著者
趙 英姫
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

次世代ホログラム記録材料を実現するためには、高次構造制御が非常に重要であり、特に、階層構造の制御は、高度な性能の付与のために必須である。階層構造をもっと完璧に作るため、従来、受動的な相分離によるホログラフィグレイティングの創製に対して、新材料を用いることにより能動的に相分離を起こすことを目的として、有機-無機ナノハイブリッド系を用いるホログラフィによる構造制御法の確立に寄与しようとした。いろんな含ケイ素アクリルレイト系ポリマーやダブルデッカーポリシルセスキオキサン構造を用いる新規ポリシロキシサン誘導体を設計と合成し、それによって液晶の相分離効率向上、ポリマーマトリックスの体積収縮率改善、親水性基による誘導時間の短縮など高性能のホログラムを製作した。含ケイ素ポリマーの柔軟な結合特性、架橋度、相分離特性などの特長を生かした上で、さらに、架橋反応と同時に、ポリマーがその特性を変え、相分離を促進する系にも成功した。シルセスキキサンの籠構造の各コーナーにあるケイ素原子に有機系置換基を導入することができる籠状オリゴシルセスキキサンをナノサイズでの三次元的の分子設計し、ユニークな有機-無機ハイブリッド型の新しいタイプの機能性材料を開発し、ホログラム記録材料として利用可能性を実現した。高回折効率や高熱安定性を持つこれらのホログラム記録材料は3D画像ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、セキュリティー、ホログラフィックメモリーなどの多く分野での応用に期待される。
著者
常田 益代
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ベネディクト会クリュニー大修道院とその娘修道院ムティエ・サン・ジャンはともにフランス革命の後破壊され、現存しない。わずかに残る扉口彫刻断片と柱頭はフランスと米国の諸美術館に分蔵されている。本研究の目的は次ぎの2点にある。1)第3次クリュニー西正面扉口彫刻とムティエの柱頭の彫刻様式を明らかにする。2)クリュニーとムティエの工房の関係を様式・考古学的観察にもとづき考察する。こうした研究目的を遂行するために、クリュニーについては、コナントによって発掘された彫刻断片(Pit II, Pit X)をオシエ美術館と附属保管所で調査した。またムティエについてはフォッグ美術館、ルーブル美術館、ディジョン考古学博物館、ブッシー・ル・グランなどで調査した。その結果、次の点が明らかになった。1.ムティエの彫刻様式は、説話柱頭においても葉飾り柱頭においても、第三次クリュニーの西正面扉口付近から出土した彫刻断片ともっとも近い様式を示す。2.ムティエの柱頭には複数の彫刻師の「手」が認められ、いづれの彫刻師もクリュニー西扉口の彫刻に関わっていた。両方の作業現場に関わった彫刻師が複数いることは、同じ工房の作であることを示唆している。3.ムティエの柱頭はその形状や彫刻技法、さらに史料からして、1130年前後と推察される。ムティエの制作年代の確立は第三次クリュニー西扉口彫刻の年代を示唆し、従来考えられていた1115年前後とする説の再考を要する。
著者
中山 晴夫 小島 敏明 草野 昌男 遠藤 和則 高橋 雅春 須貝 吉樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.550-557, 2006 (Released:2007-03-02)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

IFN治療著効後に血中HCV RNAが再陽性化したC型慢性肝炎の2例を経験した.症例1は54才男性,HCV genotype 2a. 1992年にIFNα2bの26週投与で著効と判定された.以後肝機能は正常であったが,12年後に肝機能の増悪と共にHCV RNAが陽性化した.HCV RNAは1カ月後に陰性化し肝機能も正常化したが,9カ月後に再度HCV RNAが陽転した.症例2は68才男性,HCV genotype 1b. 2003年にIFNβ2週後α2b/Ribavirin併用療法22週治療で著効と判定された.治療終了後2年2カ月目に,肝機能は正常のままHCV RNAが陽性化し持続した.治療前後におけるHCV NS5B領域の塩基配列の検討より,残存したHCVの再燃であると考えられた.以上のようにIFN著効例であってもHCV RNAが再出現する症例があり,注意深い経過観察が必要であると考えられた.
著者
井上 誠 高廣 政彦 川淵 浩之 島 政司 岩井 正雄
出版者
富山高等専門学校
雑誌
富山工業高等専門学校紀要 (ISSN:03864413)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.15-18, 2004-03

