著者
木村 三郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.37-41, 1991-03-30
被引用文献数
1

我国で世界に誇りうる風景観と云えば第一に富士山,その第二に瀬戸内海をあげることが出来る。そこで富士山については既に本機関誌『造園雑誌』第54巻1号(1990)に於いてその文化的価値を中心にその歴史的な考察を行ってきた。そこでその第二のステップとして,ここに瀬戸内海についても同様な観点から究明して見たい。即ち富士山が孤高の山景美とすれば正に瀬戸内海は白砂青松の海景美と云える。このような伝統美が欧米化の風潮の波に圧倒されて兎角忘れ勝ちになっていることに反発を禁じ得ないし,又その保全の手段方法についても一考して見たい。
著者
吉永 美香
出版者
名城大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

住宅建物の陸屋根上に水膜を形成し,夏期における最上階居室の暑熱環境を緩和させる手法について効果の検討を行った。H19年度に光透過型ルーフポンド(RP)試験体を用いた実測による熱収支分析を,H20年度に愛知県に実在するRC造集合住宅の最上階にある居室を対象に実験的検証を行った。いずれも高い屋根表面温度抑制効果が確認された。さらにRC造戸建住宅の屋根全体にRPを設置した場合の冷房熱負荷削減効果を計算により検証した。以上より,RPが効果的に冷房時熱環境を改善するとともに,冷房設備使用に伴うエネルギー消費量を抑制することが明らかとなった。
著者
三隅 二不二 ハフシ モハメッド 米谷 淳 橋口 捷久
出版者
奈良大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

災害時、もしくは災害警戒期における人々の対応や態度を社会的なネットワ-クの観点から分析することが本研究の課題である。昭和64年には、スモ-ルワ-ルド・メソッドというネットワ-ク調査手法で焼津市を予備的に実験調査することによって、市役所・消防署などの防災機関と一般市民との間に潜在するネットワ-クを実験調査した。その結果、防災関係者と一般市民との間には、平均2〜3ステップ程度の連鎖のリンクでもって双方を連結させてやることが可能であろうことや、防災→市民ル-トよりも、市民→防災ル-トの方が連鎖が完成しやすことなどを明らかにした。平成1年度には、伊東市で生じた海底噴火に対する住民の災害時の行動や態度と日常のネットワ-クについてヒアリング・郵送調査をもって検討した結果、ネットワ-クの密な地区と疎な地区とでは、防災訓練への参加度や防災意識の高低などが、密な地区のほうが疎な地区よりも高い傾向があることが見いだされた。本年度は、再び伊東市の自主防災組織のリ-ダ-や市役所・消防などの防災関係機関、特にガス・電気・電話等のライフライン組織の責任者などに、おもにアンケ-トの結果を評価してもらうヒアリングを実施するともに、様々な機関が公式・非公式に、海底噴火当時の対応を記録した資料などを収集・分析した。その結果、災害時情報を、時期別・地区別・ネットワ-クの質別(近隣・親類・役所関係者・町内会関係者・自分の仕事関係者など7項目)分析した結果、地域防災上の相談のような部分的・短期型の情報の場合は、近隣・仕事関係ネットワ-クが利用される割合が高いのに対して、観光が伊東市に及ぼす影響といった全体的・長期的情報の場合は、親類関係ネットワ-クが利用されていた。また、災害時に流れた様々な噂を分析したところ、噂の内容には、「〜が地割れしている・〜の人々が避難した」といった地域密着情報の場合は、近隣ネットワ-クが、「富士山が噴火する・津波がくる」といったマスコミ報道の反復的な情報の場合は、親類・近隣を中心として不特定なル-トが利用され、「魚が異常な行動や大漁だった」という特殊な情報な場合は、魚業関係者のル-トが利用されるという傾向などがあった。
著者
駒谷 真美
出版者
昭和女子大学短期大学部
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の内容本研究の背景として、博士論文(お茶の水女子大学大学院,2006,駒谷)で、幼児期と児童期それぞれの時期に適応したメディアリテラシー(以下MLと略す)教育を日本で初めて開発し、「ML教育と子どもの生態学的環境モデル」を構築した。更なる研究の萌芽を育成する視点から、幼児教育と小学校教育の場でのML教育の普及を期待し、その方略として、教育学的視点から幼稚園年長児から小学校1年生までを対象に、接続期を意識したML教育の幼小連携カリキュラムを開発した。平成19年度は、米国でのML教育のカリキュラムとレッスンスタディの技法を研修し、本研究のカリキュラム試案をまとめた。平成20年度は、【接続期前期】のカリキュラムを玉川学園幼稚部で実践した。平成21年度は、【接続期中期】と【接続期後期】のカリキュラムの継続実践を行った。本研究の意義と重要性国内外では初めてML教育において接続期を意識し、幼児期から児童期の統合性と継続性を持つ幼小連携カリキュラム「メディアであそぼ!」を開発した点に、本研究の意義を見出せる。具体的には、玉川学園幼稚部で【接続期前期】(年長児後半)プロジェクト「好きな遊びのCMを作ろう!」(グループで遊んでいるCMを作成し発表)、同学園初等部で【接続期中期】(小学1年入学~ゴールデンウィーク前)プロジェクト「自分CMを作ろう!」(各自自己紹介のCMを作成し発表)、【接続期後期】(ゴールデンウィーク後~1学期末)プロジェクト「クラスのニュース番組を作ろう!」(初めてのグループ活動で、入学以降クラスで体験した行事や勉強について、ニュースを作成し発表)を実践した。「メディアであそぼ!」は、幼稚園では「ことば」「表現」の領域、小学校では「国語科」に該当する。全実践をビデオカメラで記録しテープ起こしを行い、事前事後アンケートやインタビューを実施した分析結果から、時期を重ねるごとに、メディア活動の体験を通して「メディアは作られている」というML教育の基本概念に対する気づきが表出し、自己表現活動・グループ活動を通して「言語活動の充実」が認められるに至った。接続期におけるML教育の重要性が示唆された。
著者
藤善 眞澄 王 宝平 王 勇 内田 慶市 尾崎 實 宮下 三郎 籔田 貫 薗田 香融 大庭 脩 WAN Bao Ping WAN Yong 永井 規男 日下 恒夫
出版者
関西大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

