著者
井上 雅雄
出版者
立教大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

主要5大都市のホワイトカラー50名(男40、女10)に対して「仕事と余暇」に関する面接聴き取り調査とアンケート調査を実施した。その結果、次の諸点が明らかとなった。1)会社での仕事の時間配分は各人の裁量によるところが多いが、あらかじめ残業を織り込んでいるため、正規の終業時間内で仕事を終えるという時間意識が弱く、時間管理に厳密性が欠けている。その最大の理由は、仕事量に比して要員が少ないもとで、常に「仕事の区切り」のほうを「時間の区切り」よりも優先しているところにある。2)残業が多かれ少なかれ恒常化しているとはいえ、退社時間については各人が自由に設定しており、職場での集団的な拘束性はほとんどみられない。これは、かつてのごとく残業時間の長さが人事考課の対象となることがなくなり、専ら仕事の成果に移ってきたこととあいまって、職場での各人の時間管理の自立性をあらわしている。3)平日勤務の帰宅後は、男性の場合、家族との団欒やTV鑑賞など休養が圧倒的で、家事への参加度はきわめて低い。この傾向は年齢が高くなるほど顕著である。女性の場合は、そのほとんどの時間が家事に費やされ、若干の例外を除けば、その夫の家事の分担もまたきわめて少ない。他方、男性のうちごくわずかではあるが、週に1-2回演奏会に向けて楽器演奏の練習に参加するなど、自分の固有な時間をもっている場合がある。4)土、日の休日は、ショッピング、スポーツ、ドライヴ、散歩など家族で過ごす時間が多く、読書やゴルフなどの私的時間を確保している度合いも高くなる。5)多くの場合、仕事は単なる生活の資を稼ぐための手段というよりも、生きがいの核をなし、多かれ少なかれ自我の拠り所としての性格をもっている。これに対し余暇は、心身を癒し、仕事への活力の源泉という域をでず、余暇活動にアイデンティファイする事例は例外的であり、生活文化の限界が看取される。
著者
安部 巌 和泉 圭二 倉本 成史 武者 宗一郎
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.427-431, 1982-08-05
被引用文献数
2

屋久杉をその年輪に沿って紬かく裂き,外皮側より1084年から1474年内での8箇所でそれぞれ,アミノ酸を分離し,光学活性固定相を用いたガラスキャピラリーガスクロマトグラフィーでその挙動を観察すると,アラニン(Ala),バリン(Val),アスパラギン酸(Asp),フェニルアラニン(Phe)の4種がラセミ化しており,特にAspでは年輪の増加に伴うD/L比の規則的な増大がみられた.屋久杉年輪の年代はAsp D/L比よりの次の2方式すなわち(I)1本の年代を既知として作成した検量線,及び(II)2本の年代を既知として作成した検量線,により求め,年輪年代との比較を行った.推定値標準誤差は,それぞれ(I)39.8年,(II)29.6年となり,方式(II)は年輪年代により接近した測定年代を示した.
著者
沼崎 一郎
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

