著者
口岩 聡
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1.ダイオキシン摂取の次世代影響を調べるため雌マウスにダイオキシンを慢性的に経口投与して胎内蓄積を起こさせた後、妊娠させ産子を得た。産子の外観や成長には異常が認められなかったが、接触刺激に対し過敏性を示すなど、行動に異常が現れた。行動異常が出現した動物では、脳内のセロトニン産生細胞が著しく減少していた。このことは、胎盤および母乳を介してダイオキシンに汚染された子どもの脳にセロトニン異常が発生し、それが行動異常を起こす原因となる可能性を示唆している。2.ダイオキシン致死量1回投与を受けたラットでは、投与後摂食障害が現れ、著しい体重減少が起こった。このラットの脳内では、扁桃核中心核、分界条床核、室傍核、内側視索前核、視床下部内側核にc-Fosタンパクの発現が見られた。これらの神経核は摂食の調節に関係しているので、ダイオキシンによる摂食障害はこれらの神経核が障害を受けるためと推察された。3.またこれらのダイオキシン急性投与を受けた動物では、視床下部外側野、室傍核、脳弓周囲核において一酸化窒素合成酵素の活性低下が認められた。これらの領域も摂食に関係する部位であり、一酸化窒素は摂食行動に関係する伝達物質である。ダイオキシンは一酸化窒素系に影響を与え、摂食行動を障害する可能性が考えられた。4.またこれらの急性投与動物において扁桃体核、内側視索前核、淡蒼球、分界条床核においてエンケファリン免疫活性増強が認められた。以上の結果は、ダイオキシンは胎盤、母乳だけではなく、成人でも大量に摂取すると脳異常ひいては行動異常が現れることを示している。
著者
仲地 豊 金沢 徹文 康 純 岡崎 康司
出版者
埼玉医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究課題は性同一性障害(GID)当事者ゲノムの全遺伝子のうち、エクソン領域を対象とした全エクソーム解析による研究計画であった。しかし海外の研究グループから性同一性障害と関連が示唆されるエクソン領域以外の多型が報告された。当初予定していた全エクソーム解析ではエクソン領域近傍100bp程度の範囲までしか変異・多型を検出することができないため、手法を当初の計画から変更し全ゲノム解析に移行して再解析をする必要があった。予備解析でイントロン領域や遺伝子間領域にみられる反復配列多型の検出も全ゲノム解析で十分可能であったため、手法を変更して10例のGID当事者サンプルについて全ゲノム解析をおこなった。
著者
尾上 圭介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

漫才、落語の音声資料を収集して文字化し、これに既存の落語活字資料を加えて、その談話構造を分析した結果、次のような見解を得た。1.落語は、(1)演者による<素材紹介>行為と(2)演者による場全体の<共感形成>行為とが重層して成立するものであり、(1)と(2)の重層は<下げ>において集約的に見られるのみならず、落語のテクスト全体において見られる。2.漫才の談話論的構造も基本的にはこれと同じである。笑う対象としての<素材>は、ボケ側の発言内容や、そういう発言をすることによってそこに形成される一つの人間像、また二人の会話の進展そのものによって構成される。それを笑うべきことだとする場の<共感形成>は、ツッコミ側の発言によって実現される。3.場全体が笑うための<素材>を効率的に構成するために、漫才において長年にわたって練り上げられた会話の運びの型がいくつもあり、その中には(A)通常の日常会話の中にもあり得る運びのタイプと、(B)漫才を代表とするような笑いの話芸の中でしか現れないような運びのタイプとが認められる。4.大阪方言では、会話を笑いにもちこむための努力と工夫が通常の会話の中でも濃厚に為される傾向が強い。それは(B)タイプの会話が日常化していると言うこともできる。5.上記(4)のことの根底には笑いを求める大阪人の気質があるが、そのような言語行動上の顕著な傾向の背後には、大阪人の気持ちの動き方、発想様式、美意識にかかわる9個の特徴が指摘できる。
著者
松宮 一道
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

