著者
大重 康雄
出版者
鹿児島女子短期大学
雑誌
鹿児島女子短期大学紀要 = Bulletin of Kagoshima Women's College (ISSN:02868970)
巻号頁・発行日
no.50, pp.27-37, 2015

第22回 APEC (アジア太平洋経済協力) 首脳宣言で 「北京アジェンダ」 を採択し 「アジア太平洋自由貿易圏 (Free Trade Area of the Asia-Pacific:FTAAP) 実現に向けたロードマップが示された. 同時に環太平洋パートナーシップ協定 (TPP:Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement) や東アジア地域包括的経済連携 (RCEP:Regional Comprehensive Economic Partnership) などの広域型の FTA/EPA が重層的に交渉を開始しておりメガ FTA の時代を迎えている. これまで日本の農水産物輸出は極めて少なく, 大幅な輸入超過となっていた. しかし FTA/EPA 交渉が加速している現状, 農林水産業も 「産業内貿易」 としての可能性を見直しグローバル・バリュー・チェーン構築するなどメガ FTA を活用した積極的な取組が望まれる. 鹿児島県は第1次産業に特化した県であるが, 豊富な食品素材の付加価値高めないままに市場に供給している現状がある. 現在取り組まれている畜産品輸出の状況や, 水産物輸出に関した先進的事業にも触れ産業の付加価値とは何かを考察し, 今後の鹿児島県産農水産物輸出の方向性について考察する.
著者
臼井 正彦 薄井 紀夫 坂井 潤一
出版者
東京医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

ヒトぶどう膜炎におけるEpstein-Barr virus(EBV)の病因的関与を検討する目的で、原因不明のぶどう膜炎患者より得られた種々の検体を用いてEBV特異的抗体価の測定およびPolymerase chain reaction(PCR)法によるEBVゲノムの検索を行った。結果として、1)HLA-B27と強い相関を示すとされている急性前部ぶどう膜炎患者の中にEBV特異的抗体価の異常(VCA IgM抗体陽性)を示す症例を認めた。これらの症例はすべてHLA-B27陰性であり、新しい概念に属する一つの疾患単位として考えられた。2)ある種の網膜色素上皮症においてEBV特異的抗体価の異常高値および血中EBV感染リンパ球の増加を認め、EBVとの関連が示唆された。3)原田病患者の髄液から高率にEBV DNA並びにEBV特異的抗体を認めた。原田病の疾患感受性を規定しているHLA-DR抗原中のT細胞認識部位である第3超可変領域とEBV複製の際に感染細胞の核と細胞質に存在するnucleocapsidglycoproteinであるgp110との間に相同性の高いアミノ酸配列が存在することを文献的に見い出し、このアミノ酸配列を含む合成ペプチドに対する反応性(proliferation法)が原田病急性期患者のリンパ球において上昇していることを認めた。またこのことは、特に原田病患者においてEBVがなんらかの関連を有していることを示すものである。以上の結果から、ぶどう膜炎におけるEBV関与の可能性が示された。さらに上記疾患の発症機序解明にむけてのひとつのステップとして、正常眼内組織(死体眼)におけるEBVレセプター(EBVR)の発現の有無および部位についてEBVRを認識するモノクローナル抗体(OKB7)を用いて免疫組織学的染色ならびにウエスタンブロッティング法による解析を行った。その結果、網膜色素上皮及び毛様体の一部において、EBVRの発現が確認された。これにより、EBVが直接眼内に感染性を有する可能性が示された。
著者
田中 和幸 寺島 茂 岩本 洋 黒石 正子 山内 格
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.52-59, 2015