本研究では、植民地期から戦後にいたるまでの日本と台湾との企業間関係のエスノヒストリーを再構成することを目的とし、文献調査と聞き取り調査を組み合わせて、日台企業文化交流史の基礎資料の収集を行った。植民地期の台湾における日本人企業家と台湾人企業家の交流については、自伝や回顧録、社史やパンフレットを収集した。戦後の日台企業関係については、台湾駐在経験のある日本人ビジネスマン数名を対象にインタビューを実施した。戦前の台湾で企業活動を行っていた日本人に対する聞き取りは実施できなかった。これは今後の課題として残る。ただし、戦前台湾に居住していた大学教授夫人にインタビューし、女性の立場から見た当時の日本人と台湾人との関係についての体験を聞くことができた。植民地期の台湾では、多くの台湾人が日本人経営の商店で丁稚奉公をしており、そのような体験を通して、日本的な商業慣行や文化を学習した。これに対して、日本人の側は、日本語を解し、日本的行動様式を学習した台湾人とのみ交流した結果、台湾商人固有の商業文化を学という姿勢は見られなかった。ここで、台湾では「日本式」企業文化が通用するという「誤解」が形成され、この「誤解」は現在まで継承されている。この「誤解」の中核にあるのが、台湾側が個人と個人の関係とみなす関係を、日本側が組織と組織の関係と誤認することである。しかし、この文化的「誤解」は、日本と台湾の企業間関係を損なうこともあったが、新たな展開を生むこともあった。台湾人社員を日本的な組織人と「誤解」した日本企業が技術研修を与え、退社して独立した台湾人が本社の下請け企業となり、結果として意図せざる技術移転が行われた事例が多々ある。このようにして、日本的に社会組織に台湾的な個人企業を結び付くという、新しい形態の異文化間ビジネス・ネットワークが形成されてきたことが明らかとなった。
著者
正岡 寛司 藤見 純子 嶋崎 尚子 澤口 恵一 西野 理子 大久保 孝治 白井 千晶
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、19世紀・20世紀半ばまでの重量型資本主義の基盤を第一次エネルギー供給の面から下支えしてきた石炭鉱業の経済史的ならびに社会学的な意義と特殊性、そしてその発展と終焉過程とを緻密に記述することを目的としたものである。あわせて、それを比較歴史的な記録資料として利用可能な状態で保存する。具体的には以下の5点の作業をすすめ、成果をえた。(1)旧常磐炭砿株式会社磐城砿業所(福島県いわき市)で就労した労働者の職業キャリアの大規模なミクロ・データの構築。(2)入社から退社にいたるまでの個別砿員の職業を中心として各種キャリアの時系列データの分析。(3)磐城砿業所の閉山にともない解雇された労働者の炭砿での職業キャリアと閉山後に形成した職業キャリアとの連結と、その分析(非自発的職業中断の影響)。(4)炭砿で就労した経験をもち、かつそこを解雇された元炭砿労働者たちの職業生活から離脱過程のデータの構築と分析(解雇経験後の職業キャリアと引退後生活)。(5)以上の諸ミクロ・データをデジタル化したうえで、大規模ミクロ・データの公共利用。上記作業の結果、昭和30年代の「採解簿データ」(約80,000件)をデジタル化し、6,459名の入社から退職にいたる職業キャリアの大規模なミクロ・データを構築した。他方、4,209名の離職者の89%にあたる3,747名の追跡調査を終えた(調査終了1,427名(34%)、調査不能879名(21%)、死亡確認(34%)1,441名)。彼らの閉山後の職業キャリアデータと入社から退職までの職業キャリアデータとを連結し、生涯職業キャリアデータを構築した。これらの生涯職職業キャリアデータを用いて、非自発的職業中断の影響、解雇経験後職業キャリアと引退生活の分析をすすめ、その成果を報告書にまとめ刊行した。本研究で構築した大規模ミクロ・データについては、HP上でその一部を公開した。
著者
増倉 秀一 端浦 宏俊 長谷 隆
出版者
日本流体力学会
雑誌
ながれ : 日本流体力学会誌 (ISSN:02863154)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.55-63, 2009-02-25

速度制限区間を設けた場合の交通流への影響を研究する.二車線交通モデルでは車線変更を考慮した拡張最適速度モデルを適用する.速度制限区間を設けることによって交通状態や交通特性は大きく変化する.速度制限区間を設けた一車線交通は自由流,飽和流,混雑流と三つの異なる交通状態を示す.二車線交通においては車線変更条件を考慮すると交通状態は六つの領域に分けられる.一車線ならびに二車線交通では渋滞が発生する密度で交通流量が飽和し,速度制限区間の手前に不連続面が発生する.この不連続面前後の車間距離間の関係を明らかにした.
著者
大岩 政基 南 俊輔 辻 健一郎 小野寺 紀明 猿渡 正俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LQE, レーザ・量子エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.93, pp.31-36, 2009-06-12

