著者
山田 邦夫
出版者
中部大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、花弁肥大成長の仕組みを明らかにし、つぼみからの花弁の成長つまり開花現象を解明することにある。さらにそのメカニズムを制御し、切り花などのつぼみから開花に至る過程を人為的にコントロールすることを目標としている。バラ切り花の開花にはエクスパンシンやXTHが重要であることが、遺伝子やタンパク質の発現量変動を調べることで明らかとなった。また、XTH活性に対する阻害剤であるXG9という糖の効果について、比較的高濃度のXG9を切り花に処理すると花弁の成長を促進し、低濃度で処理すると逆に開花を阻害することが分かった。さらに、バラ切り花がつぼみから開花する際、一日のうちでも明期が始まった数時間しか花弁の成長が起こらず、それ以外の時間帯はほとんど成長していないことが明らかとなった。
著者
山原 裕之
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

これまでの研究成果をベースに、より精度の高い行動検知と適切なタイミングでのサービス提供の実現のために以下の項目に取り組んだ。(1)多様なユーザの習慣の違いの影響を受けないように、行動検知アルゴリズム中の閾値にユーザごとに適切な値を自動的に設定する手法。(2)falseサンプルを用いた行動パターン洗練手法。(3)サービス提供の適切なタイミングの決定手法の検討。当初、項目(3)ではなく(4)無線通信機器を活用した家の中での位置情報推定手法とユーザの物体への接触情報を組み合わせた新しい位置情報推定手法に取り組む予定であったが、科研費が申請額より減額されたことで通信機器およびセンサ類の購入が難しくなったため、項目(4)に代わり次年度の研究計画に盛り込んでいた項目(3)を実施することとした。この計画変更に関しては、科研費申請時の研究計画にて報告済みである。全体として、項目(1)および(3)の研究の進展によって研究成果を発表する機会を多く得たため、項目(2)に関する発表が本年度中に間に合わなかった。これに関しては、現在、投稿準備中である。また項目(4)に関して、本年度の研究計画としては扱わなかったものの、特別研究員および科研費の予算外での活動として、パッシブ型RFIDタグを用いた位置・歩行情報取得システムの開発および実験を行った。上記の内容に関して、計5件の論文が採択され、さらに3件の論文を論文誌に投稿中である。当初の計画どおり、CEATEC JAPANおよびTRONSHOWの2つの展示会で研究を展示発表し、研究者のみならず一般の様々な方から多くの有益な意見を得た。また、本研究に関してTV取材を受け、2009年3月25日にNHK総合「おはよう日本」で放送された。研究計画はおおむね予定通り進行した。項目(4)に関しても、研究計画外の活動で進展した。これらの進捗状況から、全体として当初の予定以上の成果が得られたと考えられる。
著者
松浦 純 浅井 健二郎 平野 嘉彦 重藤 実 イヴァノヴィチ クリスティーネ 浅井 健二郎 西村 雅樹 藤井 啓司 松浦 純 冨重 純子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

この研究では、4年間で計9回の研究会を開催し、のべ63名から研究成果の報告を受け、討論を行った。トピックは次のようなものであった。・記憶と身体に関する研究・記憶のメディア、メディアと記憶に関する研究・集合的記憶と文化的アイデンティティーに関する研究・記憶と意識、記憶と無意識、記憶と忘却に関する研究・記憶と痛みに関する研究これらのトピックに関して、具体的な分析対象として取り上げられたのは、ヘルダーリン・ニーチェ・リルケ・カフカ・ベンヤミン・フロイト・レッシング・マン・ゲーテ・グリルパルツァーなどの作家・批評家たちである。これまでの研究から、広義の「記憶」にあたるドイツ語の類義語はさまざまあり、ドイツ文学に表現された記憶の系列は多岐にわたっていることが明らかになった。記憶とはもともと過去に由来するものだが、文学テクストにおける記憶は、過去・現在・未来という直線的な時間観念とは異なった時間を内包している。