著者
北村 匡大 片岡 浩海
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.D1703, 2008

【はじめに】大動脈瘤破裂に対しては、通常手術を施行し、施行しない場合は生存率が低いことが知られている。今回、胸部大動脈瘤(以下TAA)破裂後、保存的加療を行った症例に対しての理学療法を経験し、ADL向上を認めたので、ここに報告する。<BR>【症例紹介】87歳女性、病前ADL自立、NYHAI度。TAAにて近医に通院中であった。2007年8月9日夜、突然の胸痛後ショック状態となり、近医に救急搬送となり、CTにてTAA(遠位弓部)破裂および左血胸と診断。当院へ搬送入院、ICU管理となる。治療は家族の希望もあり、手術はしない方針で安静、鎮痛・鎮静などによる対症療法にて保存的に様子をみた。入院時JCSクリア、収縮期血圧120mmhg(ニカルピン静注10ml/hr)、HR60台、SpO2 94~97%(02 10L/min)、体動にて喘鳴著明。貧血を認めたため、赤血球濃厚液4単位輸血後バイタルサイン安定。入院5日目左血胸に対し胸腔ドレナージ間歇的に施行。入院6日目に一般病棟へ転棟。入院44日目Dr指示よりADL向上目的、安静度ギャッジアップ60°まで、収縮期血圧100~130mmHg範囲内、SpO2 95%以上にてベッドサイドより理学療法開始となる。<BR>【理学療法開始時所見】JCSクリア、認知症 軽度、Demand 家に帰りたい、GMT 上肢3 体幹2 下肢2、疼痛 腰部周囲筋群・両下肢筋群に伸張痛、ROM 股・膝関節に屈曲制限、足関節に背屈制限、基本動作・ADL動作 全介助FIMは48点であった。臨床所見として、表情良好、O2 2L/min、痰はほぼなし、左呼吸音減弱、食事は経口摂取と高カロリー輸液の併用、末梢冷感有、足背動脈触知可。X線で左肺血胸認め、NYHA IV度であった。<BR>【経過】理学療法開始1日目(入院44日目)ギャッジアップ30°、軽度の筋トレ、ストレッチ施行。翌日O2 off。9日目 ギャッジアップ90°、その後深部静脈血栓症認め立位は保留。22日目 下大静脈フィルター留置後、翌日より座位、車椅子、P-トイレ、機械浴開始。27日目 歩行器歩行開始(10m程度息切れ有)、39日目 本人・家族の希望もあり近院に転院となる。歩行器歩行(100m息切れ無)。ADL動作はFIM 72点であった。<BR>【まとめ】TAA破裂後の予後は厳しい報告が多い中、保存的加療行った症例の理学療法を経験した。病態が十分に安定しているとはいえない中、運動療法施行では、低負荷・頻回のメニュー、運動中の息こらえ、息切れ、旧Borgスケールで11~13程度以下の疲労感に注意しながら行った。結果、理学療法開始39日間にてADLの向上を認めた。この背景としては、再破裂を起こさなかったこと、病前ADLが高かったこと、本人の在宅復帰への要望が強かったことが考えられた。

1 0 0 0 OA 独訳書

巻号頁・発行日
vol.第五巻, 1888
著者
片山 望 三浦 利彦 本間 優希 石川 悠加
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.DbPI1367, 2011

