著者
山岸 智子 鎌田 繁 酒井 啓子 富田 健次 保坂 修司 飯塚 正人
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、これまでのステレオタイプ的なシーア派観はもとより、シーア派が「問題化」する構造を解明するために、構築主義的な観点を導入し、シーア派の哲学思想・宗教実践・社会集団化のコンテクストを分析することを課題とした。研究分担者・研究協力者が会合を持って、これまでの研究を振り返り、自らの研究の取り組みについて議論したのみならず、英国・イラン・アメリカ・アラブ首長国連邦・レバノンから一線級の研究者を招聘して意見交換をし、交流の道を開き、こちらからも10カ国以上に赴いて資料収集・現地調査・研究発表などを行った。こうして得た成果は多岐にわたるが、以下のようにまとめられるだろう。1.多様性:さまざまな例が示され、シーア派とはいっても、その集団としてのありようや位置づけが多様であることが、明らかになった。それは、立場の違い(サラフィーヤ主義者とシーア派信徒)や国・地域の違いのみならず、一つの地域・家族でも状況の変化によるシーア派アイデンティティに変化があることが分かった。2.新しい学問的アプローチ:思想研究に歴史的観点を導入する、「人」という観点から思想の展開や指導者の条件を見直す、思想の中のモチーフの見直し、などアプローチや観点を変えることで、新たな知見を得た。3.ローカルとグローバルのインターフェース:宗派として国民国家のなかに位置づけられる際にも、国際的な力学や国家を越えるネットワークが関連すること、宗派の絆のグローバルな経済活動への活用、信徒や学者の国を越えた移動の実際、などが明らかとなった。4.これまでの研究の空白を埋める:そしてシーア派としての制度・知の再生産にかかわるイスラーム法学者のありさまや教育の実態、宗教的慣行など、十分に解明されてこなかったピックも本研究で考察の対象となり、さまざまな発見があった。
著者
落合 秋人
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究代表者は近年、イネの種子から歯周病菌の増殖阻害に関与する2種類のタンパク質成分OsHsp70N (Hsp70ホモログ)とAmyI-1 (α-アミラーゼ)を見出した。本研究課題では、ヒト病原菌に対するこれらのタンパク質の増殖阻害活性の効果範囲(スペクトル)を明らかにした。また、X線結晶構造解析によりそれぞれのタンパク質の立体構造を決定した。得られた構造生物学的知見と分子間相互作用解析などにより、AmyI-1はグラム陰性菌細胞壁外膜を構成するリポ多糖(LPS)と相互作用することを明らかにするとともに、AmyI-1と可溶性デンプンの分解物が協奏的に作用して歯周病菌の増殖を阻害する可能性を示した。
著者
多田 美香里
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.61-69, 1998-03-31 (Released:2009-04-07)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

Two tests examined whether mood congruent memory bias is found in the daily recall of personal past event. Subjects described their memories about past events unexpectedly recalled, and then completed the questionnaire to assess affective value of their past events and to assess their mood states both at the time recalled their past events and at the time tested. When affective value of past event was evaluated by desirability, mood effect was not found (Test 1). While, when past event was evaluated by the same measure as mood rating, subjects who were in the positive mood recalled more positively past events than those in the negative mood (Test 2). The difference between the results of two tests was discussed with respect to the variety of affective value rating for memory and mood reparative effect. In addition, these results suggest that mood has an influence on unexpected memory process as daily recall.
著者
安田 智美 吉井 忍 道券 夕紀子
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

在宅では血液検査や身体計測などによる栄養評価は困難である。そこで、非侵襲的かつ簡便で、介入点がわかりやすいスクリーニング表を作成した。75歳以上の444名の在宅療養者及び施設入所者を対象に、食事環境、食生活、口内環境・嚥下、体調・身体状況に関する34項目の質問と、上腕筋面積の測定を実施した。JARD2001による上腕筋面積の年齢別中央値を100とした対象者の上腕筋面積の割合を算出し、質問34項目との関連を検討した。さらに、判別分析にて項目数と配点を検討し、男女別で34項目の質問からなり、要介入、要注意、良好の3段階に分類できる在宅栄養スクリーニング表(Home Nutritional Screening Test ; HN-test)が完成した。このスクリーニング表の感度は男性93. 3%、女性90. 6%であり、高い確率で低栄養状態の判別が可能となった。
著者
大関 泰裕 安光 英太郎
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研究成果の概要(和文):従来知られていなかった全く新規な一次構造を持つα-ガラクトシド結合性レクチンMytiLecのアミノ酸配列を決定し、グロボトリオース(Gb3)糖脂質糖鎖結合性、Gb3発現Raji細胞に対する増殖抑制を見出した。SUEL/ラムノース結合レクチンファミリーでGb3に結合したナマズ卵SALレクチンは同細胞の増殖に影響せず、多剤耐性トランスポーター遺伝子の発現を抑制した。両結果を総合すると、同一糖鎖に結合するレクチンでも、その結合力や価数の違いから、異なるシグナルを細胞内に伝達することが判明した。細胞増殖の調節に応じて適切なレクチンを投与することで、細胞研究における機能制御が可能と示唆された。
著者
川崎 拓郎 村尾 修 諫川 輝之 大野 隆造
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.4_263-4_277, 2012 (Released:2012-09-28)
参考文献数
12
被引用文献数
3

