著者
岡崎 章 柿山 浩一郎 内藤 茂幸 呉 起東 丸 光恵
出版者
拓殖大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

プレパレーションに重要なのは,理解につなげる要素をプレパレーション・ツールに組み込んでいるか否かである.一つは,画面内の必要な箇所を確実に見させてその時点で説明を行えるようにすること.もう一つは,リアル表現から痛みを感じてしまい不安感や恐怖感を誘発するぎりぎりの画像を提示することで,真実味と痛みの感じるレベルをコントロールして,最大の理解へとつなげることである.本研究では,この2つの機能を組み込んだCVカテーテル用プレパレーション・ツールを開発した.その後,概念モデル可視化ツールの開発も行った.
著者
宮田 仁 井上 毅 三宮 真智子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は,小学生,中学生,高校生を対象として,論理的思考力を育成する考え方学習を取り入れたWebベースの情報安全教育学習教材を開発し,学習者用ワークシート,教師用ガイドブックを作成することである。指導項目の中から,(1)著作権の尊重,(2)個人情報の保護,(3)ネットワーク利用上のエチケット,(4)セキュリティの遵守,(5)サイバーセイフティに関するWeb教材を開発した。小学校12校,中学校10校,高等学校5校で開発したweb教材の授業実践を行った結果,本Web教材の有効性が認められた。
著者
東野 達 大原 利眞 谷 晃 南斉 規介 山本 浩平 山本 浩平 小南 祐志
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

わが国の森林サイトやチャンバーを用いてBVOC フラックスの放出特性を明らかにし,近畿地方のBVOC 年間放出量マップを構築した.東・東南アジア地域を対象に,数値モデルにより発生源からの排出量とPM_<2.5> による早期死亡数との関係を定量化した.その成果をアジア国際産業連関表に導入し,各国の最終需要が誘発する国内のBC,OC 吸入による早期死亡数を明らかにし,消費基準でみたわが国への越境汚染による健康影響について他国及び日本の寄与率を推定した.
著者
山村 一誠
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、有効温度が極めて低く、恒星と惑星の中間状態にある褐色矮星大気の物理的・化学的状態を、赤外線天文衛星「あかり」によって世界で初めて得られた近赤外線分光観測データの解析によって理解しようとする試みである。本研究によって(1) 一酸化炭素、二酸化炭素の量が通常の理論では説明出来ないこと、(2) 褐色矮星の元素組成にばらつきがあるらしいこと、(3) 世界で初めて褐色矮星の半径について議論できたこと、などの成果が得られた。
著者
加藤 浩三
出版者
上智大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

平成12年度は、昨年度に収集した阪神淡路大震災および米国ノースリッジ地震に関する資料を分析し、その分析から得られる論点を整理し、そしてその論点を米国での現地調査で確認することに重点が置かれた。日本で収集された資料から得られた論点は、日本の危機管理の特徴は、その管理を司る組織形態が、集中的か分散的かという点ではなく、国家と社会との間で危機意識を共有する政策形成過程が、欠如しているということである。通常、日本の危機管理は、情報管理、指示系統が分散し、中央集中型の組織形態をとっていないため、特にその初動体制に問題が多いといわれてきた。官邸に設置された首相のリーダーシップを発揮するための危機管理室は、その点を考慮されたものである。しかしながら、中央管理的な危機管理のお手本とされた米国の意志決定システムは、日本でいわれるほど連邦政府による集中管理ではなく、実際には、連邦レベルの危機管理は、州レベル、郡レベルの管理体制と共生している。したがって、危機発生時のリーダーシップは、州知事、郡保安官、市長、そしてかれらの意志決定に日頃から深く関与している非政府組織らによって、発揮されている。連邦レベルの危機管理は、国家安全保障に係わる問題を除き、地方政府の要請なくしては発動されないのが基本である。本研究の焦点である地震災害では、連邦緊急事態管理庁(FEMA)は、危機管理の主役ではなく、被災地域救済、復興に必要な物資・経費を見計らう少数の専門家集団であった。日本の危機管理が、米国のそれと決定的に異なるのは、国家と社会との間の危機意識を共有する度合いである。日本の場合は、自然災害について、中央・地方政府と社会集団との間で、危機意識を共有していることは希で、災害ヴォランティアの人々も、平常時には、国家と社会との仲介者とはなっていない。日本経済成功の要因として指摘されてきた、国家と社会との間の緊密なネットワークは、少なくとも災害管理の問題では、ほとんど存在しない。
