著者
立川 康人 寳 馨 佐山 敬洋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

治水計画の基準となる河川流量を求める場合、わが国では、降雨の確率規模を設定していくつかの降雨パターンを想定し、流出モデルを用いて対象地点の河川流量を求めるという手順をとる。このとき、入力となる降雨は、ある確率規模を定めたとはいってもその時空間パターンには無数のバリエーションがある。また流出モデルも完全なものではない。したがって予測される河川流量には多くの不確かさが含まれる。基本高水はこの予測の不確かさを把握し総合的な判断のもとに決定される。したがって、予測の不確かさを定量化し、不確かさが発生する構造を明らかにすることが重要である。予測値と共にその予測値の不確かさを定量的に示すことができれば、治水計画を立案する上で有効な判断材料を提供することになる。河川流量の予測の不確かさは、主として1)入力となる降雨が不確かであること、2)流出モデルの構造が実際の現象を十分に再現しきれないこと、3)流出モデルのパラメータの同定が不十分であること、から発生する。これらは基本的には観測データが十分に得られないことが原因であるが、洪水を対象とする場合、100年に1回といった極めて発生頻度の低い現象が対象となるため、すべての流域でデータを蓄積して問題を解決しようとするのは現実的ではない。ある流域で観測されたデータをもとに観測が不十分な流域での水文量を推定する手法を開発し、その推定量の不確かさを定量的に示すこと、またその不確かさができるだけ小さくなる手法を追求することが現実的な方法である。そこで本研究では1)降雨観測が不十分な流域における確率降雨量の推定手法の開発、2)降雨の極値特性を反映する降雨の時系列データ発生手法の開発、3)不確かさを指標とした流出モデルの性能評価と分布型流出モデルの不確かさの構造分析、を実施した。
著者
熊谷 朝臣 大槻 恭一 溝上 展也 市栄 智明
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

カンボジア熱帯季節林において、外来樹種は郷土樹種より光合成能力が高いが、乾季に気孔を閉じ気味になること、一方、郷土樹種は乾季も地中深くまで伸ばした根のおかげで雨季に貯えられた地下水を利用して気孔を開け気味にできること、が分かった。東南アジア熱帯雨林の主要樹種であるリュウノウジュを対象として降水遮断実験を行った。樹体内の通水分布を考慮した精密な樹液流計測により単木~個葉スケールの蒸散速度を算定することができ、蒸散と環境因子との対応関係から、乾燥条件の気孔開閉に及ぼす影響を考察した結果、リュウノウジュは乾燥に対して極端に気孔開閉による水利用の節約を行わないということがわかった。
著者
本仲 純子 村上 理一 金崎 英二 森賀 俊広 藪谷 智規 村井 啓一郎 中林 一朗
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度はルーマニア(ブカレスト市)と日本(徳島市)で大気から採取された採取された粉じん試料の分析を行った。その結果、大気粉じんに含まれる重金属の組成に明瞭な地域差が確認された。特徴は鉛の濃度がブカレストで高く、日本で低いものであった。本試料採取時には、ルーマニアは欧州で残された数少ない有鉛ガソリン消費国の一つであったため(2005年1月より全面使用禁止)高くなったものと思われる。また、日本では貴金属元素が相対的に高い結果が得られている。これは、ガソリンの無鉛化とともに、排ガス浄化用の貴金属触媒起因と考えられる。また、得られた大気環境のデータの解析に利用するためルーマニアにおける環境調査および行政の対応等の精密な調査を行った。とくに化石燃料を大量に消費し、温暖化ガスを排出する産業であるセメント産業の環境改善に関する取り組みに対して調査を実施した。これに加え、環境試料からの金属抽出に関する論文を提出した。これは、低揮発性かつ高イオン伝導性を有するイオン性液体を金属抽出用溶媒として利用するものである。さらに、窒素酸化物および大気富裕粒子状物質の削減を指向した貴金属触媒を開発した。以上の成果は、複数の国際学会(内一つはルーマニアで開催された国際会議の基調講演に選出)および国際誌への掲載がなされた。
著者
古矢 旬 久保 文明 大津留 智恵子 橋川 健竜 廣部 泉 常本 照樹 酒井 啓子 中山 俊宏 西崎 文子 林 忠行 遠藤 泰生 久保 文明 大津留 智恵子 橋川 健竜 廣部 泉 常本 照樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