時間軸Talbot効果(TTE)を用いた全光クロック抽出法は,OOK(On-off keying)変調された信号光に伝送速度で定まる特定の1次の波長分散を与えるだけで光クロックパルスが抽出できる.しかし,本方法は信号光に{0}符号連続が生じると,抽出光パルス列に長周期の振幅変動が生じる難点がある.一方,能動モード同期を利用した全光クロック抽出法として,SOAファイバリングレーザ(SOA-FRL)への光注入法が報告されている.この方法は,ファイバ共振器中に光遅延回路を挿入することにより任意のビットレートに適用可能となる利点があるが,SOAの変調速度制限のため,出力パルス列に短周期のパターン効果が生じる欠点がある.本報告では,上記の2つの方法を組み合わせることで互いの欠点を補償した新規の全光クロック抽出法を提案し,その動作特性を評価する.
著者
中野 栄二 庄司 道彦 王 志東 高橋 隆行
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1.実験機の試作操縦型連続移動歩容の検証のために,18自由度をもつ脚車輪ロボットの実験機を製作した.2.オペレータによる操縦に的確に反応する脚相管理歩容の実現オペレータの指示する速度が限度を超えたときに,脚の復帰動作が間に合わずに推進動作が停止する問題が明らかになり,この点の解決に特に重点を置き,集中的に研究を行った.その結果,これまで提案してきた脚相管理歩容ときわめて親和性の高い,かつ効果的な方法の開発に成功した.この方法の主要な部分は以下の通りである.(1)ベースとなる脚相管理歩容とは,脚が可動限界に到達して推進動作が継続不可能になる時刻を予測し,それに基づいて脚の復帰動作開始タイミングを決定する手法である.この手法は,脚の機械的な可動限界到達までの時間と,可動限界からの復帰に要する時間を比較し,継続的な推進動作を実現するものである.(2)しかしながらオペレータの指示速度が過大で,脚の動作タイミングの制御のみでは推進動作の継続性が維持できない場合,速度指令を強制的に小さくすることにより,機体が実現可能な範囲内で最大の速度が出せるようにする.この二つの手法を併用することにより,制御対象である脚車輪型ロボットを不整地上で継続的に動作させることに成功し,また速度指令が一定の場合については,脚の復帰動作を最小限に抑えた効率的な推進動作が実現できることを確認した.3.安定性を考慮に入れた脚相管理歩容の拡張上述の脚相管理歩容を,任意に設定した転倒安定余裕を確保しつつ継続的推進動作が可能なように拡張した.
著者
大岩 政基 南 俊輔 辻 健一郎 小野寺 紀明 猿渡 正俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OPE, 光エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.92, pp.31-36, 2009-06-12

時間軸Talbot効果(TTE)を用いた全光クロック抽出法は,OOK(On-off keying)変調された信号光に伝送速度で定まる特定の1次の波長分散を与えるだけで光クロックパルスが抽出できる.しかし,本方法は信号光に{0}符号連続が生じると,抽出光パルス列に長周期の振幅変動が生じる難点がある.一方,能動モード同期を利用した全光クロック抽出法として,SOAファイバリングレーザ(SOA-FRL)への光注入法が報告されている.この方法は,ファイバ共振器中に光遅延回路を挿入することにより任意のビットレートに適用可能となる利点があるが,SOAの変調速度制限のため,出力パルス列に短周期のパターン効果が生じる欠点がある.本報告では,上記の2つの方法を組み合わせることで互いの欠点を補償した新規の全光クロック抽出法を提案し,その動作特性を評価する.
著者
鈴木 康彦 松原 厚 垣野 義昭
出版者
公益社団法人精密工学会
雑誌
精密工学会誌論文集 (ISSN:13488724)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.1266-1270, 2004-10-05
被引用文献数
5

This paper deals with controlling feed rate for small circular motion on NC machine tools. Recently new machining methods using small circular interpolation with endmills or direct taps have been used for machining cylindrical holes or tapping. Accordingly, contouring accuracy is getting more important in the new method. Decision of feed rate that influences contouring accuracy is the most important and difficult. So far the maximum feed rate for circular motion is decided according to the normal acceleration constant rule. This rule is a good way to restrict errors due to difference of stiffness between two axes because the errors are mainly proportional to normal acceleration. In the case of small circles, the rule is of no service. That is why errors are increasing as angle speed increases even if normal acceleration is constant. Therefore, the new rule to decide feed rate for small circular motion is needed. This paper analyses what is related with the errors in case of small radii and proposes a new rule to decide feed rate for small circular motion.
著者
野田 勉 原田 守夫 宮沢 寛 石黒 公 西山 光生 清水 信作 伊東 晋
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 : 映像情報メディア (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.1509-1516, 1997-09-20
被引用文献数
17 1