著者
高橋 理
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

中枢神経系の主要な興奮性伝達物質であるグルタミン酸の脳内分布については、従来おもにその合成酵素であるglutaminaseを免疫組織化学的に同定することにより解析が進められてきた。本研究はグルタミン酸に対するポリクロナール抗体を用いて、三叉神経運動核と三叉神経感覚群におけるグルタミン作動性の神経細胞体と神経終末を同時に検出し解析することを目的とした。実験には雌Wistar系ラットを用いた。実験動物を2.0%パラホルムアルデヒドと0.25%グルタールアルデヒドの混合溶液にて灌流固定を施した後に、脳幹部の凍結連続切片を作製し、免疫組織化学的にグルタミン酸様免疫活性を示す神経細胞体と神経終末についてそれぞれFITCを用いて標識し、蛍光顕微鏡下に観察した。実験の結果、グルタミン酸免疫陽性の神経線維と終末は、解剖学的に定義される三叉神経運動核の周囲の小細胞性網様体には少数が観察されるものの、同核内においては運動ニューロンの細胞体と近位樹状突起に接してごく少数しか認められなかった。これに対してグルタミン酸免疫陽性の神経細胞体は三叉神経主感覚核に多数、三叉神経脊髄路核の吻側亜核背内側部と腹外側部に少数、そして同中位亜核に多数が観察された。これら三叉神経感覚核群の内側に接する橋・延髄の小細胞性網様体には免疫陽性の神経細胞体と神経線維が多数観察された。これらの結果より、従来報告されてきた、三叉神経運動核に対するグルタミン酸作働性の前運動ニューロンは、三叉神経運動ニューロンの細胞体や近位樹状突起というよりはむしろ、同核内において遠位樹状突起上にシナプス結合する事が示唆された。今後、この部位において免疫電顕を用いたシナプスの構造解析が重要と考えられる。
著者
佐藤 一郎
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

テクスト読解上困難の多いことで知られるスピノザの『神、人間とそのさいわいについての短論文』(以下『短論文』と略)について、原典写本のマイクロフィルムを入手し、写本を参照しながらのテクスト解読と諸版の校合という文献学的研究を行なった。従来から進めていた『短論文』の翻訳作業とも併行して、研究史の把握と諸解釈の批判的整理という基礎的研究にもとづいて、分析的読解を進めながら、『エチカ』、『知性改善論』との関係を探る哲学的研究を行なった。また、スピノザの初期哲学の形成過程という視野から、『短論文』の成立事情と時期、著述の原形態に関して歴史的な知識解明につとめた。その結果、おおよそ以下のような成果を得ることができた。1.『短論文』が当初どのような作品として受けとめられていたかという点から、完成形態である『エチカ』との関係も含めて、この作品にまつわる歴史的な特殊事情をある程度明らかにすることができた。2.現在スピノザ研究において、その初期哲学に特に注目されるようになっているが、そこには未完の『知性改善論』と『短論文』の先後関係という非常に大きな問題がある。しかしこの問題の歴史的な解明は哲学内容上の解明と切り離すことができない。そのことが、研究期間後半において主にたずさわった「真理」をめぐるスピノザの哲学の追跡を通して、具体的に明らかになった。特に、未完の『知性改善論』が、なぜ未完になったのかという点も含めて、スピノザの哲学形成を考える上で、重要な意義をもつという知見に至った。3.付随的には、研究期間に、補助金によりオランダとイタリアに出張して、思想史的研究と歴史的・文献学的研究において主導的な位置を占める学者から研究課題に関してレビューを受けることができたのも、研究の幅と視野を広げる意味で、大変有意義であった。
