著者
服部 英雄 稲葉 継陽 春田 直紀 榎原 雅治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

文献資料のみに依拠してきた従来型の歴史学の隘路を切り開くべく、地名を史料(歴史資料)として科学的に活用する方法を確立した。地名を網羅収集する作業を進め、文字化されていない未記録地名を収集し、地図に記録し印刷した(主として佐賀県および熊本県阿蘇郡)。地名を史料として利用するため、電算化による検索を九州各県および滋賀県で進めた。研究上の環境整備を進めるいっぽうで、地名の歴史史料としての学問的有効性を確認し、拡大する作業を行った。交通に関わる地名、タンガ(旦過)、武家社会を考える地名イヌノババ(犬の馬場)、対外交渉史を考える地名トウボウ(唐房)をはじめ、条里関係、荘園関係、祭祀関係などの地名の分布調査、および現地調査を進めていった。地名の活用によって、研究視野が拡大される例。唐房地名は中世チャイナタウンを示す。従来の研究は対外交渉の窓口は博多のみであると強調してきたが、唐房は九州北部(福岡県、佐賀県、長崎県)、九州南部(鹿児島県)にみられる。一つの港津にトウボウ(当方)のほか、イマトウボウ(今東方)もあって、複数のチャイナタウンがあった。綱首とよばれる中国人貿易商の間に利害の対立があったことを示唆する。福岡・博多は新河口を開削して(御笠川や樋井川、名柄川)、干潟内湖を陸化し、平野の開発を進めた。それ以前には多くの内湖があって、それに面して箱崎、博多、鳥飼、姪浜、今津の港があった。自然環境・立地は類似する。博多のみが卓越していたわけではない。貿易商社たる綱首は一枚岩ではなく、競合した。それぞれが幕府、朝廷(大宰府)、院・摂関家と結びつく。地元では相互が対立する寺社と結びついた。チャイナタウンは多数あって、カンパニー・ブランチを形成した。これは考古学上の成果(箱崎遺跡で中国独自の瓦検出)とも一致する。従来の研究にはなかった視点を獲得した。
著者
佐々木 土師二
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.197-269, 2006-03-30

観光心理学では、観光者行動だけでなく、観光地域の住民の行動も研究する必要があるが、現状では、ほとんど取り上げられていない。本稿では、外国の文献資料にもとづいて、ツーリズムが地域社会やその住民に及ぼす社会的・文化的インパクトの諸現象を概観した後、地域のツーリズム開発に対する住民の態度の実証分析にもとづく知見を通覧した。この住民態度の把握のためには、標準的態度尺度の構成の必要性が強調され、調査項目の収集が試みられた。さらに、Ap (1992)の論文に依拠して、訪問者と住民の相互作用に関する社会的交換理論による説明と仮説的命題が検討された。
著者
金沢 洋一 清野 嘉之 藤森 隆郎 加茂 皓一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.167-173, 1984-05-25

苗畑で育てたケヤキ9年生林分を用い, ほぼ月1回の調査によってその地上部現存量の季節変化を追跡した。葉量は5月下旬に一度ピークに達したのちやや減少し, 8月下旬に再び増加した。二度目の増加は土用芽によるものと考えられる。葉面積は5月下旬の最大葉面積指数7.7をピークにあとは連続的に減少し, 8月に再びふえることはなかった。各時期別地上部全増加量は4〜5月を最大に7〜8月に一時増加したものの, しだいに減少の傾向をたどり, 9月以降マイナスとなった。同化産物の葉への分配がみられた時期は4〜5月, 6〜9月だったが, 5〜6月には認められなかった。地上部非同化器官への分配は5〜6月に最大となったのち減少し, 10月以降マイナスになった。年間純生産量について, 生育期間中の乾物の増加量から求めた値と生育終了後の樹幹解析によって求めた値は, 根を含めて100m^2あたりそれぞれ140kgと155kgになった。
著者
高山 啓子
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.79-90, 2005-03-15

