著者
富安 郁子 浦上 智子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.451-457, 1977-10-20 (Released:2010-03-11)
参考文献数
18

極度に加熱した油とその揮発生成物中に毒性物質が存在するという最近の報告より, 揮発生成物の分析によって天ぷら油の安全使用の指標を得ることができるか試みた.大豆油を継続的に180℃で30時間加熱し, その間にじゃがいも, 鶏肉, 豆腐, 鯨肉, 鯖, ピーマンと水を添加した綿球 (対照) をおのおののたねものからでる水分量を一定になるように調節しながらフライした.このように調整した試料油の揮発物を直接に二硫化炭素中へ導く窒素気流で蒸留し, その濃縮物をガスクロマトグラフィー (GC) とガスクロトグラフィー-質量分析計 (GC-MS) で分析した.GCによるピーク数および相対的量には試料油間にはっきりした違いはなかった.低沸点部ではアルカナール, カプロン酸1-オクテン-3-オールが, 高沸点部ではデカナール, デカジエナール, 7-フェニールヘプタノイック酸が検出された.7-フェニールヘプタノイック酸は毒性があると考えられる.加熱時間が増加するに従い低沸点部は減少し高沸点部は増加の傾向を示した.揮発物のTLC分析 (ベンゼン, ヘキサン, 酢酸, 70 : 30 : 2) の結果3つのスポットを得たが, Rf値0.4のスポットは上に述べたフェニール化合物を含み278nmに強い吸収を示すことがわかった.
著者
川染 節江 山野 善正
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.201-206, 1992-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
11
被引用文献数
1

The quality of fried batter of Tempura (Koromo) was studied by sensory evaluation and moisture measurement using eight different oils (safflower, grapeseed, sunflower, cottonseed, corn, soybean, sesame and rapeseed oils) and then the effect of sesame oil added to soybean oil was investigated. Batters were prepared with 50g of distilled water and 25g of flour and fried into flakes in 400g oil at 175°C.The three samples fried in safflower, grapeseed and sunflower oils were judged organoleptically to be worse than those fried in the other five oils. The sample fried in sesame oil was evaluated to have the best flavor. It was found by multiple regression analysis that the taste and mouthf eel of the samples fried in the four oils, safflower, grapeseed, sunflower and cottonseed oils contributed more strongly to the total acceptance than the flavor. All the flavor, taste and mouthfeel of the sample fried in sesame oil was found also to contribute to the total acceptance.Two mixtures of 30 and 50% sesame oil and soybean oil contributed more strongly than a mixture of 0,10, and 100% to the quality of the fried batter. lt was found by multiple regression analysis that the taste of the sample fried in 30% of sesame oil mixture contributed to the total acceptance, and all the flavor, taste and mouthf eel of the samples fried in 50 and 100% sesame oil mixture contributed to the total acceptance. Negative higher correlation was obtained between the moisture content and the value of mouthfeel than between the moisture content and the flavor, and also between the moisture content and taste.From these results, we conclude that addition of sesame oil of 30-50% in sesame oil/soybean oil mixture improves the quality of fried batter of Tempura (Koromo).
著者
原 知子 安藤 真美 伊藤 知子 井上 吉世 大塚 憲一 大野 佳美 岡村 由美 白砂 尋士 高村 仁知 武智 多与理 露口 小百合 中原 満子 中平 真由巳 西池 珠子 林 淑美 深見 良子 藤村 浩嗣 松井 正枝 的場 輝佳 水野 千恵 村上 恵 山下 貴稔 湯川 夏子 渡辺 健市
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.23-27, 2004-01-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
3 1

酸価1∼4.5の段階的に劣化度が異なる劣化油1,2,3を用いて,揚げ玉,まいたけの天ぷら,コロッケを調製し,揚げ物および揚げ油の官能評価による風味とPCテスターによる極性化合物量の関係について検討した.1.新鮮油,劣化油1,2,3の4種の劣化程度の異なる油及びそれらで調製された製品の風味に有意差が認められた.これら4種の油は酸価,粘度,極性化合物量が段階的に異なるもので,揚げ玉,まいたけの天ぷら,油自体の風味の評価結果は,これらの要素と対応した.新鮮油,劣化油1,2,3の順に風味評価は低下したが,劣化油1から極性化合物量15%の劣化油2の間で低下が顕著であった.また,劣化が進行した油において官能評価ではその違いが認め難くなる傾向にあった.コロッケでは油の劣化による風味評価の低下は小さかった.2.揚げ玉やまいたけの天ぷらでは極性化合物15%程度まで,コロッケでは,25%程度まで風味評価のよい揚げ物を調製できた.3.極性化合物量15%以上で風味評価が低下するとともに風味の劣化度合いを弁別し難くなる傾向があったことから,栄養的にも嗜好的にも,揚げ油の極性化合物量を15%以下で管理するのが適当であると考えられた.
著者
柴山 真理子 植田 志摩子
出版者
帯広大谷短期大学
雑誌
帯広大谷短期大学紀要 (ISSN:02867354)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.7-15, 1990-03-25 (Released:2017-06-13)
参考文献数
3