著者
寺田 良一
出版者
都留文科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1998年の「NPO法」の施行以来、日本においても、小規模な任意団体が主であった環境運動組織が環境NPOとして組織化、制度化され、政策決定に対する影響力や圧力行使、対抗的政策提言活動等を行う基盤が遅れ馳せながら整備された。本研究においては、環境NPOの公式的な組織化、制度化以降の環境運動組織の機能変容、政策提言(アドボカシー)能力や社会的影響力の増大等を、主として定性的に明らかにすることがめざされた。比較的NPOとしての公式化、制度化が進んだアドボカシー型環境NPOを中心として聞き取り調査を広範に進めた結果、以下のようないくつかの知見が得られた。第1に、NPOとしての組織化の経緯から、a)海外の既存の環境NPOの日本支部的に発展してきたもの、b)国内のおいて比較的長期間環境運動や消費者運動としての活動実績を持ち、NPO制度の確立とともにそれへと組織化されたもの、c)比較的最近の環境問題に対応して活動を開始し、当初から環境NPOの形態を採っているもの、といった類型が得られた。全体として、税制優遇や寄付控除制度等を欠いた日本の不十分なNPO制度ゆえに、財政基盤は脆弱であり、政策提言や政治的影響力行使に必要な専門的力量や人材も不十分である。しかしながら、こうした基盤の弱さにもかかわらず、NPOとして公式組織化しえたことで、自治体や企業セクターとのパートナーシップ形成は著しく進展した。事業化や活動の独自性を打ち出し、NPOとしての独自のニッチを見出す努力も見られる。たとえば、海外に本部を持つ既存の環境NPOや新興環境NPOで国際的な活動や国連等をアリーナとした活動が特徴的であったり、草の根的基盤を持っ環境NPOが地域レベルの政策提言等に関与する傾向などが見られる。
著者
中川 千帆
出版者
奈良女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

当該研究は20世紀への変わり目に書かれたニューイングランドの女性作家によるヴァンパイア物語に見られるジェンダーとセクシュアリティを探るものであると同時に、現代のヴァンパイア・ロマンス人気の背後に見られるジェンダー・ポリティックスも明らかにするものである。
著者
林 浩康
出版者
東洋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

家族参画実践を児童虐待領域において最初に導入したニュージーランドにおけるファミリーグループ・カンファレンスの評価について先行研究、ニュージーランド児童保護機関での職員インタビュー、ファミリグループ・カンファレンス国際会議への出席等により明らかにした。ニュージーランドおよび諸外国における家族参画実践に関する評価については、(1)文化的側面、(2)実践的側面、(3)政策的側面から分析した。(1)に関しては家族、親族、地域関係を尊重する先住民族の文化ストレングスの導入として捉え、それが文化を越え、普遍的価値を有した実践であることを明らかにした。(2)に関しては近年におけるソーシャルワーク実践動向との関連から社会構成主義に基づいたナラティブ・モデル、ストレングス視点、エンパワメント視点から評価を行った。(3)に関しては新自由主義との関連から家族・個人責任イデオロギーの観点から批判的に検討した。現在、欧米・オセアニア先進諸国では、家族参画の是非を論じる段階を経て、家族参画を促す方法や、子どもの参画に関する議論が活発に行われている。パターナリズム・モデルと参画モデルの統合が、それらの国々における課題となっている。またニュージーランドの家族参画実践啓発ビデオの翻訳および日本語吹き替えを行い、それを教材として活用し、児童相談所職員に対し、学習会を開催し、現場での活用の可能性に関して意識調査を行った。その後学習会参加者に対し、我が国における家族参画実践導入の1.意義、2.課題、3.取り組みについて聴き取り調査を行った。結果として1.意義は(1)ストレングス活用、(2)意思決定過程の活性化、(3)当事者意識・意欲の促進、(4)子どもの安全体制の確保・子どもの権利保障、2.導入に際しての課題は(1)当事者意識、(2)運営、(3)当事者の能力、(4)文化、(5)専門性、3.課題への取り組みは(1)法律改正・実施要綱等における規定、(2)司法の関与、(3)財政的支援、(4)FGC開催機関、(5)支援体制の保障、(6)研修の実施、が明らかとなり、さらに詳細な分析を行った。今後本研究に基づきさらにファミリグループ・カンファレンスの普及に努め、その実施状況について分析を行っていきたい。