本研究では、沿岸部住民の津波避難行動に着目し、2008年と2011年の2度にわたって千葉県御宿町を対象とした避難行動に関するアンケート調査を実施した。そして、想定津波および東日本大震災直後の避難経路についての空間的な比較分析を行い、(1)標高、(2)海岸線からの距離、(3)想定浸水域内の残存者数の観点から考察した。その結果、実際の避難行動における多様性、自動車による避難行動の多さ、避難距離の長さ、浸水域に留まる事例の多さ、などが明らかになった。
著者
津田 良夫
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.211-224, 2011-12-15 (Released:2012-12-01)
参考文献数
107
被引用文献数
1 3

Results of two mosquito studies recently conducted in a park in urban Tokyo were introduced and related studies were reviewed. A large number of adult Culex tritaeniorhynchus suddenly appeared from late September to November 2007 during the course of systematic sweep net collections of vegetation in the park. The pre-diapause migration has been observed every year from 2007 to 2010. The time course of pre-diapause migration was similar starting in mid-/late September, peaking in mid-October and ending in December. The density of migrated females and parity differed year by year, and dissection showed that a large part of the females (85 to 97%) were in reproductive diapause. Blood-meal identifications of Cx. pipiens pallens together with avian malaria parasite detection were conducted by using blood-fed females collected in the study park from May 2007 to May 2008. Thirteen wild bird species were identified as the blood-source and 5 of them were infected with avian malaria parasite. Ten Plasmodium lineages were identified and the three commonest lineages were detected in both the abdomens and thoraxes of mosquitoes, suggested transmission of these lineages. Jungle crow and tree sparrow served as a natural host for the three commonest lineages.

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1914年03月30日, 1914-03-30
著者
杉原 一昭 渡辺 弥生 新井 邦二郎
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本研究の目的は,子どもの認識形成に直接経験・実体験がどの様な効果を及ぼしているかを探り、子どもの健全な発達をもたらす方略を見つけ出すことにあった。具体的には、(1)現在の子どもたちは、動植物についてどれくらい見聞、接触、飼育、栽培などの実体験をしているか、その実態を調査し、実体験の種類と量を規定している要因を探る(2)小動物に関するビデオによる認識形成と実体験による認識形成の差異を明らかにする(3)実際の動物(鶏)飼育経験が認識形成に及ぼす効果について検討することが目的であった。その結果、以下のことが明らかにされた。(1)園児は動植物にかなりの興味・関心を持っているが、実際に家庭で飼育しているのは金魚が多く、単に「見ている」か、せいぜい、「時々餌をやる」程度の接触である。動物との接触は、大都市の子どもほど、年少児ほど希薄である。(2)園児が積極的に飼育にかかわることが、認識形成に影響を及ぼす。(3)ビデオ視聴前(プレテスト)と視聴後(ポストテスト)の変化を見てみると、ビデオ視聴は、動物に関しての認識形成・知識の向上において、有効な手段である。(4)ただ漠然と動物を飼育しているだけでは教育的効果は薄い。動物飼育から幼児が何等かの学習をするためには、観察や接触を促すような働き掛けが必要である。(5)動物(鶏)の動作についての知識に関しては、その正確さにおいて、実体験前後で顕著な差が認められた。実際に体験することによって、動物の動作について、しっかり理解することができる。(6)絵や言葉だけではなく、実体験に裏打ちされた知識によって、しっかりとした認識の土台が形成される。
著者
宮川 淳
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.344-352, 1991-05-15 (Released:2009-11-25)

Corrosion protection technique and anti-corrosive agent have been improved extremely, so that troubles and accidents are reduced. But even now corrosion occurred to equipments, so we have to go on inspection based on considering corrosion mechanism. We describe the outline of corrosion examples for refining units are described.
著者
近藤 宏行 角谷 和俊 田中 克己
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. DBS,データベースシステム研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.119, pp.419-424, 1999-07-21
被引用文献数
11

本稿では,データベースへの問い合わせの結果表示のための新たな提示方式として,番組メタファー表示を提案する.番組メタファーで表示することで,単なる文字の羅列であるよりも,よりユーザの求めているものを的確にかつ魅力的に表現する提示を実現する.番組メタファーは,既存のテレビ番組にそって作成した擬似テレビ番組スタイルである.検索結果をあたかもテレビで放送してるように見せることで,ユーザにとってより効果的で,親しみやすい表現を行うことができる.適当な番組メタファーを動的に選択することにより,単に検索結果を提示するだけでなく,検索された結果の特徴に応じて提示スタイルを変更することが可能になる.提示スタイルの決定には検索結果のデータ集合の分布状態,結果の内容,注目する属性とメタファーの関係を考慮する.更に,提案した方式をもとに,番組記述言語TVMLを用いて実現したプロトタイプシステムWaffleについて述べる.プロトタイプシステムは,入力インタフェース部,メタファー決定部,スクリプト作成部,結果提示部から構成される.
著者
高原 省五 加藤 尊秋 本間 俊充
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.180-192, 2013 (Released:2014-08-08)
参考文献数
70
被引用文献数
1 3

