著者
矢部 信良 百瀬 重禎
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.372-378, 1998-12-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
12
被引用文献数
40 39

酸化セリウムを利用した新しい紫外線遮断剤を合成した。不定形シリカによりコーティングすることにより, 酸化セリウムの高い紫外線遮断効果を保ったまま触媒活性を低下させることに成功し, 種々の化粧品剤型への応用が可能となった。水溶液中で水酸化セリウムと珪酸ナトリウムから合成した粒子は, 酸化セリウムと不定形シリカの割合が7:3の場合に紫外線遮断能と, 触媒活性の低さの面から最も化粧品素材として有用性が高かった。この1次粒子は平均で, 長径が50nm, 短径が6nmの針状微粒子であった。化粧品製剤への応用についての検討を行った結果, 高いSPFを与える配合量においても, 肌上に使用した場合の高い透明性と, とくにメーキャップ製品の外観色に与える影響を最小限に抑えることができることを確認できた。
著者
古川 洋和 大沼 泰枝
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.155-163, 2013-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、長野県において、うつ病に対する認知行動療法(CBT)についての研修プログラムを実施し、その効果を検討することであった。21名(平均年齢35.57歳)の実践家が研修プログラムに参加した。プログラムでは、6回(計18時間)のワークショップと個別のスーパービジョンが行われた。研修プログラムの効果については、認知療法認識尺度(CTAS)を用いて、プログラム実施前(Pre)、プログラム終了直後(Post)、プログラム終了4ヵ月後(Follow-up)の3時点でCBTの知識についての評定を求めた。また、PreとPost時点において、CBTの実践可能性(0〜100)についての評定を求めた。本研究の結果、CTAS合計得点はPreの値と比較してPostの値が有意に高く、その効果はFollow-up時点においても維持されていた。さらに、CBTの実践可能性についてもPreの値と比較してPostの値が有意に高いことが示された。最後に、本研究の結果をもとに、地域単位で実施するうつ病に対する実証に基づく心理療法の普及と推進について議論した。
著者
橋本 三嗣
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.41-50, 2001-06-30 (Released:2018-05-08)

本稿の目的は大学1年生と3年生の論理的思考力を調査し,その様相を明らかにすることである。そのために国立大学の大学1年生と3年生に対して調査を行い,調査対象者を専攻,学年,性別という3つの観点から分け,また調査結果を推論の型・問題の内容という視点から分析・考察した。そして中学校3年生の調査結果と比較した。その結果,次のことが明らかになった。(1)同じ学年で比較した場合,大学で数学を専攻している大学生は大学で数学を専攻していない大学生よりも調査得点が有意に高い。(2)大学で数学を専攻している大学生の集団に限り, 3年生が1年生より調査得点が有意に高い。(3)専攻別の大学生の集団の中には,女性が男性よりも調査得点が有意に高いものもある。(4)推論の型については,逆型と裏型の問題の正答率が低く,問題の内容については,日常的,仮想的な事柄の下での問題の正答率が低い。(5)調査結果に関して大学生を中学校3年生と比較した場合,大学生は中学校3年生より数学的な事柄の下での問題の正答率が高い。これらより,今回の調査で点数化した論理的思考力は,特に大学の数学を学ぶことで飛躍的に伸びると推測される。
著者
山地 秀樹 勝田 知尚
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ウイルス様粒子は,ウイルス感染症を予防するための有効かつ安全な次世代ワクチンとして利用が期待されている.本研究では,A型のインフルエンザウイルスの構造タンパク質であるヘマグルチニンHAおよびマトリックスタンパク質M1の遺伝子を昆虫細胞に導入し,両遺伝子を共発現する組換え昆虫細胞の作製を検討した.異なる薬剤耐性遺伝子を有する2種類の高発現型プラスミドベクターを用いて両遺伝子を導入し,薬剤耐性遺伝子に対応する2種類の抗生物質の存在下で培養することにより,HAとM1を含むインフルエンザウイルス様粒子を分泌生産する組換え昆虫細胞を効率よく作製することに成功した.
著者
川崎 雅之
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成24年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.7, 2012 (Released:2012-09-30)