人間は手を使った巧みな作業をどのように実現しているのか? 過去の研究は,手の周囲の空間に特化した知覚機能が巧みな手作業において重要であることを示唆していたが,そのような知覚機能がどのような仕組みで働くのかは証明されていなかった.本研究では,手が見えているときに誘発される視覚的な動きの錯視を発見し,この錯視は見えている手に対して位置の選択性を持つことが明らかにされた.さらに,この錯視は,自己所有感覚が誘発された手を能動的に動かしたときだけ生じた.この現象は,自分の手に対する空間位置の認識機構が脳内に存在することを示唆し,巧みな手作業を実現する上で身体性自己意識の機能的な役割を示している.
著者
徳澤 佳美
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は、我々が樹立したヒトiPS細胞でFATP3ノックアウト細胞を作成し、解析することを計画した。ゲノム編集によるFATP3遺伝子ターゲッティングを行うために、CRISPR/Cas9発現ベクターとFATP3ターゲッティングベクターの構築を行なった。FATP3にはisoformが3つ存在するため、実際にFATP3ターゲッティングに使用するヒトiPS細胞において、これらのisoformの発現量をqRT-PCRで測定した。その結果、FATP3の全てのisoformが発現していたことから、ヒトiPS細胞でFATP3の機能抑制の影響が表現型として出る可能性が示唆された。しかし、ヒトiPS細胞は通常、ミトコンドリア活性が抑制されており、分化誘導に伴い代謝が電子伝達系-酸化的リン酸化にスイッチすることが知られている。FATP3はミトコンドリアの呼吸鎖活性に関わっていると予想されるため、FATP3の発現抑制によるヒトiPS細胞への影響は、抑えることができると考えた。ターゲッティングのための予備実験として、使用予定のヒトiPS細胞への遺伝子導入条件と薬剤選択濃度の検討を行い、条件を決定した。FATP3に遺伝子変異が同定された患者は、胎内発育不全を呈したことから、FATP3ノックアウトiPS細胞は分化誘導した時に増殖能の低下が予測される。そのためFATP3ノックアウトiPS細胞の解析には、ミトコンドリア呼吸鎖複合体の形成だけでなく、分化誘導効率の評価を行うことも重要と考えた。神経外胚葉への分化誘導方法は所属研究室において既に確立されているが、中内胚葉系への分化誘導方法は着手していなかったため、誘導条件の検討を行なった。
著者
佐々木 達夫 VOGT Burkard 金子 浩昌 二宮 修治 BURKAHRD Vogt ブハード ホクト ジェイ ラクスマン ブィード ホクト 蔀 勇造
出版者
金沢大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

アラブ首長国連邦ラッセルカイマ首長国にある、中世港湾都市ジュルファル遺跡を発掘調査し、住居跡とモスク跡を発見し、出土した陶磁器片の整理を現地で行った。調査の目的は、中世のインド洋貿易で運ばれた陶磁器を使って、当時の貿易状態の一面を探り、それを使用した人々の生活と歴史を復元することであった。イスラーム世界と東アジアは、9世紀以来、海上交通路を活発に利用した貿易により交流したことが知られる。これは陸上の道から大量輸送の可能な海の道への転換であり、こうした事実は文献からだけでなく各地から出土する大量の陶磁器片などによって推定できる。しかし、その産地、数量、組み合わせ、歴史的な変遷、さらに使用した人々などについての詳細な実態は不明瞭な部分がまだ多い。そこで、ペルシア湾岸に位置する交易都市ジュルファル遺跡を発掘することにより、その実態、すなわち、どのような建物に住む人が、生活用具になにを用い、そしてなにを食べ、他の世界のどこから物を運んだかを知る資料を得る。とくに、東西世界の貿易と技術的な影響関係を、出土する陶磁器を主に用いて探ることが現在の課題である。すなわち、本研究は他地域との交流という視点を中心にすえた現地調査研究である。一つの住居単位(中庭と建物を含む最小単位の敷地)が推定できる範囲を目的に発掘を行った。ジュルファル遺跡では7層に分類できた14世紀から16世紀にかけての都市遺跡の一部を発掘し、層位的な建物プランの変化をとらえることができた。層位的に出土する陶磁器の組み合わせやその他の生活品から、ここに住んだ人々の従事した貿易と生活の状態、その変遷を推定することができた。出土品は現地およびラッセルハイマ国立博物館でできるだけ分類整理し、器形復元や統計的な処理を行った。その過程で選別され登録された出土品の一部を日本に運び、詳細な実測図作成、写真撮影を行っているところである。さらに陶磁器の釉と素地の科学的分析を日本で実施中である。一部の分析結果はすでに論文として公表している。出土した陶磁器は、イラク、イラン、アラビア半島各地、東南アジア、中国などから運ばれたものであることが判明し、当時の貿易の様相を知る手掛かりを得ることができた。東・東南アジアの製品では中国の染付、青磁、赤絵、黒褐色釉陶器、ベトナムの染付、青磁、タイの青磁、鉄絵陶器、黒褐釉陶器などが目立つ。イランやイラクの青緑釉陶器、白釉陶器、さまざまな文様の描かれた施釉陶器も出土している。土器はアラビア半島産が多く、次いでイランの土器が続いている。現在、重量を計測して層位的に統計処理を実施中であるが、産地不明の製品もまだあり、基礎的研究の継続がさらに必要である。もっとも多いのは現地産土器、次いでイラン産土器、さらにイラン産の施釉陶器である。遠隔地から運ばれた陶磁器は海上貿易を復元するうえで大きな意味をもっており、さらに研究を続ける予定である。ジュルファル遺跡の周辺に所在する遺跡の調査も実施した。ジュルファル遺跡の北10kmに位置するハレイラ島は、初期のジュルファル遺跡と推定できる遺跡である。ハレイラからジュルファルに都市が移動し、ジュルファルという都市名もハレイラから現在の地に移動したと推定でき、二つの地域を併せて広義のジュルファル遺跡と呼ぶべきであることが推定できた。島の南端で初期イスラームの住居跡を発見した。ジュルファル遺跡の歴史的位置づけを行ううえで重要な発見であり、本格的な調査がさらに必要である。ペルシャ湾地域における日本人によるイスラーム時代の遺跡調査は、我々の調査が唯一であり、本研究の果たす学問的な役割は大きい。
著者
五十嵐 敏雄 五十嵐 正雄
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