【目的】<BR> 高位頸髄損傷の長期呼吸管理は、気管切開下での人工呼吸管理となることが多い。しかし、侵襲に伴う合併症が起こり得るだけでなく、様々なADL上のデメリットが生ずる。今回、当院で高位頸髄損傷における気管切開人工呼吸(TPPV)管理から、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)へ移行した症例を経験したので報告する。<BR>【方法】<BR> 症例は45歳男性。ラグビーの試合中に受傷し、搬送先の病院でC3頸髄損傷(ASIA-A)と診断され、術後も自発呼吸無くTPPV管理となった。第41病日、人工呼吸器離脱と在宅療養移行目的で大学病院へ転院するが、離脱困難。第252病日、長期療養目的で転院。第411病日、気管カニューレによるトラブル、在宅ケアシステム確立困難にて家族・症例の希望と日本せきずい基金からの紹介により、NPPVへの移行目的で当院へ転院。当院よりDr・Nsが迎えに行き、民間航空や障害者移送サービスを利用し搬送となった。当院入院時は自発呼吸無く、C4以下の運動知覚麻痺の完全四肢麻痺。読唇にて意思伝達可能。カフ圧抜くとわずかに発声も可能。吸引時、気切孔からの出血あり。入院当日から気管切開チューブ抜去の準備として、カフ圧・酸素投与量の軽減、SpO2が確保できるように人工呼吸器の機種変更や設定を行った。頭頸部側方から撮影したX-Pで上気道狭窄がないことを確認し、気管カニューレをボタンで塞ぎ、NPPVの条件やインターフェイスの調整を行った。さらに、カニューレ抜去後、上気道の分泌物を喀出する為に器械的な咳介助(mechanical insufflation-exsufflation:MI-E)の導入も行った。<BR>【説明と同意】<BR> 症例とご家族へ事前に本報告の目的と内容を説明し、同意を得た。 <BR>【結果】<BR> 入院5日目、カフ圧なし、気切孔を塞いだ状態で、ナーザルマスクにてNPPV装着。胸腹部の呼吸運動、SpO2の維持を確認して気管切開チューブ抜去。気切孔には皮膚潰瘍治療用ドレッシング材を貼付。抜去直後、SpO2は98~99%(room air)、HR60bpm前後、PtCO2は40~44cmH2Oと安定した。その日の夜にSpO2が80%台まで低下。MI-EとPTによる徒手介助にて、血性粘調痰喀出し、SpO2は正常値となった。しかし、分泌物貯留によるSpO2の低下と呼吸苦が繰り返されるため、病棟NsかPTによる一時間毎と、モニター下でSpO2<95%になった場合にMI-Eを行った。抜管2日目には車いすに乗車し、食事もNPPV下で摂取可能となった。抜去後数日は、MI-Eの回数は平均10回/日と多かったが、抜去後2週間後からは、食事などでムセない限り3回/日で安定。抜去後18日目、気切孔は自然閉鎖。呼吸機能については、(1)肺活量、(2)最大強制吸気量(maximum insufflation capacity:MIC)、(3)咳の最大流量(cough peak flow:CPF)を計測。抜去直後(1)150ml(2)1,000ml(3)0L/min、抜去後2週間後(1)200ml(2)1,500ml(3)75L/minであった。<BR>【考察】<BR> TPPVはカニューレや頻回の吸引による気道の潰瘍、肉芽の形成、感染や気道分泌物の亢進、発声困難や嚥下障害などあらたな合併症を引き起こすことが多い。また、医療的ケアの困難さから、介護者の負担やケアシステムの構築に問題が多い。それらの問題点をNPPVでは回避することができるが、NPPVの安全で効果的な活用には、気道クリアランスの問題が挙げられる。本症例は呼吸筋の麻痺に加えて、約一年間の気管切開による喉咽頭機能の低下があり、徒手的な呼気・吸気介助では、排痰は困難であった。そこで、抜管時には気道クリアランスの維持として、MI-Eと徒手介助を集中的に行うことで再挿管に至らず、NPPVへの移行が可能となった。また、気道確保の手段が確立していることで、経口摂取を試みることができ、数日後には発話も聞き取りやすい程に喉咽頭機能の回復がみられた。本症例のように、痰の自己喀出が困難であっても、気道クリアランスが維持できる手段を確保していれば、高位頸髄損傷はNPPV管理下でも十分なQOLを維持できると考える。今後は、家族へのMI-E指導や、症例に胸郭や肺のコンプライアンスを維持するための深吸気練習の指導、また、呼吸器を使用せずに吸気を行なえる舌咽頭呼吸を獲得することで、人工呼吸器からの離脱が短時間でも可能になれば、食事や入浴などのADL、リスクマネジメントにも有用であり、在宅生活を可能にするケアシステムが構築される可能性も出てくると思われる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 欧米では神経筋疾患の分野において、NPPVやMI-Eの使用により気道クリアランスを維持することで、気管内挿管の回避や抜管を促進し、QOLの維持、医療コストの削減になるという報告がある。しかし、本邦における理学療法の介入の報告はまだ少ない。本報告は、今後の頸髄損傷の医療的・社会的ケアシステムの構築について意義のある知見を提供できるものと思われる。
著者
藪田 貫 陶 徳民 大谷 渡
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の成果は、つぎの3つからなる。第1にアリス・ベーコンJapanese Girls and Women『日本の女性』の翻訳である。翻訳は初版本全10章のうち第5章、日本の女性の一生に関する部分までの翻訳を終え、本成果報告書に収めた。6章以下に天皇・皇后をはじめとする身分ごとの女性に関する叙述が続くが、それについては時間的な制約から、期間内に終えることができなかった。また津田梅子、大山捨松、アリス・ベーコンらの間に交わされた書簡を調査・閲覧することで本書の成立事情を明らかにすることができた。第2に津田梅子の留学、帰国後の津田塾の創設に代表される近代日本の女子高等教育の歩みを、同時代の日本史およびアメリカ史の文脈から位置付け、とくに1984年に発見された屋根裏の手紙など英文の史料から女子教育に生涯を捧げた梅子を通じて明らかにした。第3に津田梅子とともに留学し、生涯、強い姉妹愛に結ばれていた大山捨松・永井繁子らの日本での活動を、「婦女新聞」を通じて明らかにした。女性の社会的地位の向上、女子教育の振興を目指して1900年に発刊された「婦女新聞」は、廃刊となる1942年まで、廃娼運動・職業問題・母性保護・女子教育などを論じたが、そこには梅子・捨松らの投稿記事と並んで、彼女たちに関する記事も頻出するが、これまでこれほど多量に集約されたことはない。これらは梅子たちに関する同時代的証言として、今後の研究の礎石となるものである。本研究の開始に前後して、日本・アメリカ双方で、近代成立期の女子高等教育に関するあらたな研究が進展を見せている。そのような研究潮流に呼応して本研究も成果をあげることができたと総括できるだろう。
著者
河野 裕治 山田 純生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.D0647, 2004