地球表層には大量のシリカ鉱物、特に石英(水晶)が存在しているが、地球外物質(隕石、月、火星など)には極めて少ないことが既に知られている。実際、隕石中に含まれている鉱物は珪酸塩鉱物(かんらん石、輝石、長石)と鉄ニッケル合金が中心であり、シリカ鉱物は一部の隕石に少量報告されている程度である。 太陽系形成の初期において、惑星は高温の溶融状態にあり、その後の冷却過程で核・マントル・地殻に分化している。核には主に鉄(+ニッケル)が、マントルにはかんらん石や輝石が濃集し、地殻には玄武岩が形成された。月の地殻は斜長岩と玄武岩である。水星・金星・火星では地形と分光分析により、その地殻は玄武岩質と推定されている。一方、地球の地殻は海洋地殻と大陸地殻に分けられ、海洋地殻及び大陸地殻下部は玄武岩質であるが、大陸地殻上部は花崗岩質である。 シリカ(SiO2)はNa、Mg、Ca、Alなどと共に容易に珪酸塩鉱物を形成するので、シリカ鉱物が存在するためには、それらの元素以上に過剰なSiO2が必要である。玄武岩中のSiO2量は少なく、シリカ鉱物とは共存しない。一般的にシリカが単独で存在し得る火成岩はSiO2量の多い花崗岩である。月物質の一部に石英を含む花崗岩が確認されているが、量は少なく、他天体を含めても、水晶の存在は希である。分化によってできる地殻を構成するのは主に玄武岩ないし斜長岩であり、量的に花崗岩はできにくい。マントルのかんらん岩が部分溶融してできるマグマも玄武岩質である。他天体の地殻が花崗岩よりSiO2量の乏しい岩石で構成されていれば、そもそも水晶が存在しにくい。むしろ、地球の地殻において水晶が多い理由は大量の花崗岩が存在することにあると言える。 では、花崗岩はどのようにしてできたのか? 実験から水の存在下で玄武岩が部分溶融すると、できたマグマはSiO2量に富む安山岩~花崗岩質マグマであることがわかっている。玄武岩質の海洋地殻は中央海嶺で生成され、プレートの沈み込み帯で地球内部に入り込み、大量の水をスラブ(沈み込んだ海洋プレート)上側のマントルに放出する。その水が地殻下部を部分溶融させ、SiO2量の多い安山岩質~花崗岩質マグマを形成している。 元々、地球は金星、火星や月に比べて、水に富んだ星である。惑星の分化が進んだ時点で、海洋が存在し、プレートの動きに従い、地球内部と地表との間で水の循環が成立している。その結果、地殻下部への水の連続的な供給が安山岩~花崗岩質マグマの形成を促進し、大陸の成長につながったといえる。他の天体ではプレートの動き(プレートテクトニクス)は無かったか、あるいは限定的であったと考えられている。 地球表層の豊富な水は地殻上部でも循環し、熱水作用により、SiO2の単結晶、すなわち水晶を大量に形成した。地球が他天体(月や地球型惑星)に比較して、水が豊富であったこと、プレートテクトニクスにより水の循環が容易に行なわれたことが、地殻上部における水晶の形成につながった。 大昔、水晶を見た人々は「水晶は透明な硬い氷である」と考えた。今日、我々は水晶が氷ではなく、SiO2の結晶であることを知っている。しかし、水晶の形成過程を見れば、「水晶こそ水が作った結晶である」と言えるのである。 もちろん、これは水晶だけに当てはまるのではない。花崗岩に伴う鉱物、水から晶出した鉱物はすべて水の賜物である。2008年、アメリカのHazen et al.は鉱物進化論を唱えた(Amer. Mineral., 93, 1693;日経サイエンス2010年6月号)。地球の進化(起源、分化、大陸の形成、生命との共進化)の過程に応じて、新たな鉱物形成プロセスが生まれ、鉱物の種類が増えてきた。特に生命の発生が地球大気を酸化的にしたことの影響が大きいという。大陸の形成、生命の発生・進化に水が必須であることから、水の存在こそが鉱物の多様性を生み出した原動力と言えるだろう。水晶の普遍性はその結果の一つである。 (地球惑星科学連合2012年大会で発表)
著者
内田 壱成 福塚 咲良 矢野 朋美 吉村 耕一
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.179-184, 2021 (Released:2022-01-14)

