著者
笹原 和俊 杜 宝発
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.65-77, 2019

<p>道徳は人々を結びつけ,集団を形成する原動力になる一方で,集団を敵と味方に分断し,対立を生む要因にもなる。ソーシャルメディアはこのプロセスに関与し,場合によってはそれを加速させる危険性もある。本論文では,Twitterから収集した大規模なLGBT(性的少数者)関連の投稿(ツイート)を分析し,ソーシャルメディアにおける道徳的分断の実態を調査した。LGBTをめぐる社会の動向には,多様性を目指す社会にとって重要な道徳的問題が含まれる。LGBTツイートの拡散をネットワーク分析によって調べたところ,高い道徳的類似性(ホモフィリー)を持つ少数のコミュニティが形成されていることがわかった。さらに,英語と日本語の道徳基盤辞書(MFD及びJ-MFD)を使ってLGBTツイートの投稿内容を分析したところ,英語でも日本語でも共通して,LGBTは忠誠基盤の問題,つまり,集団に関わる道徳的問題として語られていることがわかった。また,忠誠基盤に加え,あるコミュニティは擁護基盤,別のコミュティでは権威基盤という具合に,コミュニティによって異なる道徳基盤を重視する傾向があることも示された。このことが道徳的分断と関係している可能性がある。これらの結果は,ソーシャルメディア上の道徳的分断を計算社会科学のアプローチで理解し,道徳的分断を緩和するための方略を考える上で重要な示唆を与える。</p>
著者
白石 和弥 石森 裕康 奥村 一 下薗 健志 糸山 享
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.64, pp.122-125, 2017

<p>神奈川県におけるミナミアオカメムシの分布状況を明らかにするため,2015年から2016年の2年間にわたり,同県内の複数地点の圃場における発生を調査した。2015年の調査では,川崎市において神奈川県内では初めてとなるミナミアオカメムシの発生を確認した。2016年の調査では,川崎市に加えて藤沢市,横浜市でも発生を確認し,小田原市に設置された予察灯への誘殺も確認した。以上の結果から,日本国内での分布域を拡大しているミナミアオカメムシが神奈川県においても定着している可能性があるため,今後の継続的なモニタリングが必要と考えられた。</p>
著者
西村 有平
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.150, no.2, pp.88-91, 2017 (Released:2017-08-08)
参考文献数
37
被引用文献数
1

新たに承認される薬の数は,開発コストあたりに換算すると過去数十年間に渡り減少し続けている.この課題の解決に向けたアプローチのひとつとして,ゼブラフィッシュを創薬に導入する機運が高まっている.ゼブラフィッシュは,ヒトへの外挿性,組織の複雑性,化合物スクリーニングの簡便性・高速性の三軸において比較的優れたバランスを持つモデル動物であり,産学官ともに創薬ツールとして利用される機会が増えている.本総説では,ゼブラフィッシュの表現型を指標とするin vivoスクリーニングを基軸とする創薬と,データベースなどを利用したin silicoスクリーニングとゼブラフィッシュの統合的利用を基軸とする創薬,という二種類のアプローチを用いた神経疾患治療薬の開発について概説する.また,ゼブラフィッシュを用いて発見された疾患治療薬が臨床に進んでいる具体例を提示する.今後,ゼブラフィッシュを用いた創薬研究の発展に伴い,ゼブラフィッシュで発見される疾患治療薬が臨床において真に有用である割合が明らかにされ,トランスレーショナルリサーチツールとしてのゼブラフィッシュの意義が確立されていくことが期待される.
著者
青木 宙
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.400-407, 2007 (Released:2007-05-28)
参考文献数
55
被引用文献数
1
著者
ブラン スティーベン
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.300-305, 2019

<p>図書館は,物理的・デジタルの書庫としてのみならず,さらに別の役割を果たすアーカイブズとしても機能している。すなわち,蔵書,利用者の行動,そしてそれらに関わるすべてのデータのアーカイブズである。しかし,この機能は,図書館自身と利用者の双方からしばしば見過ごされている。こうしたデータ・アーカイブズの可視化は,教育・研究の両面において,コミュニケーション,分析,教育のための媒体として利用可能であり,教育と学習における図書館の役割を再考するための,新しい枠組みを提供する。本稿では,ノースイースタン大学図書館において作成された視覚化プロジェクトをケーススタディとして,図書館におけるデータ視覚化の活用について報告する。そしてこれらのプロジェクトが,教育・研究における図書館の機能を再文脈化するために,どのように活用されてきたのかについて議論する。</p>
著者
義永 美央子 潘 英峰 Yoshinaga Mioko Pan Yingfeng ヨシナガ ミオコ
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.23, pp.53-64, 2019-03-31