サラダ油、べに花油およびコーン油について、揚げ物の種類や材料の違いによる吸油量、脱水率、温度変化および重量変化を検討した。結果は下記のとおりであった。1.吸油量の多かったのは、えびの春雨揚げ、ついでさつまいもの天ぷらおよびいかの天ぷらの順であったが、少なかったのは素揚げ・じゃがいも拍子木切り、ついで鶏のから揚げおよびコロッケであった。2.脱水率の高かったのは、水と油の接触面積の大きい素揚げ・じゃがいも輪切り、ついで拍子木切りおよび鶏のから揚げの順であったが、逆に低かったのは、衣で周囲が保護され、しかも衣からの水分蒸発が少ないえびの春雨揚げ、ついでホッケフライおよびコロッケであった。3.コロッケの内部温度が最も低く55℃であり、中身は加熱処理をしたものを用いる必要があると思われた。4.最下時温度が最も低い値を示した素揚げ・じゃがいも輪切りは脱水率が最も高く、逆に最下時温度が最も高い値を示した鶏のから揚げ(2度目)は脱水率が低かった。5.重量減少の著しかったのは、衣で保護されず、かつ表面積の大きい素揚げ・じゃがいも輪切りおよび拍子木切りであった。増加のあったのは、衣から水分蒸発の少ないえびの春雨揚げおよびホッケフライであった。6.脱水率が高く吸油量の少ないものほど重量減少が著しく、三者の間には関連性が認められた。7. 3つの油については明らかな差は認められなかったが、吸油量と内部温度ではサラダ油がやや高い値であり、衣揚げの脱水率と最下時温度ではコーン油がやや高かった。
著者
松元 文子 林 恵美子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.68-70, 1958-04-05 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8
被引用文献数
1