In this study, as a process applicable also to recycling, the commercial magnesium alloy was used as materials, the obtained condensation thing was melted and cast in the high frequency power for vacuum melting furnace after vacuum distillation refining, and a mechanical property and corrosion resistance were investigated. The Vickers hardness number of the casting material of 4N becomes small 10 orders compared with the casting material and extrusion material of 3N. Although the ultimate tensile strength and 0.2% proof strength of casting material of 4N became small compared with the casting material of C-3N, growth becomes large about 5% with a little less than 20%. The corrosion rate of the casting material of 4N does not change with a commercial magnesium alloy, but becomes quite small compared with the casting material of C-3N.
著者
高橋 恵子
出版者
聖心女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究はわが国における友情概念を検討することを目的とした。Piaget, Selman, Younissなどの欧米の友情概念についての先行研究と比較しながら、友情について、わが国の子どもやおとなが持っている素朴理論を明らかにした。如何なる人間関係を友情と呼び、友人にどのような機能を求めているのか、それはいわゆる西欧流の、いいかえれば、これまでわが国の発達研究が当然としてきた友情概念と同じか否かを明らかにすることをねらいとした。具体的には、友人と呼ぶ人間の範囲、その人々との関係の質(情緒的、道具的な関係)について検討すること、そしてまた、友情概念が実際の友人との関係に直接的に関連しているか否かを明らかにすること、を目的として3種の個別面接調査を実施した。面接を録音し、後にすべて文字化してプロトコルを作成して分析した。調査対象は小学2年生から大学生までの男女、計約300名であった。その結果、主に以下の4点が明らかになった。(1)いわゆる親友の概念(たとえば、どのような関係を親友と呼ぶか、親友はどのような心理的機能を持っているかなど)では、たとえば、ベルリンの子どもと差はなかった。(2)しかし、親友といわゆる友だちとのつきあいについて差をつけるかという質問では、ベルリンの子どもが親友を誰よりも大切にするとしたのに対し、わが国では親友だけではなく誰とも仲良くするのが望ましいとした。(3)それは、わが国では友だちと呼ぶ人間関係の範囲が欧米に比べて広く、ちょっとした知合いでも「友だち」と表現するような、「友だち」と言う言葉の使い方が異なっていることと関連していた。(4)しかし、わが国の子どもがだれとでも同程度に付き合っているのではなく、親しさの程度を区別して、ベルリンの子ども同様、選択的につきあっていることがわかった。
著者
佐々木 陽子
出版者
南山大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

異文化とコミュニケーションする能力及び感性の伸長を期待すべき若年層にとって、他者のどのような態度や外見から相手を文化背景が異なると認識するのか、その境界はどのような条件でゆらぐのか、障害者や老人などを含めた異文化とのコミュニケーション環境にどのように置かれており、それが他者への意識や関心にどう反映されているかを研究し、とくに共生的な志向や態度がどのような条件で伸長しやすいかを模索した。理論研究としては、異文化間コミュニケーションにおける「他者」を分析し、共生することと多文化主義であることがグローバリズムの中で並立するためには、「他者の」ものとして外在化した問題を「自らの」問題として再統合するイマジナリーな領域の保持が重要だと結論付けた。エスノグラフィック・リサーチでは、高校の国際事情クラスや偏見低減教育から収集したデータを分析し、共感の喚起や追体験的要素が「他者の問題を自らに統合する態度」と関わりがあることを見出した。質問紙調査は、愛知県と東京都の高校生を中心にした若者約3000人を対象に、先行の異文化間コミュニケーション能力に関する研究や多文化主義(教育)に関連する研究から、関連する心理尺度を使用したうえ、社会心理学における接触仮説をもとにした接触と偏見の関連、さらに心理係数および国際化とされる態度のうちとくにグローバリゼーションにおける共生的態度との関連を調べた。接触仮説は支持されたが、心理係数のうちあいまい耐性尺度と共感尺度の接触仮説への影響が確認された。また、経験した教育内容や、平素の友人や外国文化とのコミニニケーションの取り方や興味もまた、接触仮説を揺るがせる要因として大きく、そこから、教育における共生的態度や偏見のない認知の育成への可能性を見出した。
著者
澁谷 啓 加藤 正司 鳥居 宣之 河井 克之 川口 貴之 齋藤 雅彦
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