研究テーマ「佛僧の往来」「江戸時代の日中関係」「漢籍と和書の相互交流」「浙江人の日本留学と中国近代文化」の四分野にわたって例会発表を行い、その一部は東西学術研究所々報等に掲載されている。さらに従来の成果をもとに本年度の調査研究を加味し<浙江と日本>のタイトルで業績発表を行うことが決定されており、すでに以下の論文15篇が提出されている。(1)藤善眞澄「入宋僧と杭州・越州」(2)大庭脩「浙江と日本-1684年より1728年に至る間の寧波船の動向」(3)宮下三郎「李仁山種痘書について」(4)籔田貫「寛政12年 遠灘漂着唐船萬勝号について」(5)松浦章「浙江と倭冦」(6)高橋隆博「浙江の漆芸-螺鈿器と識文漆器をめぐって-」(7)尾崎實「後浪推前浪-浙江人の場合-」(8)内田慶市「ヨーロッパ発〜日本経由〜中国行き-西学東漸のもう一つのみちすじ-」(9)毛紹晢「稲作の東伝と江南ルート」(10)王勇「鑑真渡日の動機について」(11)蕭瑞峰・徐萍飛「浙東の唐詩ルートと日本平安朝の漢詩」(12)屠承先・呉玲「呉越国の文化と日本」(13)王宝平「傅雲龍の日本研究の周辺」(14)呂順長「中国の省による留日学生派遣の事始め」(15)謝志宇「留日浙江人の夏馬尊について」これらは平成8年度中に出版し報告書にかえたい。今年度は王勇の漢籍・和書の調査を中心に置き、藤善眞澄による日中交通路の調査ならびに史蹟、資料の蒐集を併せ実施し、多大の成果を得ることができた。これらは逐次発表を行いつつ、次の目標につなげていきたいと思う。
著者
相田 洋
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