著者
長田 和雄 持田 陸宏
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

大気エアロゾル粒子の水溶性成分含有率(ε)は、雲粒・氷晶形成のプロセスに関わる重要なパラメーターである。本研究では、個別粗大粒子のεを知るために、共焦点レーザー顕微鏡と水透析法を組みあわせた計測手法を開発した。この手法により、各種テストダストや黄砂時の粗大粒子の粒径別εを明らかにした。また、連続流型熱拡散チャンバを用いて氷晶化能力を測定するために、数値流体力学解析による検討、実機の整備、大気エアロゾルを対象とした試験を行った。
著者
高田 将志 相馬 秀廣 豊田 新 竹村 恵二 横山 祐典
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

琵琶湖1400mボーリングコア試料のESR信号強度は、周期的な環境変化の影響を受けてきた可能性がある。またESR・TL信号特性から、約90万年前の堆積層は、それより上位の試料に比べ、コア掘削地点北~東~南方に分布する基盤岩類や野洲川掃流物質の影響を強く受けていたように見える。当該試料の^<10>Be濃度もかなり異なる値を示し、これは、堆積物供給源の浸食・堆積環境が時系列的にかなり変化してきたことを示唆する。
著者
横山 修 秋野 裕信 青木 芳隆 横田 義史 楠川 直也 伊藤 秀明 棚瀬 和弥
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

メタボリック症候群候補遺伝子の変異が下部尿路症状(lowerurinary tractsymptoms:LUTS)の発生と関連しているのか、ヒトあるいは病態モデルを用いて検討して以下の結果を得た。(1)過活動膀胱患者の血液サンプルを用いて、特にcycloxygenase-2(COX-2)遺伝子多型(JAMA291:2221,2004)について検討した。COX-2のプロモーター領域には-765番目のグアニンがシトシンに変異している一塩基多Single Nucleotide Polymorphism(SNP)が存在するが、その頻度は低く、これが直接過活動膀胱発生に関与しているとは考えにくかった。しかし、ヒトの症状スコアーと尿中パラメーター(PGE_2、PGF_<2a>、NGF、substance P)を用いて解析した結果、脳血管障害患者では、そのphenotypeとしての尿中PGE_2量は下部尿路症状、特に過活動膀胱(overactive bladder;OAB)症状と有意に関連し、他のメディエーターであるPGF_<2a>、NGF、substance Pよりも強い相関があった。脊髄疾患患者でもOAB症状と尿中PGE_2量とは有意の相関を示した。(2)福井県住民健康診査を受けた男女を対象に、夜間頻尿と下部尿路症状とメタボリック症候群のリスク因子との相関を検討した。その結果、夜間頻尿は肥満・高血圧・心疾患・不眠が独立したリスクで、メタボリック症候群の危険因子の数が多いほどオッズ比が大きかった。(3)なぜ上位脳血管障害患者で尿中PGE_2量が上昇するのか、動物モデルを用いた検討を行った。ラットに脳梗塞を起こさずに排尿反射のみを亢進させても尿中PGE_2量やATP量に変化はみられなかった。しかし脳梗塞を作成すると膀胱壁のATP量増加が認められ、知覚C線維をレジニフェラトキシンにて脱感作するとATP増加はみられなかった。したがって脳梗塞により膀胱の知覚C線維のupregulationが生じていると考えられた。PGE_2量は遅れて増加するものと推測される。(4)メタボリック症候群の病態モデルを用いて、排尿筋過活動の発生について実験を行った。その結果、高フルクトース食にて11ヶ月飼育したラットでは、高血圧・インスリン抵抗性が獲得され、排尿回数の増加とともに膀胱壁COX-2発現の上昇・尿中PGE_2の増加がみられた。
著者