中越地震や能登半島地震で発生した地盤災害は, 地下水位の高い盛土に集中していた. 一方, 豪雨による盛土崩壊も後を絶たない. 兵庫県で発生した台風による補強土壁の崩壊事例では, 雨水の浸入により盛土本体が弱体化したことに加えて, 盛土背部で水位が急激に上昇し, 補強土壁盛土全体が押し流された. この種の地盤災害軽減のためには, 盛土内および周辺への雨水の浸入を決して許さないことが肝心である. 本論文では, 盛土を囲むようにジオシンセティックス排水材をL型に配置し, 鉛直に設置した排水材で受けた浸透水を盛土底部に水平に設置した排水材に流すことにより盛土外へ速やかに排水させる方法であるジオシンセティックスを用いたL型排水盛土防水工を新たに提案した.
著者
一井 太郎 張 成年 望岡 典隆 酒井 光夫 吉村 拓 山田 陽巳 本多 仁
出版者
独立行政法人水産総合研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

胃内容物の検討にはそのホスト生物の種判別も重要であることからDNAを用いた重要水産動物稚仔の種同定についても継続した。イカ類の種判別に基づいた研究成果を利用し、系群及びイカ類の資源変動やイカ類を利用する魚類資源の動態についての研究を行った。また、まぐろ類については新規核遺伝子マーカーを用いた系統類縁関係についても検討した.イカ類幼生、ウナギ類幼生及びイセエビ類幼生について胃内容物ゲノム解析を継続するとともに、結果の取り纏めを行った。イカ類(アカイカ)とウナギ類(ウナギ、ハモ、アナゴ)については真菌類と微細真核生物に一致するDNAが多く検出されるとともに、ホスト自体の変異型も多く検出されたが、餌生物由来と考えられるDNA分子は検出できなかった。イセエビ科(Palinuridae)、セミエビ科(Scyllaridae)幼生からも同様な生物群とホスト変異型が検出されたが、尾索動物や刺胞動物といったゼラチナスプランクトンのDNAが共通して検出され、これらが餌生物として利用されていることが示された。イセエビ(Panulius japonicus)の近縁種であるカノコイセエビ(Panulirus longipes bispinosus)と大西洋の種(Panulirus echinatus)は秋季に採集された標本であり、これらのゼラチナスプランクトンが検出されたが、春季に採集されたイセエビからはこれらの生物が検出されず、硬骨魚類のDNAが検出された。この違いが季節や海域、あるいは種によるものかどうかは今後の検討課題である。
著者
長田 義仁 グン 剣萍 安田 和則 八木 駿郎 山本 眞史 川端 和重
出版者
北海道大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2002

