著者
角田 篤泰 松浦 好治 外山 勝彦 小川 泰弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

e-Legislation(電子立法)の方法論の研究とこれに基づく支援システムの提供を行った。その結果として、条例・規則(=例規)のデータベース・システムを開発・提供し、全国の約半数の自治体で利用されるようになった。これによって自治体の立法作業に役立つことができた。このデータベースは我が国で初めての大規模な例規データベースであり、実際にその統計情報なども発表して、例規を定量分析できる学問的基盤を与えることにもなった。このシステムにはスーパーコンピュータを利用した例規分類機能や立法作業の支援機能も装備されている。さらに、この研究過程で法政策の形式的記述方法や定義条項の執筆方法論も提案した。
著者
松本 洋一郎 德永 保 吉川 潔 辰巳 敬 真壁 利明 橋本 周司 松尾 豊 坂田 一郎 上山 隆大 浦島 邦子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2014-04-01

シンガポールは一人当たりGDPではわが国を超え、大学ランキングでも台頭しているが、わが国における政策研究は限られていた。本研究では、シンガポールの科学技術政策(特にバイオメディカル推進策)について、文献調査や現地での専門家への聞き取り等によって明らかにした。シンガポールでは産業政策のために科学技術政策が実施されているといっても過言ではない。著名研究者を大量に誘致するなどし、旧来から行われてきた多国籍企業誘致を先端科学分野の研究開発へ拡充する形で、成功を収めてきている。大学政策においては、テニュア制度や会計、財務など、モデルとする米国の事例から徹底的に学ぶ姿勢が見られた。
著者
柊 和佑
出版者
中部大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

近年、地方自治体を中心とした「地域の記憶」である地域情報資源をコンテンツとしたアーカイブズの構築およびそのディジタルアーカイブズ化が盛んであり、様々な形態のサービスが誕生している。その一方、それらのサービスを利活用するためのハードルが低いとは必ずしもいえない。本研究の中心課題は、ディジタルアーカイブを地域住民が自らが使い易いままにアップグレードしながら長い期間利活用できるようにすることである。今後、日本は少子化が進み、地方都市が消滅していくことが予想されている。本研究は、消滅可能性都市が、将来的のために地域の記憶を少しでも残しておくことを目標としている。そのためには、アーカイブのコンテンツの検索や利用に用いられるメタデータ、コンテンツそのものの特性や構造を記述するメタデータを、地域住民にとってわかりやすい表現と結びつけることが収集における基本的課題となる。そして、それに基づいて地域住民が使いやすい方法でアーカイブをアップグレードする仕組みが必要となる。実際に研究を進める際は、地域コミュニティの知識のナレッジベース化を目標としオーラルヒストリーを中心としたコンテンツ制作手法(つくる)、異なるディジタルアーカイブ間を意味的に結びつける(つなぐ)、地域住民のためのディジタルサイネージなどのディジタルアーカイブ利用支援手法(つかう)を課題カテゴリとして意識した。また、研究を進める際に現れる問題も、どの課題カテゴリに入るのかを意識した。本年度はすでに蓄えられた地域情報資源のディジタルデータを元に、それを観た地域住民が語る言葉をメタデータ化し、ディジタルアーカイブ全体のメタデータ量を増やすための方法の確立を目標とした上で、実際に稚内に赴き、地域住民の反応及び市区町村の役所の人間とミーティングを行い、過疎地域の意識を調査するとともに、その地を訪れた旅行者の行動を観察した。
著者
藤本 悠
出版者
奈良大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

現代日本における社会問題のひとつに人口問題がある。特に地方においては「過疎」という言葉を通じて論じられることが多く、1960年代以降、様々な分野において議論され続けてきた。しかしながら、根本的な解決に至らないまま、農林漁業を主要産業とする数多くの地方小集落が消滅の危機に瀕しているのが現状である。この問題に対して、作野広和は「むらおさめ」という考え方を提唱し、消滅を免れ得ない集落においては潔い終焉を認めつつ、その集落が存在した記録を後世に遺すという方向性を議論した。「むらおさめ」の考え方の是非は置いておいたとしても、消滅の危機に瀕した集落の記録をデジタル・アーカイブとして遺すことは極めて重要な課題であり、その必要性は様々な分野において論じられている。しかしながら、この課題に取り組む上での具体的な方策は議論されていないのが現状である。特に「費用に関わる課題」、「技術に関わる課題」、「人的資源の確保に関わる課題」、「共有化に関わる課題」の4つの課題は避けて通ることはできない問題であり、これらの課題に対する方法は早急に検討する必要がある。本プロジェクトではこれらの課題を解決するために低コストで汎用的なデジタル・アーカイブの方法を確立を目指している。平成29年度には「集落アーカイブ」のための概念的な枠組みを整理するとともに、国際標準ISO19100シリーズに準拠したデータベース・スキーマの設計、デジタル・アーカイブ支援システム「Survey Project Manager」および「Survey Data Collector」の開発を行い、調査対象地域のひとつである島根県益田市匹見町において実践的な取り組みを行った。また、構築したデジタル・アーカイブを用いた分析方法の検討も行った。
著者
大泉 宏 中原 史生 吉岡 基 三谷 曜子
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