天ぷらの味のうち、特に衣のおいしさについて実験した結果、次のことが明らかになつた。1. 小麦粉は上質薄力粉を用い、副材料として卵を用いれば、小麦粉だけを用いた衣よりも水分少く、口ざわりがよい。重曹を用いると衣の水分が一層少く仕上り、且つ衣の表面の吸湿は極めておそいので、これらの点に於いては卵に優るが口触りが硬すぎる。卵と重曹を併用すれば両者の長所を採り入れることが出来るであろう。2. 天ぷらの衣に於ける水分と油の含有量は副材料の種類によつて互に消長するもので水分多ければ油少く、水分少ければ油が多く衣の口ざわり(歯もろさ)は、水分と反比例的である。従つて、おいしい天ぷらの条件としての“油じみていない”ということは、必ずしも吸油量が少いという事ではなく、付着油即ち油切れの問題であろう。(この点については次報で述べたい。)3. 揚げたての天ぷらがおいしい理由は、喫食時の温度にあるのはいうまでもないが、衣に卵を用いた場合は、表面の水分の増加以前を尊重するためと考えられる。
著者
小林 由実 内方 文朗 上田 善博 加藤 邦人 小川 宣子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.207, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 おいしい天ぷらとは素材のうまみが保持され、さくさくとした衣に覆われているものと評価できる。天ぷらに使用する食材は、澱粉性食品のさつまいも、タンパク質食品の魚介類、野菜類など多種にわたるため、それぞれの素材のうまみが生かすための揚げ方について温度や時間などから検討されている。一方、家庭では、温度計に頼らず、視覚的に判断を行っている。そこで本研究では、160℃,180℃,200℃と異なる温度で食材を揚げ、その時の油の表面の様子を定量化するとともに、揚げ終わった時の衣の評価を水分含量、物性、画像処理から測定し、調理中の様子から天ぷらの出来上がりを推定することとした。 方法 1)試料:さつまいもを用い、衣(薄力粉:卵水=30:50g)をつけ、油(160℃,180℃,200℃)で4分(加熱2分後裏返す)加熱した。2)測定項目①調理中の変化:油面の様子を高速度カメラで撮影し、調理中に発生した気泡や波によるゆらぎをcontrastの時系列変化から調べた。②調理後の変化:衣の水分含量、物性を破断解析、凹凸の程度を画像処理によるcontrastから評価した。 結果 ①調理中の変化:160℃で調理した場合は油面のゆらぎは少なく、180℃は投入直後と20秒後で大きくゆらぎ、200℃は投入直後から非常に大きかった。②調理後の変化:油の温度が高くなるにつれ水分含量は少なく、破断応力は大きく、衣の凹凸は160℃は少なく平坦であり、180℃は全体に存在し、200℃はむらがあった。調理中の油面の様子が衣の形状に影響を与えると考える。
著者
嶋田 さおり 岸田 太郎 坂田 香代子 森田 君香 平岡 祥子 改野 芙美 松本 愛 中村 紀子 渋川 祥子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.110, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】家庭で一般的に行われている揚げ物料理の吸油率については、すでに調べられ文献等で公表されている。しかし、大量調理機器によって測定された吸油率のデータは見られない。学校給食の場合、厨房設備や作業工程などの事情から、一般的な揚げ物料理とは、食材やその切り方が異なることもある。そこで本研究では、学校給食で提供頻度の高い揚げ物料理について、吸油率を明らかにし、児童生徒に提供している給食の栄養価を正確に把握することを目的とした。【方法】愛媛県松山市において、平成22~24年度の学校給食献立3年分をもとに、提供頻度の高い揚げ物料理を、素材別、揚げ形態別、揚げ衣別に整理した。次に、提供頻度の高い揚げ物料理について、2か所の共同調理場で、ガス回転釜とフライヤーの2種の調理機器を使用して実際に調理し、調理前後の水分率、吸油率を測定した。各試料は、20人分で調整し、揚げる前と揚げた後の試料の全量をそれぞれホモゲナイズし、その中から1gを取り出してクロロホルム・メタノール法で2分抽出して測定した。【結果】提供頻度の高い揚げ物料理に使用されている素材は、魚が最も多く次に肉、甲殻類が続いていた。揚げ方の調理形態別では天ぷらと唐揚げが多く、揚げ衣別ではでん粉を主としたものが44%、小麦粉等が39%、衣なしが17%であった。これらの結果から素材は使用頻度の高い鯛を使用しその唐揚げと天ぷらについて吸油率を測定した。170℃で3分揚げた鯛の唐揚げは、ガス回転釜の吸油率が8.6%、フライヤーの吸油率が4.6%であった。これはガス回転釜投入時の平均油温がフライヤーよりわずかに高く、そのため取り出し時の油温と試料中心温度も高くなったことから、ガス回転釜の方の水分蒸発が多くその分吸油したことが原因と考えられた。鯛の天ぷらについては差がなく両機器とも約5%であった。
著者
野坂 隆文 石原 佑希子 藤江 未沙 池野 潤 永瀬 敬顕 上田 恭己
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.165, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】天ぷらは一般に人気の日本料理であるが,大量調理においては,作業工程の複雑さや,栄養管理面,さらには時間経過により衣の状態が変化し,品質が低下するという問題が知られている。この劣化現象は温蔵による適温保存の際にも発生するため,出来たての提供が難しい大量調理では敬遠されることが多い。本研究では,適温保存により劣化した天ぷらをより質の高い状態で提供するための調理方法を考案し,給食で提供される料理の質の向上を目指す。【方法】えび・さつまいも・なすを検討試料とし,衣には市販の天ぷら粉を用いた。170℃に設定したフライヤーで調理後,2時間温蔵保管した各試料をコントロールとした。調査対象として,同様の温蔵保管後にスチームコンベクションオーブンを用いて(1)コンビ180℃湿度100%5分,(2)コンビ180℃湿度100%2分,(3)コンビ150℃湿度100%5分の加熱処理をそれぞれ実施し,官能検査による比較を行った。対象者は当校教員7名とし,6項目において採点法による評価を行い,合わせて固さ・テクスチャー・品質についての質問も実施した。【結果および考察】えびでは(1)が全体を通して高評価が多く,質問より全員が天ぷらとしての品質を保っていると返答した。風味においては,全方法で評価が高く,加熱処理によってより香ばしく感じられたと考えられる。さつまいもではえび同様(1)が高評価で,食感・風味・ぱさつきが改善され柔らかく感じたとの評価が多かった。なすでは高評価は(1)の食感のみで,(2)(3)では低評価も多数見られた。全試料において加熱処理により余分な油が一部排出していたが,なすは構造上油を吸着しやすく,(2)(3)では加熱不十分で油っぽさが改善されなかったことが示唆された。
著者
小林 由実 上田 善博 加藤 邦人 石田 康行 河村 益徳 小川 宣子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 70回大会
巻号頁・発行日
pp.160, 2018 (Released:2018-07-28)