また記憶とは元来は個人の機能であるはずだが、その記憶を保ち続けることにより、記憶が集合的な歴史へと拡大されるシステムを持つことも明らかになった。特に「痛み」の記憶は、個人にとっても社会にとっても忘れがたいものであり、文学テクストにおいても痛みの聖化・神秘化・倒錯など、さまざまな表現形式が存在する。これまでに明らかになった上記のような研究成果をまとめ、さらに今後研究を進めることが必要だと思われる点を検討した。特に「痛み」という文化ファクターの視点からドイツ文学における表現形式を検討することは、この研究では十分にはできなかったので、今後の重要な課題として残ることになった。
著者
内富 庸介 山田 祐
出版者
独立行政法人国立がん研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

患者の情動表出時の医師の共感行動と皮膚電気抵抗の関連について検討した。対象は国立がんセンター東病院に勤務する20名の医師。模擬患者に対して悪い知らせを伝え、その面接中の医師の皮膚電気抵抗を測定した。また面接場面をビデオで撮影し、医師の行動について第三者が評価した。共感高群、低群の二群に分けて解析したところ、課題に対する皮膚電気抵抗の反応量は両群で差を認めなったが、皮膚電気抵抗水準は共感高群が低群に比べ有意に高かった。
著者
木村 汎
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

ロシアの体制転換は、難航している。1991年8月のクーデター未遂事件後、新生ロシアは、共産主義体制から訣別し、民主主義と市場経済の体制への移行を宣言した。ところが、以後既に8年。一方においてはたしかに、もはや共産主義体制へと復帰する可能性はない。しかし他方、西側流の体制へスムーズに転換すると楽観論は、ほぼ完全に消滅した。だからといって、金融危機に陥ったアジア諸国をモデルとして掲げる訳にもいかない。結果として、ロシア独自の道を模索する姿勢を益々強めるにいたった。「ロシア独自の道」とは、一体なにか。この肝心の問いにたいする回答が、未だ見出されていない。完璧なモデルを他に求めることの不毛性への自覚。その探求努力からの疲労。明日はわが身がどうなるか定かでない、その日暮らしの連続。-これらが、現ロシアがおかれている精神状況である。研究代表者は、ロシアの金融(そして政治)危機が発生した丁度98年8月から米国に海外出張し、米国人およびロシア人の研究者たちと本テーマについて討論を交える機会に恵まれた。自身と全く同一のテーマと関心で書かれたJames Moltz,“Commonwealth Economics in Perspective:Lessons from the East Asian Model"に接したことも有益だった。自身は、“Japanese Civilization,Challenge to the Western Civilization?-Some Russian Japanologists'View"を、執筆・発表した。
著者
本間 さと
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

中枢時計SCNから行動リズム発振機構への出力経路を明らかにする目的で、時計遺伝子per1発現とPER2蛋白を発光にてレポートするper1-lucトランスジェニックマウスとPER2::LUCノックインマウスを用い、2以下の2実験を行い、所定の成果を得た。1.活動開始と終了を制御する振動体の局在:明暗(LD)12:12h下で繁殖飼育したマウスをLD18:6の長日条件、又はLD6:18の短日条件に3週間以上暴露した後、SCNの水平断切片をルシフェリン含有培地にて培養し、1時間露光の連続発光イメージを5日間撮像した。ピクセル毎の位相マップを作成した結果、SCN前外側に点灯前からper1発現が上昇する細胞群の存在が分かり、最前部の細胞群のリズムとは180度の位相差があった。一方、長日下のPER2リズムには、SCN前後でper1同様の傾向はあったが、位相差は数時間であり、前SCNに夜明けのピークをもつ細胞群は存在しなかった。同一細胞が内因性リズム発振と環境応答で2つの分子ループを使い分けている可能性が示唆された。2.