著者
西村 まゆみ 島田 義也 今岡 達彦 柿沼 志津子 臺野 和広
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

原爆被爆者や放射線治療患者の疫学調査は、乳腺は放射線による発がんリスクが高い臓器であることを示している。国際宇宙ステーションでは生物学的効果比が高い中性子線の被ばく線量が高く、女性宇宙飛行士の放射線防護には中性子線の影響を考慮する必要がある。また、乳がんリスクは出産経験に大きく左右されるが、放射線による乳がんリスクの情報は少ない。本研究では、ラットを用いてγ線や中性子線による乳がんリスクが妊娠経験によって低減するかを検討した。その結果、出産経験は乳がんの自然発生率を変えなかったが、γ線(4Gy)および中性子線(0.05-0.5Gy)で誘発される乳がんを、ほぼ完璧に抑制することが明らかとなった。
著者
橋本 樹明 大槻 真嗣 前田 孝雄 眞下 泰輝 前田 孝雄 大谷 智宏 佐野 俊太
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

探査機が月や火星などの天体に着陸する際に、残留水平速度がある場合や斜面・岩などの存在する不整地へ着陸する場合においても転倒しない着陸システムについて研究を行った。探査機の着陸脚と天体表面の動的モデルを構築し、数値シミュレーションにより探査機の動的挙動を解析した。その結果から、着陸脚をセミアクティブに制御する方法を提案した。すなわち、伸縮式着陸脚の減衰係数を可変にすることができるデバイスを追加し、探査機の角速度と着陸脚の伸縮方向の符号の積に応じて当該脚の減衰係数を増減させるという方式である。本方式により耐転倒防止能力が大幅に上がることを数値シミュレーションおよび着地実験により検証した。
著者
井上 豪 松村 浩由 溝端 栄一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アレルギーや炎症の媒介物質であるプロスタグランジン(PG)D2 は、補酵素グルタチオン(GSH)存在下、造血器型プロスタグランジン(PG)D 合成酵素(H-PGDS)の働きによって産生される。以前、Ca,および Mgイオンの働きによって活性化される分子メカニズムをX線構造解析によって解明したが、これを中性子線解析法によって解明する目的で大型結晶の育成研究に取り組んだ結果、0.5 mm^3程度の高品質結晶が得られることが判明した
著者
巽 申直 野村 知弘 村山 勤治 小田 佳子 富樫 泰一 服部 恒明
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.16-23, 2001-01-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
30

The purpose of this study was to clarify the unique kendo moves used by the All Japan Kendo Champion Masahiro Miyazaki, six-time winner of the all Japan Kendo Championship.Using a direct linear transformation method, traces of the locomotion movement of the kendo players were measured. These measures permitted analysis of the spatial distances between the two competitors (i. e., ma-ai) during their matches. Distribution curves revealed two main types of ma-ai, one which had a higher peak position of sword-guard tangle (i. e., tuba-zeriai), and the other (i. e., issoku-itto-no-maai), which is the distance which enables players to either strike the opponent by taking one step forward and to evade the opponent's striking one step backward. Longitudinal data of 47 matches over 10 years (1990-1999) revealed that:1) The percentage occurrence of Miyazaki's issoku-itto-no-maai was lower relative to tsuba-zeriai, which is typical of all such players.2) The number of Miyazaki's offensive and defensive movements from issoku-itto-no-maai was higher than that of all such players.3) The total times of confrontation in Miyazaki's issoku-itto-no-maai were significantly lower than that of all other players. Namely, his initial offensive movement is much earlier than that of all other players.4) Miyazaki's percentage occurrence of issoku-itto-no-maai tended to increase year by year, coupled with a decrease in the number of offensive and defensive movement from ma-ai.
著者
南 俊朗 馬場 謙介
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.13-25, 2014-03

図書館が学習グループの構成支援サービスを提供することにより図書館は利用者にとっての"ソーシャルメディア"になることができる。これはネットワーク時代の図書館における新規サービスへの1つの試みとしての意義があり,また近年の大学図書館において利用者が長時間図書館に滞在するような環境づくりの切り札的存在となっているラーニングコモンズ(LC) 空間の有効活用にも寄与することになる。このような背景の下,本稿は図書館の貸出記録に基づいた学習グループの構成という手法について議論し,1つの方法を提案する。本手法においては,学習グループのメンバは貸出記録から定義される利用者の興味分野の類似性や専門度等に基づいて選定される。このような目的やアプローチによる研究はこれまで十分なされておらず,本論文の議論も未だ初歩的レベルにはあるものの,将来の図書館サービスとして大きな潜在的重要性をもつ。
著者
大木 誠 中嶋 亮輔 岸田 悟
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.192-203, 2014-01-01