目的 天ぷらのおいしさは衣と素材から評価される。衣は水分蒸発により得られるサクサク感、素材は天ぷら中の水分により蒸されて得られる食感や旨みから評価される。このことから天ぷらのおいしさは揚げ過程の水分の動きが重要になると考える。また、これまでおいしい天ぷらを揚げるための適切な状態(様子)は明確にされていない。そこで、油面の様子と水分の動きの関係を調べ、それが出来上がりに及ぼす影響を明らかにし「揚げ過程の油面の様子からおいしさを評価する方法」を検討した。方法 1)試料:さつまいもに衣(薄力粉:卵水=30:50g)をつけ、油(160,180,200℃)で4分加熱した。2)油面の様子:泡により発現する油面のゆらぎを高速度カメラで撮影し、画像解析した。3)水分の動き:蒸発量は秤の上で天ぷらを揚げ重量減少量から調べた。衣と素材の水分の動きは衣の水分を重水(H218O)にし、衣と素材の水分を区別して推定した。4)衣と素材の品質:衣は水分量、気泡数(破断応力波形を微分波形へ変換した時のマイナスピーク数)、素材は水分量、硬さ、糊化度(グルコアミラーゼ法、SEM)、おいしさは官能評価から調べた。結果 油面の様子と水分蒸発量は一致した。衣の水分は揚げ直後に多く蒸発し、これが衣のサクサク感に、素材の水分は揚げ直後から蒸発したが衣から移動した水分により素材中の水分が保たれ、これが出来上がりの硬さや糊化度に影響すると予想した。
著者
小林 由実 上田 善博 加藤 邦人 小川 宣子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.17, 2015 (Released:2015-07-15)

目的 天ぷらの「おいしさ」は素材の旨味が保持され、さくさくした衣に覆われたものと評価できる。この「おいしさ」の評価を調理過程の指標から推定できる可能性を澱粉性食品のさつまいもから検討した1)。その結果、調理過程での水分蒸発量が天ぷらの出来上がりに影響を及ぼすことを明らかにした。そこで、本研究は調理過程における素材と衣の性状から調理過程中の水分挙動について検討を行った。 方法 天ぷらはさつまいも(直径46mm、厚さ8mm)に衣4.6g(薄力粉30g:卵水50g)をつけ、180℃の油(日清キャノーラ油)1300gで表裏それぞれ2分揚げて作成した。調理過程の水分蒸発は、油表面の泡の発生状況を高速度カメラで撮影し、油のゆらぎによる画像処理のcontrast値と秤の上で天ぷらを揚げた時の重量減少量の両者から経時的に調べた。あわせて、さつまいもと衣の調理過程中の性状変化を水分量、グルコアミラーゼ法による糊化度、走査電子顕微鏡像から調べた。結果 油面の泡の発生量はさつまいも投入1秒後と17秒後に多くみられ、これは水分蒸発量ともほぼ一致していた。さつまいも投入1秒後は主として衣から水分が蒸発し、17秒後は衣からさつまいもへの水分移動が見られ、合わせてさつまいもの細胞破壊が見られたことから、この時間は糊化が始まる時ではないかと推定した。[文献]1)小林他:日本家政学会第66回大会研究発表要旨集、p70(2014)
著者
小林 由実 上田 善博 加藤 邦人 石田 康行 小川 宣子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.160, 2017 (Released:2017-07-08)