現代アメリカの国民意識、国家意識はいかなる要素、要因によって構成され、どのような理由でどのような過程を経て変容してゆくのか、本研究はこの問に対し、歴史、政治、政治思想、外交・国際関係、経済、文化、文学、宗教などの多元的な専門領域を通して接近を図った。それにより、建国期に形成された啓蒙主義的政治理念を主柱として成立したアメリカのナショナリズムが、その後の移民の波によってもたらされた様々なエスニック文化、宗教的観念を取り込みながら、国際秩序の内で次第に重きをなしてゆくプロセスに新しい光を当てることができた。
著者
村田 文絵
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

モンスーン低気圧はインドモンスーンの雨季(6-9月)にベンガル湾〜インド北西部に現れる1000km(総観規模)スケールの擾乱であり、擾乱の通過はしばしば多量の降水をもたらして洪水の原因となる。しかしモンスーン低気圧をターゲットとした観測は1970年代後半に実施されたMONEX国際観測プロジェクト以降あまり活発でなく、現在のより高い高度分解能(100m 以下)をもつ測器を用いて、またこの気象擾乱の構造を得るのに必要な時間間隔(12時間間隔或いはそれ以上)で観測を行う集中観測がほとんど行われていなかった。そこで本研究は2007年雨季に洪水災害で知られるバングラデシュの首都ダッカにおいて、高層気象観測の集中観測をバングラデシュ気象局の協力の下で実施し、(1)モンスーン低気圧がバングラデシュに及ぼす効果及び(2)モンスーン低気圧の内部構造について解析を実施した。集中観測によって4つのモンスーン低気圧を観測することができた。このうち2つはダッカの南のベンガル湾上で発生しダッカの西を通過した。他の2つはダッカ近傍で発生し西に進んだ。観測されたモンスーン低気圧に伴う活発な雲分布は顕著な非対称の構造を示し、低気圧中心の南〜南西象限に降水活発域が集中していた。(1)観測地点ダッカはモンスーン低気圧の中心より北及び中心付近を観測したため強い降水が観測されなかった。その一方でバングラデシュでは7月中旬〜下旬にかけて大洪水が生じたが、これはモンスーン低気圧によるものではなくモンスーントラフの北上という現象によって生じていた。(2)熱力学的な大気鉛直構造はモンスーン低気圧が南に発生している間バングラデシュではむしろ対流が抑制されたことを示した。また過去の研究においてモンスーン低気圧の中心付近の気温の観測結果に不一致があるが、今回観測された中心付近の気温は台風に似て周囲より暖かいという結果が得られた。
著者
佐藤 英明 西森 克彦 甲斐 知恵子 角田 幸雄 佐々田 比呂志 眞鍋 昇
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1)インドネシア・ブラビジャヤ大学生殖生物学部門教授のS.B.Sumitro博士を招聘し、「The use of zona pellucida protein for immunocontraceptive antigen」と題するセミナー、及びをウイスコンシン医科大学生化学部門助教授の松山茂実博士を招聘し、「Bcl-2 family proteins and cell death regulation」と題するセミナーを行った。また、国内からアニマルテクノロジーに関する専門家を4名招聘し、セミナーを行った。2)自治医科大学分子病態治療研究センター教授の小林英司博士を招聘し、「ブタは食べるだけ?」と題するセミナーを行い、アニマルテクノロジーによって家畜の意義がより広い分野で高まっていることについて情報を収集した。3)オーストラリア・アデレード大学において体細胞クローンの研究動向調査を行った。スウェーデン農科大学獣医学部において受精卵の大量生産技術の現状と将来の研究方向の調査を行った。インドで開催されたアジア大洋州畜産学会議において、アジアにおけるアニマルテクノロジーの動向について情報を収集した。4)オーストラリア・アデレード大学において、アニマルテクノロジーに関するアジアシンポジウムを共催し、世界の動向について情報を収集した。5)体細胞クローン技術による遺伝子欠損動物作出戦略について検討した。特に、「卵巣から採取した卵子を体外成熟させ、除核未受精卵をつくる。また体外成熟卵子を体外受精・体外発生させ、胚盤胞をつくり、そのような胚盤胞から胚性幹細胞株を樹立する。胚性幹細胞株を用いて遺伝子欠損細胞を作り、これを除核未受精卵に移植する。このような核移植胚を体外で培養し、生存胚を仮親に移植する」という戦略の有効性を検討した。6)調査結果をまとめ、「Animal Frontier Science」と題する本に計9編の論文を寄稿し、出版した。
著者
橋本 晴行 横田 尚俊
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本システムは、全体で9個のサブシステムの構成となることを示した。中でも、浸水被害予測と住民の避難行動のサブシステムが主要部分を形成している。そこで、まず、浸水被害予測のサブシステムとして、福岡市の那珂川下流域を事例として、家屋が密集した河岸における越流量公式の提案、及び、地上・地下空間に対する平面2次元浸水被害予測シミュレーション手法の構築を行った。これに基づく予測情報を住民に提供して早期避難を図るため、次に、避難のサブシステムについて、豪雨時における住民の予測・避難情報に対する危険性の認識と避難行動との関係性などを明らかにした。
著者
谷川 好男 金光 滋 塚田 春雄 秋山 茂樹 木内 功
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