【はじめに】労作時疲労感の軽減を目的とした換気補助(PAV)の先行研究は、これまで主に呼吸器疾患患者に対して行われており、健常人を用いた検討も十分でない。健常人を用いたこれまでの研究では、最大酸素摂取量の近傍の強度や漸増負荷を採用しており、廊下歩行など臨床場面への応用には実験条件が異なるため更なる基礎的検討が必要とされていた。本研究ではPAVの臨床応用を想定し、健常人を対象としてPAVによる生体反応を検討した。<BR>【対象と方法】喫煙歴、肺疾患歴のない健常成人11名(男性8名、女性3名)を対象とした。最初に自転車エルゴメータを用いた心肺運動負荷試験を行い、呼気ガス分析より各被験者の嫌気性代謝閾値(AT)を求めた。次にATの90%の負荷量で12分間の自転車エルゴメータ駆動をPAV無しで行う実験1と、12分間の後半6分間にPAVを行う実験2の2施行を行なった。PAVはミナト医科学(株)製Hyper Reflex HR50を改造し90L/分の吸気PAV装置を作成した。運動時の吸気補助は被験者が手動スイッチを操作することにより行った。こうして、実験1、2における運動後半6分間における主観的疲労度(Borg指標)、心拍・血圧反応ならびに呼吸ガス代謝指標を比較・検討した後、運動6分目と12分目の各指標の変化度よりBorg指標の変化に関連する要因を調べた。統計手法は時間を主効果とする二元配置分散分析ならびにPearsonの積率相関係数を用いた。有意水準は5%とした。<BR>【結果】実験1、2ともVO<SUB>2</SUB>は定常状態を示した。VEは実験1では6分以降も時間と共に増加し続けたのに対し、実験2ではPAV開始直後から低下した。VE 同様、他の生理学的指標もPAV開始直後から低下したが、Borg指標はPAV開始4分目から低下を示し、他の指標との時間的ズレが認められた。PAVにより増加が見られた指標はTVEのみであり、VE、RR、VE/ VCO<SUB>2</SUB>、ETO<SUB>2</SUB>、Borg(C)、Borg(L)、DP、HR、BPは全て有意な低下を示した。Borg指標の変化度と関連する生理学的指標は認められなかった。<BR>【考察】PAVにより主観的指標、換気指標ならびに心拍・血圧指標は低下を示した。これはPAVによる吸気筋の仕事量を軽減させた結果もたらされたものと思われた。しかし、主観的労作度の関連要因は今回の検討からは特定できずPAVの条件設定や症例を増やして今後検討すべき課題となった。<BR>【結語】AT以下の低強度運動負荷時においても、PAVは主観的労作を軽減し、呼吸ガス代謝ならびに心拍・血圧指標を低下させることが確認された。今後は呼吸ガス代謝ならびに他の関連指標との検討から、PAVによる労作軽減機序に関する検討を進めることが必要と思われた。
著者
鈴木 康文 丸山 仁司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.A0901, 2004

