中期まで、板葺、茅葺の町家が建ち並んでいたが、享保の大火後、芭蕉の辻付近には土蔵造町家が建ち並んだ。その意匠は土蔵からの大壁の系譜であった。その後、芭蕉の辻には城郭風(真壁風)町家が建てられた。つまり、仙台では江戸とは逆の系譜をたどり、城郭風真壁が遅れて登場した。以上の結果、金沢と仙台の町家は、屋根葺材や土蔵造町家などさまざまな点で形式が異なることを示した。つまり、同じ雪国でありながら町家の形式が大きく異なることから、気候風土は、町家形式を決定する要因でないことは明らかである。むしろ、藩の都市政策や文化的伝搬経路が重要な要因であると考えられる。
著者
和泉 薫 小林 俊一
出版者
新潟大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

本年度はブロック雪崩の力学的特性に関する研究として、平成13年度に設置した実験用シュート(高さ9.4m、幅0.9m、勾配32.6°)を使った雪塊の衝撃力測定実験と、雪渓上での雪塊の落下実験を行った。それぞれの実験から得られた結果は以下の通りである。1.雪塊の衝撃力測定実験・人工雪塊を用いた実験では、密度250kg/m^3では最大衝撃力値に衝突速度がほとんど反映されないが、密度450kg/m^3では最大衝撃力値が衝突速度によって変化することがわかった。・天然雪塊を用いた実験では、密度560kg/m^3の雪塊では最大衝撃力値が速度と質量に比例することがわかった。2.雪渓上における雪塊の落下実験・雪塊はある程度の落下速度となるまでは転がり運動によって落下すること、その後、落下速度の増加や、表面の起伏が大きい場所や傾斜が急激に変化する場所を通過するために回転を伴った跳躍運動に遷移することがわかった。・転がり運動による落下では斜面方向の線速度エネルギーに対する回転エネルギーの割合はおよそ20%程度か、それ以下であったのに対し、運動形態が跳躍運動に遷移することで、回転エネルギーの割合が約40%まで増加することが明らかになった。・雪塊の大きさが大きくなるにつれて、より短い落下距離で最大速度に達するという傾向や、雪塊が大きくなるほど回転エネルギーの最大値が出現するまでの時間が短くなる傾向が観測から得られた。
著者
相澤 一美 山崎 朝子 野呂 忠司 望月 正道 細川 博文 河内山 晶子 杉森 直樹 飯野 厚 清水 真紀 藤井 哲郎 磯 達夫
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

テキストのカバー率を95%にするための語彙レベルと,読解テストで十分な得点を取るための語彙サイズの間にはギャップがあることが明らかになった。例えば,大学入試センター試験の読解問題で,約3000語を学習することになっており,テキストも3000語の語彙知識があれば,95%をほぼカバーできるが,実際に理解度を試す問題に正答するには,5000語の語彙知識が必要であった。同様に,アカデミックテキストは,約5000語でほぼ95%をカバーできるが,十分な得点を取るためには,6500語が必要なことがわかった。
著者
黒川 顕
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