『点石斎画報』は、上海で『申報』を発行していた申報館から刊行された絵入りの旬刊誌である。当時の中国は、上海を中心として文明開化の波に覆われ始めていたが、まだ地方では旧文化・旧社会が色濃く残存していた。そのため、この画報は、それら文明開化の過程や旧社会の様々な諸相を活写していて、中国社会史・民俗史研究にとって、格好の史料といえる。このように『点石斎画報』の史料的価値は高いが、日本の学界(中国でも同様)ではこれまでほとんど利用されてこなかった。それは、この画報の揃いは、日本に存在しなかったからである。1983年6月に、広東人民出版社から、全5帙・34冊が刊行され、ようやく渇望を充たす事ができるようになった。しかし、この広東人民出版社本は、「丁酉9秋重印」つまり、光緒23年(1897)秋の重刊本を定本にしており、原本ではない。原本との大きな違いは、刊行年月旬や号数が欠けていることである。この点は、時事問題も多数掲載されている画報としては、相当のマイナスである。そこで本研究では、東京大学東洋文化研究所や東洋文庫、東京都立図書館実藤文庫等に飛び飛びに所蔵されている原本を調査して、刊行時期を確かめ、広東人民出版社本を定本に、データーを盛り込んだ目録(稿)を作成して今後の研究の基礎固めをすることをめざした。これらの原本の調査の結果、意外にスムーズに10日おきに刊行さたことや、数々の広人本の閉じ誤りや目次の疎漏等を発見した。ただ、本目録はまだ不十分な点が多いので、より充実させて、公刊して幅広い利用に供したいと思う。
著者
千田 稔 笠谷 和比古 頼富 本宏 池田 温 大庭 脩 上垣外 憲一 葛 剣勇 石井 紫郎 河合 隼雄
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本調査研究によって解明された主要な点を上げるならば、次のとおりである。1.明治維新後の日本において、中国人蒐書家によって系統的な典籍の蒐集がなされ、中国本土に移送されていた。ことに清国総領事黎庶昌や清国領事館駐在員であった楊守敬らによって系統的に蒐集されて、中国大陸に移送され、その後、各地を転々とするとともに、日中戦争から国共内線の時期における散逸、焼亡の危機をくぐりぬけて今日に伝来するにいたった各種図書・文献について、その所在を跡づけることができた。2.京都高山寺の寺院文書が、中国武漢の湖北省博物館において所蔵されていることをつきとめた。今回の発見成果の重要なものの一つが、この湖北省博物館所蔵の高山寺文書であった。これも楊守敬蒐集図書の一部をなしている。明治初年の日本社会では廃仏毀釈の嵐が吹き荒れており、寺院の什器や経巻の類が流出して古物市場にあふれていた。高山寺文書の流出も多岐にわたっているが、その一部が楊守敬の購入するところとなり、中国に伝存することとなったのである。3.今回の調査で、日本の仏典が中国各地の所蔵機関に少なからず伝存することを確認し得た。そして同時に次の点が問題であることが判明した。すなわちこれら日本から請来された仏書、写経の類は、中国人の目からは敦煌伝来の仏典と見なされる傾向があるという点である。明白に日本で書写された経巻であるにもかかわらず、それらがしばしば敦煌伝来の写経と混同して所蔵され、また目録上にもそのような配列記載がなされているという問題である。これは日本人研究者の考えの及ばなかった問題でもあり、日中双方の研究者・関係者の協議に基づいて、問題が早急に改善されることが望まれる。
著者
村井 章介 豊見山 和行 石井 正敏 佐伯 弘次 鶴田 啓 藤田 明良
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