遺伝子発現in vivo計測と行動リズムを駆動する振動体の検索:光ファイバーを用い、無麻酔・無拘束状態でSCNからの発光活性を連続計測し、時計遺伝子発現と行動リズムを同一個体で比較した。連続暗黒で飼育中のマウスに30分の光照射にてリズムをシフトさせ、時計遺伝子発現と行動のリズム変位の移行期を比較したところ、SCNにも行動リズムに一致した移行期をもつ細胞群の存在が明らかとなり、行動を駆動する中枢がSCN内部にも存在する可能性が示唆された。また、発光活性と自発活動は短時間の変動を示し、相互相関では自発活動がper1-lucを6-8分先行していることが分かった。per1発現からルシフェラーゼ蛋白合成までには数時間の時間を要するので、この変化は活動に伴う血流変化、特に、酸素、ATP、基質の変動などの影響を反映していると考えられる。
著者
秋山 智
出版者
広島国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、若年性神経難病患者の生活の質(QOL)の向上を目的としている。その指標として、個人の生活の質評価法-直接的重み付け法(SEIQoL-DW)を原則として年に一回ずつ50名に実施し、前年と比較して値の変動が大きいケースの原因を検討した。下降したケースと上昇したケースの主な原因を分析すると、共に"家族関係"の状況が値の変動に大きく影響していた。また、仕事や患者会等の"社会との接点"といった状況もQOLを上下させる重要なものであった。
著者
福田 道雄 木村 玄次郎
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

近年、1)慢性腎臓病(CKD)は早期であっても心血管病の危険因子であり、2)腎機能が正常な時期から腎機能低下につれて心血管病の危険度が増加する事(=心-腎連関)が判明し、CKDを早期診断・治療して心血管病を予防する事が世界規模の健康問題となった。私達名古屋市立大学心臓・腎高血圧内科学の研究グループは、24時間に亘る適切な血圧管理のために24時間血圧測定を日常診療に取り入れた結果、腎機能が低下するにっれて夜間血圧が低下しなくなるnon-dipper型の血圧日内リズムを呈し、かつ日中に比し夜間の尿中ナトリウム排泄量が多くなることを発見した(Kidney Intemational. 2004 Feb ; 65 (2) : 621-625)。この現象を「腎機能が低下すると日中に十分なナトリウムを排泄しきれなくなり、本来夜間に低下(dipper)する血圧を高いまま維持することで圧-利尿を発揮し夜間にナトリウムを排泄する」と解釈し、この考えを「non-dipperの腎性機序」として提唱してきた。さらに日中の活動時にナトリウム排泄が低下してしまう病態では臥位から立位に体位変化をするとナトリウム排泄が低下してしまうとの仮説を立て、本研究を立案・実施した。平成17~18年度は「non-dipperの腎性機序」を支持する研究成果を積み重ね、平成19年度は立位負荷時の尿中ナトリウム排泄低下が、血圧や尿中ナトリウム排泄のnon-dipper型日内リズムを検知し得ることを明らかとした。non-dipperや食塩感受性の基本には共通した腎におけるナトリウム排泄障害が存在し、それを立位負荷時のナトリウム排泄低下で診断し得る可能性が示された。non-dipperも食塩感受性も心血管イベントリスクである事は確立しており、立位負荷による腎予備能低下の診断はCKD早期における心血管イベントリスクのスクリーニングに有用である可能性が示唆され興味深く、今後さらなる検討を要する。本研究を支えて頂きました日本学術振興会様、国民の皆様に深謝致します。
著者
河島 思朗
出版者
首都大学東京
