出版者
巻号頁・発行日
vol.[1],
著者
梶本 卓也 中井 裕一郎 大丸 裕武 松浦 陽次郎 大沢 晃 Abaimov Anatoly P. Zyryanova Olga 石井 篤 近藤 千眞 徳地 直子 廣部 宗
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.265, 2005

中央・東シベリアの永久凍土連続分布域には、近縁2種のカラマツ(L. gmelinii, L. cajanderi)が優占する疎林が分布している。これまでの調査から、成熟した林(100年生以上)では、根が全現存量に占める割合は30-50%と北方林の中でも顕著に多く、同化産物のアロケーションが根にかなり偏っていることがわかっている。このことは、個体の成長や林分発達が地上部の光獲得競争よりも地下部での土壌養分、とりわけ窒素をめぐる競争に支配されていることを示唆している。本研究では、こうした点を裏付けるために、中央シベリアの成熟した林(約100年生)や山火事更新直後の若齢林(10年生前後)を対象に新たに伐倒・伐根調査を行い、既存のデータも加えて、アロケーションや根系発達が時系列でどう変化するのか検討した。その結果、100年生林では根が現存量に占める割合はやはり30%以上と高く、各個体の根系水平分布面積は樹冠投影面積の3-5倍に達していた。また林分レベルで推定された根系分布面積合計、単位土地面積当たり1を大きく上回り、根系がすでにほぼ閉鎖していることが示唆された。一方、更新直後の実生や若木では、根の割合は個体サイズとともに低下し、成長良好な大きめの個体で15-20%と成熟木よりかなり少なかった。この永久凍土地帯では、山火事更新後、コケや地衣、低木等林庄植生の回復に伴って、地温が低下し活動層の厚さも徐々に減少する。そして、もともと限られた無機態窒素の利用も制限されていく。こうした根圏環境の時系列変化を踏まえてカラマツ個体のアロケーションを考えると、土壌養分吸収の制限が少ない山火事後の更新初期段階では地上部の成長に偏っているが、数10年を経ると地上部から根へ大きくシフトし、その時期を境に地下部での個体間競争が起こって、やがては根系が閉鎖した林分状態に達することが推察される。
著者
鳥塚 尚樹 羽毛田 真弓 橋口 晃一 前川 竜也 渡辺 仁 金子 吉史 新田 浩之 浜田 淳 榊原 雄太 佐藤 玄 佐藤 耕一 諏訪 浩一 高見 清佳
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.45, pp.P-93, 2018

<p> 2017年8月,FDA Data Standards Catalog v4.6にSEND Implementation Guide ver. 3.1(以下,IG 3.1)が収載され,2019年3月15日以降開始の試験はNDA/BLA申請時にIG 3.1準拠のSENDデータ提出が義務化された。IG 3.1の対象試験には心血管系及び呼吸系安全性薬理試験が含まれるため,それらのSEND対応はCJUG SENDチームの最重要課題の一つと考えられた。そこで,ITベンダー,ソリューションプロバイダ,非臨床試験CRO,製薬企業が所属するCJUG SENDチームの全27施設を対象に,安全性薬理試験のSEND対応状況及び想定される課題等に関するアンケートを実施し,匿名で回答を収集して分析した。</p><p> その結果,ほぼ全ての施設が安全性薬理試験のSEND対応への必要性を認識している一方,IG 3.1の詳細把握から具体的な業務手順の整備等の体制構築を進めている施設は少数のみであった。今後の対応方針を業種別にみると,製薬企業の多くは外注での対応を想定し,受託側のソリューションプロバイダ及びCROは自社対応やパートナリングで積極的にSENDデータ作成受託を進めようとしている傾向が示された。また,機器からの印刷物や手書きの記録を安全性薬理試験の生データとしている施設も依然多く,データの電子化自体が安全性薬理試験SEND対応の大きな課題であることが明らかとなった。さらに,SENDデータセット作成・検証の担当者に安全性薬理研究者の配置を想定している企業は少なく,統制用語の適切な利用など,安全性薬理試験SEND対応のプロセスに専門家がどう関与すべきかという潜在的な課題も見出された。本発表では調査内容を更に精査し,安全性薬理試験SEND対応の課題及び今後のデータセット作成に有用な情報を提供したい。</p>
著者
岡村 渉
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.9, no.13, pp.113-122, 2002-05-20 (Released:2009-02-16)
参考文献数
10

