著者
山田 歩
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学
巻号頁・発行日
vol.12, pp.S41-S44, 2019

<p>ナッジはしばしば理性ではなく直感に働きかけ意思決定を操作する.本研究は,意思決定者がナッジによる操作をどれほど自覚しているのか,また,ナッジを開示することがナッジによる操作からの離脱を可能にするのか,の2点について検討した.実験1は,デフォルトの影響力を意思決定者の多くが自覚しないことを示した.実験2は,デフォルトを開示しても,意思決定者の多くはデフォルトから受ける影響力を認めないこと,また,意思決定を修正しないことを示した.これらの知見がリバタリアン・パターナリズムにおいて持つ意味について考察した.</p>
著者
三島 修
出版者
日本高圧力学会
雑誌
高圧力の科学と技術 (ISSN:0917639X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.352-356, 2007-11-20 (Released:2007-12-23)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

According to the liquid-liquid critical point hypothesis of water, liquid water separates into low- and high-density liquid phases at low temperature and high pressure, and these liquid phases become the known low- and high-density amorphous ices below their glass transition temperatures. An accumulation of experimental and theoretical results seems to support this hypothesis, and this hypothesis may virtually explain "the mysteries of water" including the density maximum at 277 K. Aqueous solutions and the confined water appear to be readily interpreted on the hypothesis.
著者
佐藤 紀代子 杉内 智子 城本 修 辛島 史織 根岸 歩
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.290-298, 2019
被引用文献数
1

<p>要旨 : 中等度難聴者4名を対象として, 聞こえにくさと聴覚障害の意識について半構造化面接を用いて検討し, 当事者の視点で分析した。面接の叙述から中等度難聴者の聞こえにくさと聴覚障害の意識に関する30種の概念がコード化され, 聞こえにくさと対処法, 聴覚障害の意識の変容について個別の経緯を検討した。語音聴取が良好でも他愛無い雑談などの聴取に困難を感じており, 会話方略の使用, 自らの情報収集などによって対処していることに共通点を認めた。また, 聴覚障害への意識は個々の成育歴や環境によって異なっていたが, 共通して聴覚障害の受容よりも否定的な意識の方が多く, どのようなライフステージにおいても常に聴覚障害の受容, および否定的な意識が混在していることが示された。当事者の発達段階に応じて医療や教育の場において情報提供することや, 当事者が障害を開示し社会に配慮を求める姿勢を形成するなど, 長期的な支援の必要性が示唆された。</p>
著者
森脇 義弘 豊田 洋 小菅 宇之 荒田 慎寿 岩下 眞之 鈴木 範行 杉山 貢
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.272-278, 2008-05-15 (Released:2009-07-25)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

出血性ショックを伴ったクローン病として転院搬送された腸結核の 1 例を報告する。患者は62歳,女性。透析導入のための近医入院中に下部消化管造影,内視鏡,生検でクローン病と診断され,ステロイド治療を開始された。感染徴候のない発熱と考え再入院となり,ステロイドと免疫抑制剤で治療されたが改善はなかった。下血と呼吸促迫を伴うショックとなり,人工呼吸管理,カテコラミン投与の後に,外科的処置を目的に当センターへ転院搬送となった。前医の下部消化管造影から必ずしも典型的クローン病とは考えにくかったが,出血性ショックのため緊急手術(右結腸切除)を余儀なくされた。術後はseptic shockから離脱できず第 6 病日に死亡した。患者の死後,切除標本の組織学的検査から,肺症状を伴わない活動性の腸結核と診断された。ステロイドを使用しているクローン病では,常時,腸結核との鑑別を念頭におくべきと思われた。また,情報に乏しい初診患者への緊急対応を余儀なくされる救急部門では,診療が終了してから結核であったと判明した場合に関係した職員の健康診断を行うなどの対策を考案しておくべきと考えられた。
著者
庄山 茂子 西之園 美咲 栃原 裕
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.242, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 急速な高齢化に伴い、介護サービスを利用する高齢者が増加している。自宅での介護を望む高齢者も多いことから、介護施設では自宅にいるような雰囲気が求められる。そこで、対人関係の内容やあり方についての情報を伝達する機能をもつ介護服に着目し、要介護者にとって望ましい介護服の色彩を検討した。方法 (1)試料:ポロシャツ7種(White、lt-Red、 lt-Blue、 lt-Yellow、lt-Blue Green、d-Blue、dk-Blue)、 (2)時期:2015年6月~7月、(3)対象者:施設利用者216名(平均年齢84.1歳、SD7.6歳)、(4)方法:面接による質問紙調査、(5)内容:施設利用頻度、介護服の好ましさ、介護服のイメージ、 (6)分析方法:単純集計、一元配置分散分析、因子分析結果 「好ましい」の回答が最も多いのはlt-Blue Greenで、lt-Blueは男性に好まれ、lt-Redは女性に好まれた。同色相で明度の異なる3種(lt-Blue、d-Blue、dk-Blue )を比較すると、高明度の評価が高かった。7種に対するイメージについての因子分析の結果、「思いやり・癒し、責任感・信頼、活動性、個性、派手さ」の5因子が抽出され、平均因子得点は全ての因子において7種間に有意差がみられた。「思いやり・癒し」の得点が最も高いのはlt-Red、低いのは、d-Blue、dk-Blueの低明度のサンプルであった。「責任感・信頼」が最も高いのは、高明度の寒色系であった。
著者
荻原 俊男 森本 茂人 中橋 毅 島本 和明 松本 正幸 大内 尉義 松岡 博昭 日和田 邦男 藤島 正敏
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.396-403, 1994-05-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
24
被引用文献数
9 8