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究は、オウィディウス『変身物語』における詩的技法を詳細に研究することを主眼とする。とりわけ、物語相互の連関に着目して、作品の解釈を試みる。『変身物語』に含まれる多彩な物語群は、個々に独立する物語でありながらも、互いに連関を有している。この理解については先行研究も広く認めるものであるが、個々の物語の理解に影響を与えるような物語同士の内的な連関については、具体的に議論され得る余地はなお多く残されている。今年度は、第一に物語相互の連関について、第4巻55-388行、第10巻86-219行、第15巻60-487行を考察し、新たな理解を見出した。さらに『変身物語』に影響を与えた他のラテン文学作品との関連から考察した。とりわけ、ウェルギリウスの『牧歌』、『農耕詩』、『アエネーイス』の分析を行ない、『変身物語』の文学史的位置づけを考察するとともに、作品の詩的技法上の特質を研究した。また、『変身物語』の古代ローマにおける社会的・文化的意義、また作品の神話学的な意味についての研究を推し進めることによって、その詩的技法の効果を分析した。以上の研究成果は、2009年の都立大学哲学会において、「アリスタエウスの物語の意義-ウェルギリウス『農耕詩』第四巻」として口頭発表する予定であり、また「ミニュアースの娘たちが語る物語群-オウィディウス『変身物語』4.55-388に描かれる変身の意味-」を2008年中に『ペディラヴィウム』に、"Personal Pronouns in Ovidius Metamorphoses10.86-219"を2009年にSeiyo-kotengakuに、それぞれ論文として投稿する予定である。またこれらの研究成果によって、課程博士論文提出予備資格を取得済みであり、さらにこの成果を平成20年度首都大学東京オープンユニバーシティーにおいて一般向け講義として発表することが決定している。
著者
内田 淳史
出版者
拓殖大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、情報理論的セキュリティに基づく暗号鍵発生方式を提案し、超高速レーザカオスを用いてこれを工学的に実装することを目的とする。特に相関乱数暗号の要素技術として、共通カオス信号により駆動された半導体レーザカオス同期および相関の制御を実験的に実現した。本実験では、3つのDFB半導体レーザ(それぞれDrive、Response1、Response2と呼ぶ)を用いた。外部鏡を用いてDriveに戻り光を付加することでカオスを発生させた。Driveの緩和発振周波数とRepsonse1, Response2の緩和発振周波数を異なる値に設定した。Driveからのカオス的レーザ光を、ビームスプリッタ(BS)を調整することでRespoense1とResponse2に注入させた。このときDrive-Response間では低い相関、Response1-Response2間では高い相関を確認した。次にResponsel、Response2にそれぞれ外部鏡を用いて戻り光を付加させた。Response1の外部鏡の距離をピエゾステージによりナノメータ(nm)単位で変化させ、Response1の戻り光の位相を変化させることにより、2つのResponseレーザカオス同期波形の相関の制御を行った。その結果、戻り光の位相が一致したときの2つのResponse間の時間波形は一致しており、相関値を計算したところ0.907と高いことが分かった。一方で、戻り光の位相が一致していないときの2つのResponse間の時間波形は一致しておらず、相関値も0.076と低いことが分かった。以上より、戻り光の位相を変化させることで、Response1-Response2間の相関を制御可能であることが実験的に確認された。本特性は相関乱数暗号方式への応用における要素技術として非常に重要である。
著者
清水 将文
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、省農薬使用の野菜セル成型苗生産を目指し、植物内生放線菌を利用したセル成型苗病害の新規生物防除技術の開発を目的としている。キャベツやブロッコリのセル成型苗に発生する黒すす病が近年深刻な問題となっている。そこで、本病に防除活性を示す内生放線菌の探索を行い、昨年度に有望3菌株(MBCN43-1株、MBCN56-1株、MBCY58-1株)を選抜した。本年度も引き続き探索試験を行った結果、これら3菌株よりも強力な菌株(MBCN152-1株)を得ることに成功した。MBCN152-1株の生化学的性状や形態などを解析し、Streptomyces sp.と同定した。