代表者は前年度に特徴的な病原性に関するデータベースは作成完了したが,今年度は病原性という曖昧な表現型にこだわるのではなく,病原遺伝子に着目し,その遺伝子群をターゲットとして比較ゲノム解析をすることで,病原遺伝子の分布や構造を明らかにしようとした.初めとして,病原性大腸菌や腸炎ビブリオ,さらには植物病原菌において代表的な病原因子として注目されている3型分泌装置(TTSS)に着目した.TTSSでは装置を構成する遺伝子群のみならず,宿主細胞に送り込まれる分泌蛋白(エフェクター)こそが病原性として重要であるが,これら分泌蛋白は遺伝子配列レベルでの相同性がほとんどなく,それら遺伝子を予測することは非常に困難であり,世界中で精力的に予測が試みられている.代表者は既知の分泌蛋白遺伝子のN末端50残基のアミノ酸頻度パターンに着目し,ゲノム全遺伝子から多次元尺度構成法(MDS)および自己組織化地図法(SOM)によりクラスタリングすることで,分泌蛋白遺伝子の予測をおこなった.病原性大腸菌O157に本方法を適用し,60個の遺伝子を分泌蛋白遺伝子候補として予測した.これら予測した遺伝子には,既知の分泌蛋白遺伝子だけでなく,共同研究者により実験的に明らかとなった分泌蛋白遺伝子がすべて含まれていることから,本予測法が極めて高いレベルにあることを示唆しており,それら以外の候補も分泌蛋白遺伝子としての可能性が高いと考えられる.このような高い精度をもった予測法は世界的にも例がない.今後は,本方法で予測した遺伝子の抗体を作成し,共同研究者により実際に分泌されているか否かの検証をすると同時に,実験で確認された分泌蛋白遺伝子情報を本方法に取り入れることにより予測精度を向上させ,他の菌種にも応用していく予定である.
著者
城 仁士 二宮 厚美 青木 務 白杉 直子 井上 真理 近藤 徳彦
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

3年間を通じて、以下の4つのアプローチを行った。1.生活環境心理学的アプローチ:集団ケアからユニットケアへの転換を試みた施設での移行研修プログラムの具体的な展開例を検討し、ケアスタッフの意識の転換を図るプログラムの検証を行った。2.社会システム論的アプローチ:「改正介護保険下の介護問題とユニットケア」をテーマに、2005年改正された介護保険のもとで、在宅ケアだけではなく、施設介護でもさまざまな問題が起こっている。それらを現段階で整理しつつ、ユニットケアに提起されている課題をコミュニケーション論から理論的に考察した。3.生活環境論的アプローチ:以下の3つの分野において実施した。衣環境:ケアを必要とする高齢者の日常生活に浸透しつつある様々なスマートテキスタイルの機能を紹介するとともに、開発現状の問題点を踏まえながらも、より豊かな生活のための利用方法についてまとめた。食環境:食の情報が氾濫する中で、健康や食の安全をどのように考え。食生活を楽しめば良いのかという観点から、緑茶、おやつの楽しみ、お漬け物、お味噌汁などを題材にして、高齢期の食生活の楽しみ方をまとめた。住環境:高齢者にとって住宅内がバリアフリーであればそれだけでいいのかという問題意識により、デンマークやスウェーデンで視察した住環境の資料を参考にしながら生活意欲を高める住まいの工夫を整理した。4.環境生理学的アプローチ:高齢期の温度環境への適応問題を取り上げ、寒さ・暑さへの備えと心がまえについての提言をまとめた。また高齢者の転倒について運動生理学的に検討し、転倒予防について具体的に提言した。
著者
田中 博 山崎 孝治 伊藤 久徳 森 厚 向川 均 山根 省三
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

近年の異常気象や地球温暖化の研究において、北極振動が特に注目されている。初年度の平成18年度には、2006年7月8-9日に第1回北極振動研究集会を筑波大学で開催し、約30名の参加を集めて最新の情報提供や活発な議論が行われた。研究代表者は2007年2月19-20日にアラスカ大学で開催された第7回極域気候変動に関する国際会議(GCCA-7)に主催者のひとりとして参加し、北極振動研究に関するレビュー講演を行った。2007年3月2-3日には筑波大学で第2回北極振動研究会を開催し、約40名の参加者を集めて、研究成果報告と今後の研究計画について議論した。2年目の平成19年度には、5月に開始された地球惑星科学連合大会で「北極域の科学」ユニオンセッションを企画して、研究成果報告を行った。そして日本気象学会の査読付き国際学術誌である気象集誌の12月号に、北極振動研究の成果を集めた「北極振動特集号」を企画し、本研究実績のまとめとして12編の論文およびノートが発刊された。北極振動は、任意の定常外力に共鳴して起こる大気大循環の力学的な特異固有モードとして理解される一方で、それを励起する太平洋と大西洋のストームトラックの活動が互いに独立に大振幅でNAOとNPOのテレコネクションを励起するため、統計的な見かけのモードに見えるという理解に至った。
著者
松浦 敏雄 西田 知博 石橋 勇人 安倍 広多 吉田 智子 西田 知博 石橋 勇人 安倍 広多 吉田 智子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