(I)ソフト&ウエット人工筋肉となるゲル基本素材の創成基本素材とする高分子ゲルにダブルネットワーク-(DN)構造を導入することで、圧縮強度、引張り強度が数メガパスカル(MPa)に達する超高強度ゲルの合成法を発見した。さらに、DNゲルの第一網目における数10nm〜数μmスケールのVoid構造を系統的に変化させることで、ゲルをBrittleからDuctile的な振る舞いまで系統的に制御することに成功した。DuctileのDNゲルがNecking現象を示し、20倍までも伸びることを発見した。この優れたゲル材料を人工関節軟骨へ応用するために、低摩擦性、高強度性を併せ持ったゲルの創製を図り、その結果、破壊強度数十メガパスカル、破壊エネルギーが1000J/cm^2以上、表面摩擦係数10^<-5>〜10^<-4>という従来にないゲルの創成に成功した。(II)ゲル基本素材の生体代替運動システムへの応用展開(I)で創製したゲルは固体素材では実現不可能な柔軟性と運動性、そして耐衝撃性を併せ持つ。このゲルを人工軟骨、人工半月板に応用するために、その耐摩耗性、生体内耐久性、および生体親和性を評価した。数種類のDNゲルは100万回、走行距離延べ50kmのPinonFlat型摩耗試験で、摩耗率10^<-8>〜10^<-7>mm^3/N・mに達する高い耐摩耗性を示し、これは超高密度ポリエチレン(摩耗率10^<-7>mm^3/N・m)を凌駕する結果であり、ゲルの特性としては驚異的なものである。DNゲルのBlock皮下埋め込み試験、ペレット筋内埋め込み試験を行い、数種ゲルの中、PAMPS/PDMAAmゲルが人工軟骨の素材に最も有望であることを明らかにした。さらに、PAMPS/PDMAAmゲル人工軟骨を試作し、関節内埋植試験を行った結果、関節内異物特性は低く、使用した人工軟骨研究用標準動物モデルでは、明らかな有害性は検出されなかった。さらに、PAMPS/PDMAAゲル人工軟骨を関節表面から数mmのギャップを作るように埋植すると、この表面である生体内局所(ln situ)に正常関節(硝子)軟骨を自然再生することが出来るという、これまでの世界の常識を覆す発見をした。
著者
畑江 敬子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

魚類の骨は一般に廃棄されているが、カルシウムを多く含むことからこれを食品として利用できれば、栄養的に有意義である。東北・北海道の郷土料理の一つである「氷頭(ひず)なます」は、サケの鼻軟骨あるいは頭部を食酢に数時間から数日間浸漬し薄切りにして、ダイコン、ニンジンの線切りと合わせた酢の物である。酢に浸漬して軟化した軟骨の独得の食感を賞味する。そこで魚骨の有効利用という観点から、酢酸浸漬によるサケ鼻軟骨の軟化の機構を知ることを目的とした。そこで先ず、酢酸浸漬中のサケ鼻軟骨のテクスチャ-および嗜好性の変化を物性測定と官能検査により検討し、あわせて化学成分の変化を測定した。船上凍結後ー40℃で2ー3ケ月貯蔵したアラスカ産シロザケ頭部を4℃16時間解凍後、鼻軟骨の部分のみ実験に用いた。これを2mm厚さの薄切りにし4%酢酸水溶液に168時間まで浸漬し経時的に測定を行い、以下の結果を得た。1.サケ鼻軟骨は酢酸処理により生臭いにおいがなくなり、テクスチャ-は軟らかく、もろくなり、嗜好性が高まることが官能検査によって確められた。酢酸浸漬時間は24時間程度が適当とされた。2.テクスチュロメ-タ-による硬さ、圧縮に要するエネルギ-および保水性の測定によっても鼻軟骨の軟化が示され、特に浸漬初期の軟化が著しかった。3.軟骨のpHは比較的短時間のうちに浸漬液のpHに近づき、168時間後には軟骨のpHは浸漬液のpH(pH3.10)に等しくなった。4.サケ鼻軟骨成分は浸漬により、水分、粗タンパク質量はほとんど変化しなかったが、糖質と灰分量の減少が著しかった。5.糖質と灰分の主成分であるムコ多糖とカルシウムは著しく減少し、168時間後には未処理の1/2となった。
著者
内田 初代
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.93-95, 1999-03-31

調理操作の中で一般的には, 最も初歩的な段階である「材料を切る」という事について実態調査を実施した.料理の出発点とも考えられる「切り方」については, より意識的な包丁の使い方を考えて見る事が必要である.食べ物をおいしく食べるための切り方が, 実験的に研究されてきている事からみても, 調理と切砕との関係の重要さが分かる.今回は, なます大根にする際の切り方の違いによる影響と, キャベツの千切りの浸水時間の違いによる影響について実態調査を実施した.なます大根では4種類の切り方の内, なます切りが好まれた.キャベツの浸水時間別では, 水でサッと洗ったものと30分浸水したものでは差が殆ど見られなかった.
著者
久保木 功
出版者
静岡理工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