目的 天ぷらの調理過程における経時的な水分蒸発量の変化が油表面に発生する気泡に伴う油のゆらぎ(以下、油の表面情報)と関係があることを報告し、これが天ぷらの衣または素材由来かを、衣の水分を重水に置き換え推定した。衣から素材への水分移動も同様の方法で推定し、水分移動は素材の硬さや糊化度に影響することを予想した1)。本研究では実験を繰り返すことで予想した水分挙動と素材への影響を確認し、油の表面情報が天ぷらのおいしさに及ぼす影響を検討した。方法 天ぷらはさつまいも(10×10×8㎜:水分66%)に水分62%に調製した衣(薄力粉1g、重水1.6g)をつけ、160℃、180℃、200℃の油で3分間揚げて作成した。加熱開始13秒後と3分後の衣とさつまいもの水(H216O)と重水(H218O)をGCMSの測定から水分挙動を、常圧乾燥法から水分量、グルコアミラーゼ法と走査型電子顕微鏡像から糊化度を調べた。 結果 揚げ温度160℃において加熱13秒後では、他の温度に比べ衣からさつまいもへの水分移動は少なく、糊化度や細胞破壊も小さかったが、さつまいもの水分は66%と多かった。加熱3分後は衣からの水分移動が見られ、さつまいもの水分は62%と多く、糊化度も高く、細胞破壊が見られた。さつまいもの出来上がりは衣からの水分移動が影響していると推定した。 [文献]1)小林他:日本調理科学会平成28年度大会要旨集、p90(2016)
著者
小林 由実 上田 善博 加藤 邦人 石田 康行 小川 宣子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.99, 2016 (Released:2016-08-28)

目的 天ぷらの「おいしさ」は素材の旨味が保持され、さくさくした衣に覆われたものとして評価できる。天ぷらを揚げている過程での素材および衣から蒸発している水分の様子(油の表面情報)を画像処理分析から評価し、水分の蒸発状況が出来上がり(おいしさ)に影響を及ぼすことを澱粉性食品のさつまいもを用いて明らかにした1,2)。そこで、本研究は揚げている時の素材や衣の水分挙動と油の表面からの水分蒸発状況(油の表面情報)との関連について検討し、揚げている時の油の表面情報が天ぷらのおいしさに及ぼす影響につい考察を行った。 方法 天ぷらの素材としてさつまいもを用い、揚げている時の水分蒸発は、油表面の泡の発生状況を高速度カメラで撮影し、油のゆらぎによる画像処理のcontrast値と秤の上で天ぷらを揚げた時の重量減少量の両者から経時的に調べた。さつまいもの出来上がり評価はレオロメーターによる硬さ、グルコアミラーゼ法による糊化度、走査電子顕微鏡像から調べた。また、素材および衣の水分挙動は18H2Oを用い、GCMSにより測定を行った。 結果 油の表面情報は水分蒸発量ともほぼ一致していた。さつまいも投入直後に主として衣から水分蒸発が生じ、その後、さつまいもの水分量から衣からさつまいもへの水分移動が推定でき、合わせてさつまいもの細胞破壊が見られたことから、この時期に糊化が始まるのではないかと推定した。これらの推定した水分の挙動は18H2Oを用い、GCMSにより測定を行った結果、推定を裏付ける傾向であった。 [文献]1)小林他:日本家政学会第66回大会研究発表要旨集、p70(2014) 2)小林他:日本家政学会第67回大会研究発表要旨集、p49(2015)
著者
加瀬 裕子 多賀 努 久松 信夫 横山 順一
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.29-38, 2012-04-20 (Released:2020-01-30)
参考文献数
16

本研究は,認知症の行動・心理症状(Behavioural and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)に対し効果的な介入行動の傾向を明らかにすることを目的としている.質問紙調査により収集したBPSD改善事例130を,多重コレスポンデンス分析を用いて分析した. 分析の結果,BPSDの内容と効果的な介入行動は,4群に分かれた.第一群は,行動性・攻撃性のあるBPSDであり,落ちつかせる介入が効果に関連していた.第二群は,混乱と失見当識への対応が主要課題であるBPSD群で,その改善には,社会性と能力活用を刺激する介入が関連していた.第三群は「幻視」等生理学的な原因に由来するBPSDであり,対立を避けつつメリハリのある生活をめざす介入が効果に結びついたことが明らかになった.第四群からは,被害妄想改善には聴覚の低下を補完する介入の効果が示唆された.
著者
[旧]富山大学
出版者
[旧]富山大学
雑誌
[旧]富山大学学報
巻号頁・発行日
vol.401, pp.1-16, 1998-06

判型:A4,(平成10年5月号),平成10年6月発行