今回我々は,妊娠中期での胎児超音波スクリーニング検査にてまれな先天性奇形の一つとされる単眼症を強く疑う1例を経験したので報告する.症例は22歳女性(妊娠17週5日),妊娠歴は1経妊1経産.超音波検査で体幹は週数相応で異常を認めないが,頭部は小さく,大脳の位置する前頭部頭蓋内部構造は非対称性でやや偏位しmid line echoおよび透明中隔の描出は困難であった.また顔面には二つの眼球が接して存在し,前額部に長鼻構造を認め単眼症が強く疑われた.流産児は,顔面中央一眼裂内に二つの眼球が接した接眼と前額部に長鼻構造を認め,耳介は両側頭部下部に認めた.胎児染色体検査では異常は認められなかった.<br>本症例は顔面所見より単眼症が強く疑われ,小頭症,頭蓋内構造異常も認められた.単眼症の多くは自然流産すると考えられ出生はまれとされる.また出生できても予後は非常に不良とされる.成因については染色体異常も報告されているが詳細は不明とされる.本症例でも明らかな成因はなく,偶発的に発生したものと思われる.<br>生存の可能性がない単眼症を妊娠早期に診断できれば,早期に母体の負担を軽減することも可能となることから,これを十分に考慮した胎児超音波スクリーニング検査が重要と考える.
著者
徳橋 秀一
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.12-29, 1988-01-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
39
被引用文献数
3 4

石油貯留岩として本邦油田地域で重要な位置を占めているタービダイト砂岩単層の分布特性 (広がり•形態) を明らかにするため, 房総半島に分布する古海底扇状地堆積物 (鮮新統清澄層•安野層) を対象に, 4つの層準で単層解析を行い, 次のような結論を得た。(A) 同一層準に属するタービダイト砂岩単層の形態は, 互いに相似関係にあり, 特定の基本形態を有する。(B) タービダイト砂岩単層にみられる特定の基本形態は, 数10mから数100mの厚さにわたって保持される。(C) タービダイト砂岩単層の形態は, 砂岩単層内部の粒度や堆積構造と密接に関連し, その大きさ (厚さ•広がりの程度) は, 混濁流の規模の反映である。
著者
村田 誠
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.177-189, 2007 (Released:2017-03-31)
参考文献数
55

マイナー組織適合性抗原とは, 患者細胞表面のHLA上に提示される細胞内タンパク由来のペプチドのうち, 遺伝子多型により患者とドナー間で異なるアミノ酸配列をもち,非自己のTリンパ球に認識されるものをいう. ヒトでは20数個のマイナー組織適合性抗原が分子レベルで同定されている. マイナー組織適合性抗原に対するTリンパ球応答は, HLA一致ドナー同種造血幹細胞移植後の移植片対宿主病の発症や移植片対腫瘍効果の発現に関与している. 「1. はじめに」悪性腫瘍に対する同種造血幹細胞移植は, 大量の抗癌剤や放射線による前処置に続いてドナーの造血幹細胞を移植し, 生着したドナー由来の免疫担当細胞により残存腫瘍細胞を根絶する治療法である. この移植後免疫反応による抗腫瘍効果のことを移植片対白血病(graft-versus-leukemia:GVL)効果あるいは移植片対腫瘍(graft-versus-tumor:GVT)効果と呼ぶ.
著者
室屋 裕佐
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.425-435, 2017-10-15 (Released:2017-10-15)
参考文献数
23
被引用文献数
4

水や水溶液の放射線化学研究は,放射線の発見から間もない20世紀初頭から長年にわたって続けられてきた。工学,医学等に幅広く共通する課題を含み,初期過程から最終生成物に至るあらゆる過程が調べられてきたが,溶媒和等の高速過程や374°C以上の高温での超臨界水中での反応機構など,なお未知の素過程を内包し,1世紀以上経った今でも研究対象であり続けている。本節では,水や水溶液の放射線化学の歴史や基礎過程,アプローチを含めた研究全体について解説する。
著者
川名 尚
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.237-242, 2002-06-01
参考文献数
8

単純ヘルペスウイルス (Herpes Simplex Virus, HSV) の感染部位は皮膚粘膜であり口腔咽頭もその主なものの一つである.特にHSVの1型は口腔内の感染が自然感染部位であり, 口腔咽頭のHSV感染は耳鼻咽喉科の日常診療でしばしば見られると思われ改めて産婦人科医の私が論述するまでもないと思う.しかし, 最近はgenital-oralという性行動様式が頻繁に行なわれるようになり, 性器に感染しているHSVが口腔咽頭にも感染することがあり本シンポジウムに単純ヘルペスウイルス感染という課題がとりあげられたものと思う.筆者は性器ヘルペスの臨床研究を行なってきたが, 口腔咽頭についての検討を行なってこなかったので直接本学会の会員の方にお役に立てることは出来ない.そこで性器ヘルペスの臨床を述べてgenital-oral transmissionの背景をご紹介することで責めて果たしたいと思う.
著者
菅 文彦 古川 拓也 舟橋 弘晃 間野 義之
出版者
日本スポーツ産業学会
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.3_223-3_232, 2017
被引用文献数
1