工業用純チタンC.P.Tiおよび冷間加工が可能なβrich(α+β)チタン合金SP700に,種々の条件で一方向ねじり加工および繰返しねじり戻し加工を施した試験片を製作した.これらの試験片に室温および高温引張試験,硬さ試験,表面粗さ測定および組織観察を行い,次の知見を得た.まず,工業用純チタンC.P.Tiでは;(1)繰返しねじり戻し加工により,正方形断面を持つ板材試験片でもねじり加工後の稜線が比較的直線的であり,それほど大きな外観形状の変化は見られず,原形回復できることがわかった.(2)繰返しねじり戻し加工ではねじり加工が進行しても,それほど表面粗さに大きな変化はなく,一方向ねじり加工より表面粗さを小さくすることができる.(3)繰返しねじり戻し加工とその後の再結晶焼鈍により,中心から外周に向かって結晶粒が徐々に微細化し,硬さが増加していく傾斜組織が形成されることがわかった.(4)一方向ねじり加工や繰返しねじり戻し加工を行うことで引張強さは増大する.このとき一方向ねじりより,ねじり戻し加工したほうがねじり量(比ねじり角)が大きくでき,引張強さは大きくなる.(5)高温引張試験では,変形温度923Kにおいて繰返しねじり戻し加工材のほうが冷間圧延材よりひずみ速度感受性指数m値が大きくなる(m=0.28).これに対応して,ねじり戻し加工材の全伸びは冷間圧延材よりいずれのひずみ速度でも10〜20%程度大きい.次に,チタン令金SP700では;(6)繰返しねじり戻し加工を行っても,硬さは大きく変わらなかった.しかし,引張強さは焼鈍材に比べ大きくなった.このときねじり戻し加工した試験片の表層部と中心部の結晶組織は外周方向に伸張していた.
著者
小島 朝子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.322-327, 1989-12-20
被引用文献数
1

滋賀県下の神社の神饌と直会膳にみられる魚料理について調べた結果の要約は次の通りであった。1.フナずし切りの神事は湖南北東部地方と湖東地方で行われていた。湖西地方にはシイラのすし切り神事がシイラ切りの神事として残されていた。2.馴れずしを神饌として供える神社は草津市、守山市、野洲群、栗太群などの湖南北東部地方に集中していた。すしの種類ではフナずしが一番多く供えられ、他にめずし、モロコずし、ドジョウずし、ハスずし、雑魚ずし、ウグイずし、サバずしなどがみられた。3.直会膳に出される馴れずしもフナずしが一番多く、他にモロコずし、ドジョウずし、ハスずし、ニシンの糀づけなどがみられた。4.馴れずし以外の魚の熟饌には「なます」料理が多くみられた。熟饌に用いられる魚は淡水魚が多かったが、塩サバや塩シイラ、塩ブリなどの海産塩物もあった。5.直会膳に出される馴れずし以外の魚料理の中には、現在家庭料理として残っていないものもみられた。湖岸近くの神社では淡水魚が多く使用されていたが、山間部では海産塩干物の使用が多かった。6.生饌には生の淡水魚が多く供えられていたが、海産塩干物もかなり多かった。以上の結果より、古来滋賀県ではいろいろな種類の馴れずしが漬けられていたことや、湖魚や海産塩干物が大切な食品材料であったことがわかった。
著者
辻子 裕二
出版者
福井工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

表層土の浸食防止策の一つとして,植生シート工法が採用される場合がある。この工法は,適用に際し施工時期が限られるといった課題がある。加えて,斜面上の豪雨によって植生シートに含まれる種と栄養分が同時に洗いだされることで,植物の生長が妨げられることが危惧される。この課題に対応するため,本研究では植生シートからの萌芽・活着が可能となるまでの間,一時的に表層土を安定させる工法を提案した。この工法は斜面や周辺環境に影響を及ぼさない処理剤を使うことが特長である。植生の活着および保水性に関する屋外実験および室内実験の結果,本工法の適用性ならびに限界を明確にした。
著者
[ぐん] 剣萍 角五 彰 黒川 孝幸 古川 英光 田中 良巳 安田 和則
出版者
北海道大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2006