本研究では,大規模ホームセンタにおける短時間労働者勤務表の自動作成及び最適化に関する手法を提案する.短時間労働者の勤務表は,現在人の手により作成されている.勤務表には,勤務時間だけでなく休憩時間や勤務配置場所を明記する必要がある.更に,勤務表を作成するに当たって,考慮する条件が多いことから,勤務表作成には多大な時間と労力を必要とする.そこで本研究では,短時間労働者勤務表の作成者の負担を低減することを目的として,勤務表の自動作成及び最適化の手法を提案する.短時間労働者勤務表の自動作成には,遺伝的アルゴリズムの一種である共存型遺伝的アルゴリズムを用いる.本研究において,特定の休憩時間帯に勤務者が集中する問題が明らかになった.この問題は評価関数を新たに定義することでは解決できなかった.そこで,勤務者の休憩時間帯を調整する手法を提案する.また,共存型遺伝的アルゴリズムではあまり考慮されてこなかった突然変異を導入することにより,最適化の進行を向上させる.
著者
三野宮 春子
出版者
神戸市外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、即興劇の原理や手法を応用して数多くの非予定調和的で創造的な英語アクティビティを開発した。特に2015年度は「英語アクティビティ工房」を定期的に開催し、たくさんの英語教育の研究者や実践者とともにアクティビティ開発を行った(2017年度も継続中)。また、コミュニケーション分析を用いて結果を考察し、即興的やりとりを支えるアクティビティ構造について探究した。時々刻々と変化する意味状況に柔軟に応じながら他者や環境との相互交渉する「即興的やりとり」を誘発する要因として「即興性」「協働性」「創造性」を特定し、これら鍵概念の理解を深めた。
著者
岡山 雅信 梶井 英治 亀崎 豊実 熊田 真樹 小松 憲一 神田 健史 竹島 太郎 見坂 恒明 今野 和典
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

疾患に不安を持っている者は、当該疾患感受性遺伝子検査を受けやすく、結果に一喜一憂しやすいことが示唆された。嗜好性の高い生活習慣を控えている者は、陰性の遺伝子検査結果により、それを中断する危険性がわかった。検査結果の説明に工夫が必要と思われる。1年間の追跡では、遺伝子検査結果の通知の有無による生活習慣に係る項目のほとんどに差が観察されなかった。詳細な検討は必要であるが、仮にあったとしても、生活習慣への遺伝子結果通知の介入効果は軽微と思われる。
著者
久保 昇三 守分 巧
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.345-351, 1994-08

日本における災害被害は年々減少してきているが、全国的規模で見れば、未だに毎年のように、何件かの中規模災害に見舞われている。また、関東大震災で代表される大規模災害も10年に一度程度の頻度で発生するものとしなければならない。大・中規模災害では、罹災者の救援が重要である。現状では、罹災者に3日間程度の自助能力を想定しているが、ガス、電気、水道等の普及、食生活の変化、スーパーマーケット等の流通機構の変化等々によって食料や飲料水の定常的備蓄の減少、核家族化、都会化による住民意識の変化、特に、地域連帯感の希薄化等によって、より早期の救難が必要となってきている。救援において重要な問題の一つが緊急輸送である。一般に道路、鉄道、港湾等に相当の被害を受けた状況における緊急輸送は極めて困難である。特に、都市近郊を水田が取り囲む我が国の状況では、通常の交通手段による輸送は難しい。そこで、伊勢湾台風の被害および救難の経験に基づき、ヘリコプターによる緊急輸送能力の飛躍的向上が計られ、一定の成果を上げてきている。しかし、同時にこのシステムの限界もほぼ明らかになってきており、例えば、北海道南西沖地震の場合には目覚ましい活躍をすることはできなかった。水陸両用性の不整地走行に適する輸送機関としてホバークラフトが注目される。ホバークラフトの特徴を列記すれば、1)時速100km程度の高速走行が可能、2)高低差1m未満の不整地走行が可能、3)水陸両用性、4)積載貨物量0.1-200t程度の範囲内で各種のサイズのものが使用できる、5)乗員養成が簡単、6)初期価格、維持管理価格、運行費共に極めて安価等が上げられる。欠点としては、1)騒音が基準内ながら相対的に大きい、2)振動が相対的に大きく旅客の快適性に欠ける、3)旅客船として使用した場合に収益率が他形式高速船より数%程度低い、とされている。このホバークラフトを大・中規模災害の救難輸送に利用する可能性を調べた。全国規模でホバークラフトによる災害救難システムを計画すれば、災害日翌朝から防災・救難活動を開始でき、その効果は極めて大きい。世界各国における救助用ホバークラフトの実態についても報告する。また、近年需要が増大しつつある大規模災害時の国際救援についても考える。
著者
長野 和雄
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