【目的】<BR> 筋肉系は持続的な運動負荷によって、筋細胞と関節や筋の結合組織の発達が促進される。その結果、筋の太さ、横断面積が増大し、最大筋力の増加をもたらす。そして、筋肉内毛細血管の増加をきたさせ、筋肉に対する循環血液量を増大させる。このことから、最大筋力が高ければ筋肉内毛細血管数は多く血液供給能力が高いと推定でき、自転車エルゴメーターのペダル踏み運動などで漸増負荷運動を行なわせると、最大筋力が高いほど相対心拍数における仕事率が大きいと考えられる。そこで、本研究では自転車エルゴメーターを用いた漸増負荷運動を行い、目標心拍数(心拍数の増加率50%)に至ったときの作業強度(PWC <SUB>HR50%</SUB>)を測定し、PWC <SUB>HR50%</SUB>に影響を及ぼしている因子について検討した。<BR>【対象と方法】<BR> 対象は地域情報誌にて体力測定の参加を募集し、体力測定によって悪化が予想される内科的・整形外科的問題がないと医師に判断された60歳以上の中高齢者11名(平均年齢71.9±4.2歳)とした。PWC <SUB>HR50%</SUB>と下肢筋力、酸素運搬能力との関係を検討するために、PWC <SUB>HR50%</SUB>と膝伸筋群の60deg/secにおける最大トルク、赤血球数およびヘモグロビン量とについてPearsonの相関係数を算出した。さらに、PWC <SUB>HR50%</SUB>に関与している因子の影響力を検討するために、目的変数をPWC <SUB>HR50%</SUB>とし、年齢、体重、身長、60deg/secにおける最大トルク、赤血球数、Hb量の6変数を説明変数として、変数増加法による重回帰分析を行った。<BR>【結果および考察】<BR> PWC <SUB>HR50%</SUB>と60deg/secにおける最大トルクとの間に有意な相関(r=0.76)がみられ、60deg/secにおける最大トルクが大きいほど、PWC <SUB>HR50%</SUB>が高くなる傾向を示した。PWC <SUB>HR50%</SUB>と赤血球数、Hb量とには有意な相関が認められなかった。また、重回帰分析の結果、negative変数として年齢、positive変数として60deg/secにおける最大トルク値が採択され、重相関係数は0.81(p&lt;0.05)であった。また、この2つの説明変数のうち、どちらがPWC <SUB>HR50%</SUB>により大きな影響を与えているのかを標準偏回帰係数の絶対値で比較すると、年齢(β=0.295)より60deg/secにおける最大トルク値(β=0.795)のほうが大きく、PWC <SUB>HR50%</SUB>に及ぼす影響の強さは、年齢より60deg/secにおける最大トルク値のほうが大きいことが示された。<BR>本研究からPWC <SUB>HR50%</SUB>と60deg/secにおける最大トルク値との関連性が強いことが明らかになり、下肢の最大筋力を推定するのにPWC <SUB>HR50%</SUB>の測定が有効である可能性が示された。
著者
友岡 賛
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.13-28, 2019-04