本邦における高血圧専門家が老年者高血圧の治療方針に関していかなる考え方をしているかについてアンケート法によりその実態を把握することを目的とした. 治療対象について50%の専門家は年齢の上限を考慮しないとしたが, 残り50%は80歳まで, あるいは85歳までを上限としている. 治療対象血圧値は収縮期血圧は60歳代160mmHg以上, 70歳代160~170mmHg以上, 80歳代では170~180mmHgと高齢者程治療対象血圧は上昇, 拡張期血圧は90~95mmHg以上とするものが大部分を占めた. 降圧目標は60歳代では150/90mmHg未満, 70~80歳代では160/90mmHg未満とするものが多く, 80歳代では170~180/95~100mmHg未満と高めに設定するものが20数%あった. 用いる降圧薬ではCa拮抗薬を第一次薬とするものが大部分でありACE阻害薬がこれに次いだ. 一方, サイアザイド, β遮断薬, α1遮断薬を第一次薬とするものは少数であった. 合併症を有する場合の降圧目標や選択降圧薬は疾患によりきめ細かく考慮され, 脳梗塞慢性期, 閉塞性動脈硬化症, 腎障害合併症は70歳代, 80歳代で154~159/89~90, 160~164/90~91mmHgとやや高め, 脳出血慢性期, 虚血性心疾患, 糖尿病, 高脂血症では各々152~153/88, 158~159/89mmHgとやや低めに設定している. Ca拮抗薬はいずれの合併症にもよく用いられ, とくに腎障害, 閉塞性動脈硬化症で高頻度に用いられる. 腎障害ではACE阻害薬が用いられる頻度が低い. β遮断薬は虚血性心疾患で用いられる以外は一般的に用いられない. サイアイド, α1遮断薬は一般的に合併症のある場合にあまり用いられていない. 本邦においても長期介入試験によりこれらを正当化する証明が待たれる.
著者
角村 悟 西橋 政秀 楠 研一
出版者
Japan Meteorological Agency / Meteorological Research Institute
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.25-37, 2016 (Released:2016-07-04)
参考文献数
34
被引用文献数
2

落雷に係る電荷について、東北地方庄内地域での地上電場観測に基づき調査した。最初、理論値を観測値に最小二乗法であわせるため要求される細かさについて議論した。高度0.1 km毎の電荷による理論的な電場を与え、適切な解を得るため必要となる水平方向の分解能を提案した。提案された空間分解能により2012年の暖・寒候期に庄内で発生した19の落雷に係る地上の電場により電荷の位置と量を推定した。推定された負極性落雷の電荷の推定位置の2事例を大気温度、ドップラーレーダーおよびVHF帯雷標定システムで検知された電磁波放射源の分布と比較した。1つの事例では、推定された電荷は落雷を引き起こす負電荷の性質を表していた。他方では、電荷が低高度に求まり、通常の負極性落雷モデルでは説明できなかった。本研究で記された数値的電荷推定の議論は、少ない地上電場観測を元にした落雷に関係する電荷の今後の研究にとって有効な情報になると考えられる。
著者
大森 正司 矢野 とし子 岡本 順子 津志田 藤二郎 村井 敏信 樋口 満
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1449-1451, 1987-11-15 (Released:2009-02-18)
参考文献数
7
被引用文献数
74 87