プログラミングを容易にかつ短時間に体験的に習得できるプログラミング環境PENの機能拡張として, 図形描画機能, ファイルI/O機能, 関数呼出機能を設計・実装し, PENを用いた実験授業を繰り返し実施し, その有効性を明らかにした. また, PENの中国語版, 台湾語版, 韓国語版, 英語版を実装した. さらに, 授業中の個々の学生の課題進捗状況を教員が概観するためのモニタ機能を実装した
著者
永岡 慶三 竹谷 誠 北垣 郁雄 米澤 宣義 赤倉 貴子 植野 真臣
出版者
早稲田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は,複数の人間により形成されるグループに対して「グループの学力」を定義し,その評価法を開発することにある.今後のネットワーク社会のさらなる進展を考えれば,社会の各分野においては個人的活動は限られ束面となり,ほとんどがプロジェクトなど複数の人間の協力する活動が多くを占めることになると思われる.そこでは,個人個人の能力の高さだけでなく,いかに複数のメンバーの協同によるグループとしての能力の高さが要求されるものと考えられる.その評価法の開発・実用は,特定の人材の集合からどのように効率的なプロジェクトメンバー構成をすればよいかという人材活用の方法論としての価値を持つものと考える.さてテストを科学的に、計量的に扱うもっとも根本的な主要概念は信頼性である.信頼性(の推定方法)は考え方により多くの定義があるが,理論的明快さや実用性など種々の利点から最も多く用いられるのはCronbachのα係数である.本研究においても信頼性といった場合,Cronbachのα係数をさすものとする.研究実績の成果は,これまでのテスト理論では扱われていなかった受検者側の内部一貫性の特性・概念を導入したことといえる.さて有力な応用目的として,たとえば,N人の受検者集団から構成員数2のグループを構成するとする.すなわち二人ずつのペアを組むとする.Guttmannスケールの項目群を仮定すれば,個別学力の大きい順に第1位から第N/2位までのN/2人を異なるグループに配すればよく,いささか自明解である.ここに受検者側に内部一貫性の特性を導入すれば,話は別で,グループ(ペア)内のθ値の大小だけでは決まらないのである.すなわちペアで考えれば,お互いがお互いの弱点を補い合うような組合せ,すなわちその2名の1,0得点パターンの排他的論理和が全体で最大化するような組合せを行うことで最大化が見込まれる.
著者
山口 和孝
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

現行の大学入試制度は、「大学全入時代の到来」といわれているが、実態としては、次のことが明瞭となった。厳しい試験を課す上位層大学における激しい競争と、試験を課さずに定員充足を至上命題とする下位層大学の二極化現象を示しており、センター試験のための受験準備にシフトする大半の高校は、(1)センター試験得点確保のために、体育・音楽・家庭・芸術等の教養的科目を大幅に削減させ、(2)3年生の教育課程は半分しか終了できず、(3)大学入学後にすぐ剥離してしまうような「学力」しか形成されず、また学習意欲を促進するものとなっていない。他方、試験を課すことができず、定員充足を優先課題とする下位層大学への進学は、(4)AO・推薦が、学力のない生徒を大学に進学させるための回路として活用されており、結果として、(5)AO・推薦入試合格者は、早期に学習意欲を喪失するという大きな影響を高校生の学力形成に及ぼしていることが明らかとなった。
著者
北村 成寿
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