観光をするという行為は,メディアを介した商品の消費である。本稿では,この商品の消費としての観光を一つの社会現象として捉え,特に観光とメディアの関係を社会学的に明らかにしていく。そのためにまず第一に,観光現象に対して社会学がどのようなアプローチをとりうるかを示す。第二に観光の商品化とその消費という側面に注目して,メディアとの関係を検討する。そのなかで記号的商品としての観光が消費されるために,メディアが非常に重要な存在であることを示す。第三に特に観光には不可欠であると思われる「場所」とメディアの関係を明らかにする。観光行動を「場所の消費」として捉えるJ. アーリの議論と,メディアのあり方が変化することによって場所に対する感覚が変化するというJ. メイロウィッツの議論を参照し,場所を経験する(消費する)ことに対してメディアが果たす役割を提示する。最後に観光に関するメディアの分析例として女性向け雑誌が観光をどのように取り扱っているかを提示する。
著者
敷田 麻実 森重 昌之
出版者
人間文化研究機構国立民族学博物館
巻号頁・発行日
2006-03-22

近年,地域社会や観光客の「自律性」に着目し,地域主導で創出する持続可能な観光として「自律的観光」が注目を集めている。しかし自律的観光の定義や実現プロセスなどについては,これまで十分に調査・研究されてこなかった。そこで本稿では,観光をデザインする観光地の立場から自律的観光を定義するとともに,観光客の観光デザインプロセスへの参加度合いが,観光地の自律性と関連することを述べた。そして観光地が観光に対する基本的考え方を示し,観光客の持つ多様な知識やノウハウを取り入れる方法として「オープンソースによる自律的観光」が優れていることを示した。また,オープンソースによる自律的観光を実現するためのプロセスモデルとして「サーキットモデル」を応用し,その促進要因としてインターミディアリーとインタープリタが重要であることを指摘した。さらに,デザインプロセスへの主体的参加を実践している登別市ネイチャーセンター「ふぉれすと鉱山」と,そこでインターミディアリーの役割を果たしているNPO法人「ねおす」の事例を紹介し,オープンソースによる自律的観光の実現可能性を検討した。
著者
酒井 暁子 北川 涼 近藤 博史
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

丹沢山地の306ha集水域において、樹木の分布パターンは地形変数で説明され、大径木が主尾根に分布することと支尾根で小径木の本数が多いことにより、尾根周辺で地上部バイオマスが大きいこと、また樹種により多様な分布特性を持つこと等を示した。また南アルプスの亜高山帯で、地表の撹乱状況と対応した微地形構造に規定される樹種の分布パターンを明らかにし、山地帯渓畔林との類似・相違点を示した。
著者
飯島 慈裕
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

近年、東シベリアにおいて、気候の急速な湿潤化が進行している。本研究は、現地観測の展開によって、永久凍土地域の土壌水分量が増加し、同時に地温上昇・表層部の永久凍土融解(活動層厚増加)が顕著に進行し、さらに植生・地形の変化がもたらされた一連の凍土荒廃の物理・生態的プロセスを明らかにした。さらに、衛星データ解析から湿潤化による凍土環境荒廃状況について、その時空間分布の地図化手法の開発と検証を行った。
著者
藤田 耕司 松本 マスミ 谷口 一美 児玉 一宏
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

中間動詞構文は、狭義の統語論・意味論の相関のみならず事態認知の有り様を反映した言語現象でありながら、これまで理論横断的な包括的研究はあまり行われてこなかった。本研究では、現代理論言語学の二大潮流である生成文法と認知言語学の双方の利点を組み入れた統合的なアプローチを採ることによって、この多様な側面を持つ現象のより優れた分析方法を提案するとともに、生成文法、認知言語学それぞれの問題点と今後の展望を浮き彫りにした。
著者
田倉 哲也
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究で採用しているソフトヒーティング法は,感温磁性体と金属環を組み合わせることにより,自動温度制御機能と高発熱を同時に実現することが可能な唯一のハイパーサーミア用デバイスである.今回は,そのデバイスの更なる小型化に着目し,上記の手法を応用した感温磁性粉末のハイパーサーミアへの可能性を検討した.また,腫瘍に対する効果の確認された針状埋込発熱素子の加温可能範囲について,数値解析法を用いることで検討を行った.金属被膜を施した感温磁性粉末の温度制御機能と高周波磁界中での発熱特性については既に明らかにしているので,今回の検討事項としては,金属被膜を施した感温磁性粉末の金属被膜厚に関して,その厚みを変化させたときの発熱特性についてシミュレーションと実験から検討を行った.まず,シミュレーションについては,市販の磁場解析ソフトを用いてモデルを作成し,解析を行ったところ,粉末量固定の場合,発熱量が最大となる最適金属被膜厚なるものを確認することができた.さらに,検証を行うために,種々,金属被膜厚を変化させた発熱粉を用いて実験を行ったところ,同様の傾向が確認された.このことから,粉末状埋込素子の設計が可能になり,より治療効率の高い埋込デバイスを開発していくことが可能になる.続いて,針状埋込発熱素子の加温可能範囲に関して検討を行った.第一種境界条件を適用した二次元の熱伝導方程式を解くことにより,42.5℃以上に加温することが可能な発熱素子からの距離について解析を行った.その結果,腫瘍サイズと発熱素子の配置方法・発熱素子温度の関係を導くことが可能になり,ハイパーサーミア時における治療プロトコルを進捗させることができた.
著者
池田 光生 Teruo Ikeda (財)新世代コンピュータ技術開発機構
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア = Computer software (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.8, no.6, pp.536-545, 1991-11-15