曽根原 理 牧野 和夫 福原 敏男 佐藤 眞人 大島 薫 松本 公一 岸本 覚 山澤 学 大川 真 中川 仁喜 和田 有希子 万波 寿子 クラウタウ オリオン 青谷 美羽 杉山 俊介
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本の近世社会において、東照宮が果たした役割を考えるため、関係する史料を各地の所蔵機関などで調査した。また、近世初期に東照宮を設立する際に基盤となった、中世以来の天台宗の展開について、各地の天台宗寺院の史料を調査した。加えて、年に二回のペースで研究会を行い、各自の専門に関する報告を行い議論した。そうした成果として、日本各地の東照宮や天台宗寺院に関する著作と論文を公表することが出来た。
著者
藤 秀樹
出版者
神戸大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は, 新規エキゾチック超伝導体や新しい層状およびカゴ状構造を有する物質系において発現する低温量子状態を核磁気共鳴を用いて解明を目的とした。本年度は籠状クラスレート化合物であるBa_8Ga_<16>Sn_<30>の研究を中心に、ラットリングに関して微視的観点からの機構解明を行った。加えて、新しい2元系の鉄系層状化合物FeSeについても研究を開始した。これまでの研究から以下のような結果を得た。1. Ba_8Ga_<16>Sn_<30>は2種類の籠状構造をとる1型(β相)と1種類の籠状構造をとる8型(α相)が知られており、籠形状の違いにより内包原子の大振幅原子振動(ラットリング)が異なることが指摘されている。本研究では主としてGa-NMR研究を行い、Type Iでは30K付近にラットリングによるスピン格子緩和率の増大を見いだした(2008年9月日本物理学会・分科会)。一方Type VIIIでは、Type Iとは異なりコリンハの関係式に従い、低温で緩和率に異常が見られないことを明らかにした。2. 新しい鉄系超伝導体FeSeについてSe-NMRを行い、低温の超伝導状態においてNMR緩和率の測定から、BCS超伝導体特有のコヒーレンスピークが見えないこと、緩和率の温度依存性がT3に従っていることを明らかにし、異方的超伝導の可能性を指摘した。また、類似化合物である反強磁性体SrBa_2As_2について圧力下電気抵抗実験を研究協力者の小手川等とともに行い、3.7GPa程度の圧力下での反強磁性が消失し、34K級の超伝導相が出現することを示した。平成20年11月12日をもって, 当初予定していた研究は遂行した。
著者
小谷 通泰 山中 英生 秋田 直也 田中 康仁
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、貨物車に搭載したプローブ機器(GPSとデータ記録用のロガー)から得られたデータをもとに、貨物車の基礎的な運行挙動を把握するとともに、これらの運行挙動を組み込んだ環境制約下における配送計画モデルを定式化する。そして、複数の運行形態の貨物車を対象として最適配送計画を提案し運行コストの削減と都市環境の改善の両面からその効果を評価することを目的としている。得られた主たる成果は以下の通りである。まず、貨物車の運行挙動については、取得したプローブデータにもとづき、貨物車の走行時間や荷さばき時間にみられる不確実性を考慮し、指定時間がある配送地点への出発時刻の決定行動や複数の配送先への巡回経路の選択行動をモデル化した。また同様にプローブデータをもとに、高速道路と一般道との間における大型貨物車(海上コンテナ輸送トラック)による走行経路の選択要因を抽出した上で、経路選択モデル(非集計行動モデル)の構築を行った。さらに明らかになった運行挙動を踏まえて、一般の貨物車(宅配貨物輸送トラック)と大型貨物車(海上コンテナ輸送トラック)の2通りを取り上げて、環境制約下における配送計画を作成した。宅配トラックについては、貨物輸送需要を与件としてデポ、集配拠点の最適配置計画を提案し、貨物車の運行効率の向上と環境改善効果の視点からそれらを評価した。また海上コンテナ輸送トラックについては、構築した貨物車の経路選択行動モデルを用いて、市街地の環境改善を図るため通行料金格差の導入や賦課金徴収を行った場合の、貨物車の市街地から湾岸部の高速道路への迂回誘導効果を評価した。
著者
本田 由紀