自律感覚絶頂反応(ASMR)は、視覚や聴覚への刺激によって頭や首の後ろ、時には別の場所で生じるチクチクする感覚であると報告されている。本研究の目的は、ASMR動画が人の脳活動と気分状態にどのような影響を及ぼすかを検討することである。まず、60人の健常な学生を対象として、6つの動画視聴後のASMR感覚の程度を調査した。その結果から、ASMR感覚を強く誘導する2つの動画を選び、6人の健常な学生を対象として、その動画が脳活動と気分状態に及ぼす影響を脳波とPOMS質問紙を用いて検討した。その結果、POMSの活気レベルはASMR動画の視聴後に低下した。脳波から算出されたリラックスと眠気のレベルは低下し、一方で緊張のレベルは増加した。これらの結果から、動画視聴により誘導されるASMR感覚は脳活動と気分状態に一定の影響を及ぼすことが示唆された。
著者
本田 真也 神田 隆
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.207-209, 2019 (Released:2019-12-27)
参考文献数
8

ニューロパチーは疾患特異的に運動神経,感覚神経,自律神経のいずれかにアクセントを置いた臨床症状を呈するが,多くのニューロパチーの障害は大径有髄線維,小径有髄線維,無髄線維の順番で進行する.つまり,一般的に自律神経障害を呈するような無髄神経の障害は末梢神経障害としては末期の状態のことが多く,自律神経障害が初期から主症状であるニューロパチーは少ない.糖尿病やアミロイドーシス,一部の免疫介在性ニューロパチーでは自律神経障害が前景に出る場合がある.自律神経障害は患者の生命予後や機能予後に関与しうる病態であり,正確な診断や症状把握が求められる.
著者
清水 稔
出版者
佛教大学
雑誌
文学部論集 (ISSN:09189416)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.1-14, 2010-03-01

日本人は古代から今日にいたるまで、さまざまな外来文化を摂取し続けてきた。小論では、日本における外来文化の受容の歴史を外国語学習と教育の目的の観点から分析し、とくに明治以降の英語学習と教育がその受容の歴史をつよく反映していることを提示するとともに、またそれが、素読・会読・訳読といわれる漢文の学習法にもとづく蘭学の教授法(訳読方式)を継承する系譜と、お雇い外国人・宣教師あるいは海外留学経験者らによる英語教授法(オーディオ・リンガル・メソッド)の系譜との相克上にあることを確認する。
著者
藤田 彬 江澤 優太 田宮 和樹 中山 颯 鉄 頴 吉岡 克成 松本 勉
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.695-706, 2020-03-15

IoT機器には機器の管理や操作のためのWebUIを持ちインターネットに接続可能な機器が多数存在する.それらの機器のなかには,脆弱性や認証の問題を抱えたままインターネット上に公開されているものが存在する.本研究ではIoT機器の実機を用いることでハニーポットを構築し,WebUIに対する攻撃の観測を行う.観測結果にはWebサイト公開用の通常のWebサーバに対する攻撃も観測されるため,観測対象機器向けの攻撃を判別する指標を示す.次に,自動化されている攻撃の特徴を示し,IoT機器向けの攻撃を分析する手法を提案する.提案手法をもとに検証実験を行い,特定のIoT機器向けの攻撃が自動化されている実態を示す.
著者
百瀬 治彦
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.386-394, 1979-05-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
6

自動焦点カメラの焦点調節原理には, 像鮮明度を求めるものと, 被写体までの距離を求める方式に大別される.ここでは自動焦点カメラの開発動向と, 世界で初めて商品化された, 被写体までの距離を求める方式のコニカ C35AF を例にして, その距離検出原理, 自動焦点調節動作原理, 自動焦点カメラの今後の課題等について述べる.