昭和期の日本はそこにわれわれは近代会計制度の成立をみることができるのか。この問い掛けを軸に昭和の日本会計史をもって辿る。論文
著者
鳥居 和代
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、1950~60年代の戦後日本の漁業地域において、家庭や地域を巻き込んだ学校内外にわたる生活指導がどのように展開されたのかを明らかにすることにある。2019年度は、次のような調査研究を行った。第一に、前年度に引き続き、東京大学教育学部図書室において、教育学者の大田堯や千葉県教育研究所が関与した、千葉県房総半島の最南端に位置する漁村における1950年代初頭の教育計画に関する報告書等を調査した。第二に、上記漁村の小学校を事例として、1950年代初頭における標準語教育と方言教育の実践について調査研究を行った。千葉県の館山市立博物館本館所蔵の学校日誌を閲覧するとともに、館山市立図書館において、安房地方の漁村の歴史や方言に関する諸資料を収集した。また、当該時期に収録された安房地方の方言音声資料を入手した。第三に、千葉県の銚子市公正図書館において、銚子の方言に関する郷土史料や、1960年代に漁村の小学校でことばなおしの実践に携わった元教員に関する資料を収集した。とくに、第一と第二の調査研究によって、次のことが明らかになった。すなわち、(1)1950年代初頭の漁村の一小学校では、大田堯らの関与によって、標準語教育の見直しと方言の尊重ということばの実践の深化がみられたこと、(2)当小学校ではやがて標準語か方言かの二項対立を超えて、浜者(漁民)と岡者(漁民以外)との階層的な差異や、それに基づく子ども間の「劣等感」と「優越感」とを解消していくための人間関係づくりの視座が獲得されたこと、(3)その意味において、ことばの指導から生活指導の次元へと向かう実践の方向性が確認できることである。本成果は、教育史学会第63回大会において発表した。
著者
橋本 賢一 笠巻 祐二 芦野 園子 奥村 恭男 久保 公恵 杉村 秀三 中井 俊子 渡辺 一郎 斎藤 穎
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.16-21, 2006