北海道の釧路沖と羅臼沖でシャチ(Orcinus orca)の調査を行った結果、2007年から2017年の写真から両海域で合わせて380個体が識別され、既知の個体と合わせ計506個体が登録された。海域共通の個体は少数であったこと、海域に独特の鳴音があったこと、衛星標識個体の回遊範囲が異なっていたことから、両海域のシャチは少なくとも行動圏の異なる比較的独立した集団と考えられた。衛星標識個体は千島列島から太平洋西部にまで回遊し、鳴音にはロシア沿岸の集団との関連が予想された。北海道東部にはシャチの重要な生息地があることを明らかにでき、その分布範囲と個体群構造の基礎的知見を構築することが出来た。
著者
久保 慎一郎
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)は日本における保険診療の悉皆データであり、世界最大級の健康関連データベースである。本研究は、データベースと疫学と臨床医学の融合により、NDBを用いた難病患者数の新しい推計方法を確立する。NDBにおける難病患者の定義づけを行い、難病患者における治療実態を数万の傷病・医薬品・診療行為面から分析することで、我が国の保険診療の悉皆データベースに基づき、難病患者の医療の全体像を明らかにする。集計方法を広く伝達し、我が国の難病患者の実態を示す基礎資料となることを目的としている。
著者
谷口 省吾 冨永 晋二
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

還元作用の強い輸液剤を投与することで、血液の酸化還元レベルを還元状態にして手術侵襲やショックなどの生体侵襲時に起こる活性酸素による酸素ストレスを防御して、生体の恒常性を保つことが可能かを検討した。1)種々の輸液剤(乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、フィジオ140、生理食塩水、フィジオ70、EL#3)の酸化還元電位を測定したが、輸液剤の種類により異なる値を示した。還元剤としてはアスコルビン酸およびアルカリイオン水を添加し、アルカリイオン水の生成はイオン専科LB-161、酸化還元電位の測定はpH/ION Meter F-23にて行った。アルカリイオン水やアスコルビン酸添加により輸液剤の酸化還元電位を低下させることができた。2)血液の酸化還元電位を測定し、ある一定の範囲内にあることが示された。また、アルカリイオン水やアスコルビン酸添加により血液の酸化還元電位を低下させることができた。3)手術侵襲や重症ショックなどの生体侵襲時の血液の酸化還元電位を測定し、手術侵襲時には大きな変動は認められなかったが、重症ショック時には酸化還元電位の有意な上昇が認められた。4)酸化還元電位の異なる輸液剤(乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、フィジオ140)を手術侵襲や重症ショック時に投与し、還元作用の強い輸液剤の投与により血液の酸化還元電位を減少させることができた。この時、代謝性アシドーシスや高乳酸血症も改善傾向が認められた。結論として、輸液剤の酸化還元電位を調節可能であり、この輸液剤を投与して血液の酸化還元電位を調節することが可能であることがわかり、生体侵襲時の酸化還元電位の上昇を防ぎ酸化ストレスを減少させることができる可能性か示唆された。
著者
細井 昌子 久保 千春 柴田 舞欧 安野 広三 澤本 良子 岩城 理恵 牧野 聖子 山城 康嗣 河田 浩 須藤 信行 二宮 利治 清原 裕
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

心身医学の中心概念である失感情症(自身の感情に気づきにくい傾向)と陽性感情(生活満足度)および慢性疼痛の合併リスク,養育スタイルと慢性疼痛合併率について福岡県久山町の一般住民で調査した.失感情症群では慢性疼痛の罹患リスクが有意に高く(OR : 2. 7),生活満足度が有意に低下していた.さらに,両親の養育スタイルでは,冷淡と過干渉の両親の養育スタイルを受けた住民で慢性疼痛合併率が高く,とくに父親の養育スタイルが冷淡/過干渉群では有意に慢性疼痛合併率が増加していた.
著者
栗原 敏 福田 康一郎 佐藤 達夫 江藤 一洋 福島 統 神津 忠彦 高瀬 浩造
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2001