研究代表者1名・研究分担者27名・海外共同研究者15名・研究協力者9名を5つの班に分け、基本的に各班ごとに、海外調査・国内調査・研究会・シンポジウム等の活動を行った。構成員全員を対象としたものも含め、研究会・シンポジウムの報告の多くは研究成果報告書に収録されており、現地調査の記録は本プロジェクトのホームページhttp://www.l.u-tokyo.ac.jp/~phase817/に掲載している。構成員全員で行った活動としては、(1)発足時の研究会、(2)秋田・青森両県調査、(3)中国石浙江省調査、(4)総括シンポジウム「海をかける人・モノ・情報」、(5)研究成果報告書の刊行、の5つがある。第1班「博多・対馬・三浦と日朝(韓日)関係」は、多島海域という特色をもつ日朝間の境界領域で活動する諸人間類型に着目し、(1)韓国慶尚南道・全羅南道調査、(2)九州大学・対馬調査、(3)シンポジウム「中世日韓交流史」、を実施した。第2班「使節・巡礼僧の旅」は、日中間を往来した旅人たちの足跡を文献研究と現地調査との両面からたどり、(1)中国江蘇省調査、(2)五島列島調査、(3)『参天台五台山記』研究報告会、を実施した。第3班「琉球ネットワーク論」は、福建地方との関係を軸に日本列島から東南アジアまでを結ぶネットワークとしての琉球の役割に注目し、(1)中国福建省調査、(2)久米島調査、(3)シンポジウム「朝鮮と琉球」、を実施した。第4班「倭寇ネットワーク論」は、東アジア・東南アジアの沿海民やヨーロッパ人までも含む倭寇という集団を対象に経済・政治・信仰などの諸側面から海域世界の成り立ちに迫り、(1)台湾調査、(2)薩摩半島・島嶼部調査、(3)五島列島・平戸調査、を実施した。第5班「世界観と異文化コミュニケーション」は、異なる文化や民族の相互間に生じるコミュニケーションのあり方を通訳と古地図に着目して追究し、(1)ポルトガル調査、(2)7回におよぶ地図・絵図調査(国内)、(3)シンポジウム「物・人・情報の動きから見たアジア諸地域の交流史」、(4)4回におよぶ研究会、を実施した。
著者
小川 宣子 田名部 尚子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.65-70, 1988-06-20

16〜18歳の女子206名を対象とした蛋白質食品の好みに関する調査を行った。因子分析を行った結果「こってりとした味で油脂を多く使う」と「調味料添加無」の因子に分かれ、豚肉は様々な料理が広く分布し、料理方法として様々な料理が存在していた。又、魚と豆腐は、クラスター分析の結果から一つのクラスタを形成しており、嗜好の点からはよく似た食品であった。又、16〜18歳の女子がよく知っている料理の頻度には調理形態、様式形態が大きな影響を与えていた。
著者
林 謙一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

今年度は8月に研究対象地域である中国雲南省において調査を行った。また調査期間中,雲南大学において中国歴史地理学会が開催されたため,中国西南地方を中心とする地域の多くの歴史地理・地方史研究者が同地を訪れており,それらの研究者に対して西南地方の地方史史料の収集・整理保存にして聞き取り行うことができた。特に重要なものとしては明代の雲南地方志二種が雲南大学歴史系によって校訂・出版されたこと(『雲南史料叢刊』所収),元代の地理志残本のうち西南地方を含む『混一方輿勝覧』の校訂が四川省で勧められていることなどがあり,前者については実物を入手することができた。古籍史料の所蔵調査は雲南大学図書館等について実施することができたが,もうひとつの重要目的地である雲南省図書館については,同館が改装工事に伴い長期閉館中であったため果たせなかった。前年度に複写を入手した明代地方志については電子化の作業が進行中であるが,上記の雲南大学による出版内容と重複するため,単なる画像入力の意義が薄らいだ。そこでさらにこれらの電子テキスト化を進めるべく,方法および使用文字コードなどについて検討を進めた。具体的には内外の研究者による利用を容易にするため,日本語(JIS)の文字コードではなく,国際規格であるunicodeによるテキスト化を行うこと,同時にそれをWEBページのかたちで公開すること,コード化されていない文字については画像を使用し,参照番号として『大漢和辞典』の親字番号を付することなどである。この作業は現在進行中であるが,その成果の一端として,元代雲南地方志史料の一つ『雲南史略』などを含むいくつかの中国西南地方の民族に関する史料を研究代表者のWEBページ(www.lit.nagoya-u.ac.jp/〜toyoshi/maruha/kanseki)において試験的に公開している。
著者
藤垣 裕子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