キャベツセル成型苗黒すす病の一次伝染源である汚染種子に対するMBCN152-1株の防除効果を検討するため、本菌株の胞子懸濁液を5×10^5、5×10^6、5×10^7cfu/g(育苗土)の割合で混和した育苗土に汚染種子を播種し、2週間育成した。その結果、放線菌無処理区では約45%の苗が発病したが、MBCN152-1株処理区の発病苗率は5%未満であった。特に、5×10^7cfu/g処理区ではほぼ完全に発病が抑制され、極めて高い防除効果が得られることを明らかにした。つぎに、発病苗からの二次伝染を想定し、MBCN152-1株(5×10^7cfu/g)処理育苗土で育成したセル成型苗に黒すす病菌胞子を噴霧接種して温室内で育成したところ、苗枯死が無処理区と比較して約84%抑制された。これらの結果から、MBCN152-1株を最終候補株として選抜した。また、本菌株の凍結乾燥胞子を含有する粉状生菌剤の試作に成功し、最低3ヶ月間以上は常温で安定的に保存できることも確認した。現在、本菌株をより安定的且つ低コストで製剤化する技術の検討や防除機構の解析を進めている。本研究で得られた成果を基に特許を出願(特願2007-59639)した。
著者
アリスター モンロー
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

エコ商品とは、環境上の利点を持った日用品のことである。たとえば、カーボン・ニュートラルな航空機による旅はエコ商品と言える。エコ商品の存在は、さらなる環境保護につながる可能性がある。しかし、価格のごく一部しか環境保護に充てられない例がしばしば見受けられ、これは、「グリーンウォッシュ(環境保護に努めているふりをしながら利益を貪ること)」と呼ばれるエコ商品特有の現象である。経済学的実験から、被験者にエコ商品を購入する機会を与えると、環境理念全体に対する貢献度の低下につながる可能性があることが判明した。被験者はエコ商品を買うことで、それ以外の環境理念に対する寄付をやめるのである。一方、環境理念に対する貢献を求められた時の道徳的ジレンマを回避するために、あえてお金を払う被験者もいる。要するに、エコ商品のために、環境理念に充てられる資金が減少し得るということである。
著者
長谷川 伸 八十島 崇 仲里 清
出版者
九州共立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では長期間にわたり投球動作を反復することが、肩関節の回旋腱板筋の筋量低下など量的変化や、筋断面積あたりの発揮筋力の低下など質的変化をもたらすかという点を明らかにすることを目的とした。棘上筋の筋断面積とその機能を表す外転筋力を測定し、固有筋力指数(単位断面積あたりの発揮筋力)を評価したところ、投球競技者の投球側と非投球側では筋断面積や固有筋力指数には差は見られず、投球動作を長期間継続することが投球側の回旋腱板筋において筋の量的、質的な低下をもたらすものではないことが示唆された。
著者
成田 龍一 岩崎 稔 長 志珠絵 佐藤 泉 鳥羽 耕史 水溜 真由美 上野 千鶴子 戸邉 秀明
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本科学研究費補助金にかかわる、本年度の研究成果は、これまで収集してきた「東京南部史料」の分析と、その歴史的な位置づけを集約した『現代思想』臨時増刊「戦後民衆精神史」にまとめられている。同誌は、2007年12月に刊行された。ここには、研究協力者(池上善彦、『現代思想』編集長)の多大の協力がある。研究代表者および、研究分担者、研究協力者による成果は、以下のとおりである。研究協力者の道場親信(東京外国語大学講師)「下丸子文化集団とその時代」「工作者・江島寛」、研究協力者・岩崎稔「詩と労働のあいだ」。「討議戦後民衆精神史」に、成田龍一(研究代表者)、鳥羽耕史(研究分担者)、道場が参加した。さらに、道場による「東京南部文化運動年表」が付された。そのほか、『現代思想』「戦後民衆精神史」には、浜賀知彦氏の所蔵にかかわる1950年代のサークル誌である、『油さし』『いぶき』『たんぽぽ詩集』などの分析が寄稿されている。これらは、池上、岩崎、道場が主宰する研究会での成果の反映である。