1.共用試験Computer-based Testing (CBT)の試験システムの開発および運用に関する研究:平成13年度にCBTシステムの基本的開発を行った。データベース構造および問題入力ソフトについては東京慈恵会医科大学において総合試験システム(Exam98)を参考に研究、開発を行い、出題方式(コンピュータ試験)、サーバーでの問題管理などは独自開発を行い、平成14年2月からの第1回CBTトライアルに投入した。第1回トライアルで発見されたシステム上の問題点を平成14年度の本研究により改修し、平成15年2月からの第2回CBTトライアルに投入している。2.MCQ問題の作成とその質の確保に関する研究:第1回トライアルでは5肢択一形式のいわゆるタイプAの多肢選択問題を出題し、出題したすべての問題を解答率、識別指数、解答パターンを参考に検証した。この検討の結果、共用試験CBTの問題の質を確保するためには、項目反応理論の適応が必要であるとの結論に至り、現在、項目反応理論のCBTへの適応の検討が続いている。第2回CBTトライアルでは、さらにわが国の独自開発による順次解答型連門形式を試行している。順次解答2連門形式、順次解答4連門形式は、コンピュータ試験の特性を生かしたもので、問題解答後次の問題に移ったら前の問題には戻れないタイプのもので、紙と鉛筆の試験では実施できなかったものである。このタイプを用いることで、受験者が一つの症例について順次情報が集積されていく過程の中での判断を問うものである。本形式は米国のSTEP1にもなく、わが国独自の出題形式である。3.客観的臨床能力試験(OSCE)の開発と運用に関する研究:平成13年度の共用試験OSCEは医科、歯科あわせて20校で、少数トライアルとなった。この第1回OSCEトライアルでの学生成績を集め、評点の評価者間較差の研究を行った。4.歯学における試験の作成と運用に関する研究:医科、歯科ではとくにOSCEの課題に大きな相違があり、その相違が運用にどのように影響するかのデータを集積した。
著者
菊池 誠
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

今年度の研究成果は以下の3点である。(1)ファネル気体モデルの理論的整備を進めた。タンパク質の体積を変数とする自由エネルギーランドスケープが与えられれば、分配関数に含まれる分子混雑の効果は解析的に計算できてしまい、自由エネルギーランドスケープへの補正の形に厳密にまとめられる。補正項は各状態の体積に比例しており、比例係数は混雑分子の化学ポテンシャルで決まる。これにより、混雑分子を含む系は混雑分子を含まない系に形式的に書き直すことができることがわかり、見通しよく計算機シミュレーションを行うことができる。(2)上記の「有効自由エネルギーランドスケーブ」の考え方をモデルタンパク質に応用した。具体的にはアップダウン・ベータバレルと4ヘリックス・バンドル構造を取るふたつの格子タンパク質モデルを対象とし、MSOE法によって混雑分子がない場合の自由エネルギーランドスケーブを求めた。これに上記の体積依存補正を加えることにより、混雑分子存在下での「有効自由エネルギーランドスケーブ」を求めた。結果として、混雑分子の濃度が上がるにつれて変性状態のうちで体積が大きな構造の自由エネルギーが上がり、実効的に天然構造が安定化されることがわかった。我々はこの結果を分子混雑がタンパク質折れたたみに与える影響の最も簡単な表現であると考えている。(3)ファネル気体モデルの基礎となるタンパク質のファネル理論に関して、ランダムネットワーク上でのランダムエネルギーモデルを構築し、多様なファネル構造を実現する天然構造の特徴を議論した。なお、これら成果をConference on Conputational PhysicsおよびBiophysical Society Meetingにて口頭発表し、関連する研究者と議論を行った。
著者
松原 孝典 安永 秀計 浦川 宏 綿岡 勲 八木 謙一 積 智奈美 岡田 魁人 櫻井 千寛 渡邊 克樹 伊勢 直香 井上 ひなた 佐藤 明日香
出版者
産業技術短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

染毛(ヘアカラーリング)において、皮膚のかぶれなどの人体負荷や合成染料を利用することによる地球環境への負荷を低減するため、天然由来材料を用いた染毛の研究を行った。天然由来材料を化学修飾(酸化)することによる染料の合成とその染色特性、化学反応を染色プロセスに活用する染色性向上の方策、実用化を目指した研究などに取り組んだ。さらに、酸化された天然由来材料に機能性(抗酸化性・紫外線保護性)があるため、毛髪の紫外線に対する保護機能についても評価した。本研究成果により、将来染毛による疾病になる人が減ることや、持続可能な開発へ貢献することを期待する。
著者
稲葉 千晴 清原 瑞彦
出版者
名城大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