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、高校における「特色ある学科」、中でも「特色ある専門学科」の有効性を明らかにすることを目的とする。平成15年度には「特色ある学科」を開設している専門高校6校に対するインタビュー調査を実施した。翌16年度には「特色ある学科」を開設している全国74校の高校に対して質問紙調査を実施した結果、9401通という大量の回収調査票が得られた。平成17年度には調査データの入力・クリーニングを行うとともに、今回の調査データを東京大学社会科学研究所が前年に実施したほぼ同じ内容の高校生調査と合体させることにより、「特色ある学科」に在籍する生徒とそれ以外の生徒との比較を可能にするデータセットを作成した。この合体データの分析結果から、主に以下の諸点が明らかになった。1)「特色ある専門学科」に在籍する生徒には、同じ分野の従来型の学科に在籍する生徒と比較して、性別の偏りが是正されていること、進学志望が増大していること、将来の職業志望や学習動機が明確である傾向があることなど、いくつかの望ましい特徴が観察される。2)「特色ある専門学科」全体で見ると進路先の決定が従来型の学科と比べてよりスムーズになっているとは言えないが、分野別に見ると、特に農業・水産系の分野において、就職先の内定獲得や専門学校進学先決定に関して、従来型の学科よりも成功率が高まっている。3)ただし、生徒の登校回避行動(遅刻、授業をさぼるなど)は「特色ある専門学科」の方が従来型の専門学科よりもむしろ頻度が高く、また教育内容の面白さややりがい、教育内容と将来の職業が関連していると感じる度合いなどについては「特色」の有無による違いがほとんどみられないなど、「特色ある専門学科」の効果が明確に現れていない側面も見出される。ここから、専門学科における「特色」の導入は一定の有効性をもつが、その教育内容については改善の余地がまだ存在するといえる。
著者
堀井 俊章
出版者
国立大学法人横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は青年期における不登校傾向の測定に関する調査研究である。主な結果は次の通りである。すなわち、青年期の不登校傾向を客観的に測定する有用な尺度が開発された。尺度は心理測定尺度として一定水準以上の信頼性と妥当性を備えていることが確認された。また、新たに開発された不登校傾向尺度を用い、不登校傾向の規定要因が検討され、その結果に基づき、青年期における不登校問題を予防・支援するための指針が提示された。
著者
外田 智千
出版者
国立極地研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.南極ナピア岩体に産する珪長質の超高温変成岩中の長石微細組織を用いた変成条件の解析とジルコン、モナザイト、アパタイトといった副次鉱物の組織観察をおこない、長石結晶のコアーリムの組成変化が超高温変成作用時に生成したメルトとの相互作用によるものである可能性ならびにアパタイト結晶の分解による二次的なモナザイトの成長等を見いだし、今後の微量元素分析ならびに年代測定のための基礎情報を得た。2.オーストラリア南極観測隊に参加して、南極プリッツ湾地域での超高温変成岩類の地質調査と副次鉱物の年代測定と微量元素分配解析用の岩石試料採取をおこなった。3.研究成果のとりまとめとして、以下の国際学会での研究発表(2件)と学術誌への英文論文の公表(3件)をおこなった:・第19回国際鉱物学会IMA2006(神戸市、2006年7月)において、南極ナピア岩体産超高温変成岩試料中から見いだしたペリエライトの産状・化学的特徴とその意義についての研究発表をおこなった(本科研費による出張)。また、その内容を英文論文として公表した(Hokada,2007)。・第16回ゴールドシュミット会議i(メルボルン、2006年8月)において、ナピア岩体に産する珪長質片麻岩中の長石微細組織から得られた変成プロセスならびに副次鉱物の挙動に関する研究発表1をおこなった(極地研究所プロジェクト研究費による出張)。また、長石微細組織を用いた超高温変成作用の解析結果に関する内容を英文論文として公表した(Hokada&Suzuki,2006)。・電子線マイクロプローブを用いたモナザイトU-Pb年代測定の分析手法ならびに南極産高温〜超高温変成岩試料の年代データを英文論文として公表した(Hokada&Motoyosi,2006)。