この研究課題では,ゼータ関数の対称性,すなわち関数等式をモデュラー関係式を通して一般的に捉えることにより,従来の数多くの研究を高い見地から見直し,更なる一般化を試みることが目的としていた.この研究において,モデュラー関係式を,メイヤーのG-関数やフォックスのH-関数を積分核とすることにより,最も一般的な形で定式化することができたことは大きな成果である.これにより従来の多くの研究の意味がより明確に理解できるようになった.たとえばダヴェンポート-セガルに始まる数論的フーリエ級数の公式を,モデュラー関係式の観点から一般化し,多くの新しい例を与えることができた.またフルウィッツゼータ関数に対しても関数等式の新証明を与えることができたし,エスピノザ-モル,ミコラシュに触発され,関数等式をフーリエ級数展開とみなすことで,数論的に興味深い多くの積分公式を得た.これらの成果は現在,本にまとめるべく執筆中である.多重ゼータ関数も当研究の大きな研究対象であった.特にオイラー・ザギヤー型の2重ゼータ関数の,いわゆる「臨界領域」における虚軸方向の大きさの評価において,クラッツェルの2重指数和の理論を駆使することにより,非自明な結果を得,従来知られていた結果を大きく改良することができた.これは今後数論的関数の和の研究などにおいて多くの応用をもつと期待される.また3重ゼータ関数に対しても同様の研究を進め論文としてまとめた.上記以外のゼータ関数として,多変数の多項式ゼータ関数を扱った.ある種のクラスの多項式について,対応するゼータ関数の解析接続可能な判定条件を与えるとともに,自然境界を持つような例を構成した.
著者
加納 修
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

西洋中世初期のフランク王国では贈与などの契約や紛争解決において多様な象徴物が用いられていた。その中でも、とりわけフェストゥーカと呼ばれる棒や茎は、フランク王権の伸張に伴ってブルゴーニュ、バイエルン、あるいは南仏へと広まっていった。しかし、その際に、各地の法的伝統にしたがってフェストゥーカの用い方や意味が変えられていった。王権の主導のもとフランク王国に同質的な法文化が広まったように見えるが、実際には地域的な法的多様性が残存していたのである。
著者
土井 まつ子 八島 妙子 中川 善之 脇本 寛子 篠田 かおる 高橋 知子 近藤 陽子 三善 郁代 三鴨 廣繁 仲井 美由紀 山岸 由佳 根子 亜弓
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究で作成した感染対策支援プログラムを使用して、中小規模の病院5施設と老人保健施設2施設及び軽費老人ホーム1施設の計8施設に対して、感染対策の向上を目指し、1年間の支援を実施した。支援終了後に、支援中の記録、視察、質問紙調査、環境調査の結果を分析し、支援の効果を検討した。その結果、感染対策チームや感染対策マニュアルが整備され、全ての施設において組織横断的な感染対策活動が進展した。
著者
富松 宏太
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