本研究では、第二次世界大戦中の日本・北欧協力によってすすめられた対ソ情報収集作戦「ステッラ・ポラーリス(北極星)作戦」についての解明を試みた。しかし、語学の壁もあり、国際的な研究チームを組まないかぎり、研究に着手できない。そこでフィンランド現代史研究のヘルシンキ大学人文学部Antti Kujala助教授の協力を仰ぎ、スウェーデン側の資料については、研究協力者の清原瑞彦北海道東海大学教授に調査を依頼した。そして、両国の既存研究を再検討し、どんな新資料が公開されたか分析した。一方で、日本側既存資料と、外交史料館・防衛研究所図書館の史料を突き合わせて、日本側の新資料発掘に努めた。もちろん、アメリカの資料も取り寄せた。新資料の収集に基づいて、日本・北欧側双方別個に、本作戦の実態に迫った。さらには、第二次大戦の表面に現れない、ソ連情報をめぐる北欧での日米の奇妙な協力関係を解明し、これまでの第二次大戦外交史の枠組みに一石を投じることができた。
著者
岸本 美緒
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、身分制度の諸側面を通底する「身分感覚」に焦点をあて、社会的意識という視点から、中国身分制度の全体像を長期的な視野で再構成することを目指した。具体的には、明初から清代中期に至る時期の良賤身分の問題を取り上げて、多様な史料を用いて実証的な研究を行い、以下の諸点を明らかにした。(1)明清時代を通じて「賤」観念の核心は、他者に対する服役性・従属性という点に存在した。(2)明代初期には、法律上の「賎民」を特定の限定された集団に限り、民間で形成される従属関係を法律上の「賤」と切り離す政策が取られた。(3)明代後期には、社会的流動性の増大に伴って服役的な産業が発展し、従来の政策が破綻すると同時に「賤」をめぐる議論が活発化した。(4)清朝に入り、18世紀前半の雍正帝の時代には、被差別集団の戸籍の廃止や契約による奴婢化の容認など、身分をめぐる幾つかの改革が同時になされたが、それらはいずれも、社会的流動性の増大を肯定するとともに、そこに生ずる上下格差を新たな身分制度のもとに秩序化しようとするものであった。(5)清朝のこのような政策は、社会的身分をめぐる激しい競争の一因となり、賎民の身分上昇を抑えようとする既存の紳士階層によってしばしば冒捐冒考紛争(科挙資格や官職の保有を禁じられた賎民が身分を偽って科挙資格・官職の保有をはかったという理由で告発され、訴訟などに至る紛争をいう)が起こった。(6)清代後期に良・賤の判定基準をめぐり煩瑣な法令が制定されたのは、こうした紛争の頻発を背景としている。以上、同時期の日本の身分制度とは大きく異なる明・清時代の身分制度の特色と展開につき、大筋の枠組を明らかにすることができた。
著者
山下 英明 立石 慎治 近藤 伸彦 林 祐司 椿本 弥生 松河 秀哉 渡辺 雄貴 松田 岳士
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、学生の学業上の成功(AS; Academic Success)を達成するための修学支援を高度化するために、教学データを用いて大学や学位プログラムごとに重要となるAS指標群を自動生成すると同時に、重要指標を自動選択して、各大学や学位プログラムにおいて「望まれる学生像」とその達成度合いの予測値を示すASモデルを形成し提示するシステムを開発することをめざしている。本研究では、研究内容を以下3つのテーマに分け、順に取り組むことで計画的に研究を遂行するものとしている。《テーマ1》理想的な学生像の解明を通じたASモデルの確立、包括的なデータセットの定義、《テーマ2》重要指標の選定によるASモデルの生成、AS(Academic Success)モデルの表示方法、《テーマ3》開発されたシステムを効果的に用いる学生指導方法のアクションリサーチ。平成29年度は、このうちテーマ1について取り組み、考えうる「理想的な学生像」と、使用可能なデータセットの調査を行い、ASモデル構築のための基本情報を整理した。さらに、具体的な予備調査として、卒業時のAS度合いについて特定の学位プログラムの学生に対するアンケート調査を実施した。また、学習者モデルの分析手法についての研究、教学IRやFDに係る基礎研究、機械学習による修学状態の予測モデルに関する研究などをそれぞれ分担して遂行した。次年度は、これらの研究で得られた知見を活かし、テーマ2におけるASモデル生成に取りかかる予定である。
著者
佐藤 真治 横井 豊彦 都竹 茂樹 大槻 伸吾
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