The monetary value of unit collective dose, which represents the benefit of dose reduction due to the protective measures, is a key element in implementing the optimization principle of the radiation protection. The objectives of this paper are to evaluate the country-specific monetary value of unit collective dose reflecting the economic and population characteristics in Japan, as well as to analyze the balance of the cost and benefit of the radiological protective measures. When we calculated the monetary values of unit collective dose in Japan using human capital method and willingness to pay approach, the values were around several million yen/person-Sv and 20 million yen/person-Sv, respectively. In addition, we surveyed the data on costs of radiological protective measures per the avoided person-Sv. As the results of comparing the cost and benefit, the costs of radiological protective measures to reduce the concentration of radon in homes and to protect workers in nuclear facilities were balanced with the benefit. On the other hand, the costs of radionuclide emission control measures at industrial facilities tend to be higher than the benefit of those measures.
著者
長妻 努 国武 学 坂口 歌織
出版者
国立研究開発法人情報通信研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

極域短波レーダ及び磁力計の地上観測網とNASAの内部磁気圏探査衛星を用いた地上-衛星同時観測により、Pc5地磁気脈動の励起特性に関する研究を行った。その結果、太陽風動圧急増時に太陽風中の速度と磁気圏境界の速度によって形成されるケルビン-ヘルムホルツ不安定性によって励起される圧縮性のPc5地磁気脈動が存在することを明らかにした。また、中規模の地磁気嵐時の回復相においてPc5地磁気脈動強度が増加している様子を捉えた。
著者
三上 喜貴 リー飯塚 尚子 永野 建二郎 永野 健二郎
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、科学技術に関する専門語彙の形成がどのように行われてきたかの分析を通じて、当該社会における技術移転の姿を明らかにすることができるのではないかとの仮説に基づく研究である。本研究を通じて、7つの基本語彙を対象に、またアジア、アフリカ、ヨーロッパの25言語を対象として比較研究を行うことができた。訳語形成パターンの解釈や、訳語の正確性や出典などについての追加調査など不十分なものではあるが、今後、訳語形成の過程を社会的歴史的文脈の中において理解することにより、当該社会においてその訳語の持つ意味合いがより明確に把握されるであろうことについてひとつの見通しが得られたことは本研究の成果である。
著者
板東 美智子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

・日本語のテンス形態素の意味構造と過去時制を持つ使役文の意味構造の包括的記述結果状態をキャンセルできる読みをもついくつかの使役詞文が報告されているが、キャンセルの可/不可は、動詞の使役意味構造のどの部分に焦点が当てられているか(Event Headedness)という観点から説明がなされている。また、その結果状態をキャンセルする読みをテストするには文を過去形にする必要があることから、使役他動詞文のEvent Headednessと「た」の関連性を述べ、それぞれの意味構造を表すとともに、両者の関連性の形式化を行った。・日本語心理動詞のアスペクト的意味構造とその動詞を持つ文のアスペクト的意味構造の包括的記述日本語心理動詞と共起する「に」名詞句と「を」名詞句の使い分けと、その動詞および文のアスペクトとの関連性を指摘した。また、共起する名詞句の特徴によって同じ心理動詞でもアスペクトが異なる現象から、レキシコンには実現可能なアスペクトの候補が記載されていることを仮定した。・多義派生の仕組みとその形式化他動詞「締める」「絞める」「閉める」の意味的連続性が動詞の語彙概念構造と目的語名詞句の特質構造の組み合わせから生じていることを形式的に示し、レキシコンにおける「しめる」の多義性派生のメカニズムを提案した。・本研究の教育・語用論の分野への応用の試み附属養護学校中学部の国語の授業の会話から時間表現に関するコミュニケーションギャップを観察し、その要因を時間の理解の難しさから生じている可能性を検討した。また、劇中のユーモア分析から、時間をもった文脈の解釈をわざと取り違えることによって生じるユーモアがあることを指摘した。
著者
北条 舒正 白井 汪芳 高山 公子 大和 公子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.470-473, 1969-02-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
24
被引用文献数
1

銅フィプロイン錯体の生成反応を種々のpH領域で検討した。フィブコィンはLiBrに溶解し,透析により,LiBrを除き調製した。この溶液を種々のpHで銅イオンと反応させた。溶液の変化は,pH滴定曲線,紫外可視スペクトル,粘度から検討した。pH8.5以下では,可視部700mμに吸収をもち,分子内錯体の生成が認められる。常温で放置すると,pH6.5から7.5付近でゲル化が起こるのが視察される。このゲルを30℃で乾燥して,X線回折,IRスペクトルから調べると,クロスβ構造であることが判った。pH8.5以上の溶液では可視部540mμに吸収をもってくる。これはCu←N結合に基づくものと考えられる,粘度は低下し,X線回折から,ランダム構造であることが明かになった。