『現代思想』「戦後民衆精神史」には、木戸昇氏による「東京南部」のサークル運動の概観も「資料」として付されており、『現代思想』「戦後民衆精神史」は、1950年代のサークル運動、さらには文化状況の研究を一挙に進めたものといいうる。また、他の研究者たちによる1950年代の文化運動、およびサークル運動の研究会やシンポジウムにも参加し、成田・岩崎・鳥羽はアメリカ合衆国コロンビア大学を会場とするMJHW(近代日本研究集会)で報告と討論をおこなった。さらに、鳥羽と池上は、1950年代に生活記録運動を展開し、サークル運動と深いかかわりをもった鶴見和子をめぐる研究集会(京都文教大学)に参加した。韓国やドイツにおける研究者との交流を、持続的に行ってもいる。
著者
加藤 雄二
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の課題は、アメリカの作家と作品とおもに日本におけるそれら受容史を、歴史的経緯と現代における文学の理論的理解を考慮に入れながら議論することであった。初年度平成15年度にはアメリカ作家ハーマン・メルヴィルと日本における受容史に焦点をあて、日本の第二次世界大戦前後の文学的風土がきわめてつよくロマン主義を思考しており、反ロマン主義的な側面を強く持つメルヴィルの作品とは相容れない本来的な齟齬をきたしていた様を描写した。次年度には、メルヴィルについての研究でその重要性があきらかになった1970年代以降の日本でのアメリカ文学の受容に焦点をあて、作家村上春樹によるアメリカ作家スコット・フィッツジェラルドの影響の源としての利用が、日本におけるアメリカ文学受容の理論的に重要な側面を代表していることを示そうとつとめた。16年度の後半には、アメリカの現在のアメリカ文学研究のありかたをよりよく知ろうとつとめると同時に、日本の戦後のコンテクストにおいて最も重要であると思われるアメリカ作家ウィリアム・フォークナーの受容と研究を、日本の文学の展開と並行するかたちで議論しようとつとめた。これらの研究によって、戦後開始された日本におけるアメリカ文学研究の問題点がいくぶんか明確になり、今後の研究に資することが可能となっただろう。
著者
大澤 吉博 STEBLYK C.P.
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

京都の六十年代のアヴァンギャード芸術、展覧会、などの研究。・京都国立近代美術館。近代の美術(日本の六十年代の芸術者)。草間彌生展。1月6日(木)〜2月13日(日)60年代アメリカ前衛芸術の最前線で活躍し、現在も日本を拠点に国際的な美術家として旺盛な制作活動を続ける草間彌生(1929年、長野県生)の新作を中心にした大規模な展覧会です。(インスタレーション、作品)・何必館(かいはつかん)・京都現代美術館 概要・京都芸術センター。京都市東山区祇園町北側271 芸術振興の拠点施設、Exhibition "CRIA"。Date:8th(sat.)-30th(sun.), January, 2005 センターでは、さまざまな自主事業を展開。信夫北脇:京都のアヴァンギャアド芸術者。Japan Avant-Garde Artists Association、1947.・映画監督者:大島渚(1960‘s)京都のしょちく映画館・近代のアビャンギャアド。Tranqroom.(トランクルーム)京都市左京区浄土寺真如町162-2。展覧会、エヴェント。Art Complex 1928:ギャラリー。アートショプ。発表会>The Japanese Avant-Garde and Ono's Instructional Paintings. San Francisco State University. February 17,2005.発表会>Murakami Haruki and 1960s Japan.(ノルウェイの森)Japan Society, New York. February 22,2005.発表会>What is it Love? Iimura Takehiko. Ponja Genkon conference on post-War Japanese Art. Yale University, New Haven, April 22,2005.