【目的】人口減少社会の到来による社会保障制度の劣化を回避する処方箋の一つがソーシャルキャピタル(人のつながり、地域への信頼、社会参加)の向上である。我々は地域に歩く人が増えると、社会参加する人が増えることを確認した。一方で、身体活動増進の地域介入に経済的インセンティブを用いた戦略は、効果が限定的であった。そこで、本研究ではソーシャルネットワーク・インセンティブ(おつき合いやお互いさまの規範)を活用して、地域に歩く人が増え、ソーシャルキャピタルを向上するかどうか検証した。【方法】対象者は、65歳以上の女性44名(平均年齢72±6歳)とした。対象を無作為に割付し、経済的インセンティブのみの経済的インセンティブ群23名とソーシャルネットワーク・インセンティブに経済的インセンティブを加えたSNWインセンティブ群21名に分けた。介入期間は3ヵ月間であった。経済的インセンティブ群は、一カ月ごとの歩数が平均8,000歩以上の場合は700円/月分、1日の歩数が平均5,000歩以上の場合は500円/月分のクオカードと引き換えられるようにした。SNWインセンティブ群は、3人1組でウォーキングを実施した。最低週に1回は3人で歩く機会を持ちお互いの歩数を確認する。クオカードに関しては、経済的インセンティブ群と同様とし、チームのうち1名が目標歩数を達成すれば他のメンバーにも報酬がもたらされるようにした。【結論】地域における身体活動増進の介入として経済的インセンティブにソーシャルネットワーク・インセンティブ(おつき合いやお互いさまの規範)を加えると、身体活動量のみならず地域への信頼を高める可能性が示唆された。
著者
山本 陽子 渡邉 聡明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では大腸特異的VDRKOマウスを作出し、炎症性腸疾患および炎症性発癌モデル実験をおこない、両疾患に対する大腸のVDRの機能解明をめざした。大腸特異的VDRKOマウスは炎症性発癌による死亡率が高かったが、生存したマウスについては両モデルともコントロールマウスとの差は認められなかった。これは両モデルにおいてコントロールマウスの大腸におけるVdr遺伝子発現が減少したためであると考えられた。一方コントロールマウスで高頻度に認められた脱肛および腸管の周辺組織への癒着は大腸特異的VDRKOマウスでは認められず、大腸のVDRがこれらの表現型に関与していることが示唆された。
著者
河邊 淳 酒井 雄二 木村 盛茂 山崎 基弘 高野 嘉寿彦
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1.解析学で有用なε-論法の代わりとなる新たな滑らかさの概念(漸近的Egoroff性)をRiesz空間に導入し,可測関数列の概一様収束に関するEgoroffの定理がRiesz空間値ファジィ測度に対して成立することを示した.また,多くの重要な数列空間や関数空間が漸近的Egoroff性をもつことを示した.2.Riesz空間がEgoroff性を満たす場合は,Egoroffの定理が性質(S)を満たす強順序連続なRiesz空間値非加法的測度に対して成立することを示した.また,Egoroff性よりも弱い滑らかさの条件である弱σ-分配性を仮定した場合は,一様自己連続かつ強順序連続で下から連続な非加法的測度に対してEgoroffの定理が成立することを示した.3.漸近的Egoroff性を精密化した多重Egoroff性をRiesz空間に仮定することにより,距離空間上の弱零加法的なRiesz空間値ファジィ測度はつねに正則となることを示した.応用として,Borel可測関数の連続関数列による近似に関するLusinの定理が,同種のファジィ測度に対して成立することを示した.4.Riesz空間値非加法的測度に対するAlexandroffの定理が,Riesz空間が弱漸近的Egoroff性をもち,測度が自己連続の場合と,Riesz空間が弱σ-分配性をもち,測度が一様自己連続の場合に成立することを示した.応用として,Riesz空間が多重Egoroff性をもつ場合は,完備あるいは局所コンパクトな可分距離空間上の自己連続なRiesz空間値非加法的Borel測度に対して,そのRadon性と連続性は同値となることを示した.5.Duchon,RiecanらによるRiesz空間におけるリーマン・スティルチェス積分論を用いて,Riesz空間値非加法的測度に対するショケ積分の概念を定式化し,共単調関数に対する積分の加法性などの基本的性質を調べた.