生体は硬い骨格を除き、殆どが50-85wt%が水分で構成されている軟組織からできている。豊かな福祉社会の実現には生体軟組織と同等の機能を持ったソフト&ウェットマテリアルの創製が不可欠である。本研究は、含水高分子ゲルの構造を制御することによって、生体軟組織に匹敵する高靭性と高機能を有する様々なソフト&ウェットマテリアルの創製に成功した。これらの材料は、軟骨・腱、血管などの生体軟組織の代替材料として応用できる。
著者
權 珍嬉
出版者
(財)東京都老人総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

今年度は,1)介入後6ヶ月間の追跡調査を行い,介入効果がその後,筋力維持,さらには筋力維持による生活機能の改善,食生活の改善,SF-36,血液検査の結果値,介護保険申請状况などを検討すること,2)介入前後,追跡調査結果の分析を行って筋肉減少症を予防することを目的とした3ヶ月間の栄養と運動の介入プログラムの実施による健康や栄養状態の改善維持に及ぼす影響について検討することを目的とした。「運動+栄養(29名)」「運動(27名)」,「対照群(28名)」の3群に分けて3ヶ月間の栄養と運動の介入プログラムを実施した後,平成19年3月22・23日に介入後の調査を行った。地域に在住する虚弱女性高齢者を対象に筋肉減少症を予防することを目的とした3ヶ月間の栄養と運動の介入プログラムの実施による健康や栄養状態に及ぼす影響について分析した。分析は,介入プログラム参加率の50%以上者を対象に行った(運動+栄養群25名,栄養群22名,対象群28名)。その結果,介入により「栄養と運動」群で食品摂取多様性が有意に高くなり,SF-36では日常役割機能(身体)体の痛み,日常役割機能(精神),心の健康が有意に改善されたことが明らかになった。血液検査ではPrealbuminが高くなり,身体機能では通常歩行速度や最大歩行速度が有意に速くなった。介入後6ヶ月間追跡し,平成19年10月8 9日に追跡調査を行い76名が参加した。調査内容は,面接聞き取り調査(健康度自己評価,転倒,食生活,SF-36など),身体計測および体力評価(体重,筋肉量,筋力(握力),バランス能力(片足立ち),歩行速度(通常・最大),採血検査である。追跡調査後,本研究の「非介入群」を対象に「運動+栄養群」に実施した栄養と運動プログラムを提供した。
著者
佐々木 司
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は、生活スタイルを含めた環境改善による大学の精神的健康増進を行うために、アプローチすべき要因を実証的に解明することを目的としたものである。平成21年度は、健康診断のデータをもとに、学生の精神保健にとって一つの大きな問題である留年と関連する要因の解明、大学生でも問題となりつつある自殺の念慮や企図と関わる要因などについて解析を行った。まず学部2年生約3,000人を対象に、1年生から2年生に進学できなかった留年生の精神状態を解析したところ、留年生は非留年生に比べて、抑うつ・不安を示す質問紙(GHQ12)の得点が有意に悪く(p<0.01,OR=1.5)、幻聴様体験などの精神病様体験の頻度も高かった(p<0.005,OR=2.9)。また、入学時あるいはそれ以前の状態や既往と入学1年後の留年との関係をみると、入学以前に「自殺企図を考えたこと」のある学生では留年のリスクが高く(p=0.04,OR=2.6)、ほかに飲酒(p=0.04,OR=1.7)、「抑うつ」の既往(p=0.06,OR=2.0)などの影響が認められた。そこで「自殺念慮」や「自殺企図を考えたことがあること」がどのような要因と関連しているかを、入学後の健診データから検討した。その結果、性格における神経症傾向のほかに、「いじめられた体験」と精神病様体験とが、自殺念慮、自殺企図の考慮いずれとも有意な関連を示した(OR=2.7および3.1と、OR=2.7と2.8)。これらの結果から、1)大学の精神保健対策においては留年生のケアが一つの重要なポイントであること、2)大学入学以前からの「いじめ対策」、ならびに精神病様体験への注意とケアが、大学での精神保健対策を考える上でも極めて大切であることが示唆された。