卵巣チョコレート嚢胞を有する不妊症患者は自然妊娠を期待して嚢胞病変摘出術を受ける。術後119名に関する多因子分析を行い、自然妊娠までは平均15ケ月間要したが、患者さんがエピナスチンなどの花粉症薬を使用した場合は平均2.7ケ月で自然妊娠に至っていた。また花粉症合併症例は3.3倍再発が多いが、3.9倍自然妊娠も多いという結果になった(95%信頼区間;1.065-15.007)。つまり、卵巣チョコレート嚢胞花粉症合併例は、再発のハイリスクだが、妊娠に関しては花粉症薬のためか早期自然妊娠しやすい。現在、自然妊娠しやすい術式を開発中で、病変のアポトーシス抵抗性からの解放も今後続けて検討していきたい。
著者
阿部 安成
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究のために実施した史料の調査と収集の対象は、現在13施設あるハンセン病にかかわる国立療養所のうちの10施設となった。本研究の課題は、ハンセン病者の<声>を聞くこと・読むこと、そしてそれを歴史社会学の学知をとおして、ハンセン病を発症したものたちは、療養所での生活をとおしてなにになり、またそこでの生活が園外の社会と国家になにをもたらしたのか、解明することにあった。いいかえれば、ハンセン病療養所におけるハンセン病者の主体化と、それをめぐる社会・国家との相互交渉の解明である。本研究にあたっての調査をとおして、療養所在園者の肉声を聞きとることの困難さと、療養所で保管されている文芸誌・文芸作品や自治会機関誌の厖大さが明らかになった。とくに後者については、文芸誌や文芸作品がハンセン病文学全集として刊行されつつあるが、いまだその全貌は把握されていないし、療養所を横断する情報交換も充分になされていない情況が判明した。いくにんからの聞きとりをおこなうなかで、ハンセン病療養所の在園者にとって、療養所の生活とは、自分がなになのか、自分のいる療養所とはどういう場所なのか、ここでの生活にどのような意味があるのか、といったいくつもの「なぜ」という問いとしてあらわれている、とわたしは受けとった。こうしたハンセン病者の問いを解明してゆくにあたって、療養所に保管されている厖大な量の文芸誌・文芸作品というテキストがその手がかりとなる。また、自治会誌などに記されている日誌などから、療養所が社会のなかでまったく隔絶した施設としてあったのではなく、慰安や寄附をめぐる園内外のさまざまな交流があったことが判明した。
著者
水島 あかね 小代 薫
出版者
明石工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、最後の三田藩主・九鬼隆義及び志摩三商会の社員だった元三田藩士らに着目し、彼らが近代神戸の都市形成に与えた影響について考察することを目的とする。“神戸ホーム(現神戸女学院)”など多くの教育施設に九鬼隆義や志摩三商会の社員が関わっていたことを明らかにした。また法務局保管の旧土地台帳や字限図などを用いて、明治期に志摩三商会及びその社員らが所有していた土地や彼らが設立に関わっていた教育施設の分布図を作成した。
著者
古久保 さくら 丸山 里美 高松 里江 須藤 八千代 山口 薫 茶園 敏美 小川 裕子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、1947~1997年に大阪府内に存在した婦人保護施設「生野学園」の50年間の記録・資料を主資料として研究を進めることにより、戦後日本の女性の貧困・困窮の実態について明らかにした。婦人保護施設は売春防止法により規定された施設であるが、その施設開設初期段階から家族のなかに居場所を失った多様な困難を抱える女性たちを受け入れ支援する場として存在したことが明らかになった。また、同時に「売春」と言われてきた行為について、性暴力・恋愛との連続性、言い換えれば客体化された被害者としての側面と主体化された行為者としての側面から概念を再検討する必要性も見えてきた。
著者
伊田 久美子 山田 和代 中原 朝子 木村 涼子 熊安 貴美江
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は深刻化する貧困と拡大する格差について若年層の生活の質に焦点を当てたデータのジェンダー分析を行った。特に世帯への包摂の質、つまり世帯内依存関係を視野に入れた生活の質を分析対象とした。その結果次の知見を得た。①女性は男性と異なり、自分の納得する生き方の選択(エイジェンシー)が幸福度を低下させる傾向がある(マイナス効果)。②既婚女性の暴力リスクは概して高く女性の収入増によりさらに高くなる(バックラッシュ型)。③既婚女性の幸福度は他の婚姻同居形態に比べて高いが、既婚女性間の比較では専業主婦の自尊感情は雇用者に比べて低い。④親同居未婚者は男女とも一人暮らしや既婚者に比べて収入も幸福度も低い。
著者
渡邊 崇人
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