多くの生成システムでは,プランニング部と表層文生成部との間で中間構造を介して情報の伝達を行う.生成処理が多様化するにつれて複雑になる中間構造を,簡潔に記述するために,五つの階層からなる意味表現を導入した.各階層は文の統語的な階層構造を反映したものであり,統語的な制約を自然な形で意味の階層の中に埋め込むことにより,統語的な制約と意味的,文脈的な制約を統合している.意味表現の階層を用いることにより,多様な従属節の接続表現の違いや提題の「は」の役割を,記述する階層の違いとして自然に明示することができる.
著者
犬丸 啓 福岡 宏 山中 昭司
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,系を特徴づける分子レベル,ナノレベルあるいはそれ以上のレベルの階層同士が機能面で絡み合っている系を,「機能階層系」と定義し、これをキーワードにした材料の探索を、薄膜合成や超高圧合成などの特殊反応条件を活用し行った。酸化チタン粒子や金属Pd粒子をメソポーラスシリカで包含した複合体の(光)触媒作用、超伝導金属窒化物や反強磁性窒化物の高圧合成や薄膜合成などにより、特殊反応条件の特徴の現れた、あるいは界面における相互作用が物性に大きく影響を与える系が見出された。
著者
梁川 良 平棟 孝志 清水 健 藤田 潯吉 石井 進
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.17-26, 1960-02-25