&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;The aim of this study was to verify the hypothesis that the inhabitants who have higher spectating intention or behavior at sporting events in their hometown hold higher place attachment.<BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; Through the comparison of place attachment among the inhabitants, significant differences have been found. The inhabitants who have higher spectating intention hold a higher degree of place attachment. Moreover, the inhabitants who have experience of spectating behavior hold a higher degree of place attachment than those who do not have it.<BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;The results of this study indicate some existence of the relationship between spectating intentions or behaviors at sporting events, and place attachment. However, the cause and effect relationship between them has not been established clearly. It is necessary to make continuous research targeted at the inhabitants.
著者
岡村 康史 小川 賢 浜 裕之 木村 康男 石井 久夫 庭野 道夫
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.543-549, 2003-09-10 (Released:2008-12-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

The adsorption of naphthalene on a Si(100)-2×1 surface at room temperature was investigated using infrared absorption spectroscopy (IRAS) in the multiple internal reflection geometry (MIR). To determine the adsorption configurations on the surface in detail, IRAS spectra in the C-H stretching vibration region were analyzed in comparison with calculations based on the density functional theory. As a result, it was found that naphthalene adsorbs on the surface in different manners depending on the surface coverage of the molecules. At low coverage, a single configuration is favored, in which the 1, 4, 6, 9 carbon atoms of a naphthalene molecule are bound to the dangling bonds of two adjacent Si dimers to form sp3 bonds. At high coverage, on the other hand, the molecules adsorb in several energetically preferred configurations. Furthermore, the effect of coupling of vibration modes between two adjacent molecules adsorbed on the surface was observed at high coverage.
著者
加藤 寛久 小倉 紀雄
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水質汚濁研究 (ISSN:03872025)
巻号頁・発行日
vol.13, no.7, pp.449-455,430, 1990-07-10 (Released:2010-01-22)
参考文献数
8
被引用文献数
3 2

東京北多摩地区の地下水(湧水,深井戸)中の揮発性有機塩素系化合物濃度について2年間測定した。そのうち湧水1地点については1週間に1回の短間隔で採水,分析を行った。その結果,テトラクロロエチレン濃度が減少する傾向を示したが,トリクロロエチレン,1,1,1-トリクロロエタンはほとんど変化をせず,また,トリクロロエチレンを除いて季節変化を示さなかった。次に,近接する湧水について調べたところ,他の化学成分についてはほぼ同じ値を示しているのにもかかわらず,揮発性有機塩素系化合物濃度はそれぞれの湧水で異なった値を示した。一方,2カ所の深層地下水(深井戸)については1カ月に1回の間隔で採水,分析を行ったが,トリクロロエチレンが2カ所の井戸水とも最も高く,飲料水水質基準を超過したものもあった。しかし,季節変化は認められず,検出されない化合物もあった。また,豪雨後の湧水中の揮発性有機塩素系化合物濃度の変化について調べたところ,降雨に伴う湧出水量の増加にかかわらず,ほぼ一定の濃度を示した。
著者
近藤 瑞穂 前田 健永 兪 燕蕾 宍戸 厚 塩野 毅 池田 富樹
出版者
一般社団法人 日本液晶学会
雑誌
日本液晶学会討論会講演予稿集 (ISSN:18803490)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.107, 2004

アゾベンゼンを含む液晶エラストマーでは,光によって分子の配向を変化させ異方的な屈曲を誘起できる。本研究では,分子の配向が屈曲に及ぼす影響を調べるため,ホメオトロピック配向した液晶エラストマーフィルムを作製し,その光応答性を検討した。フィルムは光の照射方向と反対に屈曲し,従来のホモジニアス配向した液晶エラストマーフィルムと異なる挙動を示した。