登呂遺跡は,静岡平野のほぼ中央,静岡県静岡市登呂に所在する弥生時代を代表する稲作農耕遺跡である。太平洋戦争のさなかに発見され,敗戦直後,考古学者だけではなく,建築・地理・自然科学等の研究者も含んだ学際的な発掘調査が4年間にわたって実施された。この組織的な発掘調査は,現代の日本考古学の出発点となり,日本考古学協会の設立の契機となった。この調査の結果,「弥生時代後期の12軒の住居跡と2棟の倉庫跡から構成される集落跡とその南に広がる同時期の灌漑用水路と護岸杭を伴う畦畔で区画された水田跡を検出し」,弥生時代の農村の具体的な景観が導き出された重要な遺跡として,1952年に特別史跡に指定された。史跡指定に並行して史跡公園「登呂公園」として整備された。しかし,1947年の発掘調査から50年以上が経過し,発掘調査で検出した各遺構や登呂遺跡で導き出された弥生時代の農村景観について多くの疑問や再確認の必要性が出てきた。その解決には再発掘調査が必要であった。このため,静岡市教育委員会は1999年から2003年までの5年計画で発掘調査を実施し,調査成果に基づき再整備をしていく予定である。現在は,1947年から1950年に発掘調査された住居跡5軒を中心に再発掘調査を実施し,現在の視点で住居跡やその周囲の遺構を調査し,集落構造を把握し直している。ここまでの調査の結果,遺跡の保存状態は,洪水の砂を除去すれば埋没前の状況が検出できるという良好なものであった。居住域と生産域(水田域)は水路(区画溝1)と付随する土手により明確に区画されていた。居住域内では,層序関係と遺構間の重複関係により大きく下層遺構(前半)と上層遺構(後半)とに二分でき,それらが更に2段階(合計4段階)以上に変遷していくことも確認された。その後,洪水による砂で埋没し,遺跡は終焉を迎えるが,洪水後に再び掘立柱建物跡や溝状遺構が造られ,別の洪水による砂で再び埋没するという複雑な変遷が明らかとなった。住居跡については,新たに3軒以上検出し,構造では,周堤の外側に周溝を検出し,杭列の範囲を住居の範囲とした過去の知見とは異なった住居の範囲を確認した。水田跡では,手畦によって区画された小区画水田を検出した。出土遺物には,弥生土器・石器(石斧・石錘等)・木製品(容器・建築部材等)・金属器(銅釧・小銅環)の他,炭化米・種子類・貝殻等の自然遺物がある。土器には,遺構の変遷に対応する資料が得られ始めている。また,非常に工芸的な槽作りの琴等も出土し,今までの登呂遺跡のイメージは,大きく変化しつつある。【EDN】
著者
島村 恭則
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.51-60, 2003-03

日本における現代民話研究は,すでに少なからぬ研究の蓄積を見ているが,日本の現代民話を日本以外の社会の現代民話と比較検討する作業は,まだまったくといってよいほど行なわれていない。この研究動向上の欠を補うべく,本論文では,韓国社会で語られている現代民話について,日韓比較の視点から検討した。本論文で行なった指摘を列挙すれば,次のようになる。(1)現代韓国社会では,現代民話がたいへんさかんに語られているが,日本社会における現代民話の存在様態と比較した場合,怪談系統の現代民話に加えて,社会的・政治的な諷刺の性格を持った笑話系統の現代民話が豊富に語られている点を特色として指摘できる。(2)韓国で,笑話系統の現代民話がさかんに語られていることの背景には,独裁政権下の社会状況と民主化闘争,深刻な労働問題,急速な経済発展とそれに伴なう矛盾などが存在するものと考えられる。(3)現在,日本の現代民話研究において集成され,分析が加えられている現代民話群は,その大半が怪談系統の語りであり,社会的・政治的諷刺の性格を持った現代民話をそこに見出すことは困難である。この状況を規定する要因は,①70年代以降の日本社会における脱政治化,②言論統制等の抑圧が存在しないことによるメディアとしての現代民話の需要低下,③研究者における現代民話対象化過程における偏向,といった要素の複合に求められる。(4)上の指摘をふまえたとき,われわれは現状の再解釈と再調査を行なう必要に気づかされる。また,海外との比較研究は,こうした現代民話再考の契機となるものであり,ここに比較研究の重要性が確認されるものである。There has already been considerable research on modern folktales in Japan, but research that compare modern Japanese folktales with modern folktales from societies outside of Japan cannot even be said to have begun. To address this shortcoming in research trends, this paper attempts to examine modern folktales in present-day Korean society through a Japanese-Korean comparison. The following is a list of issues highlighted in this paper:1) In present-day Korean society, modern folktales are told very frequently. It can be noted that in contrast to modern folktales in Japanese society, modern Korean folktales not only appear in the form of ghost stories, they also contain many humorous stories characterized by social and political satire.2) I believe that many modern Korean stories are humorous because of the social conditions and the struggles for democracy that have occurred under totalitarian regimes, as well as serious labor issues and rapid economic development and its associated conflicts.3) Most modern folktales compiled and analyzed in current folklore research in Japan are ghost stories. It is difficult to find modern folktales characterized by social and political satire. This is due to a combination of elements including: i) the anti-politicization of Japanese society in the 1970's and later; ii) the decrease in the demand for modern folktales as a medium due to the absence of oppression, such as the repression of the freedom of speech; and iii) scholars' propensities in the process of objectivizing modern folktales.4) Given the issues above, I have come to understand the necessity of reinterpreting and restudying the current situation. In addition, international comparative research provides an impetus to reconsider modern folktales such as this one. This paper proves the importance of comparative research.
著者
加藤 玲大 馬 青 村田 真樹
雑誌
研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:21888779)
巻号頁・発行日
vol.2016-NL-228, no.10, pp.1-6, 2016-09-22