著者
後藤 隆 村上 文司 村上 文司 松尾 浩一郎
出版者
日本社会事業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、ソーシャルワーカー、ケアワーカー、看護師、保健師など、対人援助(ヒューマンサービス)専門職専門知の特性が、関連専門知識、法規、状況判断、クライアントとのコミュニケーション、利用可能な社会資源等々、多様な情報のからんだ、複雑な対象/問題/対策像構成プロセスにあることを、そうしたプロセスを記録した非定型テキスト・データの一種である「物語状」質的データの計量テキスト分析を通じて明らかにする.具体的には、(1)学齢前障害児通園施設の援助記録の分析, (2)高等看護学校看護学生の看護実習記録の分析をおこなった.(1)では、関連テストによる状態像把握と処遇計画書の関連を、(2)では、看護行為擁護分類と看護学生の看護実習記録および看護研究との関連を、扱った.
著者
藤田 豊己
出版者
東北工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ロボットが作業のために手先を動作している画像を観察したときの人間の注視による関心領域を計測し,位置的類似度を用いて特性を検証した.その結果,対象とした動作においては,トップダウン的な処理が優位なScanpath(視線走査)が生じるがわかった.さらに,画像処理手法により関心領域を検出し,その妥当性をその特性結果を利用して評価した.その結果,ボトムアップ処理とトップダウン処理を表す特徴を統合することで有効な注視領域検出が可能となり,基本的な動作検出も可能となることを示した.
著者
堤 マサエ 大友 由紀子
出版者
山梨県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

親がどのように子どもの離家・独立・職業選択・結婚の援助をしているか、子どもはどのように認識しているかの実態を明らかにし、世代比較と国際比較の視点から分析した。その結果、若い世代ほど高学歴化し、親の子育て・教育費負担は重い。結婚が一人前の条件ではなくなり、人生における独立することの意味が変化してきた。農村家族は比較的安定した暮らしであるが、若者調査から就職難、親の生活困窮、祖父母の年金で孫の学費を援助するなど世代を超えた援助、奨学金で親子が暮す貧困の実態が新たな問題として出てきた。国際比較から、国際社会の動きに対応し、日本家族の文化や伝統を配慮した子育てとその支援の在り方の重要性が指摘できた。
著者
安藤 隆男 西川 公司 川間 健之介 徳永 豊 千田 捷熙
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、次の二つから構成した。まず、(1)学習の主体である脳性まひ児の学習特性、(2)脳性まひ児の教科指導を行う担任教師、(3)地域における支援の担い手である肢体不自由特別支援学校の支援体制に注目し、通常学級における脳性まひ児の学習支援モデルの開発に関わる基礎的な資料・知見を得る研究である。次に、これらの基礎的な知見をふまえて、とくに附属肢体不自由特別支援学校との開発と展開に関わる共同研究である。この共同研究は、脳性まひ児の学習特性をふまえた教科指導モデルの構想と実践(第一研究)と通常学級における脳性まひ児の学習支援の展開(第二研究)からなる。前者は通常学級における脳性まひ児の学習支援に資する教科指導モデルを、肢体不自由特別支援学校において培ってきた専門性に基づいて構想、実践するものである。後者は前者で構想、実践した教科指導モデルを通常学級に適用、展開するものである。まず、第一研究では、WISC-IIIなどの結果から、認知的な課題がある児童生徒を対象とした各教科の指導の手だて等を開発し、授業において検証した。その結果、認知的な特性をふまえた指導の導入が脳性まひ児の学習パフォーマンスを高めることが事例的に明らかになった。第二研究では、第一研究で構想した教科指導モデルを通常学級の脳性まひ児に適用してその有効性を明らかにしつつも、脳性まひ児の認知に関わる担当教師の気づきの位相によって彼らへの支援を細かく想定する必要性が示唆された。脳性まひ児の学習パフォーマンスに関しては、認知的特性のみならず、運動動作の障害との因果関係も示唆され、改めて自立活動の指導との関連から課題を整理する必要がある。