白色腐朽菌 Ceriporiopsis subvermispora は,セルロースを極力壊さずにリグニンを選択的に分解する.その選択的リグニン分解機構を解明する一環として,今回は,リグニン分解フラグメントの1つであるバニリンに対する細胞応答を調べた.蛍光ディファレンスゲル二次元電気泳動を行い,バニリン存在下と非存在下での発現プロファイルを取得した結果,バニリンで発現が誘導される,または,抑制されるタンパク質が見つかった.また,サプレッションサブトラクティブハイブリダイゼーションによりバニリンで誘導される遺伝子を数多く取得した.
著者
仁木 國雄 冨澤 一郎 金子 克己 斎藤 悟 阿部 修 香川 博之 石井 明
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

スキーの材料開発やワックスの使い方、スキー技術の理解に科学的裏付けを与える目的で、基礎科学的見地からスキー滑走原理を研究した。そのために、短いモデルスキーを用いて、静摩擦係数、低速度の動摩擦係数について、雪粒子の大きさ、雪表面の硬さなどの雪の条件をコントロールして温度依存性、速度依存性を厳密に測定した。その結果、実際のアルペンスキーよりは遅い滑走速度に関してではあるが、摩擦現象が、雪表面の擬似液体層を考慮した凝着力の温度依存性およびそれとは逆の温度依存性を示す雪のせん断応力により矛盾無く説明できる事が分かった。また、低速度でも実際のスキーやスケートで測定されている様な低い摩擦係数が実現するので、摩擦熱による融け水の生成などのような、良く滑るメカニズムを考える必要は無いことが明らかとなった。
著者
佐々木 大輔
出版者
市立札幌大通高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2017