背景: 両心室ペーシング( B V ) 療法は薬剤抵抗性心不全患者に有効な治療法であるが,必ずしも心臓突然死を減少させるとは限らない.一方μVレベル T-wave alternans(TWA)は心臓突然死の予知に対する有用性が示されているが,BV療法がTWAに及ぼす影響に関する検討は少ない.目的: 今回われわれは, 両室 pacing(BiP) , 右室 pacing(RVP),左室 pacing(LVP)を施行し, TWAに及ぼす影響について検討した.対象と方法: 連続7 例( 男性5 ) , 陳旧性心筋梗塞1 例, 拡張型心筋症6 例( EF31±7% ) を対象として行い, TWAの検出は,各ペーシングモードにおいて HR70~120bpmまでペーシングレートを漸増させTWAの測定を行った.結果: 平均 Valt は BVP,RVP および LVP で 193±0.6, 0.92±0.5および 1.45±0.8(p<0.01vs RV). alternanas ratioはBVP, RVPおよびLVPで 11.9±4.83, 4.83±2.9および 6.5±2.2. TWA陽性率は BVP,RVPおよびLVPで 71%(5/7), 67%(4/6)および 50%(2/4)であった.結語:BVPによる高いTWA陽性率は再分極の不均一性の増大をもたらす可能性が示唆された.
著者
小川 栄一
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究代表者は、2012年度より「江戸語・東京語におけるコミュニケーション類型の研究」のテーマで科研費の交付を受け、現在は2018年度から第2回目の交付を受けている。2019年度における研究実績は次の2点である。(1)式亭三馬『浮世風呂』データベースの作成上記の談話分析を近世後期江戸語資料にも適応すべく、その基礎的な作業として『浮世風呂』データベースをコンピューター上に作成している。『浮世風呂』中の会話を句単位で区切った上で、話し手、聞き手、会話のタイプ、ストラテジーなどの情報を付加して、検索や集計が容易にできるようにしている。近い将来に公表することも予定している。(2)『浮世風呂』における敬語使用の特徴上記データベースを用いて、『浮世風呂』における敬語使用は、主として品格保持のために行われているという予測を立てている。その理由は、『浮世風呂』における敬語は、尊敬語・謙譲語の使用率が低く丁寧語・美化語の使用率が高いこと、年齢の上下関係に基づく使用(年長者には敬語を用い、年少者には用いないということ)とは明確には断言しにくいこと(たとえば、年少者に対する敬語使用が中層・上層では多いこと、完全に上下関係によるものであれば年少者に対する敬語使用はもっと少ないはずである、敬語使用は階層が高くなるほどその率が高くなる傾向が顕著であること、女性の敬語使用率が男性よりも高いこと)などの傾向があるからである。すなわち、『浮世風呂』では階層の高い人物や女性における敬語使用率が高いのであって、年齢や身分の上下関係においては明確な傾向が出ないことから、上下関係に基づく敬語使用よりも、品格保持のために敬語が使用される傾向が顕著と考えられる。これは江戸市民の高い意識に基づくものと考えられる。この結果を数値化した上で、近日中に論文として公表すべく執筆にとりかかっている。
著者
橋本 健一 八谷 和彦
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.229-236, 2006
参考文献数
23
被引用文献数
1

The photoperiodic induction of diapause in a newly established population of Pieris brassicae (L.) in Hokkaido, Japan was investigated. The critical photoperiod for pupal diapause was about 13hr50min at 20℃. In the fields of Sapporo City in Hokkaido, diapausing pupae were obtained late in September. The present results obtained in the laboratory correlated well with the photoperiodic conditions of the diapause incidence observed in the field late in September. A well synchronized emergence from diapausing pupae was induced by chilling at 5℃ or 10℃ for 160 days. The conditions were comparable to the period of cold season in the habitat of this population.
著者
弘末 雅士
出版者
東南アジア学会
雑誌
東南アジア -歴史と文化- (ISSN:03869040)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.10, pp.142-173, 1981