The Cable Television Conference working group conducted experiments on the 64 QAM signal transmission in a CATV system from 1995 to 1996. These experiments were based on the tentative specifications of the Telecommunications Technology Council of the Ministry of Posts and Telecommunications (MPT), to promote standardization of the Japanese digital CATV system. Experimental results showed that a C/N of more than 26 dB, a Composite Triple Beat (CTB) of less than -43 dB, and a single carrier interference of less than -30 dB were required to keep a BER of less than 1×10^<-4> without forward error correction. Cable reflection within the conventional CATV standard for NTSC-AM signals was low enough for 64 QAM signals. Experiments on adjacent channel interference between 64 QAM and NTSCAM signals indicated that the 64 QAM signal level needed to be lower than the NTSC-AM signal level by about 4-20 dB. Based upon these results, the Japanese standard was introduced by MPT on December 3,1996.
著者
朴 〓用 李 昌勲 朴 相運 権 聖弼 崔 元哲
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
Journal of International Society of Life Information Science (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.107-116, 2001-03-01

フランスの科学者J.Benvenisteは水の持つ記憶効果'memory effect'を同種療法(hoemopathy)でその可能性を見せた。日本の江本は水の結晶映像法を用いて波動による水の結晶特性の差を見せた。本研究では同様な方法を用いて磁場が水にどういう影響を及ぼすかに関する研究を行った。精製水、水道水、市販されている生水、磁化水、浄水器で処理した水、山からの自然水、などを対象に実験を行った。精製水には特性の差がほとんど現れていないが、ミネラルを含んだ水には六角結晶に差が現れる。ミネラルがあまり多い場合は逆に結晶成長率が落ちる。しかし、こういう実験には再現反復性に問題があるが、傾向性から水の六角結晶に磁場の影響があることが観察できた。
著者
屋良 朝彦 金光 秀和 本田 康二郎 蔵田 伸雄 須長 一幸 永澤 悦伸 大小田 重夫 坂井 昭宏 長谷川 吉昌
出版者
長野県看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

(1)科学技術によってもたらされる不確実なリスクに対処するための意思決定モデルとして、「予防原則」を検討した。その際、予防原則にはどのようなレベルのリスクに対処するべきか明確な基準が欠けていることが明らかにされた。そのため、予防原則はリスクに関する合意形成モデルによって補完される必要があることが示された。(2)科学技術による不確実なリスクの本質を知るために、それをリスクコミュニケーションの観点から分析した。
著者
高野 邦彦 尾花 一樹 和田 加寿代 田中 武 久保田 智紀 佐藤 甲癸
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.26, no.56, pp.7-10, 2002-08-30
被引用文献数
3

動画ホログラフィは,自然な立体感が得られる電子式立体ディスプレイ実現のための技術として期待されている.特に白色再生法は,表示像のカラー化に応用するという点で有効であると考えられる.これまでに3枚のLCDパネルを用いたカラー再生法が検討されている.しかし,表示素子が複数になることからカラー再生時に重要となるRGBの回折光の位置調整機構が複雑になっていた.それに対して本手法では回転式カラーフィルタによりカラー再生に必要となる波長光を時分割抽出し,これと同期させた,単板式DMDパネルにRGBのCGHを時分割形成してカラー立体像の表示を行った.そこで,本稿ではDMDパネルを用いた再生法について採り上げ,一灯の白色光源と単板素子でカラー立体像表示装置の構成が可能となることを示し,装置簡略化への可能性を提案する.
著者
菊谷 正人
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

企業結合の先進国である英・米の会計基準および国際会計基準(IAS)または国際財務報告基準(IFRS)を検討するとともに、わが国の会計基準(「企業結合に係る会計基準」と「企業会計基準第22号 : 企業結合に関する会計基準」)との国際比較を行うことによって、企業結合会計基準の国際的収斂を確認することができた。企業結合会計として「パーチェス法」が強制適用されることになったが、のれんの会計処理として国際的には「減損テスト法」が基準化され、わが国では「20年以内規則的償却法」が基準化された。「フレッシュ・スタート法」は論議されるに止まり、制度化されるには至っていない。