本稿は,深層学習の手法である Deep Belief Network (DBN),Stacked Denoising Autoencoder (SdA) を用いて,QA サイトに投稿された質問文のカテゴリ分類について述べる.カテゴリ分類における DBN と SdA の有効性を確認するため,多層パーセプトロン (MLP),サポートベクターマシン (SVM) をベースライン手法とし,分類精度の比較を行った.次元数の異なる入力データを 2 種類用意し,入力の次元数の違いにおける分類精度の比較を行った.機械学習手法のパラメータの最適化にはグリッドサーチを行うことにより決定した.実験の結果,SdA が最も精度が高かった.また,入力が高次元の時,DBN,SdA ともに分類精度がベースライン手法より高かった.さらに,入力の次元数を増やすことが深層学習の精度の向上に有効であることが確認できた.
著者
池田 幸夫
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.33-38, 2007 (Released:2018-04-07)
参考文献数
11

観察・実験と理論・法則は自然科学を構成する基本的な要素である。両者の関係に基づいて,理科授業を2つの型に分けることができる。まず,観察・実験によって得たデータから,きまり(理論・法則)を帰納的に発見させる授業が理論追求型である。学校で行われている問題解決型の授業の多くは,この型である。一方,理論や法則を前提にして,問題解決活動に重点を置いた授業が理論依存型である。理論や法則に対する矛盾を自覚させる場面をうまく仕組むことによって,理論依存型授業は科学的思考力の育成に大きな効果を発揮し,科学に対する学習者の興味関心を高めることが可能である。
著者
村山 良之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.241, 2006