【研究目的】本研究では、テーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム(以下、「TRPG」)というコミュニケーションゲームを利用して社会的スキルトレーニングをおこなうことの展望を確認する。本研究では、定時制高校の生徒がTRPGに参加した際、ゲーム中にどのように意識して普段とは異なるコミュニケーションをおこなっているかを確認した。また、TRPGがキャリア教育の一環として授業に組み込むことができるかどうかを確認するため、教員が一緒にゲーム参加した場合、それらの意識がどのように変化するのかも確認した。【研究方法】計4回のTRPG体験会において、終了後に質問紙調査をおこなった。参加者は合計64名。また、そのうち14名が教員と同じ卓でゲームに参加した。ゲームに対する面白さ、および、社会的スキルの4側面(反応読解、反応決定、感情統制、反応実行)について、普段と比較してどの程度実践できたかを5件法で質問した。また、これらを教員が参加した場合としなかった場合の両方を想定させて質問した。【研究成果】面白さは教員卓のとき教員不在想定時に低く、教員と一緒だと面白さを教員に帰属してしまうことが明らかになった。対人目標決定は教員卓のとき教員同席想定時に高く、教員と一緒だと、何をすればいいかは教員が一緒の方がわかりやすいと考えることが明らかになった。対人反応実行では教員卓のとき教員同席想定時に高くなることから、教員と一緒だと伝えようという努力を教員が一緒の方がしやすいと考えることが明らかになった。以上のことから教員の同席による否定的な効果は確認されず、促進する効果が確認されたため、キャリア教育の一環として授業に組み込むことが可能であることが示された。
著者
長沼 誠 金井 隆典
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

生薬青黛の主成分の1つであるイソインジゴはAryl Hydrocarbon受容体(AhR)のリガンドと考えられ、様々な免疫学的薬理作用が報告されている。AhRはILC3を介して炎症性T細胞の抑制効果を発揮し、作用機序に腸内細菌叢の関与も確認されていることから、イソインジゴの腸炎抑制作用も大いに期待しうる。すでに我々は、2016-2017年に多施設共同研究を行い、活動性潰瘍性大腸炎に対し用量の異なる青黛およびプラセボを8週間投与を行い、1日0.5g以上の青黛投与により、プラセボに比して有意に有効率、粘膜治癒率が高いことを報告してきた。しかしそのメカニズムについては明らかではない。さらに青黛投与による大腸癌抑制効果についても不明である。本研究では腸炎動物モデルを用いて青黛の腸炎抑制メカニズムと大腸癌抑制効果について検討を行っている。平成29年度は生黛成分のうち、含有率の高いindol, I3C に着目し、各々を経口投与し、急性腸炎モデルにて比較検討を行った。Indigo、I3C投与においては既報と異なり、DSS腸炎は抑制されなかった。青黛内の主成分の一つであるBetulin投与においてもDSS腸炎は抑制されない。一方でindol投与においては軽度の改善効果を認めた。無菌マウスにおける生体投与においてはDSS腸炎の抑制効果がキャンセルされるため、青黛投与で増加する菌叢にも着目した。青黛投与では特定の菌叢の増加を認め、青黛投与マウスにおける菌を抗生剤投与マウスに生着しDSS腸炎を検討したところ腸炎抑制効果を示した。また大腸癌抑制効果に関する検討では大腸癌が発生する前の早期の段階で青黛を投与しても大腸癌の腫瘍サイズの減少は認められなかったことより、青黛による予防投与は大腸癌予防の効果はないと考えられた。
著者
香西 みどり
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

炊飯における米の吸水過程は米飯の食味に影響するが、これまで米粒内の水分含量や水分分布という視点から吸水過程を把握した報告はない。本研究では米の吸水過程に着目し、加熱中断で起こる異常炊飯米の生成条件および吸水特性を明らかし、その生成メカニズムを検討した。その結果、65℃、4時間浸漬すると再炊飯しても粘らず食味が低下しており、デンプンの一部が糊化した異常糊化状態となり、吸水は進むが、米粒が割れて正常な炊飯米とならないことが明らかになった。
著者
牧野 耕次 比嘉 勇人 甘佐 京子 山下 真裕子 松本 行弘 山本 佳代子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

境界とは、二つ以上のものを区切る時のさかい(境)となるものであり、人間に関しては、身体的、心理的、社会的、霊(スピリチュアル)的境界があると言われている。本研究では、精神科における看護師の境界の調整に関する技術的要素を抽出し、その技術をどのように獲得してきたのかを明らかにした。さらに、総合病院の患者-看護師関係における境界概念に関するモデルを抽出した。