極域電離圏は、そこから伸びる磁力線が地球磁気圏の外側や惑星間空間に接続しており、磁力線に沿ってプラズマが流出していく。磁気圏の尾部に輸送されたプラズマは内部磁気圏のエネルギーの高いプラズマの源となるため、極域電離圏は磁気圏全体のプラズマの源として重要な領域である。あけぼの衛星、Intercosmos衛星、EISCATスバールバルレーダーのデータを用いて、地磁気静穏時の極冠域電離圏-磁気圏での電子密度分布、電子温度、イオン温度の太陽天頂角依存性を明らかにし、電離圏への日照の有無がこれらのパラメータに極めて強い影響を与えていることを明らかにした。さらに、電離圏が日照状態の場合について、過去のモデル計算でイオン流出への重要性が指摘されている光電子に着目し、FAST衛星の観測データを解析した。その結果、地磁気静穏時には磁力線に沿って電位差が存在し、電離圏から流出する光電子を減速、反射していることを観測的に示した。高高度で反射されてくる光電子のエネルギーの解析から、典型的な電位差は20V程度であり、過去のモデルによる予測よりは小さいものの、高高度に大きな電位差の存在を予測したタイプのモデルが静穏時の極冠域電離圏からのイオンの流出の描像として比較的妥当であるという結果を得た。一方、磁気嵐時のイオン流出については、あけぼの衛星が電子密度増加を観測し、ほぼ同時にPolar衛星がイオン上昇流を観測している2000年4月6日から7日にかけての同時観測データを解析し、磁気嵐中の電子密度増加の発生時に磁気圏へ流出できるエネルギーをもったイオン上昇流の見られる領域は、高度9000km付近の極域磁気圏においてはカスプから昼側極冠内に昼夜方向に10°程度も広がっていることを明らかにした。これは、磁気嵐時の磁気圏への重イオンの供給に関して、極域磁気圏においての昼側極冠域の重要性を示している。
著者
伊藤 圭
出版者
独立行政法人大学入試センター
巻号頁・発行日
2005

近年の大学入学志願者の社会的および教育的背景の多様化により,大学入学者選抜方法として,教科・科目別の知識や学習到達度を評価する学科試験だけでなく,受験生の多様な能力,資質,適性などを多面的に評価する総合的な試験を利用すること,およびその有効性の検証が重要な課題となってきている。特に現行のセンター試験では対象としてこなかったような,より幅広い大学志願者層にも対応した基礎的な学力を図るための新たな試験の必要性についても議論が行われている。このような状況に鑑み,総合試験の開発および導入に際しての諸課題のうち,特に総合問題の内容およびその特性を明らかにすることが必要である。本年度は,典型的な学科試験である大学入試センター試験の成績および高校履修科目の得意度と総合試験成績に対して因子分析を行い,総合試験固有の因子を特定した。さらに,この因子と課題遂行および問題解決に必要な能力・資質の習得度との相関を分析し,教科科目フリー型総合試験が測定している能力を調べた。また,センター試験成績および科目得意度を共変量として,受験者の専門分野や性別等の属性別の総合試験成績の比較を行うとともに,課題遂行および問題解決に必要な能力・資質の習得度に関する因子分析を行い,受験者の能力タイプ別の総合試験成績および解答行動について分析を行った。言語テストに関しては,大学入試センター試験英語(筆記およびリスニング)得点と受容的言語能力(聴解力および読解力)の関係を分析した。
著者
石川 可奈子
出版者
滋賀県琵琶湖環境科学研究センター
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