Ge(001)表面にIV族元素X蒸着すると、XとGeからなる二量体(X-Geダイマー)が表面に形成される。平成19年度までの研究で、走査トンネル顕微鏡(STM)探針からのキャリア(電子・正孔)注入により、Sn-Geダイマーの表面からの傾斜を反転できることを明らかにした。さらに、STMで電子定在波を測定することにより、Sn-Geダイマーによる表面一次元電子の散乱を明らかにした。当該年度は、(i)X-Geダイマーの散乱ポデンシャルの形成機構と(ii)キャリアによるダイマー傾斜の反転機構を解明する目的で、Si-Geダイマーを作成し、Sn-Geダイマーの結果との比較を行った。実際にSi-Geダイマーは作成可能であり、これらのダイマー傾斜もSTMで反転できる。我々は、電子定在波をSTM測定し、電子伝導経路にX元素が位置するダイマー傾斜において、Si-GeダイマーとSn-Geダイマーが逆符号(引力または斥力)の散乱ポテンシャルを形成することを示した。さらに、清華大学(北京)の理論グループとの協同研究により測定結果を理論検証し、散乱ポテンシャルは伝導経路にある元素の原子軌道エネルギーから説明されることを見出した。これらの研究成果は、学術誌(Physical Review B誌)および国内外の学術会議で論文発表した。国際会議(ISSS5)において招待講演発表も行った。また、我々は、Si-Geダイマー・Sn-Geダイマーの傾斜反転に必要な電子エネルギーをSTMで精密測定した。上述の清華大学の理論グループと協同して、測定した電子エネルギーは表面周期欠陥の局在電子状態によって特徴付けられていることを示した。これらの実験・理論結果に基づき、ダイマーの傾斜反転は、「共鳴散乱」と呼ばれる電子の非弾性散乱過程により誘起されていることを解明した。一連の研究成果は、学術誌(Surface Science誌)で論文発表を行った。
著者
小野 尚之 堀江 薫 上原 聡 ハイコ ナロック 中本 武志
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、語彙意味論モデルと構文研究を基に語彙情報と事象構造の融合に関する日英語の比較対照研究を行うものである。中心課題は次の3つに集約される。(1)生成語彙意味論によるレキシコン研究の推進。生成語彙意味論モデルのクオリア(語彙情報)が事象構造の解釈をどのように決定するかという問題の解決を目指す。(2)言語における主観性(subjectivity)問題の解明。主観性が事象構造の解釈(例えば、心理状態述語など)にどのように影響するか。そして、構文選択にどのように影響するか。(3)語彙化・文法化における語彙情報と構文の融合についての新たな提案。語彙情報が構文に融合しさらに文法化していく過程には、類型論的に捉えるべき普遍性があることを示す。
著者
佐久間 亮
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

英領植民地における野生動物保護政策、とりわけ国立公園設立のプロセスの比較検討を 1930 年代に焦点をおいておこなった。その結果、英領アフリカにおける国立公園形成においては英本国の保護団体の影響力が行使され、それが現地社会の著しい軋轢をもたらしたこと、これに対して、英領アジア(とくにマラヤ)においては現地社会との媒介を果たすローカルな保護団体の存在が、保護政策をスムーズなものとしたことなどが明らかとなった。
著者
磯本 一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

内視鏡下に食道癌症例の癌部・周辺非腫瘍粘膜から生検サンプルを用いてマイクロアレイで同定した12種のヒトマイクロRNA(食道扁平上皮癌部で2倍以上の発現変化)を定量的に分析してみると、miR-1246、miR-1290、miR-196a、miR-196b、miR-1914、miR-424、miR-130b、miR-7、miR-455-3pが2倍以上発現上昇した。miR-203が2分の1以下に発現低下した。食道扁平上皮癌組織のmiR発現と臨床病理学的因子の関連性を明らかにするために、多段階に食道癌が発癌する過程においてmiRが果たす役割を解析する。しかしながら、異形成~上皮内癌~早期癌のサンプルが十分でなく、内視鏡下粘膜下層剥離術を用いて切除標本、施行時の血液サンプルを集積して、臨床病理database を構築した。化学放射線療法前後における非腫瘍部食道粘膜のmiRの変動を、6症例において統計的に解析した結果で有意差がなかったが、2倍以上増加したmiR-1914については放射線応答性miRである可能性があり、症例を追加し治療前後でその発現変動を追求する。食道扁平上皮癌における特性をさらに検討するため、アカラシア患者の食道粘膜における発現変化を検討した。対照群と比べて、アカラシアの食道粘膜では12種類のmiRで有意差がみられた。7つが有意に上昇、5つが有意に低下したmiRであった。注目すべき点は、食道癌をはじめとする多くの癌腫で発現上昇が報告されているmiR-21がアカラシア食道粘膜で上昇している点である。miR-21の標的分子として報告されているPDCD4、 SPRY1やCCDC12のmRNAが低下している。しかし、一方でmiR-1246、miR-196a、miR-196b、miR-1914、miR-424、miR-130b、miR-7、miR-455-3p、miR-203 はいずれもアカラシア食道粘膜では変動しておらず、食道扁平上皮癌の発癌過程における特性が示唆された。miR-1290は食道扁平上皮癌において血清miRが上昇している。miR-1290をターゲットに、食道扁平上皮癌特異的miRの特定を確かなものにしたい。
著者
岩崎 倫政 笠原 靖彦 船越 忠直 金城 政孝 藤崎 和弘 三浪 明男
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