本稿では、附属図書館ラーニングサポーターの活動の現状およびラーニングサポーター自身の学修支援を通じた学びを理解することを目的として実施したアンケート調査およびインタビュー調査の結果を報告する。調査の結果、ラーニングサポーターは主にスキルや態度面での自己の変化や成長、具体的には、「コミュニケーション能力の向上」「学習・研究に対する姿勢の変化」「積極性・主体性の向上」「LS としての自覚の向上」を認識していた。また留学生に対する支援を通じて、「コミュニケーション能力の向上」「視野や態度の変化」「日本語に対する理解の深まり」「学習意欲の向上」を感じていることが明らかになった。
著者
前田 久美子 佐藤 美保子
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.41, pp.147-161, 2020

本稿では、2 年間2名の非常勤講師がインテリアデザイン教育を本学129 教室と図書館においてクリスマスディスプレイをテーマに、プロジェクト学習として取り組み考察している。その結果、実践的な学習であるアクティブラーニングが学習活動の意欲やコミュニケーション能力の発達に効果をもたらすと考えられた。今後のインテリアデザイン教育の授業運営と研究について、継続的に考察することとする。
著者
塚越 奈美 秋山 麻実 志村 結美 川島 亜紀子 小島 千か 渡邊 文代 佐藤 和裕
出版者
山梨大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = Journal of Applied Educational Research (ISSN:18816169)
巻号頁・発行日
no.25, pp.1-9, 2020-03

本研究は,山梨大学附属図書館子ども図書室に利用者はどのような魅力を感じているのかを探るものである。この目的のために,子ども図書室の主な利用者である山梨大学教育学部附属幼稚園児の保護者を対象に,利用状況や利用目的などについてたずねる質問紙調査を実施した。その結果,年中児・年長児の家庭では6割を超える利用があり,利用の主な目的は図書を読んだり借りたりという本に親しむ活動が中心であることが確認された。子ども図書室独自の魅力としては,運営に携わる学生ボランティアとの交流や室内に常備されている折り紙等を使った工作活動が挙げられた。また,子ども同士・大人同士のコミュニケーションスペースとして活用されていることも示され,静かに本に親しむ場でもあり,利用者の交流の場でもあるという2つの機能が共存していることが明らかになった。調査結果を関係教職員と学生ボランティアで共有し,今後の運営の充実につなげていきたい。
著者
山田 偉雄
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.8-11, 1979-03-31 (Released:2012-10-29)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

ベニフキノメイガの発育と温度および日長との関係について調査を行なった.1. 幼虫は4令を経過し, 23℃恒温条件下においては約2週間で蠕化した.2. 卵, 幼虫および蜻期の発育零点は, それぞれ10.9, 12.7および12.9℃と推定された. 発育有効積算温量は, それぞれ51, 156および89日度となり, 産卵から成虫羽化に至るまでの発育零点はほぼ12℃で, 発育有効積算温量は約295日度と算出された. 成虫の産卵前期間における発育有効積算温量は約328日度と推定された.3. 幼虫は, 短日条件によって4令期に休眠した. 休眠誘起の臨界日長は13~14時間であった.4. 雌雄成虫の寿命は, 23℃条件下でともに10日前後, 産卵数は1雌当り約180卵で, 羽化の5日後に産卵のピークがみられた.5. 本種は, 東海地方では, 1年に3~4世代を経過していることが推定された.
著者
海老澤 直美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.93, 2021

