著者
清原 玲子 山口 進 潮 秀樹 下村 道子 市川 朝子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.294-299, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
17
被引用文献数
2

我々は揚げ物,炒め物に独特のコク,うま味の一因として,加熱調理に伴って生成する油脂酸化物の影響を考えた。そこで本研究では油脂酸化物の味への影響を調べるため,主にヒトでの官能評価によって以下のことを明らかにした。リノール酸,リノレン酸,ドコサヘキサエン酸,エイコサペンタエン酸,アラキドン酸(AA)の5種類の脂肪酸を35℃24時間酸化させ水で抽出し,それぞれ醤油希釈水に添加したところ,添加無しに比べて有意に醤油の味が強まった。なかでも酸化AA水抽出物の添加作用が最も強いことが示された。AAを数%添加した植物油で調整したコロッケ,炒飯,野菜スープは有意にうま味,コク味,後味などが強まり,嗜好性も高まる傾向がみられた。以上より,油脂酸化物が食品の味を強める作用を持つこと,また植物油にアラキドン酸を添加することで,油脂調理食品のおいしさを向上できることが示唆された。
著者
高田 峰雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.357-362, 1967 (Released:2007-07-05)
参考文献数
21
被引用文献数
3 1

1. カキとトマトの果実について, 生育ならびに成熟と関連させて, 呼吸量の変化を調べた。2. 植物体上における果実の呼吸量とみなされる採取24時間後の呼吸量を生育段階的にみると, トマトではきわめて典型的な climacteric を示したが, カキではかならずしも明らかでなかつた。3. カキ, トマトともにすべての生育段階の果実において, 採取後に呼吸の上昇が見られた。4. カキ, トマトともに若い果実においても採取後に成熟様現象が起こり, その時に呼吸のピークが現われた。しかし, 成熟様現象の進行速度および呼吸曲線の様相においては, 両者の間に大きな差異が見られた。5. カキの開花後約2か月までの若い果実では採取後にヘタの脱落現象が見られたが, 生育がさらに進んだ果実では見られなかつた。この現象は種子の有無とは直接関係がないように思われた。
著者
安田 淑子 下村 道子 山崎 清子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.107-110, 1976-04-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
3

湯取り法と普通炊による米飯を炒め飯にし, その性状を比較することにより, 湯取り法の検討を行った. 結果を要約すると次の通りである.1) 米飯の炒め操作については, 湯取り法の方がはるかに炒めやすい.2) 炒め操作中に湯取り法の米飯は水分の蒸発がより多い.3) 炒め飯のノルマルヘキサンによって抽出される油脂は湯取り法の方が多く, 表面に付着している割合が多い.4) 顕微鏡によって, 普通炊の米飯粒のまわりにはおねばが付着している状態が観察され, 湯取り法ではほとんどなかった. また, 炒め飯のバターの付着状態は, 湯取り法の米飯に均一に付いているのに反し, 普通炊ではむらであった. 米飯が高温の方がバターの浸透が多い.5) テクスチュロメーターによる測定では, 湯取り法による米飯の炒め飯は付着性がみられず, 硬さが普通炊にくらべて大きく, 凝集性は小さかった.6) 炒め飯の官能検査では, 湯取り法と普通炊による差はみられなかった.
著者
本城 昇
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.19-28, 2017-12-25 (Released:2019-05-21)

学会において2005年に法案検討タスクフォースが設置され,筆者を含むそのメンバー注29)は,「生産者と消費者の分断」,「人間生活と自然の分断」という市場経済の構造的問題を見据えたバランスある総合的な施策の束を打ち出すことができる法律の試案をつくる起草作業に着手した.この「生産者と消費者の分断」,「人間生活と自然の分断」を見据えた総合的な施策の束を打ち出すという考え方は,2001年の「有機農業と緑の消費者運動政策フォーラム」の提言をつくるときに辿り着いたものであるが,筆者は,この考えた方に基づけば,これまでの日本の有機農業やその運動の成果を尊重し,進展させる優れた試案がきっとつくれるであろうと思った.勿論,そのような総合性のある有機農業法制は,外国には存在しない.起草に着手したときは,うまくつくれるか心配であった.しかし,法案検討タスクフォースの構成メンバーで力を合わせ,2005年8月18日,「有機農業の基本法」にふさわしい試案を完成させることができた.そして,この試案が踏まえられて,有機農業推進法が成立した.有機農業関係者の方々からは,歓迎され,大変喜んでいただいた.今もそのときの光景と熱気が忘れられない.上記の考え方に辿り着き,試案を完成することができたのは,外ならぬ,日本の有機農家や有機農業関係者の地道なそれまでの取組の積み重ねと優れた日本の有機農業思想,それと有機農業やその運動に寄り添う研究者の方々の存在があったからこそである.有機農業推進法は,その成果である.今後も,一層充実した有機農業法制が積極的に構想され,その実現により,有機農家が安心して楽しんで有機農業に取り組むことができ,有機農業の持つ魅力が遺憾なく発揮され,地域の自然や社会がいのち輝く持続性のあるものとなっていくことを切に願っている.
著者
峰時 俊貴
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.11-20, 2014 (Released:2018-02-16)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