地形改変地における地震災害 日本では、都市の郊外住宅地が丘陵地等に地形改変をともなって広く展開し、近年では大きな地震のたびに、これらの地域で特徴的な被害が発生する。すなわち、切土部では住宅等の被害がほとんど発生しないのに対して、盛土部や切盛境界部で、不等沈下や崩壊といった地盤破壊にともなう住宅等の激しい被害が発生する(1978宮城県沖地震、1993釧路沖地震、1995阪神淡路大震災、2004新潟県中越地震等)。またこのような地盤破壊までは至らなくとも、切土部と盛土部・切盛境界部で瓦屋根等の被害発生率に大きな差が生じる場合がある(2001芸予地震、2003三陸沖の地震、2005福岡県西方沖の地震)。 発表者はこれまで、宮城県沖地震、釧路沖地震、阪神淡路大震災、福岡県西方沖の地震について、地形改変前後のDEMを作成し、GISを用いて、地形とその改変に関わる土地条件指標群と建物被害発生との関係について統計学的検討を行ってきた。その結果、これら土地条件群は建物被害発生についてある程度有効な説明力を持つことを明らかにした。「総合的な宅地防災対策」への期待 2005年12月、国交省は、宅地の地震防災対策として、「大地震時に相当数の人家及び公共施設等に甚大は影響を及ぼすおそれのある…大規模谷埋め盛土」の「滑動崩落」対策を主とする「総合的な宅地防災宅策に関する検討報告(案)」を提示するに至った。より具体的には、「宅地安全性に係る技術基準の明確化」、「宅地ハザードマップの作成」、既存の「宅地造成等規制法の改正」等を行い、新規造成宅地だけを対象とするのではなく、既存の宅地についても、地方公共団体が「特に危険な大規模盛土造成地」を「造成宅地防災区域(仮称)」に指定する等して、減災対策実施を関係者(土地所有者等)が連携して実施するものとしている。これまで宅地盛土には(一部を除いて)技術基準すら存在しなかった状況からすると、大きく踏み込んだ内容を有する本政策は、地震防災におおいに寄与することが期待できる。発表者は、この政策の基本方針を強く支持するものであるが、さらに有効なものにするために課題について以下に記す。_丸1_ 対象範囲のスクリーニング方法 本学会災害対応MLで既に名古屋大の鈴木康弘先生指摘のとおり、スクリーニング作業方法について十分に検討すべきである。発表者の経験からも、提案されている地形改変前後のDEMに基づく盛土分布の把握にはかなり丁寧な作業必要である。この作業に加えて、新規造成宅地の場合は施工図面の提出義務化、既存造成宅地についても可能な限り収集作業を行うのが、精度と費用の点で有効と思われる。_丸2_ 本政策の対象範囲 対策実施に対して公的支援を想定しており、対象が限定されるのは、やむを得ないが、近年の地震災害では、この対象外のところでも(盛土全体の滑動がなくとも切盛境界で不等沈下発生、小規模盛土で滑動崩落等)宅地や住宅で大きな被害を受けている事例も数多くあると思われる。_丸3_ 宅地ハザードマップの公表と利用 スクリーニングから漏れた盛土部を含むできるだけ広い範囲について、宅地ハザードマップ(切土盛土分布図)公表を義務化すべきである。このことが対象外(滑動しないと予測されたものや小規模)の盛土部での個人的対策実施を促し、_丸2_の課題に応えると考えられる。さらに、不動産売買時の提示義務化や、建築確認申請時の参照義務化、地震保険の保険料算定基準への採用など、マップの利用方法についても踏み込むことが、さらに自助努力のインセンティブになると考えられる。

1 0 0 0 米國旅行記

著者
橋口 隆吉
出版者
社団法人日本鉄鋼協会
雑誌
鐵と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.169-178, 1951
著者
貫井 陽子 高崎 智彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.2435-2441, 2007-11-10
参考文献数
6

ウエストナイル熱は1999年米国ニューヨーク市での流行を契機に全米へ感染が拡大し,世界的に注目を集めている.本邦でも2005年に米国旅行後の患者で感染が確認されている.感染は蚊に吸血されることにより成立するが,これまでに輸血,臓器移植,母乳を介した感染の報告もある.診断は,病原体検出及び血清学的診断により行う.現時点でヒトに対し有効な特異的治療法や認可されたワクチンはない. <br>
著者
長谷部 茂
出版者
拓殖大学海外事情研究所附属台湾研究センター
雑誌
拓殖大学台湾研究 = Journal of Taiwan studies, Takushoku University (ISSN:24328219)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.83-110, 2019-03-08

台湾の言語環境は複雑である。複雑になったというべきかもしれない。1987 年の戒厳令解除を一つの画期とする民主化の進展は,それまで当然に受け入れてきた環境が可変的なものであることを台湾に住む人々に知らしめた。言語もまたそのようなものの一つである。これまで北京語を基礎とした標準漢語である中華民国の国語(National language)― 対外的に現在,華語と称される― の陰に隠れて,本来の意味での母語でありながら,国語より数段劣る方言,言語と見なされてきた閩南語や客家語,原住民の諸言語が,華語と対等な言語と見なされるようになったのは,台湾の言語環境にとって未曾有の変化である。言語の違いは民族的文化的に区別される族群(Ethnic groups)意識と密接に結びつくことで,いわゆる「台湾アイデンティティ」のあり方を問う試金石ともなっている。本稿は,この多分に政治的要素を含む台湾の言語環境の変化が,今もなお華語を中心とする台湾の対外的語学教育(台湾における外国人向け語学教育及び台湾人教師による海外での語学教育等)にどのような影響を及ぼしているのか,また,中国大陸(中華人民共和国)の標準漢語である「普通話」が世界標準となりつつある現在,台湾の「華語」は,対外的語学教育において,どのように位置づけられるべきなのか,今後の課題を摘出し,その対策を提言しようとするものである。
著者
〓田 孝 小竹 利明 竹内 真一 MAXIMOV Trofim C. 吉川 賢
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 = Journal of the Japanese Forestry Society (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.246-254, 2002-11-16
参考文献数
43
被引用文献数
2