At the end of the 19th century, the self-sufficient economy of the Eastern Toraja Society was disintegrating under the influence of commercial trade at Tomini Bay. Social stratification among the members of the village took place and many fell into debt.<br>In this situation, the village chief had to redeem the villagers' debts and at the same time maintain law and order in the village despite frequent contact with the outside world. It was this period when Christian missionaries started to work. To respond to the above mentioned problems, the chiefs approached the missionary who was sent from Dutch Missionary Society and was on close terms with a Chinese merchant at Poso. In due course, missionary schools were opened at such villages as Panta, Tomasa, Buyumbayo, and othors. Headmen of the villages expected the schools to reconstruct the social order.<br>In 1901, the Dutch government abandoned it's policy of non-intervention and after 1905-1907, Eastern Toraja was put under its direct rule. Various policies such as head tax, wet-rice cultivation and moving to the lowland were introduced through chiefs. It was these headmen who supported the Dutch rule. On matter of missionary work, the church as a result, did not dare to oppose the chiefs. At first, the missionaries did not prohibit the polygamy of the chief and other social custom with the exception of headhunting.<br>Moreover, in these undertain situations tadu or prophets attracted many people who were dissatisfied with existing state of things. Then in 1902 and 1908, large religious movements called mevapi arose. The participants of the movements attempted to escape existing circumstances by concentration on heavenly release.<br>While these religious movements arose, the young generation which had graduated from school attempted to participate in commercial trade and plant coffee or coconuts. Under the support of those who were on the rise, the church was entitled to recetive independent authority. Ultimately, in 1910 the church attacked the traditional customs which went against Christianity and prohibited Toraja christians from mowurake, molobo and motengke.<br>But when the new order was established, the Dutch govermnent returned the authority, which was taken away form the headmen during the first few years, to the active hands. Consequently, It was difficult for church to gain independence over the headmen.
著者
大出 亜矢子 土光 智子 陳 文波
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.339-344, 2015

<tt>本研究はインドネシアスラウェシ島山岳地トラジャ地域農村において実施した生業項目に関する半構造型インタビュー調査とそのネットワーク分析から</tt>,<tt>過去</tt>40 <tt>年間の生業構造変化について分析する。各時期における生業項目の地域内の位置づけについてネットワーク中心性指標によって算出し</tt>,<tt>それぞれの時系列変化をとらえた。固有ベクトル中心性指標の時系列変化過程の</tt>t<tt>検定の結果から</tt>, 1979-1980, 1999-2000, 2009-2010<tt>の</tt>3<tt>時期に有意な変化が検出され</tt>,<tt>近年の多生業化傾向が示された。トレンド変化点との重複から道路や水利造成等の土地改変との関係性が示された。</tt>
著者
井原 久光
出版者
長野大学
雑誌
長野大学紀要 = BULLETIN OF NAGANO UNIVERSITY (ISSN:02875438)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.93-111, 2004-03-31

本稿は、ブランドに関する定義や理論を整理し、その具体的な事例としてハーゲンダッツのブランド構築についてまとめたものである。前半では、ブランド識別の主体を、売り手(企業)、買い手(消費者)、第三者(法的機関)に区分し、ブランド機能を①識別機能、②品質保証機能、③意味づけ機能に分けて整理した。さらに、ブランドカを「知名度」→「信頼度」→「魅力度」というランクで示したモデルも提示した。情報化社会の進展にともなって「企業」が示す「識別機能」や「品質保証機能」に加えて、「消費者」のいだく「意味づけ」が重要になりつつある。そのため単に「知名度」や「信頼度」を上げることより「魅力度」を向上させる必要性が高まっている。また、個別の製品ブランド管理よりも企業全体のイメージを向上させる全社的戦略が求められており、そのためのヒントも提供した。後半は、日本におけるハーゲンダッツの成功事例を通じてブランド構築の過程を具体的に検証した。
著者
石上 惠一 星野 浩之 武田 友孝 月村 直樹 高山 和比古 青野 晃 大岩 陽太郎 濱田 久 島田 淳 片山 幸太郎 大木 一三
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.481-487, 1992-06-01
被引用文献数
16 2

最近,スポーツ医学の一分野として,スポーツ歯学が注目されつつある.これは顎口腔系の状態と全身状態が,密接に影響しあっていることから当教室ではこれらを客観的,生理学的および科学的に探究することを目的とし,検討を行っている.本研究は,その1つとしてスポーツの中で,その種目により静的な基本姿勢,"゜構え"が要求されるアーチェリー競技において,レジンスプリントを装着し,そして咬合させることにより得られた状態とその挙上量の変化とが"的"′を捕らえるときの"構え"の安定性,すなわち重心動揺にどのような影響を与えるかを検討するため,まずその基礎的一資料を得る目的で行ったものである.