清酒醸造の副産物である酒粕には,血圧降下作用が確認されているアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチドやアルコール性肝機能障害,うつ病などの疾病への効果が認められているS-アデノシルメチオニン(SAM)など多くの機能性成分が含まれており,様々な生理機能を有することが報告されている。また,酒粕は栄養価が高く,食物繊維やビタミン類,アミノ酸を多く含む天然の食品素材,調味料としての特長を有しているが,品質保持が難しい食品素材である。今回,レジスタルプロテインをはじめとする酒粕の機能性について,さらに酒粕の利点を強化し,ハンドリングの良い品質重視の新しい酒粕調味料の開発について解説していただいた。
著者
岩淵 正博 佐藤 一樹 宮下 光令 森田 達也 木下 寛也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.189-200, 2016 (Released:2016-06-29)
参考文献数
47
被引用文献数
1 7

【目的】1)終末期医療に関する意思決定者の関連要因を探索すること,2)意思決定者の違いによる受ける医療やQOLへの影響を明らかにすること.【方法】がん・心疾患・脳血管疾患・肺炎で死亡した患者の遺族(N=409)を対象にインターネット調査を実施.終末期医療の主体的な意思決定者を「患者」「家族」「医師」「患者・家族・医師共同」の4件法で尋ねた.【結果】患者と比較して,意思決定者が家族であることには,患者と家族での終末期に関する話し合い(オッズ比〈OR〉=0.52),医師から患者への病状説明(OR=0.77),認知機能低下(OR=1.94)が関連し,医師であることには,医師から患者への病状説明(OR=0.62)が関連した.意思決定者の違いは遺族による患者QOL評価に影響し,医師が意思決定者の場合に有意に低かった(p=0.014).【結論】終末期医療に関する意思決定者の関連要因と影響が明らかとなった.
著者
松浦 俊治 水田 祥代 増本 幸二 田口 智章
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.697-702, 2004-08-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
28

症例は2歳9ヵ月,男児.上気道炎にて近医受診時,肝腫大,肝機能障害を指摘された.肝炎を疑われ保存的治療を行われたが,症状の改善をみず,肝生検にて原発性硬化性腸管炎(PSC)が疑われたため,当院へ紹介となった.当院でのCT,MRCPでは,肝内胆管の数珠状変化と総胆管の壁肥厚を,前医における肝生検では門脈域の線維化と炎症細胞浸潤,偽胆管の増生を認めていたため,PSCと診断された.また,肝機能障害を指摘された頃より時折血便を認め,注腸造影および大腸ファイバーにて,全大腸に全周性の浅いびらんを認めたため,潰瘍性大腸炎(UC)と診断され,以後5-ASA (5-aminosalicylic acid)投与を開始した.PSCに対し保存的治療を行ったが,肝硬変へと移行したため,5歳2ヵ月時,家族の希望にて生体肝移植目的で他院へ紹介となった.小児期発症のPSCにおけるUC合併例は稀であり,文献的考察を加えて報告する.
著者
松岡 昌志 若松 加寿江 藤本 一雄 翠川 三郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.794, pp.794_239-794_251, 2005 (Released:2006-05-19)
参考文献数
29
被引用文献数
28 9

日本全国の任意の地点での地盤特性を評価するために, 全国的にS波速度に関する調査資料が得られている約2000地点について, 深さ30mまでの地盤の平均S波速度 (AVS30) と微地形区分との関係を検討した. 微地形の判読は, 全国の微地形を統一基準で分類した「日本全国地形・地盤分類メッシュマップ」の分類に従い, 大縮尺の地形分類図を用いて目視判読により正確に行った. その結果, 微地形ごとのAVS30には地盤の形成過程や堆積環境に起因する違いが認められ, 標高, 傾斜, 古い時代に形成された山地・丘陵からの距離を説明変量とした回帰式によって, AVS30が比較的精度よく推定できることを示した. さらに, 日本全国地形・地盤分類メッシュマップを利用して, 広域でのAVS30分布図を作成した.
著者
Jin Hee Kim
出版者
The Japanese Society of Toxicology
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.237-244, 2019 (Released:2019-04-03)
参考文献数
43
被引用文献数
2 23