体(;コニ12~15gのdd系マウスに,それぞれ100ケのLePlOsPiraicterohaemorThagiae(TR-1株),およびLePtosPiraau/umnalis(佐伯株)を皮下接1111Fし,定められた時期にそれぞれ2匹づつ順次殺処分し,体内のレブトスピラを定量した.その結果を要約すれば次の通りである.1。 レプトスピラを接種されたマウスは,殆んど無症状に経過した.しかし,体内で,レブトスピラの組織だった増殖が認められた.2.佐伯株を用いておこなった実験によれば,感染初期に,マウス体内でレブトスピラの増殖が最初に認められる部位は血液であった.その他の部位,すなわちエキカおよびソケイリンパ節,接種部洗}條液,および肝においては,血液よりもおくれで,しかも血液よりも少数のレプトスピラが認められたにすぎなかった.3.マウスの血液中で,TR-1株は感染後4~91]{1-1,またイ/1-ミ・(白株は3~10日目にかけて,6,7日目を頂点とする相称性の発育曲線を示した.頂点のレフ斗スピラ数は,血液1cc当105(TR-1株)お3よび104(佐伯株)であった.対数的増殖期におけるMcangcncrat10ntimeは,TR-1株が7.2~11時間,佐拍株が6~8時間であった.感染後11日[11以降は両株とも血液から全く検出されなかった.4,感染後8~10日目頃,すなわち抗体がマウスの血液中に出現しはじめた時期に,抗体陽性のマウスの血液から,イ/{ミ・[}(-1株はしばしば検出されたのに反し,TR-1株は殆んど検出されなかった.Scrotypc間のおなにような差が,別のびと組のレプトスピラ,三河島株(LePtosPiraiclerohaemorr/lagiae)および岡IITI株(Leptospiraautumna/is)の間にも認められた。5.マウスの肝におけるTR-1株とイ左仙株の増殖は,それぞれの株の血液における増殖と,時期的にも量的にも略々似ていた.肝ではしかし,血淑におけるよりも1日おくれてレブトスピラが検出されはじめた.6.腎における両株の発育は,同じく血液におけるよりも1日おくれて認められたが,しかしその増殖曲練は,血液や肝における場合と全く異っていた.すなわち感染後7日目または8日目順に最初の頂点(TR-1株では106,佐伯株では105)が,ついで9~11口目,すなわち抗体出現の頃に下阿が認められ,さらにそれ以後に増殖曲線は再び上,11-]′.し,すくなくとも91日目までそれほど下降を示すことなく続く独得の形を呈した.最初の対数的増夕jl′(期におけるMcangcncrationtimcはTR-1株が凡そ6.8時間,佐拍株が6~9.6時間であった.7.尿中へのレブトスピラ排泄は,感染後21日目から頻繁に言忍められるようになった.8.マウスの牌,肺,副腎,お ,あった.11. この実験に用いた2つの型のレプトスピラによるマウスの実験的レプトスピラ病は,その細菌学的な姿が,相互に似ていることが認められた.
著者
赤川 学
出版者
信州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、近代日本におけるセクシュアリティ(性、性欲)に関する言説が、いかに形成され変容したかを、一般向け性啓蒙書を中心とする豊富な一次史料をもとに、言説分析・歴史社会学の手法を用いて分析している。本研究の主要な知見は、以下の通りである。第一に、19世紀に西洋社会で沸騰した、「オナニー有害論」の言説が、近代日本社会に輸入・定着・消滅する過程を分析した。オナニーに関する医学的言説は、「強い」有害論/「弱い」有害論/必要論の三つからなっており、「強い」有害論全盛期(1870-1950)、「弱い」有害論全盛期(1950-60)、必要論全盛期(1970-)という経過をたどることが示された。そして、(1)「強い」有害論から「弱い」有害論への変化の背景に、「買売春するよりはオナニーの方がまし」とする「性欲のエコノミー問題」が存在したこと、(2)「弱い」有害論から必要論への変化の背景に、「性欲=本能論から性=人格論へ」という性欲の意味論的転換が存在したことを明らかにした。第二に、近代日本における「性欲の意味論」が、「性欲=本能論」と「性=人格論」の二つからなることを示した。前者は「抑えきれない性欲をいかに満足させるか」という「性欲のエコノミー問題」を社会問題として提起し、この問題に人々がどう解決を与えるかに応じて、個別性行動に対する社会的規制の緩和/強化が定まることを論じた。また性=人格論には、フロイト式のそれとカント式のそれが存在し、この二つはときに合流したり(純潔教育)、ときに拮抗・対立したりする(オナニー中心主義とセックス中心主義)ことを示した。最後に1970年代以降、あらゆる性の領域において、愛や親密性を称揚する親密性のパラダイムが、行為の価値を定める至高の原理となりつつあることを確認した。
著者
圖師 一文 松添 直隆 吉田 敏 筑紫 二郎
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.128-136, 2005 (Released:2006-09-05)
参考文献数
30
被引用文献数
11 20

Water and salinity stresses have been applied to improve the tomato fruit quality. To produce high-quality tomato fruit, the effect of stresses on chemical contents and physiological response must be known. We examined the chemical contents (sugar, organic acid, amino acid and inorganic ions) and osmotic potentials of tomato fruit (Lycopersicon esculentum Mill.) grown under water stress and salinity stress. For the two water stress treatments, the irrigation water amounts were fixed at 50% of the control (13% of soil water content), and 25% of the control. For salinity stress, the concentration of irrigation water was adjusted by mixing additional fertilizer, until it had the 2.5-fold electric conductivity of control (1.6 dSmu-1). Comparing both stresses, which had similar levels of leaf water potential, sugar and organic acid contents on a fresh weight basis were enhanced by the salinity stress, but not by the water stress. Amino acid contents on a fresh weight basis, except for proline and γ-aminobutylic acid, were not affected for water stress, while most of the amino acid contents for the salinity stress were higher than those for the control. The high contents of amino acids could not be caused by the concentration effects such as sugar and organic acid. Furthermore, the mechanisms of osmotic adjustment were different between both stresses. We conclude that the changes in chemical contents and the physiological responses were different between both stresses, and that the use of the salinity stress was more efficient rather than the use of the water stress to produce a high quality tomato fruit.
著者
中田 秀基 竹房 あつ子 広渕 崇宏 伊藤 智 関口 智嗣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.167, pp.55-60, 2010-07-28
参考文献数
8
被引用文献数
2