強風沿海集落である祝島でのアンケート結果から、集落中央部では風が弱く昔からネリヘイ(石塀)やサシイタ(窓部に装備する防風板)が元々少ないこと、室面積の確保や瓦が飛ばないRC造の優位性からネリヘイを備える伝統住宅が減っていること等が示された。居住面では、ネリヘイ・葺土がある場合に夏でも涼しく、先の気候観測結果を裏付けていた。簾や葦簀の使用(機器によらない環境調節)、朝涼み・夕涼み(環境選択行為)などの暑熱耐暑行動がよく行われていたが、ヒヤリングでは最近は少なくなったと回答され、ネリヘイだけでなくこれらの調節行為も減る傾向にあることが示された。同じ強風沿海集落でも有明海北西岸には、寄棟屋根が鍵状に折れ曲がり、棟がコの字型に配されたクド造りが数多く残る。ほとんどの遺構で屋根谷部が北北東を向くが、気象観測データより夏季の卓越風向は概ね南、冬季は北西であり、むしろ北東から東に屋根谷を向けた方が防風性能は高いことが明らかとなった。一方、現存する22件の軒出・庇高を実測し、オモテへの日照到達距離を算出した結果、採光の観点からは北、次いで北北東に屋根谷を向けた場合が都合よく、北東まで東に振れると冬季の日照導入・夏季の日射遮蔽ともに悪化することが明らかとなった。すなわち、採光と耐風の両面から最もバランスの良い方位となっており、民家の巧みな気候適応性能が明らかになった。これらの室内での総合的快適性を評価するため、複数物理要素の複合影響実験により新たな等快適線図を作成した。すなわち、22名の被験者を寒冷および騒音に曝露した実験から、気温と騒音レベルから快適度を数量的に表す等値線図を寒冷側に拡張した。男女16名の被験者を光源照度・色温度、気温、周囲色彩の組合せ条件に曝露した実験から、色温度と照度の組合せによる快適範囲を新たに示した。
著者
青島 清雄 小林 正
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.289-293, 1952-09-25
被引用文献数
1

マツの青変材の青変菌が死んでからの耐朽性を知る目的で, マツの青変菌Ceratostomella ips RUMB.2系統Graphium sp.及びLeptographium sp.夫々1系統をアカマツ辺材の試験片に接種して充分変色させてから蒸気殺菌して, マツノオオウズラタケ, ヒトクチタケ, シハイタケ, ワタグサレタケ及びチヨークアナタケを夫々の青変材に接種し, ワタグサレタケは6カ月後, 他の4種の腐朽菌は1年後に試験片の重量減少率を測定した。この結果からは青変材と健全材とは耐朽性に統計的に意味のある差異は見出せない。
著者
宗澤 岳史
出版者
南山堂
雑誌
治療 (ISSN:00225207)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.239-243, 2011-02
著者
竹内 繁樹
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.263-273, 1999-04-05
被引用文献数
2

「量子計算」という言葉を耳にした方も多くなってきたのではないでしょうか. しかし, 「重ねあわせ状態を維持して計算を行う」という説明には「重ねあわせ状態なんてすぐに壊れてしまう」という常識から, あるいは「観測によって波束を収縮させ」という言葉には怪しげな雰囲気を感じて, 今一つ疑念や近寄りかたさを感じていらっしゃるかもしれません. でも, ここで紹介するように, それらの問題への真正面からの取り組みがすでに始まっています. この稿では, 現時点でどのような実現の方法が考えられており, 実際どのような実験が行われているのかを紹介いたします. 今急速に立ち上がりつつあるこの分野の魅力を感じていただければ幸いです.
著者
松本 勉 岩村 充 佐々木 良一 松木 武
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.30, pp.13-18, 2000-03-21
被引用文献数
15

計算量的仮定に基づく暗号による電子署名方式は,技術環境が変化すれば,十分な安全性をずっと保ち続けられるとは限らないという性質を持つ.よって,本来自分だけが持つはずの暗号的署名生成機能を他のエンティティが持っているという状況が生じえる.このため,自分が署名した覚えのない電子文書が提示されたとしても,自分は署名していないことを調停者に対して証明できること,すなわち「電子署名アリバイ(電子署名の非生成証明)」を実現する機構が求められる.我々は,署名生成者の署名履歴?これには他のエンティティの署名履歴との交差が含まれる場合もある?に依存して署名生成を行うという「ヒステリシス署名」とそれを基礎とする電子署名アリバイ実現機構を提案する.Digital signature is relatively getting to lose its security because of computer power improvement. On the other hand, some kind of signatures must have long term of validity (e.g. over 20 years) in practical usage. Thus, we need reliable systems to keep validity of digital signature even if the base cryptosystem is collapsed. In this paper, we propose a "hysteresis signature" based system. In our system, we can distinguish valid signature and forge one with the signature log file which is stored safely by storing it in a smart card, by chaining the signature with previous signature, or moreover by intercrossing the signature with other signers' one.