Di(2-ethylhexyl) phthalate (DEHP) is widely used in polyvinylchloride-based materials and remains intact in the environment. Lungs are one route of entry of DEHP into the body; however, there is limited information on the effects and mechanism of action of DEHP on non-small cell lung cancer (NSCLC). Here, we addressed this by examining the effect of DEHP on the proliferation of A549 human lung adenocarcinoma cells by MTS assay. The induction of inflammation and epithelial-to-mesenchymal transition (EMT), as well as activation of the mitogen-activated protein kinase (MAPK) and Wnt/β-catenin signaling pathways, were assessed by western blot and real-time polymerase chain reaction. Although there were discrepancies in the concentration, DEHP treatment enhanced A549 cell viability accompanied by increased mRNA and protein levels of inflammation-related factors, such as matrix metalloproteinase-9 and nuclear factor-κB. Additionally, EMT was activated in cells according to decreased E-cadherin and increased vimentin expression. Furthermore, MAPK pathway components, including phosphorylated p38 and c-Jun N-terminal kinase, and Wnt/β-catenin pathway components, including phosphorylated glycogen synthase kinase 3β and β-catenin, as well as their downstream genes c-Myc and cyclin D1, were upregulated in the presence of DEHP. These results suggest that DEHP promotes NSCLC progression by promoting cell proliferation, inflammation, and EMT via activation of Wnt/β-catenin signaling.
著者
朴 壽永 安江 紘幸 中尾 宏
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-13, 2018 (Released:2018-03-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

多量の情報がインターネットでやり取りされるIoT(Internet of Things)の時代で,ICT(Information and Communication Technology)を利活用した実用性の高いウェブ型SWOTやTOWS分析ツールはまだ見当たらない.また,参加者以外によるアイディア発想を促す手法も確立されていない.日本の農業は,高齢化に伴う離農や耕作放棄地の増大,グローバル規模での市場開放など大きな変化に直面しており,これらの課題解決と農業振興を図る上で従来にない様々なアイディアが求められている.そこで本稿では,豊かなアイディアの発想を促すため,インターネット上でブレインストーミングやKJ法によるアイディア発想が具現できるiSWOT(internet SWOT analysis tool)を開発した.そして,アイディアとアイディアが互いに干渉して第2のアイディア発想を促すことを干渉作用と呼んでいることから,参加者による干渉を内部干渉に,プログラムによる干渉を外部干渉に分け,内部や外部干渉作用を果たす複数の機能をiSWOTに実装した.若手農業生産者と普及指導員を対象にiSWOTを用いて機能テストを行った結果,その有用性が示唆された.
著者
藤巻 洋 稲葉 裕 小林 直実 雪澤 洋平 鈴木 宙 池 裕之 手塚 太郎 平田 康英 齋藤 知行
出版者
Japanese Society for Joint Diseases
雑誌
日本関節病学会誌 (ISSN:18832873)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.17-22, 2013 (Released:2014-06-26)
参考文献数
12

Objective: The aims of the present study were first to investigate the frequency and location of bone cysts in the acetabulum of hip osteoarthritis (OA) patients and second to examine the influence of pelvic tilt on the location of bone cysts in the acetabulum.Methods: A total of 80 patients (65 women and 15 men) with hip OA who underwent primary total hip arthroplasty were included in this study. The mean age at surgery was 65 years (range, 43-83 years). The bilateral hips of these 80 patients were examined; however, 9 contralateral hips that had previously been implanted with prostheses were excluded. We evaluated the minimal joint space width (MJS) on preoperative antero-posterior radiographs of the pelvis in the standing position. We also obtained the digital imaging and communication in medicine (DICOM) data from the preoperative pelvic computed tomography (CT) images, and then three-dimensionally reconstructed the DICOM data using OrthoMap 3D software with reference to the anterior pelvic plane. We divided the acetabulum into six areas and examined the presence of bone cysts in each area. We also examined the degree of pelvic tilt with three-dimensionally reconstructed CT images.Results: The frequency of bone cysts on CT images increased when the MJS of the hip joint on radiographs of the pelvis was less than 2 mm (p < 0.05). In the total of 151 hips, the antero-lateral area of the acetabulum (88 hips, 58%) exhibited the highest frequency of bone cysts. Patients who had bone cysts in the anterior part of the acetabulum tended to have a larger value of pelvic retroversion than those who did not have cysts in the anterior part of the acetabulum; however, the difference was not significant.Conclusion: The antero-lateral area of the acetabulum, which exhibited the highest frequency of bone cysts, is thought to be susceptible to loading stress. We hypothesized that patients who have bone cysts in the anterior part of the acetabulum have larger retroversion of the pelvis than others; however, the difference was not significant. We need to investigate further to reveal the influence of pelvic tilt on the location of bone cysts.
著者
森 未知 星野 咲希
出版者
Information Science and Technology Association, Japan
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.134-139, 2020-03-01 (Released:2020-03-01)

国立女性教育会館の専門図書館「女性教育情報センター」では,四半期毎に図書のテーマ展示を行っている。今までに「女性のしごと:広がるフィールド~理系,土木,建築,農業,物流~」「ロールモデルを見つける!理系女性の伝記」といった,理系女性に関する展示を行った。女性アーカイブセンターでは企画展示を「チャレンジした女性たちからチャレンジする女性たちへ」というシリーズで行っており,化学,建築,宇宙,医学等に関わる女性たちを取り上げた。本稿では,それらを踏まえて「女性研究者を支援する」というテーマで図書の誌面展示を行うとともに,読者自身も情報を探し,展示を行うために使える国立女性教育会館のサービスを紹介する。