東シベリアの永久凍土地帯に成立する<I>Larix gmelinii</I>林の水分動態と土壌水分, 飽差との関係について考察するために, 林分の水利用量 (<I>SF</I>) と環境要因の季節変化を測定した。<I>SF</I>は開葉直後から急激に増加し, 6月上中旬の展葉の終了する時期に最大 (2.7mmd<SUP>-1</SUP>) となった。<I>SF</I>はその後, ピーク値の75%の値まで低下したが, その値は7月終わりまで維持されていた。<I>SF</I>には飽差の増大による頭打ちが認められた。土壌体積含水率が気孔コンダクタンスに及ぼす影響を調べた結果, 飽差が20hPa未満の領域では気孔コンダクタンスが土壌体積含水率の減少に対して直線的に低下する傾向が認められた。ただし, 飽差が20hPa以上の領域では, 飽差の影響による蒸散の頭打ちが顕著となるため, 土壌体積含水率と気孔コンダクタンスの関係は不明瞭になった。<I>L. gmelinii</I>は, 当地のような寡雨地帯で生育していくために, 土壌の水分状態に応じて気孔コンダクタンスを調節することで体内水分の損失を防ぎ, 水ストレスを回避していると考えられた。
著者
伊藤 美智予 近藤 克則
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.153-166, 2007
被引用文献数
2

本調査では,次の2点を明らかにする目的で現地ヒアリング調査を実施した.第1に,アメリカの質マネジメントシステムへのナーシングホーム側からみた評価を明らかにする.第2に,アメリカの経験から日本への示唆について検討する.対象は,3つのナーシングホームのマネジャーら12人とした.本調査結果に基づけば,同システムがケアの質向上へつながるとの積極的評価が過半数を占めた.同システムがケアの質向上に寄与している理由には,(1)データ提出義務化,(2)現場が納得する評価すべき要素の抽出,(3)利用者レベルでのケアのプロセス改善につなげる方法の開発,(4)他施設との比較可能な量的指標群の開発,(5)評価結果の監査での活用,(6)評価結果の公表,の6点が考えられた.ただし,評価指標のリスク調整など課題もあった.日本への示唆として,データの入手方法の検討,他施設と比較可能な量的指標群の開発,監査方法の再検討の3点が挙げられた.
著者
寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1-12, 2016-01-20 (Released:2016-05-27)
参考文献数
26
被引用文献数
2 1

漢方医学において腹部の触診は非常に重要である。なぜならばある種の腹部徴候は特定の方剤群を指示するからである。最近,著者は心下痞鞕と背部兪穴の硬結が緊密に関連していることを見出した。また,28症例の検討によって,この旁脊柱筋の硬結を鍼によって緩めると心下痞鞕が即座に解消されることを明らかにした。この新知見は二つの事実を示唆している。則ち何等かの共通の要因が心窩部と背部兪穴に同時的に徴候を現していること,及び上部消化管からの迷走神経の痛覚求心性信号が背部兪穴からの求心性信号によって視床への投射が遮断されることである。すなわち心下痞鞕という腹部徴候が出現する背景には迷走神経・交感神経反射系の存在が示唆された。この知見は漢方と鍼灸のパラダイムの相違を乗り越えたものであり,今後の伝統医学の在り方に発想の転換を求めるものである。
著者
松井 真人
出版者
山形県立米沢女子短期大学
雑誌
山形県立米沢女子短期大学紀要 (ISSN:02880725)
巻号頁・発行日
no.48, pp.19-30, 2012-12

要旨:英語には未来時を表すための様々な表現手段があり、それぞれの形式の意味には未来時に対する異なる捉え方が含まれている。本稿では特に、begoing to、現在進行形、未来進行形という、進行形(be-ing) を含む未来指示の形式を取り上げ、まず、各々の形式の意味を記述文法的な視点から説明した。さらに、各々の形式と意味が結びついている理由(動機づけ)を認知文法的な視点から考察し、各々の形式の意味は、それらの形式を構成している動詞go、進行形、法助動詞willの意味に動機づけられていることを示した。 キーワード:未来時、認知、begoing to、現在進行形、未来進行形