This study was conducted to investigate the effects of green tea made from leaves incubated in an anaerobic condition (Gabaron tea) on the blood pressure of spontaneously hypertensive rats (SHR). No difference was found in the mean body weight of the control groups (first group, fed on water; second group, fed on ordinary green tea) and the experimental group (third group, fed on Gabaron tea) throughout the test period. The mean blood pressure of the three groups was identical at 160 mmHg in the pre-test period. The mean blood pressure of the experimental group was 158 mmHg, whereas the control groups shared 163_??_167 mmHg one week after the experiment started. The blood pressure of the experimental group was significantly lower than pressures of the control groups (P<0.01). In all groups, the mean blood pressure increased gradually from 10 to 20 weeks of age. The mean blood pressure of the experimental group was about 150 mmHg, and those of the control groups reached 175_??_180 mmHg. The mean blood pressure of the experimental animals was 14_??_17% lower than the pressures of the control animals at 20 weeks of age (P<0.01). The hypotensive effect on SHR fed the Gabaron tea infusion disappeared when the animals were returned to ordinary green tea intake at 20 weeks of age.
著者
鈴宮 淳司
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.7, pp.1720-1727, 2013-07-10 (Released:2014-07-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

慢性リンパ性白血病(CLL)はB細胞性のインドレントな白血病であり,日本ではまれである.診断は通常の強制乾燥による末梢血塗抹標本だけでなく,自然乾燥標本の観察が推奨され,それに加えて細胞免疫形質(CD5,CD23陽性,CD20弱陽性など)を総合的に判断する.治療方針の決定は患者の状態により標準治療が実施可能かどうかを判断することが重要で,それに病期および予後不良の染色体異常(17p欠失)などのリスク因子を勘案して決定する.
著者
寺谷 亮司
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.1, pp.16-30, 2004-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12

モーリシャス共和国は, アフリカらしくないアフリカの小さな国であるという (筆者) が, われわれにも馴染みは薄い。現地へ産業調査のために派遣された筆者からモーリシャスの酒類産業と飲食文化の一端を紹介する記事が寄稿された。
著者
山守 一徳 YAMAMORI Kazunori
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.23-30, 2018-01-04

日本では、小学校からプログラミング的思考を取り入れた授業を2020年までに展開するように要請されているが、中学校ではプログラミング教育をどのように実施したら良いか悩ましい問題がある。小学校向けにはScratchを利用したプログラミング教育が多く行われ始めており、筆者は、その題材を提供してきているが、中学生向きにはScratch によるプログラミングでなく、もう少し進んだプログラミングを教えた方が良いと考える。そこで、本論文では、中学生向けのJavaScriptプログラミングを提案する。
著者
赤川,吉寛
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.73, no.9, 1997-09-25

The Japan Atomic Power Company (JAPC) has applied the Plasma Arc Melting Technology to treatment processes to reduce the low level dry active wastes (DAW) volume and to stabilize DAW for final disposal. JAPC decided to adopt an incineration/melting facility using the Plasma Arc Centrifugal Treatment Process (PACT) at the Tsuruga Power Station. In Switzerland, the ZWILAG (Zwischenlager Wurenlingen AG) also decided to adopt the PACT. Some laboratories in the U.S.A., France, and Germany, however, are carrying out their own R&D program to develop a plasma melting treatment for radioactivity contaminated soil among other things. Development of a thermal plasma treatment is now making progress on a world-wide scale in the field of radioactive wastes. I hope that this movement will be fruitful.
著者
笹嶋 宗彦 加藤 直樹 丸橋 弘明 羽室 行信
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.4K3GS304, 2020 (Released:2020-06-19)

データサイエンス教育においては,プログラミング技術や統計学知識などのデータ分析力だけでなく,社会の現場から問題を見つけ出す課題発見力や,分析の結果を現場に浸透させて改善する社会実装力の重要性を学ばせることが必要である.兵庫県立大学社会情報科学部では,これらデータサイエンティストが備えるべきスキルを実践的に学ばせるために,企業と連携して,実際のデータを用いた課題解決型演習を,学部1年生から必修科目として取り入れている.2019年度入学の一期生101名を対象としてPBL演習を実施し,事後アンケートを取ることで,学生からの主観評価を得た.その結果,自分自身がデータサイエンティストとして社会活動していく上での課題や,本人の持つスキルのバランスなど,様々な気づきを学生に与えることができた.他方,PBL演習の運営については,初めての試みでもあり,様々な知見が得られた.