Stromalcell-derivedfactor-1(SDF-1)を高純度硬化性ゲルに添加し、ウサギ膝軟骨損傷部に移植することで良好な軟骨組織再生が獲得された。本研究成果より、軟骨損傷に対する無細胞移植治療の可能性が示唆された。
著者
永井 敏雄 小室 一成
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

心血管再生治療、なかでも細胞移植治療は新しい心不全治療法として脚光を浴びているが、その効果の詳細な機序は不明である。我々は、自己組織化ナノペプチドPuraMatrixTMを用いたマウス心筋前駆細胞移植モデルを用いて、抗炎症作用を有する心筋前駆細胞分泌因子soluble junctional adhesion molecule-A (JAM-A)が、心筋梗塞後のリモデリング抑制効果の一部を担うことを解明した。また、新生心筋を評価するための遺伝子改変マウスを用いて、leukemia inhibitory factorおよび心筋前駆細胞移植のそれぞれが心筋再生効果を有することを明らかにした。
著者
有泉 高史 高橋 秀治
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

ツメガエル胚の未分化細胞塊(アニマルキャップ)を個々の細胞に解離し、アクチビンとレチノイン酸で処理してできた再集合体は膵臓に分化する。これを他の胚に移植して成体まで育てると、正常な膵臓と同じ構造をもつ第二の膵臓(異所性膵臓)が作られた。異所性膵臓の機能を摘出実験や糖負荷試験を通して解析した結果、異所性膵臓は形態だけでなく、血糖調節能力においても正常な膵臓と同等であることが確認された。
著者
王 芙蓉 加藤 伸郎 須貝 外喜夫 孫 鵬
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アルツハイマー病は大脳皮質での緩慢な神経細胞減少を特徴とする。神経幹細胞で補充する手法を開発し、その神経生物学的根拠について特に脳由来神経栄養因子の関与の面から明らかにすることを目的とした。アルツハイマー病モデルマウスにおいて、脳由来神経栄養因子を発現させることが知られている経頭蓋磁気刺激によって学習能力が改善することを見出した。蛍光を発する神経幹細胞を単離し、これを脳内へ移行させるための手技を利用可能にした。
著者
奥野 達也
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

病態時における細胞においては、疾患関連タンパク質の分泌およびプロテアーゼなどの分解により、さまざまに代謝・分解された代謝産物が生成される。このような疾患特異的な低分子量代謝産物を網羅的、包括的に解析した研究は、さまざまな問題から十分に成果を達成していない。申請者は、消化器がんに発現、生成が認められる低分子代謝産物を中心に網羅的に解析してがんバイオマーカーを同定し、将来の臨床応用をめざす。
著者
池田 裕明 西村 孝司 近藤 哲 宮本 正樹
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

【ヒト検体を用いた研究】食道癌患者の癌細胞HLA class I発現は癌組織CD8^+T細胞浸潤と相関し、癌組織CD8^+T細胞浸潤は良好な患者予後と相関することを見出した。即ち、CD8^+T細胞が食道癌の免疫監視に重要であり、HLA class I発現低下は食道癌の免疫監視回避機序の一つであると考えられた(論文投稿中)。157例の肺癌において、CD4^+、CD8^+両T細胞が浸潤する症例は良好な予後を示した。(Int J Oncol,2006)。CEAに対する抗体とT細胞レセプターのキメラ分子遺伝子を導入したT細胞を作成し、自家大腸癌に対する有効な抗腫瘍効果を示した(Cancer Sci,2006)。癌精巣抗原NY-ESO-1のCD4T細胞認識エピトープとして多種類のMHC class II分子に提示されるプロミスカスなペプチドを同定した(Cancer Sci.,2007)。骨肉腫腫瘍抗原としてCLUAP1を同定した(lnt J Oncol,2007)。【マウスモデルを用いた研究】抗原提示細胞とI型ヘルパーT細胞の相互作用の抗腫瘍効果における重要性(Cancer Res,2006)、トル様レセプターリガンドCpGを用いた腫瘍ワクチンにおけるI型インターフェロンの重要性(Int Immunol,2006)を見出した。腫瘍進展と共に腫瘍内制御性T細胞(Treg)が増加し、同時に腫瘍特異的T細胞移入療法の効果が低下した。T細胞共活性化分子GITRを刺激することにより腫瘍内Tregが減少し、T細胞療法が増強した(基盤的癌免疫研究会2007東京、CRI symposium 2007NY、日本癌学会2007横浜、日本免疫学会2007東京)。GITRを始めとする共活性化分子を刺激する方法が腫瘍の免疫監視エスケープ機序を克服する有望な技術となることが示唆された。