データセンターにおける消費電力低減手法の一つとして、低負荷時には仮想計算機群を少数の物理計算機に集中することで、他の物理計算機を低消費電力状態でスタンバイさせておく方法が考えられる。仮想計算機の負荷が上昇した際には、物理計算機をレジュームし、そこに仮想計算機を高速にマイグレーションすることで、仮想計算機のユーザのユーザ体験を損なわずに、消費電力を低減することができる。この方法を実現するには、負荷に応じて仮想計算機の配置を決定(仮想計算機パッキング)する手法が必要である。本稿では、仮想計算機パッキング問題に対して、いくつかの方法でアプローチし、そのパッキングの質と速度に対する評価を行った。具体的には、遺伝的アルゴリズム、0-1整数計画法を用い、グリーディなアルゴリズムであるFFD法と比較した。0-1整数計画法のソルバとしてはオープンソースのGLPKを用いた。評価の結果、以下を確認した。1)遺伝的アルゴリズムおよび0-1整数計画法は最適化に時間がかかり、リアルタイム性が要求される仮想計算機パッキング問題には必ずしもそぐわない。2)FFD法は、使用ノード数の最小化には効果があるが、マイグレーション数が制御できない。3)遺伝的アルゴリズムを、FFD法で導出した解の改良に用いることができる。
著者
Yoshizawa Masayuki KOBAYASHI Takayoshi FUJIMOTO Hitoshi TANAKA Jiro
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
Journal of the Physical Society of Japan (ISSN:00319015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.768-780, 1987-02-15
被引用文献数
27

The photoinduced absorption and bleaching of trans-(CD). and trans-(CD). in thenanosecond time region were investigated for the first time by time-resolved absorp-tion spectroscopy. The transient absorption near the band gap and the bleaching ofthe interband transition were observed for both Zr*os-(CH).and trans-(CD).. The ab-sorption near the band gap saturated at AA/A.?O.OI. The decay of transient absorp-lion at 4K was fitted to erf[(Z/r) "'] with r=144fl5ns for trans-(CD). andr=305:27 ns for trans-(CD).. When the temperature is increased, the decay kineticsare given by the same function with shorter time constants, r=32H6 ns for trans-(CH), and r=4O"6 ns for trans-(CD). at 290 K. When the trans content in c7,v-richfilm decreased, the time constant became longer. The decay kinetics is interpreted byinterchain recombination of photoinduced polaron pairs.
著者
福田 妙子 斎藤 重行
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

「ハロタン最小肺胞濃度における7-Nitro Indazoleの効果」(平成10年度分課題)[方法]Sprague-Dawleyラット14匹を、対照群と7-Nitro Indazole(7-NI;神経型一酸化窒素合成酵素阻害薬)群に分けた。ハロタンの最小肺胞濃度(MAC)をEgerらの方法で測定した後、7-NI100mg/kgあるいは溶剤のピーナッツ油を腹腔内投与し、再度MACを測定した。測定後ホルマリンで脳と脊髄を固定し、NADPH-diaphorase染色を施行した。[結果]7-NIはハロタンのMACを約50%低下させた。同時にNADPH-diaphorase染色では青斑核と脊髄後角で約25%の陽性細胞低下を認めた。「デキサメデトメジン投与後のハロタン最小肺胞濃度とNADPHジアホラーゼ組織化学染色」(平成11年度分課題)[方法]Sprague-Dawleyラット36匹を、デキサメデトメジン(DEX;α2作動薬)単回投与(50μg/kg)と3日及び14日間の慢性投与(50μg/kg/day)の3群、さらに各々の対照群3群の合計6群に分け、MAC測定とNADPH-diaphorase染色を施行した。[結果]単回投与のDEXはハロタンMACを約50%低下させたが、NADPH-diaphorase染色の低下は伴なわなかった。持続投与のDEXはハロタンMACを変化させなかったが、3日投与群で青斑核の陽性細胞数が有意に低下していた。DEXによるMACの低下は一酸化窒素の抑制を介しているとはいえなかった。[まとめ]一酸化窒素は吸入麻酔薬の最小肺胞濃度決定に重要な役割を果たしていたが、最小肺胞濃度は一酸化窒素単独で決定されてはいない。