琵琶湖の植物プランクトン133株を単離培養し、真核生物は18S、原核生物は16S rRNA遺伝子を増幅するためのユニバーサルプライマーを用いてPCRを行い、クローニングの後、塩基配列の全長解析を行った。琵琶湖で主に出現しやすいプランクトン塩基配列のアライメントにより、ターゲットとする18種を特異的に検出するためのプライマーの設計、また、それらを用いた定量的PCR(リアルタイムPCR)を用いた検出を試みたところ、顕微鏡観察で確認された種の検出ができた。また、藍藻類全体をターゲットとしたPCR-DGGE(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法)を用いて野外湖水の群集構造解析行ったところ、これまで報告のないピコプランクトン種のバンドが多数検出され、今後、分子分類を用いることにより長期のモニタリングだけでなく、プランクトン群集の多様性がより客観性の高い分析手法で明らかになると示唆された。
著者
下川 勇
出版者
福井工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成19年度は、平成17年度から行ってきたイタリア現地での建物の実測、建物に関連する資料の収集について、データ整理と資料の読解を実施した。そもそも本研究は、スカモッツィの建築作品がルネサンス後期、マニエリスム期、バロック前期の狭間に計画されたものであることから、その作品に時代の思想や様式の変化を見出すことを目的として開始された。現在のところ、スカモッツィの作品は、前期、中期、後期に分類でき、はっきりと表面化するものではないが、確かに時代の狭間に計画された、すなわち混沌とした時代の痕跡が建築様式に表れていることを見出している。今後の研究としては、この基本研究を継続していき、建築様式の系統化、そしてそれを裏付ける思想の中身を明らかにしていきたいと考えている。
著者
横田 悦雄
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

タバコ培養細胞BY-2において、小胞体輸送に関与していると考えられるミオシンXIのアイソフォームのひとつである、175-kDa重鎖からなる175-kDaミオシンと小胞体との関連性を細胞分画法によって検討した。GFPでラベルされた小胞体(GFP-ER)を発現しているBY-2細胞のプロトプラストを、ダウンスホモジェナイザーによりマイルドに破砕して、遠心法によって分画を行った結果,175-kDaミオシンとGFP-ERのシグナルは、主にミクロゾーム画分と可溶性画分に検出され、両成分の分布は一致していた。さらに可溶性画分とミクロゾーム画分を含む分画をショ糖密度勾配遠心法によって分画したところ、175-kDaミオシンの一部がGFPのシグナルと同じ画分に検出された。これらの結果から、175-kDaミオシンは小胞体に結合して、その輸送を担うミオシンであることが更に強く示唆された。しかし、シャジクモ節間細胞のアクチンケーブルや植物アクチン束化タンパク質であるビリンにより束化させたアクチン束を用いたin vitro運動再構成系において、このような小胞体はアクチン繊維上を動くことはなかった。おもしろいことに、アフリカツメガエル卵細胞から単離した小胞体と同様、BY-2細胞から調製した小胞体にGTPを加えたところ、チューブ状の構造が形成された。このような構造は、細胞表層部で観察される小胞体網目状ネットワークに相当すると思われる。またIn vitroにおける単離小胞体のチューブ形成には、溶液内の流れなどの力が必要であることがわかった。そして細胞内では、このような力はミオシンによって発生していることが示唆された。
著者
野澤 桂子 清水 千佳子 沢崎 達夫
出版者
山野美容芸術短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、がん患者のQOLを向上させて治療意欲を高め、社会復帰を促進するための、「エビデンスに基づく外見関連の患者サポートプログラムの構築」を目的とする。具体的には、外見変化の実態と患者ニーズに関する数量的研究を通して基礎的なデータを収集するほか、外見のケアに関する先進国フランスの調査などを実施した。その結果をふまえて、段階的患者サポートプログラムの試案(成人患者版・思春期患児版)を作成した。最終年度には、プログラムをさらに改良し発展させるために必要な有用性の検証と普及に向けた研究にも着手した。
著者
仁木 和久
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

記憶、認知に重要な役割を果たす脳基盤として大脳新皮質が注目されがちであるが、本研究では大脳新皮質とも連携して働く海馬や扁桃体等の下部脳領域に注目し、全脳にわたる連携活動の解明を目指した脳イメージング研究を展開した。記憶・認知に関与する感情の役割等を解明するなど 7 本の国際論文誌にその研究成果を発表した。東日本大震による損傷によりMRI-EEG バインディング同時計測系構築が破損したが、平行開発した DTI(拡散テンソルイメージング)を用いた神経繊維走行解析と脳機能活動や心理物理量との関連性の解析が Brain Connectome 解析として近年注目される研究の一手法として注目を集めるなど、本研究が目指した大脳新皮質と海馬、扁桃体等の下部脳領域に渡る連係動作の解析手法を構築できた。