科学者の社会的責任の内実は時代とともに変容してきた。現代の責任論は、原爆を作った物理学者の責任論にとどまらず、生命科学、食品安全にかかわる諸科学、環境科学など範囲も多様化している。本研究では、まず専門主義の源泉について考え、次に現在科学と社会との間でおこっている公共的課題の特徴を整理した。さらに、責任概念と倫理との差を検討した。責任(responsibility)とは、他者と対峙したときのresponseとして生じ、応答(response)の能力・可能性(ability)に由来する。責任を「過去におこしてしまったものに対して生じるもの」ととらえる見方だけでなく、「応答可能性」「呼応可能性」といった形で解釈する必要がある。これに対応して、科学者の社会的責任論も、過去に科学技術が作ってしまったものに対して生じるものだけでなく、市民からの問いかけへの応答可能性として定義されうるものへの考察も必要である。これらをふまえた上で再整理すると、現代の科学者の社会的責任は、(1)科学者共同体内部を律する責任、(2)製造物責任、(3)市民からの問いへの呼応責任の3つに大きく分けられることが示唆された。
著者
藤垣 裕子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究課題の目的は、科学者の社会的責任の現代的課題について、責任論と科学コミュニケーション論の接点にあたる課題を中心に、事例分析をもとに分析をすすめることである。科学者の社会的責任の現代的課題は、(1)科学者共同体内部を律する責任(ResponsibleConductofResearch)、(2)製造物責任(ResponsibleProducts)、(3)市民の問いかけへの呼応責任(ResponseAbility)の3つにわけることができるが、科学者の社会的責任と科学コミュニケーションの重なりあう領域においては、この〓組みの1つには留まらない問いが喚起される。本研究ではこのような領域における事例分析をすすめ、科学者の社会的責任の現代的課題を考察した。
著者
伊規須 素子
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

顕微赤外分光法を先カンブリア時代微化石試料と現生微生物試料に適用した結果、次のことが明らかになった。脂肪族炭化水素(CH_2とCH_3結合)に着目すると、現生原核生物細胞、脂質はそれぞれドメインレベルで区別される。そのため、本手法は迅速かつ簡便なドメイン識別法として有用であることが期待される。また、約5. 8億年前の微化石がこれまで形態的特徴によって決定されてきた分類以上に多様な生物を起源とする可能性がある。
出版者
京都大学人文科学研究所
巻号頁・発行日
2007-03-28

貝塚茂樹著『京都大學人文科學研究所藏甲骨文字』図版冊上・図版冊下・本文篇・索引(全4冊), 京都大學人文科學研究所, 1959.3-1968.3. の画像および甲骨番号に対応する拓本画像の表示
著者
永田 晋治
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

昆虫の摂食行動に関わる生体内分子の探索を行なった結果、カイコ(Bombyx mori)の幼虫から新規のペプチド性因子を2 つ見出すことができた。ともに機能は未知であるが、脂肪体で発現し体液中に分泌するペプチドであり摂食行動や栄養要求に関連することが示唆された。
著者
三村 治 出澤 真理 石川 裕人
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度は弱視モデルの作製・骨髄間質細胞のドーパミン産生神経細胞への分化誘導・弱視モデルへの細胞移植方法の検討を行った。弱視モデルは生直後より暗室下で飼育することにより作製した。骨髄間質細胞はDezawaらの報告と同様にドーパミン産生神経細胞への分化誘導が可能であった。弱視モデルへの細胞移植は脳脊髄液経由で細胞懸濁液を第4脳室に注入することにより可能であった。平成18年度は17年度に続いて弱視モデルへの細胞移植を行い、抗体アレイやPCRを用いた解析を行った。抗体アレイでは弱視モデルのタンパク発現を網羅的に解析することが可能であり、種々のタンパクとりわけ、ドーパミン前駆タンパク(Tyrosine hydroxylase;Th)が脳において発現が増強していたが、網膜では既報のようにThの発現は減少していなかった。Apoptosis関連タンパクやMAP kinaseに関するシグナルタンパクなどは脳・網膜共に発現の減少傾向を認めた。これらの結果は既報と同様であり弱視に伴う発現変化を捉えている。抗体アレイの結果をうけPCRを用いた確認実験を行った。PCRではThが弱視網膜においてdown regulationを認め、既報と合致した。細胞移植された弱視脳ではMAP kinase関連タンパクやNeurofilament、GFAPなどの神経グリア系のUp regulationを認めた。この結果から弱視モデルに対するドーパミン産生神経細胞の脳脊髄液経由移植は、弱視モデルによって惹起された様々なシグナル回路に作用し、アポトーシスの回避や神経・グリアの選択的生存をもたらし、さらには弱視モデルにおけるドーパミン量を増加させることとなった。今後、既存のLevodopaの投与と本研究で行った細胞移植の効果との比較検討を行う必要性があり、大型動物での安全試験等も施行していきたい。