<p>2021年3月号の特集は「色彩による情報提供」です。</p><p>数多あふれる情報から欲しい情報を瞬時に得ようとする時,まずは目に入る情報のうち文字ではなく色で判断していることが多いのではないでしょうか。例えば,トイレの入口のマークで男性が青,女性が赤という色がもし逆だとしたら間違える確率は高くなるのではないでしょうか。図書館などの現場においても,利用者に情報を的確にわかりやすく提供するにあたり,案内表示,オンライン蔵書目録のインターフェース,什器類の空間デザインなど,あらゆる所で色彩が関係しています。</p><p>また,プレゼン資料やデータ分析における可視化など情報を視覚的に分かりやすく伝える手段としても色彩は用いられています。さらに,色覚バリアフリーという言葉があるように,色の識別に困難を持つ人もおり,色使いには配慮が必要です。</p><p>そこで今回の特集では,情報提供を的確に行うために,色彩がどのように活用できるか,基礎知識や注意点を解説するとともに活用事例を紹介します。</p><p>まず初めに,篠田博之氏(立命館大学)からは,色とは何か,そのメカニズムなど色彩の基礎知識を解説いただき,さらに応用技術やアイディアを紹介いただきました。続いて,日髙杏子氏(芝浦工業大学)からは,色彩という情報のコミュニケーションを取るために編み出された,色の表現方法のひとつである色彩を体系的にした表色系について解説していただきました。</p><p>そして,山本早里氏(筑波大学)からは,実際に手掛けられた教育施設の建築物・インテリアの色彩計画の事例を紹介いただき,色彩の持つ効果と重要性を解説いただきました。三浦まゆみ氏(インリビングカラー)からは,資料作成における誰もがわかりやすく見やすいユニバーサルデザインの基本を解説いただき,対象者や目的別の資料作りを効率よく作成する色使いのポイントを具体的に紹介いただきました。最後に,伊賀公一氏(NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構)からは,色識別に困難を持つ人は色がどう見えるのか。そして,色で情報を目的どおりに伝えるためにはどのようにすべきかを当事者としての視点からも解説いただきました。</p><p>本特集が,読者の皆様のお仕事などにおいて,色彩の重要性を把握し,色彩を活用して情報を的確に伝える一助となれば幸いです。</p><p>(会誌編集担当委員:海老澤直美(主査),南山泰之,南雲修司,長谷川幸代)</p>
著者
Peter@@HOWELL
出版者
広島大学外国語教育研究センター
雑誌
広島外国語教育研究 = Hiroshima studies in language and language education (ISSN:13470892)
巻号頁・発行日
no.24, pp.15-28, 2021

本稿は,外国語教育における演劇教授の使用に関わる二つの重要語,つまり「パフォーマティヴィティ(遂行性)」と「異文化演劇教授」を扱った,近年のドイツ語文献をまとめ,報告しようとするものである。具体的には, Manfred Schewe教授の文献を扱い,とりわけ,教授や学びはもとより,教室内での教授を超えた研究への幅広いアプローチとしての演劇教授の推奨に焦点をあてている。さらに,高等学校英語学習者の異文化コミュニケーション能力の伸長を目指した文学テキストの使用と演劇活動の統合を扱った,近年のドイツにおける博士課程研究のいくつかを約言している。

1 0 0 0 OA 史前の窯業

著者
橋本 謙一
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.62, no.695, pp.351-355, 1954-05-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
19
著者
竹田 晴見 畑 四郎 倉矢 悦治 高瀬 直寿
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.229-233, 1982-08-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
4

先の報告では脳波の特徴情報の実時間抽出システムについて述べた. 本論文ではそのシステムの応答を速めるための2つの改良を提案している. 第一に, PLL回路中のループフィルタに位相補償を施すものであり, 第二の改良点は方形波変換回路の出力パルス数を, 付加回路により従来の4倍に増加することである. 実験的に新しいシステムのステップ応答は, 旧システムの応答よりはるかに速くなることが確かめられ, そのシステムの性能が改良された.
著者
岩谷 正義 菊植 亮 山本 元司
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.445-455, 2014 (Released:2014-07-15)
参考文献数
23
被引用文献数
2 6

This paper proposes a friction model for friction compensation of harmonic drive gearings. The model is composed of parallel viscoelasto-plastic elements and rate-dependent viscosity. Comparative experiments between the proposed model and the Generalized Maxwell slip (GMS) model have shown that the proposed model is advantageous especially in the region of presliding displacement. This paper also presents parameter identification method for the model.